ノーベル文学賞(スウェーデン語:Nobelpriset i litteratur)とは、文学の分野で最も優れた業績をあげた人物に授与される賞である。
概要
ノーベル賞は、スウェーデンの化学者アルフレッド・ノーベルの遺志によって設立された、国際的な賞である。今日では、世界最高の権威性を備えた賞と見做されている。年に一度、物理学、化学、生理学・医学、文学、平和、そして経済学の6つの部門において、最も人類に貢献した人物・団体に贈られる。
このうち、ノーベル文学賞は、文学の分野において最も傑出した作品を創作した人に授与される。文学はその性質上複数人による業績であると考えづらいため、原則定数は1名のみとなっている。選考は、スウェーデンのストックホルムにあるスウェーデン・アカデミーの選考委員会による。受賞者の発表は10月上旬、授賞式はアルフレッド・ノーベルの命日である12月10日。
ノーベル賞のメダルの表側には、各賞共通でアルフレッド・ノーベルの横顔、名前、生没年が彫刻されている。ノーベル文学賞のメダルの裏側には、ギリシャ神話の女神であるミューズが歌う姿と月桂樹の下に座りながらそれを書き留める若い男がデザインされている。メダルは重さ約200g、直径66mm。1980年以前は純金製のメダルだったが、現在は傷つきにくい18金を基材として24金でメッキが施されたメダルが授与されている。
これまでにボリス・パステルナーク(1958年)とジャン=ポール・サルトル(1964年)が受賞を辞退している。ただし、前者はソ連の圧力で辞退を余儀なくされたものであり、没後に遺族がメダルを受け取っている。
1914年は第一次世界大戦の影響により中止され、1915年の受賞者は翌1916年にまとめて発表された。1940年から1943年までは第二次世界大戦の影響により中止され、1944年の受賞者は翌1945年にまとめて発表された。2018年はスウェーデン・アカデミー会員の夫によるセクハラ問題および情報漏洩により行われず、同年の受賞者は翌2019年にまとめて発表された。
日本国籍の受賞者は、川端康成(1968年)、大江健三郎(1994年)の2名。日本出身で受賞時に外国籍の受賞者は、カズオ・イシグロ(2017年)の1名。海外の受賞者として、ウィンストン・チャーチル、ボブ・ディランなどが知られている。
一覧
歴代のノーベル文学賞受賞者の一覧。
日本のノーベル文学賞受賞者は太字で記載する。
- 1901年:シュリ・プリュドム
- 1902年:テオドール・モムゼン
- 1903年:ビョルンスティエルネ・ビョルンソン
- 1904年:フレデリック・ミストラル、ホセ・エチェガライ・イ・アイサギレ
- 1905年:ヘンリク・シェンキェヴィチ
- 1906年:ジョズエ・カルドゥッチ
- 1907年:ラドヤード・キップリング 『ジャングル・ブック』
- 1908年:ルドルフ・クリストフ・オイケン
- 1909年:セルマ・ラーゲルレーヴ 『ニルスのふしぎな旅』
- 1910年:パウル・フォン・ハイゼ
- 1911年:モーリス・メーテルリンク 『青い鳥』
- 1912年:ゲアハルト・ハウプトマン
- 1913年:ラビンドラナート・タゴール
- 1914年:受賞者なし
- 1915年:ロマン・ロラン
- 1916年:ヴェルネル・フォン・ヘイデンスタム
- 1917年:カール・ギェレルプ、 ヘンリク・ポントピダン
- 1918年:受賞者なし
- 1919年:カール・シュピッテラー
- 1920年:クヌート・ハムスン
- 1921年:アナトール・フランス 『赤い百合』(橋の下の例え話)
- 1922年:ハシント・ベナベンテ
- 1923年:ウィリアム・バトラー・イェイツ
- 1924年:ヴワディスワフ・レイモント
- 1925年:ジョージ・バーナード・ショー
- 1926年:グラツィア・デレッダ
- 1927年:アンリ・ベルクソン
- 1928年:シグリ・ウンセット
- 1929年:トーマス・マン
- 1930年:シンクレア・ルイス
- 1931年:エリク・アクセル・カールフェルト
- 1932年:ジョン・ゴールズワージー
- 1933年:イヴァン・ブーニン
- 1934年:ルイジ・ピランデルロ
- 1935年:受賞者なし
- 1936年:ユージン・オニール
- 1937年:ロジェ・マルタン・デュ・ガール
- 1938年:パール・S・バック
- 1939年:フランス・エーミル・シランペー
- 1940年:受賞者なし
- 1941年:受賞者なし
- 1942年:受賞者なし
- 1943年:受賞者なし
- 1944年:ヨハネス・ヴィルヘルム・イェンセン
- 1945年:ガブリエラ・ミストラル
- 1946年:ヘルマン・ヘッセ 『少年の日の思い出』
- 1947年:アンドレ・ジッド
- 1948年:T・S・エリオット 『キャッツ(ミュージカル)』
- 1949年:ウィリアム・フォークナー
- 1950年:バートランド・ラッセル 『ラッセルのパラドックス』、『世界五分前仮説』
- 1951年:ペール・ラーゲルクヴィスト
- 1952年:フランソワ・モーリアック
- 1953年:ウィンストン・チャーチル
- 1954年:アーネスト・ヘミングウェイ
- 1955年:ハルドル・ラクスネス
- 1956年:フアン・ラモン・ヒメネス
- 1957年:アルベール・カミュ 『シーシュポスの神話』
- 1958年:ボリス・L・パステルナーク(辞退)
- 1959年:サルヴァトーレ・クァジモド
- 1960年:サン=ジョン・ペルス
- 1961年:イヴォ・アンドリッチ
- 1962年:ジョン・スタインベック
- 1963年:イオルゴス・セフェリス
- 1964年:ジャン=ポール・サルトル(辞退)
- 1965年:ミハイル・ショーロホフ
- 1966年:シュムエル・アグノン、ネリー・ザックス
- 1967年:ミゲル・アンヘル・アストゥリアス
- 1968年:川端康成
- 1969年:サミュエル・ベケット 『モロイ』
- 1970年:アレクサンドル・ソルジェニーツィン
- 1971年:パブロ・ネルーダ
- 1972年:ハインリヒ・ベル
- 1973年:パトリック・ホワイト
- 1974年:エイヴィンド・ユーンソン、ハリー・マーティンソン
- 1975年:エウジェーニオ・モンターレ
- 1976年:ソール・ベロー
- 1977年:ビセンテ・アレイクサンドレ
- 1978年:アイザック・バシェヴィス・シンガー
- 1979年:オデッセアス・エリティス
- 1980年:チェスワフ・ミウォシュ
- 1981年:エリアス・カネッティ
- 1982年:ガブリエル・ガルシア=マルケス
- 1983年:ウィリアム・ゴールディング
- 1984年:ヤロスラフ・サイフェルト
- 1985年:クロード・シモン
- 1986年:ウォーレ・ショインカ
- 1987年:ヨシフ・ブロツキー
- 1988年:ナギーブ・マフフーズ
- 1989年:カミーロ・ホセ・セラ
- 1990年:オクタビオ・パス
- 1991年:ナディン・ゴーディマー
- 1992年:デレック・ウォルコット
- 1993年:トニ・モリソン
- 1994年:大江健三郎
- 1995年:シェイマス・ヒーニー
- 1996年:ヴィスワヴァ・シンボルスカ
- 1997年:ダリオ・フォ
- 1998年:ジョゼ・サラマーゴ
- 1999年:ギュンター・グラス
- 2000年:高行健
- 2001年:V・S・ナイポール
- 2002年:ケルテース・イムレ
- 2003年:J・M・クッツェー
- 2004年:エルフリーデ・イェリネク
- 2005年:ハロルド・ピンター
- 2006年:オルハン・パムク
- 2007年:ドリス・レッシング
- 2008年:ジャン=マリ・ギュスターヴ・ル・クレジオ
- 2009年:ヘルタ・ミュラー
- 2010年:マリオ・バルガス=リョサ
- 2011年:トーマス・トランストロンメル
- 2012年:莫言
- 2013年:アリス・マンロー
- 2014年:パトリック・モディアノ
- 2015年:スヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチ 『戦争は女の顔をしていない』
- 2016年:ボブ・ディラン
- 2017年:カズオ・イシグロ
- 2018年:オルガ・トカルチュク
- 2019年:ペーター・ハントケ
- 2020年:ルイーズ・グリュック
- 2021年:アブドゥルラザク・グルナ
- 2022年:アニー・エルノー
- 2023年:ヨン・フォッセ
- 2024年:韓江
記録
関連生放送
関連項目
- ノーベル賞
- ノーベル物理学賞
- ノーベル化学賞
- ノーベル生理学・医学賞
- ノーベル文学賞
- ノーベル平和賞
- ノーベル経済学賞
- アルフレッド・ノーベル
- 文学
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