ハシュマルとは、
1.天使の位階において、第四位に数えられる『主天使』たちを率いる天使の名称。
2.TVアニメ『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』に登場するモビルアーマーの名称。
ここでは主に2について説明する。
概要
鉄血のオルフェンズにて初めて登場するモビルアーマーの一機である。長い尾を持った、大きく翼を広げた鳥のようなフォルムをしている。見た目MAとしては小さめの部類(レグナントかアーマーザガンくらい?)だが、それでも普通のMSよりは遥かに巨大である。武装の構成はビグロによく似ている。
作中にて存在が確認されたのは29話、火星の採掘場にてフラウロスの近くに埋まっているのを発見される。大きさと得体の知れなさ故に長らくの間放置されていたが、35話にてクジャン公の無知と不注意により覚醒。その威容を現した。
劇中に登場するよりも前からシルエットやプラモの試作品などで造形は明らかにされており、その姿形から「バルバトスにくっついて空を飛びそう」「そんでハッシュ君が乗り込んでダブルオーライザーに」などといった他愛のない予想が為されていた。反面、ガンダム作品におけるMAという機体の伝統と特異性から、敵側に奪われて猛威を振るうのではないかと危惧する者もいた。いずれにせよ鉄血にて描かれる初のMAであり、視聴者は期待と不安を共に抱きながら来るべき活躍に心を躍らせていた。
――が、現実は我々の想像を遥かに超えるものとなった。
詳細はモビルアーマーの記事に譲るが、鉄血世界におけるMAはかの厄祭戦の原因となった代物であり、かつて億単位もの人間を蹂躙せしめた怪物であることがマクギリスの口から語られる。更に言うとMSはMAを討ち倒すために製造されたもので、MAは怨敵であるMSが近づくと再起動し暴れ出す可能性があると。
MA発掘現場に急遽駆けつけるオルガとマクギリスであったが、マクギリスを追ってきたイオク様がMSに乗って参上。停止するよう叫ぶマクギリスであったが、聞く耳を持たず接近してしまう。
マクギリスの懸念は的中し、ハシュマルは起動。この世界には存在しない筈のビーム兵器をさながら産声のように放ち、大地を射抜くほどの破壊力を見せつけながら高らかにその身を起こす。
――天使の名を授けられた災厄は、こうして現世に蘇ることとなった。
性能
- 基本性能
300年越しの再起動直後であるにも関わらず、現行で最新鋭のMSを上回る機動力でMSの背後に回り込んでおり、クジャン公の慢心を抜きにしても巨体からは想像できないスピード、MSからの攻撃を意にも介さぬナノラミネートアーマーの堅牢さなど、プルーマの整備を考慮してもMSとの圧倒的な性能差を見せつけている。作中でのクジャン公のレギンレイズによる最大出力のレールガンの一撃でかすり傷すら付いたのか疑わしいほどである。 - AIによる完全自律制御
機体はAIによって完全制御されているため、当然のことながら疲労もせず躊躇も無く、人間を殺戮し続けることが可能となっている。
また、マクギリスが述べたようにただ目標を破壊するだけではなく、自ら思考し効率的な戦闘を行う高度なAIとなっている。事実、MSのコクピットを念入りに破壊する、後方からハシュマル本体に対しては無意味な射撃を仕掛けるMS複数機を放置し民間人が多数存在する農業プラントを真っ先に攻撃するなど、徹底して人類殺戮に効率を高めた機体となっている。全くエレガントでない。
対MS戦においてもAI制御のため機体行動にタイムラグが存在せず、高い戦闘能力を持つ。
ちなみに、このAIを搭載した制御中枢ユニットはビーム兵器の直下という配置で、ナノラミネートアーマーに保護されているため、容易に破壊はできない。 - 子機「プルーマ」
子機とも言える小MA『プルーマ』(スペイン語とラテン語で羽や羽毛の意)を多数従えており、戦闘の際にはそれらの物量を以てしての攻撃を行う。ハシュマルを中心とした先兵、ハシュマルの近接防御、後述のハシュマルへの補給と修理を担当している。
ちなみに歳星に送られたプルーマ一機がメンテナンスを受けたのだが、起動した途端に暴走。決して小さくはないドック全体をズタズタにするという被害をもたらした。この際、不意を打たれたとはいえ抑え込むのにMS2機を要している。
プルーマ自体は尾部にあたる部分に存在するドリル状の武器と機関砲しか兵装を持たないうえ、ハシュマル本体と違いナノラミネートが付与されていないため、射撃に対しても格闘においてもどちらかといえば脆弱な方とはいえる。しかし、プルーマの本懐はその数を利用した物量戦術にあり、複数機で対応し押し倒すことで敵の確実な排除を可能としている。 - 生産・補給・修繕
ハシュマル本体にはプラントとしての機能が搭載されており、資源さえあれば無限にプルーマを生産することが可能となっている。そのため、時間がたてばたつほどにプルーマが増え、ハシュマル単機で大軍団を形成することができる。
そうして生産されたプルーマの大事な役割として戦闘の他に物資の補給がある。いくら半永久的に稼働するエイハブリアクターを持つとは言えど、推進剤などはそれと別個に補給する必要があり、プルーマを生産するにも資源は必要となる。プルーマは人を狙う他に燃料や資材を保管している倉庫を狙う知能があり、必要な資源・燃料を調達しプルーマ自身やハシュマルが継続して戦闘や生産を行うための補給も行うのである。
さらに、プルーマにはハシュマルに対する修繕機能が備わっている。そのため、多少ハシュマルが損傷してもプルーマさえいれば元通りに修繕が可能となる。
このように、ハシュマルはプルーマとセットとなることで延々と人類を殺戮することができるのである。 - 格闘兵装
ハシュマルの格闘兵装として、尻尾と腕部があげられる。脚では無く腕である。
尻尾は電気を通す事で粘性を持つ特殊合金製のワイヤーと先端に鋭利な刃物で構成される「超硬ワイヤーブレード」になっており、これを振りまわして格闘を行う。その威力は高く、一撃でレギンレイズが宙を舞い、また一振りでコクピットごと装甲を切り裂くほどのものとなっている。その構造上本体の動きに全く依存することなく非常に自由な動きが可能であるため、ただ相手を切り裂くだけでなく相手の絡めてきたワイヤーを逆に自在に操るなど精密かつ幅広い使い方が可能となっている。この尻尾の合金は厄祭戦当時の技術で作られており、戦後の技術力では再現できない。
腕部は見たままのクローとして機能しており、地上では脚部としても使う事ができ、MSを踏みつぶすなどが可能。大柄な機体らしからぬ運動性と片足立ちも余裕で可能なバランスの良さから接近する敵機に素早い蹴り(殴り)をお見舞いすることができ、そのサイズも相まって速度とパワーを兼ね備えた強力な格闘兵装となっている。この他に腕部内に運動エネルギー弾の射出装置を持ち、細長い槍状の質量兵器を敵機に発射することができる。 - ビーム兵器
何よりも特筆すべきは、今作において初めて用いられたビーム兵器の存在である。このビーム兵器はハシュマルの中心となる射撃兵装であり、頭部に当たる部分に1門搭載されている。射撃時には頭部を展開し発射する。
300年ぶりに発射されたにも関わらず、数百m…下手すればkmにも及ぶ射程と、厚い岩盤の最中でも減衰せず紙のように貫通させるほどの威力を有している。言うまでもないが、今までに登場した機体や武器でこれほどのパワーを持つものは一つもない。鉄と硝煙に塗れた世界で放たれた一射は厄祭戦当時の凄まじさを容易に想像させ、パワーバランスはもとより世界観すら覆したと言えよう。
ただライド・マッスの獅電との戦闘で直撃したビームが弾かれた様に、ナノラミネートアーマーはこれほどの高出力ビームですら拡散させてしまう高い対ビーム耐性を持っているため、MSやMA相手の戦闘ではほぼ無用の長物となっている。それでもなおMAがビーム兵器を装備しているのは、これが人間の殺戮に有効な兵器だからに他ならない。先述のライド機との戦いでも獅電へのダメージは誘爆した銃による物のみに留まっておきながら、拡散したビームで広大な農業プラントを一瞬で焦土に変えるという阿鼻叫喚の地獄絵図を作り上げている(もっともプラントの人間たちに照準を定めていたため獅電が割って入らなくとも同じ結果になっていた可能性が高い)。
このように強力な戦闘力を持つハシュマルだが、弱点があるとすれば燃料や資材自体は限りがあるため、補給さえ断ってしまえばいずれは動かなくなり、プルーマの生産も止まる。つまり、何とかして兵糧攻めを成功させれば倒せる見込みがある。これを実施するために鉄華団とマクギリスは共闘戦線を張り、クリュセ自治区まで伸びる谷間で迎撃戦を開始。
谷を爆破してプルーマの群れとハシュマルを分断した上で集中攻撃をかけるというものだったが、イオク・クジャンの独善的な行動により何度もプランを狂わされる。急遽ガンダム・フラウロスを実戦投入して、爆弾の代わりにフラウロスのレールガンで谷を爆破、ハシュマルを足止めした上で、リミッターを解除したガンダム・バルバトスによって完膚なきまでに破壊することに成功した。
クリュセ市街地に犠牲者や怪我人は出なかったものの、農業プラントに多数の死傷者を出し、獅電とガンダム・バルバトスが大破、さらに三日月・オーガスはリミッター解除の後遺症で右半身麻痺という障害を背負うことになってしまい、作中で1機の機動兵器がもたらした被害としては最大級の被害を出してしまった。あのグレイズ・アインもMS4機大破(グレイズ改弐、漏影×2、ガンダム・バルバトス)という結果を出しているものの、犠牲者は1人も出していない。「鉄血のオルフェンズ」におけるモビルアーマーがいかに凶悪な兵器であるかを、ハシュマルはまざまざと見せつけたのであった。
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関連項目
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