ド・ヴィリエ(De Villiers)とは、「銀河英雄伝説」の登場人物である。
担当声優は銀河万丈(石黒監督版OVA)、堀秀行(Die Neue These)。
略歴
前半生は不明ながら、作中の人物解説から地球出身であることは間違いなさそうである。作品初登場時点で30歳前後という若さながら、大主教、総書記代理で実質地球教におけるNo.2であったようだ。年齢はルビンスキーやトリューニヒトと同世代と思われる。
宇宙暦799年(新帝国暦1年)7月、キュンメル邸における皇帝ラインハルト弑逆未遂事件(キュンメル事件)を受けて、その背後にいたとされる地球教本部への総攻撃が開始される。死にもの狂いで反撃する地球教教徒たちであったが、ワーレン率いる装甲擲弾兵の前に敗北。追い詰められた総大主教以下全員が本部ごと自爆し果てた。一方、ド・ヴィリエ以下少数の信徒たちは密かに脱出して残党を糾合。一信徒を薬物により洗脳して総大主教に仕立てた上で抵抗を続ける。
宇宙暦800年(新帝国暦2年)6月、回廊の戦いを終えて和平交渉に赴くヤン・ウェンリーを暗殺すべく、フォーク准将を利用して教徒を接近させ殺害することに成功する。これにより、和平への道は再び閉ざされることとなる。
同年10月にはガンダルヴァ星系の惑星ウルヴァシーで、アルフレット・アロイス・ヴィンクラー中将率いる駐留部隊がハイネセンへの行幸に向かう途中であったラインハルトを強襲する事件が起きる。この事件を裏で操っていたのもド・ヴィリエら地球教残党であり、結果的に責任者であったロイエンタール元帥の謀反を煽ることに成功する。
宇宙暦801年(新帝国暦3年)5月には出産直前の皇后ヒルデガルドとラインハルトの姉アンネローゼらが滞在していた柊館(シュテッヒパルム・シュロス)を襲撃。しかし、これは憲兵総監であったケスラーとアンネローゼの抵抗によって失敗。返す刀で根拠地があったエフライム街四〇番地が制圧され、もはや残党は数える程の勢力となり果てていた。
同年7月、逮捕されたレオポルド・シューマッハから地球教の残存勢力に関する情報が漏れる。オーベルシュタインはこれを利用して「カイザーの病状は回復傾向にあり、その後に再び地球教への弾圧を強化する」と言う偽情報を流し、病床にあったラインハルトを囮にして一網打尽にする作戦を決行。これに乗せられたド・ヴィリエらは仮皇宮を襲撃。しかし、ラインハルトの居場所が間違って伝えられていたため、手投げ弾はオーベルシュタインの命を奪っただけに終わる。
逃走を試みるド・ヴィリエだったが、居合わせたユリアンらに発見され、新王朝の存続に寄与するであろう地球教団の情報を述べ立てていたところを、ヤンや仲間たちの仇として射殺された。
この一連の戦闘をもって、「銀河英雄伝説」における戦いは終了するのであった。
人物
地球教教徒であるが、決して狂信者ではない。地球に官僚や政治機構が存在しないため、栄達の方法が地球教以外に存在しなかったのである。むしろ本人は自己の才覚のみを信仰し、権謀術数を用いて人を操ることに快感を覚える俗的な人物であり、主観的には敬虔な信仰心を誇っていた一般の地球教教徒を「狂信者」と嘲っていた模様である。地球教はもともと、西暦時代の地球の権益を取り戻すための方便やまとまりを維持するための主義主張であり、そう言った意味で忠実ではあったのだが、この時代にはすでに手段の目的化が見られておりド・ヴィリエのような人物は異端であった。
しかし、その陰謀も和平交渉成立の可能性が高いとは言え帝国最大の敵であったヤン・ウェンリーや、醜く膝を屈するなら謀反人として死を選ぶ志向があったロイエンタール、穀物庫のネズミに例えられるハイドリッヒ・ラング、それに輪をかけて悪辣で寄生木と言われたヨブ・トリューニヒトなど、結果的に帝国にとって潜在的危険人物を排除したりその切っ掛けを与えてしまったりした側面がある。これらは他でもない他の地球教信徒が指弾しており、人望が厚かったとは到底言えない。本人もそれは理解しており、総代主教の替え玉を用意するなどしていた。
あるいはド・ヴィリエ本人は暗殺や陰謀そのものに快感を見出していたのかもしれない。この点ではフェザーンのアドリアン・ルビンスキーと似た性向であり、仮にド・ヴィリエが総大主教であった場合はお互いよく通じることもできた可能性もある。
結果的には陰謀を巡らすことしかできなかったが、物語上はラスボスの立ち位置であった。ユリアンからは地球教団の幹部として激しく憎まれており、教団についての知識を新王朝に提供することと引き換えに生き残りを画策したものの、新王朝の行く末に責任のないユリアンには無視され、幾度も銃で撃たれて殺されることとなった。
関連人物
- 総大主教 - 上司。地球制圧作戦で生き埋めにされたが、秘匿されて替え玉が用意された。
- ハインリッヒ・フォン・キュンメル - 地球教の手駒。キュンメル事件で結局皇帝ラインハルトを暗殺できなかったことについて、「役にたたん奴」と失望を込めて罵っている。
- ヨブ・トリューニヒト - 地球教の手駒の一つだが、トリューニヒトも地球教を利用しているだけであり、ある意味ではド・ヴィリエと根が通じた人物である。居着いた体制を腐らせる毒薬であり、存在すること自体に意義があったようだ。
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関連項目
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