ナムラクレア(Namura Clair)とは、2019年生まれの日本の競走馬である。青鹿毛の牝馬。
主な勝ち鞍
2021年:小倉2歳ステークス(GⅢ)
2022年:函館スプリントステークス(GⅢ)
2023年:シルクロードステークス(GⅢ)、キーンランドカップ(GⅢ)
2024年:阪神カップ(GⅡ)
概要
父ミッキーアイル、母*サンクイーンⅡ、母父Storm Catという血統。
父はマイルGⅠを2勝したディープインパクト産駒の逃げ馬。種牡馬としては初年度産駒から狂気の暴走お嬢様メイケイエールを輩出している。ナムラクレアは2年目の産駒。
母はアメリカ産で、アイルランドで7戦1勝の輸入繁殖牝馬。同名の牝馬(内国産)が先に繁殖入りしていたため、区別のため「サンクイーンⅡ」と表記される。
母父ストームキャットは90年代から00年代にかけて世界を席巻した世界的大種牡馬。日本では父ディープインパクト×母父ストームキャットがニックスとしてキズナやラヴズオンリーユーなど多くの活躍馬を出した。
2019年3月30日、浦河町の谷川牧場(主な生産馬にチョウカイキャロル、サクセスブロッケン、ニシノデイジーなど)で誕生。オーナーは「ナムラ」冠名を用いる奈村睦弘(もともと「ナムラ」冠名を使用していた奈村信重の息子。本業は西宮市の歯科医)。
奈村さんちのクレアお嬢様
2歳(2021年)
開業3年目の栗東・長谷川浩大厩舎に入厩し、2021年8月1日、新潟・芝1600mの新馬戦で鮫島克駿を鞍上にデビュー(13.1倍の5番人気)。ポンと好スタートから3番手で先行したが、逃げ馬を捕まえきれず3着。
未勝利の身ながら、中1週でオープン特別のフェニックス賞に挑戦。鞍上は松山弘平。1200mへの距離短縮は好材料と見られ、テイエムスパーダに次ぐ4.1倍の2番人気に支持される。
スタートで出遅れるが松山は冷静に内に切れ込むと、最内枠から逃げに入るテイエムスパーダの真後ろを確保。雨の不良馬場もものともせず、直線でテイエムスパーダを捕まえ、粘る相手を振り切って勝利。
この勝利で中2週で小倉2歳ステークス(GⅢ)へ。鞍上は和田竜二の予定だったが、前日に負傷したため急遽浜中俊に乗り替わりとなり、6.4倍の4番人気。
大外枠から好スタートを切りつつもやや抑え気味に中団につけ、大外をブン回して直線に入ると一気に加速。あっという間に他馬を置き去りにして2馬身差の完勝。連勝で重賞初勝利を飾った。
急遽の騎乗で最高の結果を出した浜中騎手が、以降は彼女の主戦となる。また長谷川厩舎は、これが嬉しいJRA重賞初制覇となった。
続いて1400mに距離を伸ばし、ファンタジーステークス(GⅢ)に参戦。2.5倍の1番人気に支持された。しかしレースでは前半に力んでしまい、馬群の中から進めて4コーナーから抜け出しを図ったものの、一緒に抜け出してきたウォーターナビレラとの追い比べに競り負けて2着。
敗れたものの、浜中騎手は「ポテンシャルはあるし、折り合いひとつで距離もこなせると思います」とコメントし、12月の阪神ジュベナイルフィリーズ(GⅠ)に挑むことになった。同じナムラ軍団のナムラリコリスと並んで最内の1枠1番に入り、やや距離が不安視されたか11.9倍の6番人気。
レースは控えて後ろに下げていき、直線で鋭く追い込んだものの、前の4頭にはやや離されての5着。とはいえ浜中騎手は「こういう競馬ができれば、マイルもこなせます」と前向きに捉えていた。
3歳(2022年)
明けて3歳は桜花賞を目標に、フィリーズレビュー(GⅡ)から始動。唯一の重賞馬として実績は頭ひとつ抜けており、1.7倍の断然の1番人気に支持される。
今回も後ろの方から進め、直線で外に持ち出して追い込み一度は先頭に立ったものの、新馬戦で一緒に走った(4着)サブライムアンセムに内からかわされ、食い下がったものの差し返すには至らず2着。浜中騎手は「落とせないレースで2着。責任を果たせず申し訳ありません」とうなだれた。
迎えた本番の桜花賞(GⅠ)では14.5倍の6番人気。阪神JFに続いて1枠1番に入ったナムラクレアは、今回は下げずに、ウォーターナビレラを斜め前に見ながら4番手で前目のレースを選択。直線で先にウォーターナビレラをかわして抜け出しに行ったが、抜け出しきれずにウォーターナビレラに差し返され、さらに後方から突っ込んで来たスターズオンアースにまとめて薙ぎ払われての3着。見せ場は作ったものの、ナムラ軍団悲願のGⅠ制覇にはあと一歩届かなかった。
浜中騎手は「位置をとって、我慢するやりたい競馬はできました。一瞬やったと思いましたが、ベストはもっと短い距離ですね」とコメント。
というわけでスプリント路線へ舵を切り、函館スプリントステークス(GⅢ)に参戦。3歳牝馬ということで50kgという軽ハンデを貰い、ここまでの実績もあって2.1倍の1番人気に支持される。浜中騎手は50kg以下での騎乗はデビュー2年目以来約14年ぶりで、この騎乗のためにかなりハードな減量をすることになったそうな。
レースは3番手で先行すると、直線であっという間に抜け出して後続を突き放し、2馬身半差をつけて圧勝。勝つべきレースできっちりと重賞2勝目を飾った。
続いて北九州記念(GⅢ)へ。ここは53kgとなったが、ここでも2.1倍の1番人気。しかし今回は大外枠から中団でのレースとなり、直線では馬群を縫うように猛然と追い上げたが届かず3着。浜中騎手は「負けてはいけないレースですし、負けるとは思っていませんでした。自分がうまく誘導できなかったことに尽きます」と反省の弁。
なお、この2戦で14ptを獲得し、この年のサマースプリントシリーズのチャンピオンに輝いた。
迎えた本番のスプリンターズステークス(GⅠ)では、53kgという斤量の優位もあって同じミッキーアイル産駒の先輩・メイケイエールと人気を分け合い、2.9倍の2番人気に支持される。
しかし内有利の馬場で真ん中の枠から中団で内に入れるスペースがなく、そのまま大外を回される展開になってしまい、直線で大外を追い込んだものの最後には伸びが止まって5着。浜中騎手も「今日は枠や展開に左右されるレースだった」と不完全燃焼気味のコメントを残した。
4歳(2023年)
明けて4歳はシルクロードステークス(GⅢ)から始動。古馬となって斤量の優位もなくなり、ハンデ戦ということもあって56.5kgという斤量を背負うことになったこともあり、4連勝中の上がり馬マッドクールに1番人気を奪われ、4.8倍の2番人気となった。
レースは先行勢を見ながら中団で進め、直線入口で前がばらけて進路が開くとぐっと加速、逃げ粘るマッドクールを猛追する。外からはファストフォースが伸びてきて、一度はそのままファストフォースとマッドクールの争いかと見えたが、ゴール板手前でその2頭の間を割って力強く伸びたのがナムラクレア! 最後の一伸びでファストフォースをアタマ差かわしてゴールに飛び込んだ。
斤量不安を一蹴して重賞3勝目。今年から斤量の基準が1kg重くなったとはいえ、牝馬が56.5kg以上で中央平地混合重賞を勝ったのは2014年東京新聞杯のホエールキャプチャ以来だそうである。上がり3Fは昨年のセントウルSのメイケイエールと同じ32秒9を叩き出し、芝1200m重賞勝ち馬の上がりとしては歴代3位タイだとかなんとか。浜中騎手は「次のGⅠと同じ舞台で結果が出せたのは自信になる」とコメント。
というわけで大目標の高松宮記念(GⅠ)。混戦ムードの中、7枠15番という外枠を引いてしまったものの、メイケイエール(4.5倍)に次ぐ5.4倍の2番人気に支持される。
レースは枠なりに中団の外目から進め、直線では馬場の真ん中を通って外から差し切りを図るも、内で馬群の中から抜け出してきたのは前走で破った12番人気のファストフォース! 最後の追い比べで振り切られ、1馬身差の2着に敗れた。奈村家の悲願にあと一歩届かず、浜中騎手は「率直に言えば悔しいです」と無念のコメント。
続いて桜花賞以来のマイル戦となるヴィクトリアマイル(GⅠ)に参戦。スターズオンアース、ソダシ、ナミュール、ソングラインに次ぐ5番人気(15.7倍)に支持されたが、雨の中前目でレースを進めたものの直線残り400mから伸びず見せ場なく8着。やっぱり古馬GⅠレベルではマイルはちょっと長いようだ。
というわけで短距離戦線に戻り、8月のキーンランドカップ(GⅢ)へ。7枠14番の外枠となったものの、ここではさすがに単勝2.4倍の1番人気に支持される。
朝には良馬場だったのが、昼過ぎの突然のゲリラ豪雨で重馬場となったレース本番ではこの外枠がかえって利となり、スタートで中団前目につけると、集団が荒れた内を避ける展開の中、馬場の綺麗な外目を回っていき、直線で逃げ粘るシナモンスティックをあっさり捕まえると1馬身差で完勝。しっかりと実力を見せつけて重賞4勝目、スプリンターズSへと弾みを付けた。
迎えた本番、スプリンターズステークス(GⅠ)では1枠1番を引き、2.9倍の1番人気に支持される。今度こそ奈村家悲願のGⅠへ視界良好……のはずだった。
ジャスパークローネとテイエムスパーダが引っぱり、事前の予想通り前傾ラップのハイペースの流れ。ナムラクレアは先行集団の中につける。しかし3コーナー、進出を開始したいところで真横にいた3番人気のママコチャにブロックされてしまい、先を行かれてしまう。結局この差が致命傷となり、4コーナーでモズメイメイとメイケイエールの間の狭いところを抜けて前を追ったが、ママコチャとマッドクールに1馬身届かず3着。浜中騎手は今回も「悔しいですし、申し訳ない気持ちでいっぱいです」と肩を落とした。
その後は昨年同様、香港には向かわず年内は休養。高松宮記念へ向けて英気を養うこととなった。
5歳(2024年)
明けて5歳は2月の京都牝馬ステークス(GⅢ)から始動。2.8倍の1番人気に支持された。今回は1400mということもあってか、浜中騎手は後方に控えるレースを選択。枠なりに外を回って直線を向き、そのまま大外を猛然と追い込んだが、内の2番人気ソーダズリングとの追い比べにクビ差届かず2着。
本番の高松宮記念(GⅠ)は大混戦ムードの中、ルガルに次ぐ5.4倍の2番人気。小雨で重馬場の中、内の馬群の中でレースを進め、直線では内ラチ沿いから鋭く脚を伸ばし、上がり3F最速の33秒2秒で追い込んだが、同じく内ラチ沿いを上がり2位タイの33秒7で3番手からまとめたマッドクールに並んだところがゴール板、僅かにアタマ差届かずまた2着。3着の香港からの刺客、ビクターザウィナーは3馬身ちぎっており[1]、今回もあと一歩、間違いなくGⅠを獲れる力を示しながら届かなかった。
スプリンターズSへと向け、夏はキーンランドカップ(GⅢ)へ。2.2倍の1番人気に支持され、内の1枠2番からインの前目でレースを進めたが、直線で前のエトヴプレに内ラチ沿いの進路を締められて内ラチに接触してしまい、伸びきれず5着。
そして3度目のスプリンターズステークス(GⅠ)。悲願へ8度目のGⅠ挑戦だが、その鞍上に主戦・浜中俊の姿はなかった。騎乗停止のため横山武史に乗り替わりになってしまったのである。サトノレーヴ、ママコチャ、マッドクールに次ぐ8.2倍の4番人気。
逃げ馬ピューロマジックが超ハイペースで飛ばす中、前目のポジションを取れず後方からのレースに。直線外に出すと上がり最速33秒2で鋭く追い込んだが、前でレースを進めたルガルとトウシンマカオに届かずまた3着。毎回あと少し、あと少しなのにGⅠの栄光に届かない……。
6歳も現役続行が決まり、年内ラストは阪神カップ(GⅡ)。来年の高松宮記念へ向けて、鞍上には新たにクリストフ・ルメールを迎えることになった。ラストランのセリフォスにママコチャやマッドクール、ウインマーベルなど前走とそう変わらないメンバーが揃う中、3.7倍の1番人気に支持される。
今回は外の8枠16番になり、ルメールは枠なりに中団後方の外目に控えた。直線で大外に進路を取ると、ルメールの合図に応えて鋭い末脚が炸裂。上がり33秒3であっという間に前を薙ぎ払い、マッドクールを半馬身かわしてゴール。4年連続の重賞5勝目で、今度こその悲願へ視界良好という形で5歳シーズンを締めくくった。
ナムラ軍団の奈村オーナーは、父の代から50年以上馬主を続けており、ナムラコクオーやナムラビクター、ナムラクレセントなどの活躍馬を出してきたが、未だGⅠは未勝利。奈村家悲願のGⅠ制覇へ向けて、ナムラの愛娘の戦いはまだ続く。
血統表
ミッキーアイル 2011 鹿毛 |
ディープインパクト 2002 鹿毛 |
*サンデーサイレンス | Halo |
Wishing Well | |||
*ウインドインハーヘア | Alzao | ||
Burghclere | |||
*スターアイル 2004 鹿毛 |
*ロックオブジブラルタル | *デインヒル | |
Offshore Boom | |||
*アイルドフランス | Nureyev | ||
*ステラマドリッド | |||
*サンクイーンⅡ 2008 栗毛 FNo.2-d |
Storm Cat 1983 黒鹿毛 |
Storm Bird | Northern Dancer |
South Ocean | |||
Terlingua | Secretariat | ||
Crimson Saint | |||
Fountain of Peace 2002 栗毛 |
Kris S. | Roberto | |
Sharp Queen | |||
Coup de Genie | Mr. Prospector | ||
Coup de Folie |
クロス:Northern Dancer 5×4(9.38%)、Halo 4×5(9.38%)、Hail to Reason 5×5(6.25%)
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関連項目
脚注
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