ネクロノミコン (Necronomicon, 死霊秘法) とは、H.P.ラヴクラフトの作品群に登場する書物である。
後に「クトゥルフ神話」として体系づけられた創作作品において重要な役割を持つアイテムであり、これを以て「世界でも類を見ない知名度を誇る魔導書(グリモワール)」とも言える。
概要
「外なる神」「旧支配者」を始めとした超越的存在の招来や退散の儀式、呪文、アーティファクトの製造法が記載されているとされる。作品によっては人皮や謎の毛皮で装丁されていたり、書物自体が意志を持って所有者を変えるとも。
これを読むものは例外なく狂気に陥るとされ、クトゥルフ神話TRPGのSANチェックにおいてはかなり重い判定が下される。また研究・理解には数年単位の時間が必要で、呪文の習得も難易度が高い。
以下、ラヴクラフトが作品の中で述べた来歴について記述する。
西暦730年、狂える詩人ことアブドゥル・アルハズレッド(アブドゥル・アルハザードとも)により、シリア・ダマスカスで書かれた。
原題は『アル・アジフ(Al Azif)』で、アジフとは魔物の鳴き声と信じられていた、夜に鳴く虫の声を表しているとされる。その後アルハズレッドは白昼の市街で衆人環視の中、見えない怪物に貪り食われたという。
950年、ビザンティウム(現在のコンスタンティノープル)のテオドラス・フィレタスにより、アラビア語からギリシャ語に翻訳。この時『死者の書』を意味する『ネクロノミコン』という表題になった。
その冒涜的な内容から、1050年に正教会総主教・ミカエル1世により焚書処分が下される。しかしすべてが炎に消えた訳ではなく、1228年にはオラウス・ウォルミウスにより、ラテン語に翻訳。しかし僅か4年後、教皇グレゴリウス9世によって発禁処分となった。
その後歴史の闇に消えたかに見えた書は、15世紀になってドイツおよびイタリアで出版。1560年、ジョン・ディーによってラテン語から英語に翻訳されたが製本には至らず、不完全な写本として散逸した。
現存する版本は17世紀に発行されたものが殆どで、ミスカトニック大学付属図書館、パリ国立図書館、ブエノスアイレス大学図書館などに所蔵されている。しかし完全な写本は世界に5部しか存在しない。
派生
ネクロノミコンは名を変え姿を変え、クトゥルフ神話の創作において、様々な形で登場している。
- イスラムの琴(カノーン)
ラヴクラフト「チャールズ・ウォードの奇怪な事件」に登場。美しい装丁がされているが、中身は間違いなくネクロノミコン。ジョセフ・カーウィンが所有し、時間跳躍や神話生物の召喚に用いた。事件後に遺失した筈だが...... - 妙法蟲聲經
殊能将之「黒い仏」に登場。877年に唐で編纂された、仏教経典としてのネクロノミコン。平安時代の僧侶・円載によって日本に持ち込まれたとされる。 - ヴォイニッチ手稿
実在する言語不明の手稿で、ネクロノミコンの不完全な写本であるとされる。近年解読されたというニュースがあったが、真偽はいかに。
ニコニコ動画におけるネクロノミコン
クトゥルフ神話TPGは言うに及ばず、「アル・アジフ」としては『斬魔大聖デモンベイン』のヒロインと同名である事から、そちらの知名度も高い。
また『とある魔術の禁書目録』やゲーム「テイルズシリーズ」の影響で、比較的クトゥルフ神話から遠い層にも知られるようになった。
出版物
その重要度から、ラヴクラフティアンによる再現がたびたび行われている。
1946年、ニューヨークのとある古書店が販売目録に『ネクロノミコン』を追加したところ、新聞報道されるほどの騒ぎになった。ただしあくまでもジョークの為、現物はない。
1973年、『アル・アジフ』が出版。中身はアラビア風の記号で埋め尽くされただけのコレクターズアイテムだったが、売れ行きはそこそこだったらしい。
なお現在でもAmazonでペーパーバック版が販売されている。実卓での小道具に良いかも知れない。
1978年、ジョージ・ヘイによる『魔道書ネクロノミコン』が出版。
ジョン・ディーによる英語版をコンピュータによる解析で解読したという触れ込みの『ネクロノミコン断章』が巻末に記載されており、クトゥルフ神話に「偶然にも」合致した儀式や秘儀について記されている。
2004年、ドナルド・タイスンによる『ネクロノミコン アルハザードの放浪』が出版。ラヴクラフトの小説に登場する記述を全て取り入れた『ネクロノミコン完全版』。完成度の高さもあり、現在でも中古で3万円近いプレミアがついている。
これとは趣が異なるが、『エイリアン』のデザインで知られるH・R・ギーガーの画集にも『ネクロノミコン』のタイトルが用いられている。
関連動画
他にも、以下のタグ検索などを利用するのが有効である。
→クトゥルフ
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→もっと崇拝されるべき
関連商品
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関連項目
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