ドラキュラ(Dracula)とは、1897年にアイルランドの作家ブラム・ストーカーが発表した小説、およびその登場人物である吸血鬼(ヴァンパイア)である。
吸血鬼が出てくる作品として世界的に知名度が高く、そのキャラクターは吸血鬼の典型として後世の作品に影響を与え続けている。
ドラキュラを名前に冠した作品や、ドラキュラの名前を持つキャラクターが登場する作品については下記項目参照。
概要
「ドラキュラ」という名前は、元々ルーマニアの地方領主であったヴラド3世(ヴラド・ドラクリヤ)の渾名である。
小説「ドラキュラ」が執筆された当時のイギリスではトランシルヴァニアがちょっとしたブームで、いくつも旅行記が出ており、ブラム・ストーカーもこれを参考として執筆したようである。しかし、実際のヴラド3世は「串刺し公」と呼ばれるほど残忍な刑罰を行ったことで知られるが、吸血鬼呼ばわりされるような行為は行っていないし、さらに言えば伯爵でもないなど、下敷きがある割には設定の食い違いが多く見られる。おそらくこれは、ストーカーがわざと史実から逸脱したキャラとして作ったようで、作中にはどことなくヴラド3世を彷彿とさせる記述がある一方、はっきりヴラドだと特定されるような要素は意図的に排除している節がある。もちろん単にストーカーがヴラドについてよく知らなかったという可能性もあるが。
小説「ドラキュラ」は舞台・映画としても好評を博し、ドラキュラは吸血鬼ものの定番として認知されるまでに至った。ドラキュラ以前にも吸血鬼という存在、および血を吸う怪物は世界中どこでもあった伝説だが、ドラキュラの知名度が波及したことにより、吸血鬼のことを「ドラキュラ」と呼ぶような風潮もあった。ドラキュラ以前の吸血鬼物語に、1872年の「カーミラ」などがある。ちなみにこの「カーミラ」は百合小説っぽい内容である。
また、舞台化・映像化するにあたっていくらか内容が改変されたりもしており、それらもドラキュラ伝説の一部として組み込まれていった。オールバックの黒髪に白い肌、紳士的な立ち振る舞いを装い、襟の立った黒マントの内側は緋色、蝙蝠や狼に化け、血を吸ったものを操り、夜な夜な乙女の血を啜っては、棺に眠る不老不死の怪物、などのイメージは、そうやって時間をかけて醸成されていったものである。今後もドラキュラを主題とした作品が出る度に、新しいイメージが植え付けられていく可能性もある。
こうして世界的に知名度を高めたドラキュラであったが、実はその地元であるルーマニアにおいては、最近までほとんど知られていなかったのである。ヴラド3世自体も地元で知名度が薄かったらしい(所詮は地方の領主だから…)。しかし1990年代になってドラキュラの原作がルーマニア語に翻訳されると、地元の人物がなぜか化物になっていたことに驚くとともに、ヴラド3世に対する「イスラム勢力から領土を守った英雄」として再評価がなされるようになったという、二階堂盛義みたいな話がある。今ではドラキュラ伝説も地元の観光資源として活用されており、ドラキュラ城のモデルとなった城も一般開放されている。
ドラキュラ、あるいは彼をモチーフにしたキャラクターが登場する作品
- 悪魔城ドラキュラシリーズ - コナミによるゲーム作品。ドラキュラは居城である悪魔城とともに一定期間ごとに復活する邪悪な存在としてシリーズ通してのラスボスとなっている。単に名前を借りただけではなく小説「ドラキュラ」の設定も一部取り込んでおり、小説でヘルシング教授らとともにドラキュラを倒した男たちの一人「キンシー・モリス」について、悪魔城ドラキュラシリーズの主人公一族「ベルモンド」の血を引いていたとしている。「モリス一族」が主役となっている作品もある。
- ドン・ドラキュラ - 手塚治虫による漫画作品。現代日本に生きるドラキュラ伯爵をコミカルに描いたギャグ作品。
- 怪物くん - 藤子不二雄Aによる漫画作品。魔界のプリンスのおつきの一人としてドラキュラが登場する。
- HELLSING - 平野耕太による漫画作品。以下、ネタバレ。"主人公のアーカードはヘルシング卿によって倒され、その子孫に使役されるようになったドラキュラあるいはウラド・ドラクリヤその人。名前もドラキュラをさかさまに呼んだものである。”
- 吸血鬼ハンターD - 菊池秀行の小説。吸血鬼の神祖としてドラキュラの名前が登場する。以下ネタバレ"主人公Dの父親であるというのはもはや公然の秘密”
- ドラキュラ紀元 - 「ヘルシング教授がドラキュラに敗北していたら」というif展開で小説「ドラキュラ」のその後を描いた、いわば他人が書いた続編。イギリスはドラキュラが支配する国家となってしまっている。和訳版は「吸血鬼ドラキュラ」も出している創元推理文庫から出ているのだが、下の「関連商品」の項での商品画像を見てもわかるように、表紙まで似せており「続編」感を強調させている。
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