ハインリッヒの法則(英語: Heinrich's law)とは、労働災害に関する法則(経験則)である。
概要
アメリカの保険会社で管理・調査部門の監督補佐を務めていたハーバート・ウィリアム・ハインリック(Herbert William Heinrich, 慣例によりハインリッヒと表記されることが多い)による1931年の論文『産業事故の予防、そのある科学的着手』(Industrial Accident Prevention, a Scientific Approach)にて、顧客企業から保険会社に寄せられた数千件もの災害報告を分析して得られたものとして提唱された経験則の総称で、例えば以下のようなものがある。
- 1:29:300 の法則(Heinrich's 1-29-300 ratios) - 別名「ハインリッヒの(災害)三角形」。後述
- 88:10:2 の法則(Heinrich's 88-10-2 ratios) - 事故の(直接的・間接的)原因のうち88%が不安全行動(unsafe acts)、10%が不安全な機械的・身体的状態(unsafe mechanical/physical conditions)、残り2%が予防不可能(unpreventable)
現在も「行動に基づく安全」(BBS, Behavior-Based Safety)の基礎理論として各分野で重視され、ハインリックともども半ば神聖視されている一方で、データや論拠の不明瞭さなどに対する批判も少なくはない。
ハインリッヒの災害三角形
横線で区切られた三角形で図示されることから「ハインリッヒの(災害)三角形/ピラミッド」(Heinrich's triangle/pyramid)」等と呼ばれるもので、「ハインリッヒの法則」といえばこのハインリッヒの三角形を指すことが多い。
「1つの重大な事故(accident that causes major injury)の裏には29の軽微な事故(accidents that produce minor injuries)が、そして300のヒヤリ・ハット(accidents that result no injuries)がある」
労働災害防止のバイブルなどによく引用される。ヒヤリ・ハットとはその名の通り「ヒヤリ、ハッとする」事態のことで、事故ではあるが幸い災害には至らなかった事案である。
様々な用語があるが、医療や建設、製造、情報処理など分野によって微妙に定義が異なる場合があるが、以下には医療現場における主な用語の定義を記す。なお、これらは日本で独自に発展していったもので、英語での本来の意味・用法とも異なる点に注意。
アクシデント
重大な事故。重大事故に至る事案が発生し、実際に事故につながった事例。「1」に含まれる。
インシデント
潜在的事例。重大事故に至る可能性のある事案が発生したが、事故には繋がらなかった事例。「300」に含まれる。
ヒヤリ・ハット
人的なエラーが発生したが、結果的には患者に不利益が生じなかった事例。これも「300」に含まれる。
ちなみに
爆笑問題のラジオ番組「爆笑問題カーボーイ」では「この法則はあらゆるものに当てはまるのでは?」ということで
「300:29:1」に引っ掛けた三段落ちのネタコーナーが作られた。これをきっかけに「ハインリッヒの法則を世に広めた」
として、2003年にはNPO法人日本リスクマネージャー&コンサルタント協会から爆笑問題へ賞が贈られた。
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関連項目
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