ハリガネムシとは、類線形動物門ハリガネムシ綱ハリガネムシ目に属する寄生虫である。
概要
名前の通り針金のような線状の体を持つ寄生虫。ミミズ等とは違って体に伸縮性が無く、のたうち回る形で移動するため、その異質な見た目も手伝って一度見ると中々忘れられない衝撃的な姿をしている。ハリガネムシ鋼ハリガネムシ目は世界中で2000種以上が確認され、このうち日本には14種いる。
元々は水中で過ごす水棲生物なのだが、カマキリ、カマドウマ、コオロギといった陸棲昆虫に寄生する関係上、陸上で見かける事が多い。人によっては幼い頃に見つけた事があるかもしれない。現代においても解明されていない謎が多く、生態の全容が明らかになっていないロマンあふれる寄生虫。基本的に昆虫にしか寄生しないため人間には害が無いが、まれに川遊びしている時に偶然幼虫が体内に入る事があるという。
ハリガネムシと言えば寄生した昆虫を水の中に落とす行為が有名。本州では主に秋頃に見られる。ハリガネムシがいる地域とそうでない地域では落ち葉の分解速度が異なったり、藻の発生量が増減したりと少なからず生態系に影響を与え、ハリガネムシがいると川を流れる落ち葉の分解が早まる。
ハリガネムシの一生
ハリガネムシの卵は水中に産みつけられる。産み付けられてから1、2ヶ月ほど経つと孵化し、水の中を泳ぎながら移動。大体4月から6月の間に孵化する事が多い。やがて捕食者たるカゲロウやユスリカといった水棲昆虫に襲われて食べられてしまうが、ハリガネムシにとってこれは計算のうちで、体内に入るとシストと呼ばれる休眠状態になって宿主に寄生。栄養を奪いながら腹の中で過ごす。シスト状態のハリガネムシは環境の変化に非常に強いらしく、-30℃の環境下においても生存すると言われている。その宿主がカマキリやカマドウマに捕食されると今度はそれら陸棲昆虫に寄生。人間に発見される時は大体陸棲昆虫に寄生している時である。
宿主が変わってもハリガネムシのやる事は変わらず、再び宿主の栄養を横取りしながら成長。寄生されたカマキリ等は生殖能力を失って腹がパンパンに膨れ上がる特徴がある。腹の中に潜んでいるため、ハリガネムシそのものが外敵に襲われる事は無いが、カマキリやカマドウマがより上位の捕食者(カエルや鳥類、魚)に捕食されると寄生失敗となり死亡してしまう。たまに脱出に成功する事も。
数々の困難を乗り越えて成長しきると、ついにハリガネムシは行動を起こす。寄生している昆虫の脳に特殊なタンパク質を注入して宿主を操れるようにすると、自身のホームである水中に飛び込ませ、溺れる宿主を尻目にハリガネムシは脱出。こうして長きに渡った寄生生活は終わりを告げ、ここからは子孫を残すための伴侶探しを行う事になる。しかし必ずしも成功するとは限らない。何らかの要因で宿主が死亡すると陸上でも姿を現すが、その場合は水中に辿り着く前に干からびて死ぬ事が多く、また水中へ飛び込ませる前に宿主から脱出するケースも確認されており、その場合は腹をぶち抜かれて瀕死のカマキリと戦う羽目になる。水気を感じると水中だと勘違いするようでカマキリに水をかけると出てくるのは有名な話。
数々の幸運に恵まれて水中に戻ってきたハリガネムシは交尾の相手を探し、運良く番いになると交尾を行って産卵、次の世代へ命のバトンを渡す。卵塊として産むため卵の数は膨大だという。ハリガネムシの寿命は約1年ほど。産卵後は力尽きる訳ではないようだが、その後どう生活していくのかは不明。少なくとも成虫が再度寄生生活に入る事は無いらしい。
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関連項目
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