ハイブリッドカーとは、hybrid(2つ以上のものを組み合わせる)とcar(車)で、複数の動力源を使用する車である。
概要
狭義のガソリンと電気の組み合わせの自動車を、日本では一般的に指す。狭義のハイブリッドカー初の実用・市販化車は、1997年10月の初代トヨタ・プリウス。家庭用電源からコンセント・電源コードを介して、蓄電池に直接充電もできる形式はプラグインハイブリッドカーと呼ばれる。
2代目ホンダ・インサイトや3代目トヨタ・プリウスの発売した2009年以降、最安グレードの車両本体価格が200万円台半ばから200万円前後に大きく下がったことや、ガソリン価格高騰による低燃費車への注目もあって、ハイブリッドカーが一気にメジャーとなった。これに伴い、欧米自動車メーカーからもハイブリッドカーへの参入・発売が相次ぐようになった。
現状、トヨタ自動車やホンダ(本田技研工業)が1.3~1.8Lクラスの小型車のハイブリッドカーの市販化に成功し、特にトヨタは高級車から小型車まで幅広く揃える一方で、欧州勢などは高級車中心に展開する状況になっている。
低燃費やエコロジー性、また燃料供給インフラがガソリン同様に使えることなどから、ハイブリッドカーを評価・注目される一方で、平均車速の高い地域ではエンジン稼働率が高くメリットが薄い・構造の複雑さに起因する高価格化を欠点・否定的に見る向きもある。
また、通常のエンジンを搭載した車種より製造・廃棄時の環境への負荷が高いこと、バッテリー技術がまだ発展途上であるため車両の整備・廃棄サイクルも通常の車両より短くなるなどの理由から、車全体としてのライフサイクルを考慮すると本当にエコロジーであるかには懐疑的な声も大きい。
種類
以下、ハイブリッドカーの種類のうち、主だったものを挙げる。
現在最もポピュラーなハイブリッドカー。ひとくくりに紹介されやすいが、モーターや電池の性能等は車種によって大きく異なる。
エンジンとモーター両方を駆動力として用い、エンジン単独・エンジンとモーター併用・モーター単独駆動の3パターンを自動で使い分ける形式が代表的であるが、モーターのみでの駆動不可な車もある。
また、発電だけエンジンを使用して駆動にはモーターを用いる車もある。
日本国内一般には認知度が低いが、ディーゼルの割合の多い市場(バス・トラック・鉄道など)では、こちらの方がメジャーなハイブリッドカーである。従来のディーゼルエンジンと比べて燃費は約10~20%向上、窒素酸化物の排出量は約50~60%低減、PM粒子状物質や黒煙の排出量は85~90%も低減されていると言われている。
2016年5月現在、日本では商用車を除いてメルセデス・ベンツ Sクラス(W222)にディーゼルハイブリッドモデル(S300h)を設定している。
また、機構的な種類の他に「マイルドハイブリッド」と「ストロングハイブリッド」という区別のされ方をすることがある。これは、モーターなどのシステムで扱う電圧によって分けられるもので、「マイルド」の場合12V~48V、「ストロング」の場合100V~200Vが主な使用電圧になっている。
「ストロング」はモーターの能力を引き出して大きな燃費低減効果を得られる一方、電気系統のバッテリー、インバーター、ケーブル、ハーネスなどが強力な絶縁性と安全性を確保した高価なものとならざるを得ない。そして、「マイルド」は「ストロング」ほどの燃費低減効果を得られないが、電気系統の各機材が簡易なもので済むため、コストが大幅に下がる。下記のスズキのS-エネチャージは代表的なマイルドハイブリッドシステムである。
ハイブリッドカーの構造
ハイブリッドカーは主に3つの駆動方式がある。
- パラレル式ハイブリッド
メーカー各社のハイブリッドシステムの呼び方と構造
トヨタ自動車
- THS (TOYOTA Hybrid System) - スプリット方式
- モーターが発電用と駆動(走行)用で2つあり、動力分割機構で自由に動力を分けられる。変速は発電用モーターと駆動用モーターの回転を利用して変速する。初代プリウスに搭載されたハイブリッドシステム。
- このハイブリッドシステムはクラッチも物理的な変速機が搭載されていない。そう聞くと「じゃあ何で走れるの?」と思うでしょう。答えはプラネタリーギアにあります。エンジンが回ると発電機も回る。その発電機の負荷(発電)が強ければ強いほど駆動輪にエンジンの力が伝わります。この発電機の負荷量を調節し、擬似的な変速を行っている。トヨタはこれを電気式CVTと呼んでいる。ニュートラル制御は発電機、モーターともに電気を遮断することによって実現している。ここで気づいた人もいるかも知れません。これNレンジにしたら一切充電できなくね?と。もちろん充電できません。だから渋滞などで長時間停車中にNレンジにしていたらNレンジ以外に入れるよう警告灯と警告音がなります。これはほぼ同じ構造をもつTHS-IIも同様です。バックギアも当然搭載されておらず、モーターを逆回転させて実現している。
- THS-C (TOYOTA Hybrid System-CVT) - シリーズ・パラレル式
- 通常のベルト式CVT(Super CVT)を搭載した電気式の四輪駆動ハイブリッドシステム。セルモーター兼発電機[2]、フロントモーター、後輪モーターの3つのモーターを搭載。このハイブリッドシステムからエンジン停止中でもエアコンが稼働するようになった。(2Wayコンプレッサー)このシステムを搭載した車両では、ハイブリッドバッテリーを活かしたAC100V 1500Wまで大容量のインバーターが標準搭載。(東日本大震災の時に大いに役に立ったという。)
- このハイブリッドシステムはプリウスなどのTHS、THS-IIとは違い、あくまでエンジンメインで発進と時速60キロまでの一定速度走行ならエンジンを停止しモーター走行が可能。
- 採用車種は初代エスティマハイブリッド、初代アルファードハイブリッド[3]。このシステムを搭載した車種はリアに「E-Four」のエンブレムが付く。どう見てもトヨタの先行量産車です本当にありがとうございました。
- THS-II(TOYOTA Hybrid System-II) - スプリット式
- トヨタのハイブリッドカーで主流のハイブリッドシステム。初代THSとの違いは、可変電圧システムの採用で駆動電圧が270V(初代プリウス)から650V[4]まで上げられ[5]、モーターも出力を大幅に強化された。
このシステムを搭載した車種には後方リアに「Hybrid Synergy Drive」のエンブレムが付く。
また、2代目エスティマハイブリッドや2代目アルファードハイブリッドなどの4WD車はTHS-Cと同じく後輪モーターが付き、一部車種には「E-Four」のエンブレムが付く[6]。
ちなみに、マツダから2013年に発売された3代目アクセラ(セダン・ハイブリッド車)にもTHS-IIが搭載されている。 - THS-IIは同じTHS-IIシリーズでも世代があり、初期世代から第5世代まであり、システムは初期世代と比べて大幅に進化しているが、THS-IIのままでIIIやIVとなっていない。
- 基本システムはそのままで大容量リチウムイオンバッテリーと外部充電機能を搭載したプラグインハイブリッドモデル(PHV)もあり、外部電源でバッテリー充電できる機能もある。また外部電源接続時には外部電源からエアコンやカーオーディオなどを動作させる「マイルーム機能」が搭載されている。
- トヨタのハイブリッドカーで主流のハイブリッドシステム。初代THSとの違いは、可変電圧システムの採用で駆動電圧が270V(初代プリウス)から650V[4]まで上げられ[5]、モーターも出力を大幅に強化された。
本田技研工業
日産自動車
スズキ
- S-エネチャージ(マイルドハイブリッド) - パラレル式
- モーター機能付発電機[8]と助手席下に搭載されているリチウムイオン電池を使用し、エンジンの始動、加速時のアシスト、回生を行う。
なお車両登録上ハイブリッド車として分類されているが、スズキでは軽自動車の場合は「ハイブリッド」とは呼ばず[9]この呼称を使い、普通車の場合は「マイルドハイブリッド」と呼んでいる。構造としてはトヨタのTHS-M、日産のS-HYBRIDに近い。
このシステムを採用してる車種には後方リアに「S-ENE CHARGE(軽自動車)」[10]もしくは「HYBRID(普通車)」のエンブレムが付く。
元々は『エネチャージII』という名称で、コンセプトカーの「クロスハイカー」に搭載されるハイブリッドシステムだった。
- モーター機能付発電機[8]と助手席下に搭載されているリチウムイオン電池を使用し、エンジンの始動、加速時のアシスト、回生を行う。
三菱自動車工業
- プラグインハイブリッドEV - パラレル式
ダイハツ工業
ハイブリッド車特有の運転技術
- プリウスなどのエンジンとタイヤを切り離せるハイブリッド車は減速に回生ブレーキを使っているため初めてハイブリッド車を運転した人はブレーキングに違和感を覚えることが多い。特に普通の自動車の感覚で踏むとガツンとなる。(俗に言うカックンブレーキ)ブレーキを踏むときはなるべくやさしくじんわり踏まないと後続車がびっくりします。また停車直前になるとブレーキの効きが変わる(電車で言う回生失効)事があり、違和感を感じることがある。またこの現象が原因でブレーキが効かないというクレームが多発し現在では回生失効前にブレーキパットが作動するようになった。
- ハイブリッドカーは駆動用バッテリーの充電には主に減速エネルギー(回生ブレーキ)から得ているため、なるべく先の交通状況を読んで確実に停車しそうならかなり手前からゆるやかに速度を落としながら停車すると効率よくバッテリーが充電でき、燃費が良くなる傾向があります。ですが、後続車がいる場合そのようなことをすると後続ドライバーを(#^ω^)ビキビキさせてしまうことがあるので空気と周りの交通状況を読んで実践すること。
主なハイブリッドカー一覧
日本メーカーかつ国内販売車種(生産終了車種も含む)
ガソリン+電気
- トヨタ自動車
- トヨタ・アクア
- トヨタ・アルファード (ハイブリッド車)
- トヨタ・エスクァイア
- トヨタ・エスティマ (2代目~:ハイブリッド車)
- トヨタ・カムリ (9代目〜)
- トヨタ・カローラアクシオ (2代目~:ハイブリッド車)
- トヨタ・カローラフィールダー (3代目~:ハイブリッド車)
- トヨタ・クラウン (11代目:THS-M搭載車、13代目〜:ハイブリッド車)
- トヨタ・クルーガー (ハイブリッド車)
- トヨタ・SAI
- トヨタ・シエンタ (2代目〜:ハイブリッド車)
- トヨタ・ノア (3代目〜:ハイブリッド車)
- トヨタ・ハリアー (2代目〜:ハイブリッド車)
- トヨタ・ヴェルファイア (ハイブリッド車)
- トヨタ・ヴォクシー (2代目〜:ハイブリッド車)
- トヨタ・ライズ(ダイハツ・ロッキーとは共同開発の兄弟車:e-SMART HYBRID車)
- トヨタ・RAV4(5代目~:ハイブリッド車)
- トヨタ・RAV4PHV
- トヨタ・プリウス (PHV仕様は2代目〜)
- トヨタ・プリウスα
- レクサス・IS(h)
- レクサス・RX(h)
- レクサス・RC(h)
- レクサス・NX(h)(PHV仕様は2代目~)
- レクサス・LS(h)
- レクサス・GS(h)
- レクサス・CT
- レクサス・HS
- レスサス・UX(h)
軽油(ディーゼル)+電気
外国車
※のあるものは日本ディーラー・日本総輸入代理店での正規取り扱いを行っていない。
ハイブリッドレースマシン
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豆知識
ハイブリッドカーはのろまのイメージがあるが、バッテリーの残量が十分にあれば下手なスポーツカー顔負けの加速力がある。モーターはエンジンと違って加速に強いが、逆に高速度に弱い。
よく某質問サイトで、駆動用バッテリーは車検毎に交換しなければいけないとか3〜4年しか持たないしバッテリー交換に3〜40万かかると答えるユーザーが多いが、初代プリウスならまだしも最近のハイブリッドカーはハズレを引かなければ最低10年、10万キロまで持つ[13]。
モーター制御にVVVFインバーターを搭載しているので、電車好きな人が乗ればVVVFインバーターの音で昇天するかもしれない。
関連項目
- ハイブリッド
- エコロジー
- 車両接近通報装置シリーズ
- 低公害車
- 低排出ガス車
- 圧縮天然ガス自動車 (CNG自動車)
- LPG自動車
- 水素自動車
- 太陽電池自動車 (ソーラーカー)
- 電気自動車
- 燃料電池自動車
- メタノール自動車
- レンジエクステンダー
脚注
- *エンジンとモーターが切り離せる構造かどうかによる。ホンダのIMAシステム搭載車は基本モーター単独走行は不可。極低速域のみ可能。
- *モーター走行中のエンジン始動用と補助発電専用。
- *これらは2代目以降はTHS-IIを搭載。
- *2代目プリウスでは500V。
- *電池の電圧は200V前後。
- *2014年7月に発表された14代目クラウンのハイブリッドフル4WD車は除く。
- *13代目スカイライン、2015年2月にマイナーチェンジしたフーガを除く。
- *スズキではISGと呼んでいる。
- *主要諸元表には『ハイブリッドシステム』と明記されている。
- *マツダにOEM供給されている軽自動車は除く。
- *スズキではMGUと呼んでいる。
- *最近発売された車両は車両接近通報装置が装備されており、歩行者が気づけるように配慮されている。また2018年からの新車から車両接近通報装置の搭載と強制動作が法律により義務化されており、現在発売されている新車には音声を一時停止するスイッチはなくなり、音声が消すことができなくなっている。
- *初代プリウスはバッテリー設計、制御に問題がありトヨタは廃車にするまで駆動用バッテリーの永久無償交換を実施している。
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