ハンドスピナー(和製英語)またはフィジェットスピナー(Fidget Spinner)とは、玩具の一種である。
概要
中心にボールベアリングを、周囲におもりを装着した円盤状の玩具。
ボールベアリングの部分を指で持ち、はじくと回転を始める。
…それだけ。
回っているのを眺めるだけのお手軽おもちゃである。
遊ぶのに特に技術を要しない、フィジェットトイに分類される。
構造はシンプルだが、いったんはじくと何分も回っている。
これはボールベアリングが摩擦を最小限に抑えているためである。
工学や物理の簡単な教材としても使える。
慣性の法則、慣性モーメントやジャイロ効果など、ハンドスピナーにかかわる物理法則は多い。
また、ボールベアリングの果たす役割を最も端的に体現するものである。
価格は1000-5000円程度で、ボールベアリングの性能とおもりの材質で決まる。
ボールベアリングは交換可能なものが多いので、こだわる人はスケボー用やヨーヨー用など、様々なものを試してみるといいだろう。
ボールベアリングの性能(ABEC)が高いほど、おもりが重いほど、もしくは中心から遠くにあるほど(すなわち慣性モーメントが大きいほど)長く回る。
自作も簡単であり、ニコニコ動画ではDIY動画も盛んに投稿されている。
ブームにより粗悪品も出回っているが、特許の切れた製品であるため「本物」「偽物」の区別はない。
物理店舗で触らせてもらうか、信頼性の高い店で購入するようにしたい。
粗悪品を掴まされた場合も、ベアリングさえしっかりしたものに交換すればそれなりに回ってくれる。
ボールベアリングの精度はABECという規格で示されており、数字が大きいほど性能が良い。
ハンドスピナーであればABEC5以上、できれば7あれば安心である。
遊び方
基本的には、回して見ているだけである。
トリックなども紹介されているが、この玩具は「暇つぶし」が真髄である。
テーブルの上に置いてもいいし、そのまま手に持っていてもよい。
専用の「ハンドスピナーホルダー」も販売されている。
手に持っているときにスピナーを傾けると抵抗が感じられるが、これはジャイロ効果によるものである。
複数個重ねて回すと、ジャイロ効果がより強力になる。
2個重ね、回転を逆向きにすると、ジャイロ効果は相殺されて抵抗がなくなる。
2017年大ブーム
2016年末頃からスキルトイショップで紹介され始め、2017年春~秋頃にかけて大ブームとなった。
流行の担い手となったのは、主にYouTuberたちである。様々な形状・価格のハンドスピナーの紹介動画や検証動画が、国を問わずYouTubeのトレンドを埋め尽くす事態となった。
スキルトイ専門店ではこのブームに対応するため、当年一杯ハンドスピナーに注力し、他の商品の開発が後回しにされるほどであった。
工学分野では、ボールベアリングの知名度を飛躍的に高めるのに貢献した。
ボールベアリングは家電製品や自動車など、身近な機械にも多数使われているが、実際に目にする機会はあまりなく、重要性も理解されづらかった。
ハンドスピナーの流行により、顧客に「ハンドスピナーに入っている部品」と説明できるようになったのである。
2017年後半から2018年にかけて、1年弱でブームはは沈静化した。
2019年現在、一部スキルトイショップが採算のとれる範囲に縮小して取り扱っていたり、アニメとのコラボレーションとして販売したりしている。また、下記のような療育目的のために、児童発達支援施設や放課後等デイサービスの備品になっていることも多い。
医学との関係
何らかの「病気」が「治る」という効果はない。
そのように謳って販売することは薬事法違反である。
元は無筋力症の子どもでも遊べる玩具として90年代に開発されたとされるが、真相は定かではない。
ただし力を入れずとも回るということは事実なので、筋力の弱い障碍児を対象としたハンドスピナーは実際に商品化されている。
発達障碍の子どもが多動を抑えるためのツールとして使うことがある。アメリカなどでは、そのような効果を期待して持ち込みが許可されている場合がある。
これは、何かをいじることによって「授業中出歩く」「声を出す」「集中できない」などの不利益な行動を減少させることを期待するものである。発達障碍は先天的なものなので、「治る」ということはない。
また、ハンドスピナーが学習に効果があるかどうかは、エビデンスがない。
効果は本人の障碍特性や好み、その学習への意欲や到達度などに依存する。
ハンドスピナーによって集中できる場合もあれば、逆に気が散って授業を聞いていられない場合もある。
他のフィジェットアイテムなども参考にしつつ、本人の様子をよく見て導入するようにしたい。
また、電子タバコのVAPEを取り扱うショップでも販売されている。
これも禁煙に効果があるということはなく、タバコを持っていないことによる手持ち無沙汰を解消する目的のものである。
注意点
注油禁止
ハンドスピナーは、オイルのないドライベアリングの状態で使用するのが基本である。
オイルやグリスは抵抗となり、すぐに回転が止まってしまう。
一般的なベアリングに封入されているグリスは、摩耗を防ぐためのものである。
ヨーヨー用のオイルは、スリープ時間を長くするためのものではなく、わざと抵抗を作って引けば戻ってくるようにするためのものである。現在、引き戻し仕様でないヨーヨーはハンドスピナーと同じくドライで使用する。
誤って注油してしまった場合は、パーツクリーナーで脱脂すれば元に戻る。
以下の動画を参考にされたい。
その他
高性能なものは金属製が多く、重量がある。吹っ飛んで何かにぶつけたりしないよう、安定した場所に置くか、しっかり掴むことが推奨される。
放り投げるトリックをする場合は、周りに人や物がない広い場所でするようにしたい。
回転物なので、髪の毛の長い人は巻き込まれないように、後ろでまとめるなどしよう。
ヨーヨーとの関係
「ハブスタック」および「ヨーヨーファクトリー・ハブスタック」の記事も参照。
構造や遊び方がハブスタック付きヨーヨーに似ており、日本でははヨーヨー販売店が真っ先に動いている。
日本国内の製品については日本精工製のベアリングが使われた製品もあり、それらは国内の販売店では信頼が高い。
一部メーカーのスピナーはベアリング側面にへこみがある場合があるが、これはヨーヨー用のベアリングパーツを流用しているためである。詳しくはベアリング(ヨーヨー)の記事を参照。
類似商品として一部のヨーヨー専門店は、ハンドスピナーを販売しない代わりに、「ハンドスピナー風ヨーヨー」と称してハブスタック搭載ヨーヨーを紹介している。
国内大手ヨーヨーメーカーのスピンギアを擁する株式会社そろはむでは、当初よりハンドスピナーのブームを一時的なものと考えていた。ハンドスピナーを一定の趣味として定着する道を模索する傍ら、本業のヨーヨーにもユーザーを誘導する方針である。
なお、メガハウスのデモンストレーターである川田祐は、ヨーヨー世界チャンピオン経験者であり、第3期ハイパーヨーヨーで「トップスピナー・タイガ」としてプロモーションを行っていた。
メーカー
ほとんどがノーブランド品であるが、いくつかの玩具メーカー・スキルトイメーカーが製造販売している。
上記の理由から、多くがヨーヨーメーカーである。
関連動画
関連項目
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