ハフィーニャ(Raphinha)ことハファエウ・ジアス・ベローリ(Raphael Dias Belloli、1996年12月14日 - )とは、ブラジルのサッカー選手である。
スペイン・ラ・リーガのFCバルセロナ所属。サッカーブラジル代表。
ポルトガル語の発音ではハフィーニャだが、スペイン語の発音だとラフィーニャであり、こちらで表記するメディアも多い。
概要
ブラジルのポルト・アレグレ出身。父親がイタリア系であるためイタリア国籍も有している。卓越したテクニックとスピードに裏打ちされたドリブル突破が特徴であり、スピード、ドリブル、シュートの3拍子が揃った万能型のアタッカーでもある。若い頃は元ポルトガル代表であり、FCバルセロナでも活躍したデコが代理人を務めていた。
プロキャリアのスタートは母国のブラジルではなくポルトガル。2018年にはポルトガルの名門スポルティングCPへ移籍し、カップ戦二冠を経験。その後、フランスのスタッド・レンヌで飛躍し、2020年にはマルセロ・ビエルサ監督率いるリーズ・ユナイテッドへ移籍。2021-22シーズンのプレミアリーグではチーム最多となる11ゴールを決めている。
2022年に憧れのクラブであったFCバルセロナへ移籍。当初はチームへの適応に苦しみ大きなインパクトを残せずにいたが、加入3年目となった2024-25シーズンに大きく飛躍している。
ブラジル代表には2021年に25歳でデビューし、2022 FIFAワールドカップにも出場。
経歴
生い立ち
1996年12月14日、ブラジル南部の港町ポルト・アレグレで生まれ、市内中心部から遠く離れたスラム街、レスティンガで育つ。父親はフリーのミュージシャンだったが、両親、弟、ペットと寝室を共有し、交通費を払うのに苦労し、食べ物を乞う必要があったという困難な生い立ちだった。
サッカーと出会うきっかけとなったのが同じポルト・アレグレ出身のロナウジーニョだった。サッカーを理解し始めたのがロナウジーニョがFCバルセロナに加入した時であり、彼のプレーを食い入るように見るうちにロナウジーニョが幼い頃のアイドルとなっていた。
しかし生まれ育った環境が劣悪だったこともあり、彼のキャリアは正式なユースアカデミーではなく、ブラジルの地域社会が主催する「ヴァルゼア」トーナメントに参加することから始まった。将来有望な選手であれば誰でも参加できる大会ではあるが、試合前の更衣室近くで地元ファンが相手チームの選手に嫌がらせをする、銃声、砂埃の舞うクレーコート、猛暑、ゴールの代わりにゴールポスト、ビブスがないため上半身裸のチームなど、過酷な条件下で行われるものであり、18歳までそのような厳しい環境でプレーを続けていた。
ブラジル国内のトップクラブでのトライアルには失敗したものの、2014年にアヴァイFCのU-20チームに加入することになる。そこで才能を開花させ始め、負傷もあってトップチームには加われなかったものの、ブラジルのトップチームから関心を持たれるほどにはなっていた。
ヴィトーリアSC
2016年2月3日、バルサでロナウジーニョとコンビを組んでいたデコにスカウトされ、ポルトガル・プリメイラ・リーガのヴィトーリアSCへ移籍。加入1年目はBチーム所属だったが、3月13日のパソス・デ・フェライラ戦に途中出場し、トップチームでのデビューを果たしている。Bチームではわずか半年の間に16試合5得点という成績を残し、首脳陣からの評価を高めている。
2016-17シーズンになると本格的にトップチームの一員としてプレーするようになり、2016年8月20日のプリメイラ・リーガ第2節マリティモ戦ではプロ初ゴールとなる先制ゴールを決める。この活躍によってチームの中での存在感を増すようになり、リーグ戦4位、カップ戦準優勝とチームの躍進に貢献。2017年のクラブ年間最優秀ブレイク選手賞も受賞している。
2017-18シーズンになるともはやチームのエースという立場になっていた。特に得点力が大幅に開花し、公式戦43試合で18ゴールを記録。この活躍によってさらなるステップアップの噂がメディアに報じられるようになり、もはやギマランイスに留まる存在ではなくなっていた。
スポルティングCP
2018年5月、ポルトガル・プリメイラ・リーガの強豪スポルティングCPに移籍。このときのスポルティングは過激派サポーターによる練習場襲撃事件によって主力9人が契約を解除する騒動が起きた直後であり、難しい時期での加入となった。チームの中心選手となっていたブルーノ・フェルナンデスとは加入以前からの友人であったこともあり、すんなりチームに溶け込むことができ、2018年9月20日にはUEFAヨーロッパリーグでの初ゴールを記録。だが、度重なる筋肉系の負傷によって欠場が多く、リーグ戦4ゴール1アシストと期待を下回る出来となった。それでも、タッサ・デ・ポルトガル決勝ではPK戦で成功させるなど、国内カップ戦二冠に貢献している。
2019-20シーズンは開幕4試合の時点で2ゴールを決めるなど、順調なスタートを切っていたが、当時財政的に苦しかったスポルティングはハフィーニャを売却せざるを得ないオファーを受ける。
レンヌ
2019年9月、夏の移籍期間終盤にフランス・リーグ・アンのスタッド・レンヌに移籍。移籍金はクラブ記録となる2100万ユーロとされている。加入後すぐにチームの中心としてフィットするようになると、新型コロナウィルスの影響でフランスのシーズンが途中で打ち切られたにも関わらず、公式戦7ゴール3アシストという成績を残す。この年、リーグ・アン3位に入りUEFAチャンピオンズリーグ出場権を獲得したレンヌ躍進立役者となった。
2020-21シーズン、2020年10月4日のスタッド・ランス戦で1ゴール1アシストの活躍を見せるが、この試合がレンヌでの最後の試合となるのだった。
リーズ・ユナイテッド
2020年10月5日、イングランド・プレミアリーグのリーズ・ユナイテッドと4年契約を締結したことが発表される。移籍金は約2000万ユーロと報じられている。2020年10月19日、プレミアリーグ第5節ウルヴァーハンプトン戦に途中出場し、プレミアリーグでのデビューを飾る。加入してからしばらくは途中出場が続いていたが、次第にマルセロ・ビエルサ監督から右ウイングのポジションを任されるようになり、11月29日の第10節エヴァートン戦で移籍後初ゴールを決める。鬼才と呼ばれるビエルサ監督の求める強度の強いシステマチックなサッカーにも適応し、パトリック・バンフォード、ジャック・ハリソンと共に強力な攻撃陣を形成。6ゴール9アシストと数字のうえでも結果を残す。
2021-22シーズンには背番号10を託され、チームのエースとしての働きを期待される。2021年8月21日、プレミアリーグ第2節エヴァートン戦ではペナルティエリア内から低い弾道で同点ゴールを決め、8月の月間最優秀ゴールに選ばれる。プレミアリーグにもすっかり慣れ、個人としては前年以上のパフォーマンスを披露するが、チームは怪我人が続出したこともあって守備が崩壊。降格の危機に直面するほど成績は低迷し、2022年2月にはビエルサ監督が解任となる。すでにビッグクラブからの引き抜きの話が絶えないハフィーニャだったが、危機的状況のチームの中で孤軍奮闘を続けていた。リーグ最終節となったブレントフォード戦ではリーズをプレミアリーグ残留に導くPKによる決勝ゴールを決める。このシーズンは11ゴールでチームのトップスコアラーとなり、負傷離脱したストライカーのバンフォードの穴を埋めるに余りあるほどのハイパフォーマンスを見せつけた。
バルセロナ
2022年7月13日、幼い頃からの憧れのクラブでもあったスペイン・ラ・リーガのFCバルセロナに完全移籍することが発表される。契約は5年契約で移籍金は5000万ポンドと報じられている。8月13日のラ・リーガ開幕戦ラージョ・バジェカーノ戦でスタメンで起用されデビューを果たすと、9月3日第4節セビージャFC戦でバルサでの初ゴールを記録。右ウイングのポジションをウスマン・デンベレと争う形となったが、デンベレが復調したことでシャビ監督はデンベレをファーストチョイスとしたことでスタメンから外れたり、左ウイングで起用されることが多くなっていた。リーガへの適応に苦しんだこともあってコンスタントに本来の力を発揮できず、移籍金に見合った活躍ができていないと批判の声も出始める。デンベレ不在時にはELのマンチェスター・ユナイテッド戦で1ゴール1アシストを記録するなど輝いた試合はあったが、持続することはできず、徐々に放出の噂まで囁かれ始める。バルサが27回目のリーガ王者となった2023年5月14日のエスパニョール戦ではロベルト・レヴァンドフスキのゴールをアシストしている。
2023-24シーズンは開幕直前にデンベレが移籍したことで右ウイングのポジションを奪取できるかと思われたが、怪我による欠場もあってシャビ監督の期待に応えられない間に16歳のラミン・ヤマルが台頭するようになり、バルサのニュースターとしてポジションを築いていく。シーズン後半戦に入って巻き返し始め、CL準々決勝1st leg敵地でのパリ・サンジェルマン戦では2ゴールを決める活躍を見せ、この試合のMOMにも選ばれる。最終的に公式戦37試合で10ゴール11アシストという好成績を残したが、ヤマルのインパクトを勝ることはできず、シーズン終了後にはバルサが財政難に陥っていることもあってサウジアラビアのアル・ヒラルに移籍すると伝えられていた。
2024-25シーズン、バルサの新監督に就任したハンジ・フリックがクラブに要請したこともあり、バルサに残留。さらにフリックはハフィーニャにトップ下で起用したり、左WGとして起用しながらもより中央に位置するセカンドストライカーの役割を与えるようになる。2024年8月31日ラ・リーガ第3節バリャドリード戦ではバルサでは初となるハットトリックを達成、さらに1アシストも記録する大活躍を見せる。9月22日の第5節ビジャレアルCF戦では2ゴールを決めると、10月23日のCLリーグフェーズ第3節バイエルン・ミュンヘン戦でもハットトリックを達成。近年バルサが苦手としていた難敵相手の勝利の立役者となる。10月26日のリーガ第11節レアル・マドリードとのエル・クラシコでは1ゴール1アシストの大活躍によってサンティアゴ・ベルナベウでのクラシコ大勝の主役に貢献。縦への速い展開を重視するフリック監督の攻撃戦術にハフィーニャのスピードとボールを運ぶ能力がうまくマッチし、ポジションに縛られず自由に振る舞うことで持ち前のダイナミズムが存分に発揮されるようになっていた。2025年1月12日のスーペル・コパ・デ・エスパーニャ決勝レアル・マドリード戦では2ゴール1アシストの大車輪の活躍によってまたもクラシコの主役となる。CLラウンド16のベンフィカ戦では敵地での1st legで1人少ない苦境の中での決勝ゴールを決め、ホームの2nd legでも2ゴール1アシストを記録。
ブラジル代表
ユース年代では代表と縁が無かったが、リーズでの活躍ぶりがチッチ監督に認められ、2021年8月に初めてブラジル代表に招集される。10月7日の2022 FIFAワールドカップ南米予選第11節ベネズエラ戦において1点ビハインドの後半開始から投入されブラジル代表デビューを果たすと、2アシストを記録し逆転勝利の立役者となる。代表初スタメンとなった10月14日の第12節ウルグアイ戦でも2ゴールを決める大活躍によってファンや評論家たちから高い評価を得る。
2022年11月にカタールで開催された2022 FIFAワールドカップのメンバーにも選出され、右ウイングのレギュラーとして5試合全てに出場。右サイドからチャンスメイクするなどチームに貢献はしていたが、ゴールやアシストという数字を残せないままベスト8でブラジルは敗退。特に準々決勝のクロアチア戦では早い時間帯に交代を告げられ、悔しさの残る試合となった。
2024年6月にアメリカで開催されたコパ・アメリカ2024では第2戦のコロンビア戦で先制ゴールを決める。ネイマールの負傷欠場、ヴィニシウスの出場停止といった問題を多く抱える中で孤軍奮闘するが、ブラジルはベスト8で敗退し、またも失意の大会となる。それでも個人では評価され、ブラジルでは唯一大会公式のベストイレブンに選出されている。
個人成績
シーズン | 国 | クラブ | リーグ | 試合 | 得点 |
---|---|---|---|---|---|
2015ー16 | ![]() |
ヴィトーリアSC B | リーガ・プロ | 16 | 5 |
![]() |
ヴィトーリアSC | プリメイラ・リーガ | 1 | 0 | |
2016-17 | ![]() |
ヴィトーリアSC | プリメイラ・リーガ | 32 | 4 |
2017-18 | ![]() |
ヴィトーリアSC | プリメイラ・リーガ | 32 | 15 |
2018-19 | ![]() |
スポルティングCP | プリメイラ・リーガ | 24 | 4 |
2019ー20 | ![]() |
スポルティングCP | プリメイラ・リーガ | 4 | 2 |
![]() |
レンヌ | リーグ・アン | 22 | 5 | |
2020ー21 | ![]() |
レンヌ | リーグ・アン | 4 | 2 |
![]() |
リーズ | プレミアリーグ | 30 | 6 | |
2021-22 | ![]() |
リーズ | プレミアリーグ | 35 | 11 |
2022-23 | ![]() |
バルセロナ | ラ・リーガ | 36 | 7 |
2023-24 | ![]() |
バルセロナ | ラ・リーガ | 28 | 6 |
2024-25 | ![]() |
バルセロナ | ラ・リーガ |
プレースタイル
メインポジションは右ウイングだが、左ウイングやトップ下、セカンドトップでもプレーできる。最大の特徴は爆発的なスピードと高いテクニックを駆使したドリブル。相手DFに対して積極的に仕掛けていくブラジル人らしいドリブラーであり、右サイドのワイドな位置からカットインしての左足のシュートが得意なゴールパターン。
長短含めたキックの質は非常に高く、特にサイドチェンジやクロスの質も高い。プレスキックのキッカーとしても貢献ができる。ブラジル人のウイング―にはエゴの強いタイプが多いが、味方との共有力が高く、守備でも手を抜かずに献身的であるので使いづらいタイプではない。
ただ、バルセロナ移籍後はデンべレ程の局面打開力は持ち併せておらず、ヤマルともキック精度の差を見せつけられ、ポジション争いで苦戦していた。しかし、2024年に監督に就任したハンジ・フリック監督はワイドな位置からより中寄りのポジションに配置することで新たな才能を開花させる。この変化により、彼は相手の守備ラインと中盤ラインの間のスペースを有効活用できるようになり、ボックス内に斜めに走り込んだり、ロベルト・レヴァンドフスキなどの他のFWが幅を広げている間に内側に流れ込んだりすることができ、よりゴールに直結したプレーができるようになった。
攻撃時に広くスペースを使いつつ、相手ディフェンスの裏を狙った動きを得意としており、サイドにも中央にも積極的に顔を出すことで、チームメイトとの連携を深めながら攻撃を展開。元来の良さである共有力の高さと継続性を最大限生かす事に成功し、試合の流れに応じて多様な役割を果たすことができる万能型のアタッカーへと進化することとなった。
守備の局面ではボールを失った際には迅速に相手にプレッシャーをかけ、ボールを奪い返す「カウンタープレス」を実行する。全力でプレスをかけることで相手のビルドアップを妨害し、守備を助ける役割を果たしている。試合を通して前線からの強度の高いプレッシングを維持するビエルサ監督やフリック監督から重宝されるのもこの守備の継続性を持ち合わせるからである。
プレースタイルだけでなく、メンタル面に関しても特筆すべき存在であり、チームのために全力を尽くし、フィールド上で強いリーダーシップを発揮。試合中にチームメイトを守り、戦う姿勢を見せることもある。
一方でフィジカルバトルやデュエルの局面では課題があり、スタミナや献身性は長所だが、パワー勝負ではどうしても分が悪くなってしまう。
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