ナイトラスオキサイドシステム(NOS, Nitrous Oxide System)は、エンジン内部に亜酸化窒素(N2O)を噴射する装置のこと。
この名称は、ホリーパフォーマンス社の子会社であるNOS社の登録商標でもある。
概要
自動車のチューニングの一つで、ナイトロ又はニトロとも呼ばれる。成分は、手術用の麻酔などで耳にするだろう亜酸化窒素であり、起爆性の無い安定した物質である。よく勘違いされるが、少しの衝撃で爆発すると有名なニトログリセリンとは性質も構造も違う。
本来は、戦時中に戦闘機のエンジンにこの亜酸化窒素を用いて、酸素が薄い高高度での飛行を可能にするための装置だった。戦後はしばらく野放し状態だったが、その使用目的が自動車に移行してから、ドラッグレースなどのモータースポーツで採用されてきたことから、徐々にナイトロの関心が高まってきた。通常、大気中に混じっている酸素は全体の約20%程だが、ナイトロはそれを上回る約35%である。当然だが、酸素が多い分、火は強くなるので、噴射することによって酸素吸入量が増した分多くの燃料を燃やして、より大きな出力を引き出せる。さらに、ナイトロは気化する時に周りの熱を奪うので、高回転時における、エンジンの過剰な発熱を抑える働きも期待できる。
ナイトロの主な使用目的は、コーナー脱出時の一時的な加速補助としての役割が大半である。最近ではD1でも搭載しており、ナイトロパワーで振り回す派手なパフォーマンスで観客を魅了している。一般レベルで見ると、このナイトロ自体の搭載は少ない。施工費用もさることながら、そもそも、そこまでしてパワーを求める環境が無いためである。ただ、物好きな人はこれほど魅力的な装置はなく、費用対効果もとてもいいので取り付けたくなる。海外の走り屋は、むしろNOSを積極的に取り付けている。特殊な装置ではあるが、使わない、あるいはナイトロを使い切るかすれば普通のエンジンとなんら変わりないので車検も通せる。また汎用性もあるので、車種を問わず施工できるのも魅力の一つである。
主な噴射方法
ナイトロの噴射方法は、以下の3つに分けられる。下に行くほど、NOSの恩恵が大きくなる(大きな出力を引き出せる)。
ドライショット
ナイトロだけを吸気ポートに噴射させる方法。取り付け方法も簡単で、およそ20ps程度の向上が期待できる。ただし、僅かながら空気も混ざるので燃調が取りにくい欠点がある。
ウェットショット
吸気ポートに、ナイトロガスと燃料を同時に噴射する方法。上記のドライショットに比べると、燃料ポンプを引くなどの取り付けが難しくなるが、燃料も一緒に噴射するので燃調が取りやすい。燃調が決まれば自由に噴射濃度を変えられるので、使う場所次第で50~150ps程度の向上が期待できる。
ダイレクトショット
各シリンダーの吸気ポートに、ナイトロガスと燃料を混合して噴射する方法。ドラッグレースはこの方式が主流。
噴射時期にムラが無く、全てのシリンダーに均等にナイトロガスを噴射できるので、最もNOSの恩恵を受けられる。ただし施工手段が本格的なレーシングカーのチューナーレベルの域で難しく、素人では到底できない。噴射時の出力も250~400ps、場合によっては500ps以上と、格段に上がるため、駆動系の強化は必須。場合によっては、エンジン自体も大きく手を加える必要が出てくる。
入手方法
海外から専用のキットを輸入する手段が大半を占めている。キット一揃えの値段は20万円程度。施工は信頼できるチューナーが良いだろう。ローンを組ませようと直ぐに書類を持ってくるところは避けたほうが良い。
ナイトロガス自体は亜酸化窒素として医療向けにも販売しているので、ガス屋さん(ガソリンスタンドではない)でも一応取り扱っている。ただし、充填方法が液体であるため、空になったボトルを持って行ってもほぼ100%充填してもらえない。充填してもらうには、輸入元に連絡してやってもらうか、専用の充填器を別途買い求める必要がある。
主なキットを下記に記述する。
その他
「パージ」と呼ばれるものがある。これはナイトロガスを出力向上の手段として用いず、目立つ目的で大気中に噴射するものである。どのようなものかは、洋画『ワイルドスピード』を見ていた人なら分かるだろう。
何度も繰り返すが、麻酔効果のあるガスなので、パージ中にこのガスを吸い込むと痙攣を起こす可能性があるので使用には注意が必要である。
関連動画
関連項目
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