ノストラダムス(1503-1566)とは、ルネサンス期フランスに存在した詩人、学者である。
多くの人には予言者として認知されていると思われるが、これについても本稿で説明する。
概要
16世紀のフランス出身の詩人、医師、科学者、料理研究家。
本名は「ミシェル・ノートルダム(Michel de Nostredame)」。
『ミシェル・ノストラダムス師の予言集』を始めとする様々な著作を発表し、その中には「化粧品とジャム論」に始まる料理関連の著作もいくつか存在する。日本では「ノストラダムスの大予言」というタイトルの著書が知られているだろう。
信奉者もまた現在も少なくない数存在しており、彼の残した予言を巡って様々な論争が繰り広げられてきた。
アヴィニヨン大学で学業に腐心したことに始まり、当時では一流の博識を持ち合わせていた事でも知られる。科学者や
医師としてルネサンスを担った一人であるとされる一方、権力者に取り入るのが上手い食通でもあるという人間らしさもあり、また医師として、南フランスでペストが流行した時は自らが感染するかもしれない事も顧みず患者を治療するべく奔走したという英雄的な一面もある。しかしペストによって彼は妻と子供を一度に失ってしまい、「医者でありながら自分の家族すら救えなかった」という無力感から各地を放浪するようになる。
その後は、サロン=ド=プロヴァンス地方へ定住するようになるまでに各地へ様々な伝説を残していたようである。
(この放浪中にまつわる記録が残っていない、というのが大きいだろうが)
ノストラダムスにまつわる俗説
- よく名前を「ミシェル・ド・ノストラダムス」と表記されるが、最初に述べた通り「ミシェル・ノートルダム」が本名であり、これは誤った表記である。まず、ノストラダムスとは本名である「ノートルダム」をラテン語風に表記を変えたものであるため、言うなれば彼が著作活動の際に用いていたペンネームなのである。次に、名前の間に入っている「ド(de)」は主にフランス人の姓に多く見られるものの、ラテン名の姓にこの名前は付けない。そして何より、ノストラダムスは自らの著書に「ド(de)」を入れた名前の表記を一切行っていない。
「ミシェル・ド・ノストラダムス」なる名前が広まったのは同じ時代に存在したノストラダムスの偽者(ノストラダムス2世)が元となったためと言われている。 - またノストラダムスが非凡な才能を持っている事を裏付けるエピソードに「ノストラダムスは在学時代(15歳頃)にコペルニクスの地動説を知っていた」というものもある。こちらについても、裏付けとなる資料や記録は無いので創作であると思われる。仮に事実だとしても、当時のミシェル少年の発言を誰が記録に残していたというのか・・・
これに限らず「アンリ二世の死を予言した」「白豚と黒豚の違いを見抜いた」「処女喪失を見破った」等など、ノストラダムスには予知能力を証明するような裏付けの取れない伝説が数々流布しているが、こういった話を信じる事は山本弘氏の著書に曰く「大岡裁きや一休さんのとんち話を実話だと信じてるようなもの」。 - 占星術師として紹介される機会も多いが、当時と現在では占星術に対する認識が異なる事に留意されたい。一般的にはあまり知られていないものの、当時の占星術は医学や哲学と密接に結びついている学問であって、医学における治療技術にも占星術が用いられていた程である。中世時代の知識人にとって占星術は必修科目の1つであった。
ちなみに言うとノストラダムスの本職はあくまでも「医者」であって、少なくとも「占星術師」ではない。 - 日本を始めとして世界中で「ノストラダムスの大予言」が一時期話題となり、世界の滅亡を仄めかす騒ぎにまで発展したのは記憶に新しいだろう。こちらについては後述。
ノストラダムスの大予言
1973年頃に五島勉による著作「ノストラダムスの大予言」が発表されると、当時の「人類滅亡」ブームも手伝い大ベストセラーとなる。これに端を発し、数多の「ノストラダムス研究家」達によってノストラダムス関連の本が出版され、その結果『1999年に恐怖の大王が降臨し、人類は滅亡する』という予言のみが一人歩きを始めるに至る。
ノストラダムスの予言を見てみると解るのだが、予言の大半は様々な言語が散りばめられて構成されているので言葉の意味すら解らない文章が多い。そして大多数の「予言解釈」は、『事件が発生した後に「ノストラダムスはこの事件を予言していた!」とこじつけている』だけに過ぎない。五島勉の著書にしても、資料が無いエピソードを創作して大幅に膨らませているというのが真相で、内容を調べてみるとフィクション(デタラメともいう)である事が解る。
かつて、オウム真理教が地下鉄サリン事件を引き起こす引き金になったのもこの著書が発端といわれるが・・・?
- 「ノストラダムスの大予言」なるものの正体は、ノストラダムスの予言のテクニックに踊らされた自称「研究家」達がよってたかって築き上げた、壮大な妄想の城にすぎないのである。
- 断言しよう。ノストラダムスの詩を日本人が理解するのは、まず不可能に近い。フランス人にさえ困難だろう。日本のノストラダムス本の著者の中には、ろくにフランス語を知らず、他の訳者が訳した文章を元に「解読」している者もいるありさまだ。
- ちょっと想像してみてほしい。室町時代末期(ノストラダムスと同時代)の歌人が書いた和歌を、現代のフランス人が和仏辞典のみを参考にして解読できるだろうか?
- さらに呆れたことに、日本人のノストラダムス研究家の大半はフランス語が読めないのである。「英語が読めないシェークスピア研究家」「日本語が読めない紫式部研究家」といったものを想像してみれば、これがいかに奇怪な現象であるかご理解頂けるだろう。
- ただのインクの染みが人によっては「チョウチョ」に見えたり、「悪魔の顔」や「抱き合っている男女」に見えたりもする。それと同じで、曖昧な言葉で書かれているノストラダムスの予言詩は読む人間の主観によって、どのようにでも解釈できてしまう。
- この2000年間、数え切れないほどの宗教家、占い師、予言者らが世界終末の日を予言し、ことごとくはずし続けている。彼らの勝率は0パーセントだ。にも関わらず、彼らの言葉を信じて人生を棒に振る愚か者は後を絶たない。
- 核戦争や環境問題による人類滅亡の危機は依然として存在するが、それは人間の努力によって回避できる問題だ。だが予言者や予言の信者達はそうは考えない。彼らにとって未来は決定済みであり、努力しても変更不可能なのだ。それどころか、世界が滅びるのは喜ばしい事なのだ。
- レーガン政権下で内務長官だったジェームズ・ワットは、森や川の汚染を心配する連邦下院の委員会メンバーへ向かって、「自然破壊など大して気にならない」と無責任に言い放ったという。「イエスの再臨まであと何世代もかかるわけじゃないですからな」と。
そう、終末予言を信じる人間が多くなるほど、世界が本当に終末を迎える確率は高くなるのだ。だからこそ、次の事実を全人類が肝に銘じる必要がある。
「予言は当たらない。予言を信じるな」
近年では「2012年に人類は(今度こそ)滅亡する」という説が流布していた事もあった。その結果についてはここに記述するまでもないだろう。
もっともこちらについては、ノストラダムスの予言と直接の関係は薄いものの展開されている事態は上記と同様の現象にほかならない。そして、当記事をご覧になっているあなたがもし、これと同種の予言を見かけたら、そのあかつきには声を揃えて言ってやろう。
この嘘つき!!
参考→ 「wikipedia:ノストラダムス現象」
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