概要
SFや海外ミステリに強く、ジャンルによって下記カテゴリに分けられている。さらにカテゴリ内カテゴリまであったりする。
- ハヤカワ文庫SF
- 1970年創刊。その名の通りサイエンス・フィクションを中心に収めた叢書。
当初は国内作品も本レーベルで出されていたが、73年の「JA」創刊後は、海外SFは「SF」、国内SFは「JA」と棲み分けが為されている。
通称「青背」。SF者の本棚が水色なのはこいつのせい。 - ハヤカワ文庫NV
- 1972年創刊。いわゆる海外一般小説の部。
文学作品や社会小説、ハードボイルド、ホラー、アクション小説、冒険小説などSFやミステリに留まらない作品を収める叢書である。レイ・ブラッドベリの諸作(後にSF文庫に移行)など、SFに分類される作品が営業上の理由からかこちらで刊行されていたこともあった。
文学系の作品がepi文庫に移ったため、最近は冒険小説がメイン。 - ハヤカワ文庫JA
- 1973年創刊。国内作家作品を収めた叢書。最初は「ハヤカワJA文庫」という名前だった。
当初は日本SFを専門に収録していたが、刊行番号500を超えたあたりからSFに限らずミステリーなどのエンタテイメント小説全般や、漫画(「ハヤカワコミック文庫」というJA内カテゴリ扱い)を綜合的に扱うようになる。書店によってはラノベ・コーナーに置かれる事も。 - ハヤカワ文庫HM
- 1976年創刊。海外ミステリを中心に収めた叢書。別名(旧名?)「ハヤカワ・ミステリ文庫」。
SF文庫と違い、作家別に背表紙の色は違う。アガサ・クリスティ好きの本棚が赤いのはこいつ(もしくは後発のクリスティー文庫)のせい。 - ハヤカワ文庫NF
- 1977年創刊。ノンフィクション叢書。別名「ハヤカワ・ノンフィクション文庫」。
自然科学や歴史、経済に関するものや、エッセイ等が含まれる。翻訳ものが多いが、たまに日本人の著者による書籍も収録される。 - ハヤカワ文庫FT
- 1979年創刊。海外ファンタジーを収めた叢書。
- ハヤカワ文庫Jr
- 1980年創刊。海外ジュニア小説を集めたレーベル。
エラリー・クイーンのジュヴナイルや『スパイダーマン』のノヴェライズ等が収められていた。11作品で幕を下ろす。 - ハヤカワ文庫YR
- 1986年創刊。Y (ヤング) なR (ロマンス) 小説の叢書。
いわば女子小中学生向けの恋愛小説。〈スイート・ヴァレー・ハイ〉シリーズ20冊を刊行した後消失。 - ハヤカワ文庫GB
- 1986年創刊。ゲームブック・レーベル。
当時人気を博していたゲームブック・ブームに便乗し立ち上がったレーベル。僅か5作でお蔵入り。 - ミステリアス・プレス文庫
- 1989年創刊。アメリカのミステリ専門出版社であるミステリアス・プレス社と提携したレーベル。
2001年までに156冊を刊行して終了。一部の作品はその後、HMから再刊されている。 - ハヤカワ文庫HB
- 1991年創刊。ヤングアダルト・レーベル。
当時存在したSFマガジンの増刊号『小説ハヤカワHi!』直轄叢書。18作品を世に送り消えた。 - ダニエル・キイス文庫
- 1999年創刊。ダニエル・キイス作品を収めた叢書。全16冊。
同レーベル収録の『アルジャーノンに花束を』は早川書房の数少ないベストセラー(現在はNVに移動)。 - ハヤカワepi文庫
- 2001年創刊。若者に向けて良質な海外小説を紹介すると謳われている叢書。
名前の由来は叙事詩 (epic) と発信源 (epicentre)。要するに海外主流文学レーベルで、「NV」とのダブりがちらほら。2017年にはカズオ・イシグロのノーベル文学賞バブルに沸いた。 - クリスティー文庫
- 2003年創刊。アガサ・クリスティの作品を一つのレーベルに蒐集したもの。全103冊+α。
ソフィー・ハナによるポアロの公認続編や、霜月蒼の評論本『アガサ・クリスティー完全攻略』もこのレーベルで出ている。 - トリイ・ヘイデン文庫
- 2004年創刊。トリイ・ヘイデン作品を収めた叢書。全7冊。
- ハヤカワ演劇文庫
- 2006年創刊。日本初の戯曲専門文庫。現在も刊行中。
- イソラ文庫
- 2009年創刊。女性向けの翻訳エンターテインメント作品レーベル。
ロマンス小説とコージー・ミステリが中心だった。2011年までに35冊を刊行して消滅。 - ハヤカワ時代ミステリ文庫
- 2019年創刊。早川書房初の時代小説叢書。単独レーベルではなくJAの内部カテゴリ扱いらしい。黒い背表紙が目印だったが、2023年4月を最後に刊行が途絶えている。
小ネタ
- 品切・絶版が多い。この為、新規SFファンは古書店を巡るところから始めなくてはならない。
- 時折、思い出したかのように過去の名作が復刊されるが、それも数年で消えてしまう。
- 500巻を超え継続中の〈ペリー・ローダン〉シリーズと、153巻にて作者死去により未完となったあと別の作家によって続きが書き継がれている〈グイン・サーガ〉シリーズを抱える。
- 「青背」の他にSF文庫内には、かつてはエンタテイメント性の強い「白背」と〈ターザン〉シリーズ専用の「黄背」が存在した。現在は〈ペリー・ローダン〉以外は基本的に青背で出るが、P・K・ディック作品が黒(長編)・灰色(短編集)で他と差別化されるなど、一部の作家・作品は背表紙の色を変えるデザインが為されている。
- 「白背+下部に作家別色分け」というデザインで基本統一されているJAも、伊藤計劃・円城塔の作品などが背表紙のデザインで他と差別化されている。
- 「SF」「NV」「FT」の間でのジャンルの区別はそれほど厳密ではなく、一般的にSFと見なされる作品がNVやFTから出たり、逆にファンタジーや冒険小説がSF文庫から出たりもする(たとえば『ゲーム・オブ・スローンズ』の原作である《氷と炎の歌》はファンタジーだがSF文庫から出ている)。
- 2009年にトールサイズ化。トールサイズ以前の作品も、増刷の際にトールサイズ化されているが、大きな書店ではトールサイズ化されないままの古い本が未だに一緒に並んでいることも。また、トールサイズ化以前から長く継続しているシリーズ(ペリー・ローダン、グイン・サーガなど)は、トールサイズ化以降の新刊も非トールサイズで刊行されている。
- ハヤカワ文庫の前身ともいえるペーパーバック叢書、『ハヤカワ・ポケット・ミステリ』と『ハヤカワ・SF・シリーズ』。前者は現在に至るも刊行され続けているが、後者は文庫に吸収されてしまった。
- 上記『ハヤカワ・SF・シリーズ』、通称「銀背」の中には文庫に再録されずに消えてしまった作品も多い。これらは古書市場にて結構なお値段で取引されている。
- その後『ハヤカワ・SF・シリーズ』は2011年に『新☆ハヤカワ・SF・シリーズ』として復活している。
大百科に記事のあるハヤカワ文庫作品
複数のカテゴリから出版されている作品は新しい方に記載。後に他の出版社に移籍したものや、他の出版社から移籍してきた作品も含む。
ハヤカワ文庫SF
- アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (フィリップ・K・ディック)
- 宇宙英雄ペリー・ローダン (作者多数)
- 宇宙の戦士 (ロバート・A・ハインライン)
- エルリック・サーガ (マイケル・ムアコック)
- エンディミオン (ダン・シモンズ)
- キャプテン・フューチャー (エドモンド・ハミルトン)
- 銀河帝国興亡史 (アイザック・アシモフ)
- 氷と炎の歌 (ジョージ・R・R・マーティン)
- ジェイムスン教授シリーズ (ニール・ロナルド・ジョーンズ)
- 順列都市 (グレッグ・イーガン)
- スノウ・クラッシュ (ニール・スティーヴンスン)
- ソラリス (スタニスワフ・レム)
- たったひとつの冴えたやりかた (ジェイムズ・ティプトリー・Jr.)
- 月は無慈悲な夜の女王 (ロバート・A・ハインライン)
- 冷たい方程式 (トム・ゴドウィン)
- ディファレンス・エンジン (ウィリアム・ギブスン)
- デューン(フランク・ハーバート)
- 天の光はすべて星 (フレドリック・ブラウン)
- 虎よ、虎よ! (アルフレッド・ベスター)
- 夏への扉 (ロバート・A・ハインライン)
- 2001年宇宙の旅 (アーサー・C・クラーク)
- ニューロマンサー (ウィリアム・ギブスン)
- ハイペリオン (ダン・シモンズ)
- 幼年期の終り (アーサー・C・クラーク)
ハヤカワ文庫NV
- アルジャーノンに花束を (ダニエル・キイス)
- ジュラシック・パーク (マイクル・クライトン)
- ホーンブロワーシリーズ(セシル・スコット・フォレスター)
ハヤカワ文庫JA
- 裏世界ピクニック (宮澤伊織)
- 虐殺器官 (伊藤計劃)
- 機龍警察 (月村了衛)
- グイン・サーガ (栗本薫)
- クラッシャージョウ (高千穂遙)
- 航空宇宙軍史 (谷甲州)
- スワロウテイル・シリーズ (籘真千歳)
- 星界の紋章 (森岡浩之)
- 戦闘妖精・雪風 (神林長平)
- 魂の駆動体 (神林長平)
- 敵は海賊 (神林長平)
- 天冥の標 (小川一水)
- 時砂の王 (小川一水)
- 七都市物語 (田中芳樹)
- 南極点のピアピア動画 (野尻抱介)
- ハーモニー (伊藤計劃)
- ファンタジスタドール イヴ (野崎まど)
- ふわふわの泉 (野尻抱介)
- 放課後地球防衛軍 (笹本祐一)
- マルドゥック・スクランブル (冲方丁)
- ムジカ・マキーナ (高野史緒)
- ヤキトリ (カルロ・ゼン)
- ロケットガール (野尻抱介)
ハヤカワ文庫HM
ハヤカワ文庫NF
ハヤカワepi文庫
- すばらしい新世界 (オルダス・ハクスリー)
- 1984年 (ジョージ・オーウェル)
- 時計じかけのオレンジ (アントニイ・バージェス)
クリスティー文庫
関連コミュニティ
関連項目
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