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のび太の宇宙小戦争 | のび太と鉄人兵団 | のび太と竜の騎士 |
『ドラえもん のび太と鉄人兵団』とは、映画ドラえもんシリーズ第7作である。1986年3月15日公開。同時上映は『オバケのQ太郎 とびだせ! バケバケ大作戦』『プロゴルファー猿 スーパーGOLFワールドへの挑戦!!』。
主題歌は『わたしが不思議』。作詞:武田鉄矢、歌:大杉久美子。挿入歌として『ポケットの中に』も使用されている。
概要
大長編、映画ドラえもん共に第7作目となる作品。ロボットという存在を大きく取り上げた作品で、人間とロボットの関係について描かれている。前半はのび太と謎の少女リルルの関係がメインだが、後半はしずかちゃんとリルルの関係がメインになっており、ラストシーンは涙なしには見れないと評判。
また、第7作目記念として初めてタイトルに「のび太『と』」を採用。そしておなじみの「ドラえも~ん!!」が始まったのも本作からである。
2011年に『新・のび太と鉄人兵団』としてリメイクされている。
あらすじ
ある日、のび太はスネ夫のいとこが作ったラジコンロボット「ミクロス」を自慢され、いつものようにドラえもんに泣きついていた。のび太のわがままに怒ったドラえもんは北極へ行ってしまう。仕方なしにおいかけるのび太だったが、ドラえもんに似た丸いボウリングの玉のような物体を発見する。その玉は突然信号音を発しだすと、空から巨大な物体が降ってくる。
その物体を家に持ち帰ったのび太は、ドラえもんが出してくれた巨大ロボットのパーツではないかとひらめく。しかし、ドラえもんには心当たりがないようで…
ゲストキャラクター
- リルル (CV:山本百合子)
- のび太の前に現れた謎の少女。巨大ロボットを探しているというが…
- ザンダクロス【ジュド】(CV:加藤治)
- のび太とドラえもんが組み立てた巨大ロボット。最初は楽しんでいたが、実は恐ろしい破壊兵器である事が判明する。名前はサンタクロースをもじってドラえもんが付けた。本当の名はジュド。
- ミクロス (CV:三ツ矢雄二)
- 本作のコメディリリーフ。スネ夫のいとこが作ったラジコンロボットにスネ夫並の頭脳を持たせている。
- ロボット隊長 (CV:田中康郎)
- 鉄人兵団の司令官。他のロボットとは異なるデザインで、金色のボディが特徴的。
- ロボット兵士 (CV:広瀬正志、橋本晃一)
- 鉄人兵団の一般兵。厳しい階級があるらしく、中にはマントをつけた上位兵も存在する。
原作の描き直し
実は、原作マンガは単行本になっている完成版と、月刊コロコロコミックで連載されていたオリジナル版とで、かなり違う。なお、削除場面については、藤子・F・不二雄大全集にも収録されておらず、今のところ当時のコロコロだけで確認できる。国立国会図書館には収蔵されているので、興味あれば遠隔複写サービスなどで取り寄せてみよう。
というか、「火の鳥」や「鉄腕アトム」みたいに『大長編ドラえもん 復刻オリジナルバージョンBOX』とか小学館さん、マジで出しませんか?
以下、主に違う部分を記載していく。
- 冒頭の導入部分が決定的に違う。完成版だとザンダクロス完成後にミクロスに襲われるが、オリジナル版では北極から帰って来た直後。よって、後の展開にも影響が出ており、オリジナル版だとザンダクロス完成後にしずかちゃんを呼びにいったのび太を見て、ジャイアン&スネ夫が勝手に挑戦状をのび太の部屋に残していた。大全集あとがきで当時アシスタントだったたかや健二が指摘していたのはここのこと。藤子自身も「最初ゆったり始めすぎた」とわらっていたという。
- オリジナル版だと高井山の湖で泳いだ日とは別の日にビルが粉々になるエピソードがあったことになっているが、完成版だとこれは同じ日の出来事になっている。このため、居残りの原因も、完成版が「ザンダクロスを失ってやる気が出ないこと」だったのに対し、「ザンダクロスが面白くて宿題に手がつかなかったこと」になっていて、家の前で決闘をすっぽかされたジャイアン&スネ夫が待ち伏せしていることを察知して入り込みミラーを使い、二人をやり過ごすという完成版にない場面が存在する。
- リルルに「おざしきつり堀」を貸し出して、夜の裏山で鏡面世界に入った後、流星を目撃したのび太はを追いかけてきた人物が違う。完成版だと、ガサガサという草の音に驚いているが、その正体がドラえもんだったというオチだが、オリジナル版だとロボットが襲い掛かってくる場面。この部分は掲載時は回が違うため、のび太を襲おうとするロボットの後姿で一旦引きになっている。
- 直後にドラえもんが追ってきたことも明らかになるが、その時に最終決戦に先駆けて即席落とし穴で身を隠す描写が存在する。
- リルルに見つかった後、ロボットに追いかけられる場面の空気砲でロボットを破壊する描写が若干違う。ちなみに、映画版だと空気砲を出す前にポケットからガムシャラに道具を出すという描写があるが、これは映画オリジナル(なお、この場面はドラえもんがアニメで唯一「どら焼き」と「ネズミ」を同時に出した場面としてドラマニアにはちょっと有名でもある)。
- その後のジュドが出入り口を広げようとする描写も完成版だとリルルの「突き破って大きな連絡口をつけて」といった台詞があるが、オリジナルには無い。しかし、映画で使われた絵はオリジナル版の方で使われた腕がドラえもんに伸びてくる方のものが使われている。
- 次元震で吹き飛ばされたザンダクロスの周りに完成版ではなぎ倒された木々などが追加されている。
- ミクロスに掘り出されたリルルの描写が若干異なる。
- 改造されたロボット街に1台もロボットがいないことを示す描写もオリジナルだと「拍子抜けだなぁ」と簡素なものだが、完成版だと街を散策する様子がすこし描き足されている。
- 故障したリルルを手当てする場面で、完成版だと「ほんとにロボット? 傷口がなかったらとても信じられない」と驚くしずかちゃんとリアルな全裸のリルルが横たわっている男児大喜びだった絵があるが、オリジナルにこの場面は無い。
- 鏡面世界のキャンプで食料買出しの場面、映画だと「全部0円でございます」というドラえもんがレジ打ちする場面があるが、この場面は映画オリジナルでコロコロにも単行本にも無い。
- メカトピアの歴史を語った後に「人間の歴史と同じ」と指摘したしずかちゃんを攻撃するリルルの絵が違う。その後に「もうあんたなんか知らない!!」と泣いて出て行く描写があるが、オリジナルではすぐに部屋に戻っているが、完成版だと一度夜道を歩いた後に思い直して戻ってきている。
- リルルの包帯を取ったあとの描写に完成版では少し加筆されている。「ひとりで着られるわ」と不機嫌に返す場面や、「まだ動き回っちゃだめ」と忠告する場面はオリジナルには無い。
- ザンダクロスの誘導信号に乗ってきた兵団が現れた直後に信号を止めさせてスモールライトを当てる場面ののび太とドラえもんのやり取りが少し異なる。
- 本作屈指の名場面のひとつとされる兵団による鏡面日本の首都攻撃から一夜明けた後、リルルの逃亡に気付いたのび太たちが街でリルルを探す場面が完全に違う。オリジナルだと二人がすぐに発見したものの、すぐにリルルが本部と合流している。また、基地を作ったことを明言する台詞がオリジナルのみに存在する。完成版だと「たずね人ステッキ」を使って手分けして探しているので、リルルを見つけたのはのび太一人。その後のショックガンでリルルを脅す場面があるが、これの初出は映画版で、原作には逆輸入的に導入された場面に当たる。
- 全世界に攻撃を加えた鉄人兵団の場面で、オリジナル版は本物と同じように自由の女神が右手を上げた絵が使われている。これは単なる校了時のミスで絵が逆に掲載されたためである。
- 完成版では最終決戦で鉄人が森に火を放った後、「まるで地球がやけおちていくみたい」というコマが追加。
- オリジナル版では、「ねらえ!!」とドラえもんが指示をした次のコマで「!?」と武器をかまえたまま驚きの表情を浮かべ、ロボットが消滅していく様子を見届けているが、完成版だとわずか4人で兵団相手に戦ったことを司令塔が褒め称える台詞の後に新たにラストバトルが加筆され、孤軍奮闘するドラえもんたちの様子、ザンダクロスが兵団に敗北するシーンが描かれた後に、ジャイアン&スネ夫が捕まるところでロボットが消えていく。映画だと、さらにここからのび太とドラえもんが逃げ回るシーンも加筆された。
- ラストシーンが全然違う。オリジナル版だと、地球に戻ってきたしずかちゃんに大して「そうだったのか」と慰めるシルエットの後、入り込みミラーで本来の世界に帰還して「メカトピアでは今ごろきっと天使みたいなロボットが生まれてるよ」と空を見上げる場面で左下に『終』のマークが出て終わるが、連載直後の『別冊コロコロコミックスペシャル』の総集編の際にラスト3ページが加筆され、生まれ変わったリルルがのび太と再会する映画版に近い演出となった。ラストシーンの加筆は藤子が最も望んだものであり、たかや健二が思わず当時「先生、これはここで終わりなんですか?」とその唐突なラストに疑問をぶつけたところ「うぅん、ページが足りん」という返事があったのだそうな。
- たかや曰く、これほど変更点が多くあった背景には、普段も「ページが足らん」と唸っている様子から、藤子の頭には描きたいシーンが多くあり、とても思い入れの強い作品だったのではないかと言っている。ザンダクロスが倒されるシーンやリルルを介抱する場面、のび太とリルルの再会などは特に描きたかったところなのだろうと語っている。
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