ハゲタカとは、
- 鳥類のハゲワシ類またはコンドル類の俗称。実際にハゲタカという鳥は存在しないので注意。腐肉食を習性とし、そこからハイエナと並んで「他者から利益を強奪する」「困窮した者を食いものにする」象徴としてしばしば使用される。
- バイアウト・ファンド(プライベート・エクイティ・ファンド)の通称。経営不振に陥った企業・銀行などに投資して、経営に深く関与し、企業価値を高めたうえで、その企業を売却することで利益を得ることを目的とする。「ハゲタカ」の異名は、こうしたファンドが英語圏で"Vulture Fund"と呼ばれていたことに由来する。1.の比喩表現の一例といえる。
- 2.をテーマとした真山仁の経済小説、それを原作とするNHK土曜ドラマ、および続編映画。本稿で記述する。なお本稿ではテレビドラマ版を中心に取り扱う。
概要
真山仁の経済小説『ハゲタカ』『バイアウト』(後者は後に『ハゲタカII』に改題)を原作とし、NHK土曜ドラマとして2007年に放映された。全6話。
国内での受賞歴のほか、海外でも第59回イタリア賞シリーズドラマ部門での受賞歴がある。
第1話では、バブル崩壊後の「失われた10年」と呼ばれた平成不況に陥った日本が舞台。
外資系投資ファンド「ホライズン・インベストメントワークス・ジャパン」の代表・鷲津政彦(大森南朋)が瀕死の日本企業を次々に買収し「ハゲタカ」と呼ばれるようになる姿と、大手銀行「三葉銀行」のエース・芝野健夫(柴田恭兵)が不良債権の処理に奔走する姿が描かれる。
第2話以降は数年刻みで状況が変化していき、最終的には2000年代中頃まで進行する。
しかし時代の変遷にもかかわらず、鷲津と芝野の二人は、形を変えながらも幾度となく相まみえることとなる…。
放送時から好評を得ていた本作だが、その2年後に起きたリーマンショックにより再び脚光を浴びた。
リーマンショックの影響は大きく、映画版の脚本が大幅に修正される事態となった。さらに映画版公開に合わせ、本作と『NHKスペシャル マネー資本主義』が、フランスの経済学者ジャック・アタリへのロングインタビューを交えて再放送された。
主な登場人物(ドラマ版)
設定は第1話時点のもの。
鷲津政彦(大森南朋)
外資系ファンド「ホライズン・インベストメントワークス・ジャパン」の代表。
大学卒業後、三葉銀行に入行。当時の上司・芝野健夫とともに法人営業担当していたが、とある出来事をきっかけに、わずか半年で三葉銀行を退社。その後米国へ渡り「ホライズン・インベストメントワークス」の社員として数多くの企業買収を手がけてきた。
さらに数年後、"Buy Japan out!(「日本を買い叩け!」)"の命を受け、ホライズン社の日本法人代表として日本へ帰国。平成不況の日本企業の買収に着手する。そこで彼と対峙することになったのは、かつての上司・芝野だった…。
芝野健夫(柴田恭兵)
大手銀行「三葉銀行」のエリート行員。同銀行のエース的存在と目されている。
資産流動化対策室室長として、三葉が抱える大量の不良債権の処理を担う。その一環としてホライズン・ジャパンへの債権売却の矢面に立つこととなり、偶然にもかつての部下・鷲津と再会することになる。
半年同行しただけであり記憶の薄い芝野に対し、鷲津は当時の記憶を鮮明に憶えているようだが…?
飯島亮介(中尾彬)
三葉銀行の常務取締役。芝野の上司。
政治家や暴力団絡みの資金の取り扱いをはじめとする、三葉銀行の「汚れ役」を一身に背負ってきた豪胆かつ老獪な人物。芝野に対しても「鬼になれ」などと手厳しく諭す。
三島由香(栗山千明)
「東洋テレビ」経済部の女性記者。
実家は「三島製作所」という部品製造工場で、かつて取引先の銀行から貸し渋りにあい、その影響で父親が自殺。それ以来、銀行に対して複雑な感情を抱いている。こうした生い立ちをきっかけに東洋テレビの経済部記者となり、激務をこなしている。
取材の一環として鷲津の動向を追い続けているが…?
西野治(松田龍平)
老舗旅館「西乃屋」の経営者・西野昭吾(宇崎竜童)の息子。父に反発しており、ほぼニートである。
西乃屋は治の祖父・泰三がその地位を不動のものとした。ところが、代替わりした父・昭吾がバブル期にゴルフ場経営に手を出した影響で、本業の旅館経営が傾いており、取引先の三葉銀行の不良債権となっている。息子・治はずさんな経営を続ける父を「経営に向いてない」と見抜いている。
そうしたなか、ホライズン・ジャパンの鷲津が宿泊客として西乃屋を訪れる…。
特徴
日本経済や企業経営、ファンドビジネス、銀行業を題材としており、演出や俳優陣の熱演も相まって、社会派ドラマの多いNHK土曜ドラマの中でも異彩を放つ作品の一つである。
ニコニコ的には「NHKの本気」タグの一角を担うドラマとみなされているようだ。
ドラマ版は原作の設定を一部踏襲しているものの、全体的としては原作と大きく異なっている。これは原作者・真山仁の「ドラマと小説は別物です。なので、ドラマとして面白い『ハゲタカ』を見せて下さい。」という意向を反映したものである。
ちなみに、ドラマ版のスタッフ(演出の大友啓史や音楽の佐藤直紀)とキャストの多くが、2010年のNHK大河ドラマ『龍馬伝』でも起用されている。
また、各話の展開や登場人物の台詞が実社会での出来事と類似している点も大きな特徴である。
具体例:
- 「物言う株主」「お金を稼ぐことがいけないことでしょうか」 - 作中では鷲津を揶揄する言葉および鷲津自身の台詞。いわゆる「村上ファンド」の創設者・村上世彰の通称および発言と類似。
- ハイパークリエイション社 - 作中のITベンチャー企業。時価総額の膨張を背景に他業種企業へ接近する。加えて社長の突然の逮捕は「ライブドア事件」や堀江貴文を連想させる。
- 大空電機(カメラ・レンズ事業部) - 大空電機会長・大木昇三郎(菅原文太)は一代で巨大電機メーカーを築き上げ、「経営の神様」として戦後復興の象徴とされる人物。「神格化された電機メーカーのトップ」という点が松下電器の創業者・松下幸之助を彷彿とさせる。なおカメラ・レンズ事業部は同社の創業部門で、デジタル化の波に乗り遅れた不採算部門として描かれているものの、物語後半の展開の鍵となる。実社会では2007年に京セラがカメラ事業から撤退している。
関連項目
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