ハザードマップとは、災害時に危険が予測される場所を示した地図である。
一般的には「防災マップ」とも呼ぶ。
概要
ハザードマップはそれぞれの災害別にまとめられていることが多い。例えば津波災害と河川氾濫災害の両方が危険な地域がある場合もあるためである。しかし、中にはデータベースの形で全部の災害発生時の情報が一つにまとまっているものもある。
凡例(色や記号の使い方)は赤色が危険であることが多いが、津波や河川氾濫の場合は濃い青色ほど危険という場合もある。
主に自治体が発行する災害地図をこのように呼ぶことが多いが、専門的な知識が無くても「このブロック塀がある狭い道は地震で通れなくなりそう」とか、「大雨のときの避難ルートは川沿いは避けた方がよさそう」など、地域の様子を観察し考えることで、普通の人でもハザードマップが作成可能である。本格的なハザードマップを作成する場合、地域の標高などの必要なデータセットを用意し、GIS(地理情報システム)のソフトウェアを使って分析を行う必要がある。
基本的に市区町村などの自治体がインターネットなどで公開している場合が多いので、「(自分の住んでる市区町村、または都道府県) ハザードマップ」で検索してみよう。また、国土交通省が「ハザードマップポータルサイト」を公開しているので、そちらを使ってみてもよい。
ただし、あくまでこれらの情報は参考にすぎない。実際どこに、いつ避難すればよいのかは、ハザードマップに加え、実際の天候や、自分自身・家族の状況、避難情報、交通情報などを総合して考え、自分自身が決定することが求められる。
河川氾濫の場合
2019年に「ここにいてはダメです」として、区の全域から避難する言葉が書かれていて有名になった、東京都江戸川区のハザードマップ(リンク、20,321KB)を例に出す。
一般的な河川氾濫のハザードマップでは浸水時の深さが掲載されている。江戸川区の場合、これに加えて浸水時間も掲載されている。地図ということで縮尺が掲載されているが、より一般人にもわかりやすく5円玉・10円玉を使って距離を求めることもできるようになっている。
川沿いは「木造家屋が倒壊するおそれのある地域」となっており、危険性が高いことが読み取れる。
一方で、区の南部の葛西南部地区は浸水を免れると予測されているが、この地域は盛り土がされており、標高が周辺より約3~5m高い(参考)。
しかし、江戸川区はそのほとんどが標高0m地帯で、想定を超える水害が発生した場合ほとんどの地域が浸水してしまうので、やはり江戸川区での河川氾濫の際は「ここにいてはダメです」という結論になってしまうのだろう。
江戸川区の場合、これに加えて具体的な避難手順やワークシート
も公開されている。区外に避難できない場合は葛西南部地区などの付近の広域避難場所を使うこと、それも難しそうであれば、近くの小中学校か頑丈な高い建物に避難することが挙げられている。
土砂災害の場合
ここでは山間部が近い兵庫県神戸市のハザードマップ(リンク)を例に出す。土砂災害とは、いわゆる「土砂崩れ」「がけ崩れ」などと呼ばれている、土砂の崩落による災害を指す。
基本的には土砂災害特別警戒区域や土砂災害警戒区域など、土砂災害が発生しそうな場所が表示されている。神戸市の場合、高速な土砂の移動である土石流や、遅い土砂の移動である地すべりの場所も掲載されている。
いくつかの緊急避難場所が危険区域と重なっている。「それじゃあ緊急避難場所の意味ないじゃん」と思うかもしれないが、別の災害が起きた時には理想的な避難所となることもある。災害の種類ごとに、望まれる避難場所は異なってくるので注意。
地震災害の場合
ここでは太平洋沿いにある静岡県浜松市のハザードマップ(リンク)を例に出す。基本的には震度分布や揺れやすさを表した地図が中心。浜松市の場合これに加えて、「極小」「小」「中」「大」で液状化リスクも表している。浜名湖の東の地域は台地であるため、液状化リスクは少ないことが読み取れる。また、ブラジル人が多い地域であるので、ポルトガル語が併記されている。
津波や土砂災害など、別の災害の危険性もあるため、複数のマップと比較するとよい。
津波浸水の場合
ここでは同じく静岡県浜松市のハザードマップ(リンク)を例に出す。「防潮堤あり」と「防潮堤なし」の場合で切り替えが可能。実際、防潮堤が決壊するケースも考えられるので、なしの地図にも目を通してみるとよい。
海沿いが危険である傾向があるが、内陸部でも川沿いの地域や、水田などの湿地・低地の場所には遡上した津波が進んでくるため危険なところがある。
火山噴火の場合
ここでは北海道の有珠山周辺のハザードマップ(リンク)を例に出す。山頂から火山砕屑物が高速で駆け下る火砕流に加え、火砕流と似ているが火山ガスの比率が高い火砕サージの危険域も示されている。降灰の分布も示してあり、風向きによってその分布が変わることも書かれている。また、火山灰などによる土石流の発生域や、山麓噴火の可能性も書かれている。
2000年に実際に有珠山が噴火したが、その際にあらかじめ配布していたハザードマップや専門家の助言、それらを踏まえた的確な住民の判断によって避難が行われ、1人の死者も出さずに避難することができた[1]。
関連動画
関連リンク
関連項目
脚注
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