ハンドボールとは、スポーツの一種である。送球。
概要
ハンドボールの歴史は諸説あり、詳しくは分かっていないが、世界ではドイツとデンマークが発祥の地といわれているようで、今日の7人制ハンドボールの発祥はデンマークといわれている。一説によれば、サッカーが盛んになった頃、頻繁に校舎のガラス(当時は現在よりはるかに高価)が割られるので学校によって禁止され、その代わりに手でサッカーボールを扱ってゲームを始めた(学校側も手なら制御が利くということで許可された)のが始まりといわれている。その地デンマークではサッカーに次ぐ人気を誇り、念願のオリンピック金メダルも獲得した。ハンドボールのトップブランド、ヒュンメルもデンマークのブランドである。
デンマークのほかにも、サッカーを凌ぐ一番人気といわれるアイスランドのほか、ヨーロッパでは多くの国でサッカーに次ぐ人気競技となっていて国内プロリーグも数多くある。とりわけ、ドイツ、ノルウェー、スウェーデン、ハンガリー、ルーマニア、クロアチア、フランスなどが強豪として知られ、国内人気も高い。ドイツのブンデスリーガとスペインリーグ、ASOBALは世界最高峰のハンドボールリーグといわれている。ヨーロッパ以外では中東諸国や韓国も盛んである(後述するアレでも有名)。
一方の日本においては、微妙にマイナー競技と呼ぶにふさわしい存在感を持つ。中学校でハンドボール部があるところは稀で、県大会で2、3勝すれば優勝という都道府県も少なくない。
高校からは部活動として定着していて人気もそこそこあり、とりわけ沖縄、九州、山口、愛知、北陸、茨城、岩手などで盛んで、全国大会常連校もこれらの地方に多い。ただし、部員勧誘の決め台詞と言っていいのが「経験者がほとんどいないのでレギュラーになりやすいよ。」なので、競技のことをよく知らないまま入部する新入生が後を絶たない。
近年は北京オリンピック予選における不正しかなかった疑惑判定の「中東の笛」問題で注目を浴び、日本代表でもある宮崎大輔選手がテレビのスポーツ番組で活躍して有名になるなど、色んな方面で注目されつつある。とはいえ、競技名は知ってるけどルールは知らない人が多く、競技人口は8万人だが、学校を除き気軽に楽しめる機会が少ないなど、まだまだメジャーとは呼びがたいのが現状である。
さらに、アメリカでは日本以上にどマイナー競技となっているようである。
ルールや特徴
ここでは、比較されることの多いバスケットボールとの違いを中心に記述する。
基本
まず触れておきたいのが競技場所である。
部活動として行われるハンドボールはほとんどの場合屋外である。しかし、全国大会クラスはもちろん、オリンピックなどの国際大会はほぼすべて室内で行われる室内競技である。バスケットボール部やバレーボール部に体育館を追われ、グラウンドでは野球部やサッカー部に隅に追いやられるという悲しい運命の部活動なのである。
競技人数はコートプレイヤー6人、ゴールキーパー1人の1チーム7人。
ひたすらストップアンドゴーでコート内を走り回る過酷な競技なため選手交代は自由で、審判に申告する必要はなく同じ選手が何度でも交代出場できる。試合時間は前後半30分ずつ。
ドリブル
初心者が必ずと言っていいほどつまずくのがドリブルのルールである。
バスケットボールの要領でドリブルをするとまず間違いなくファールをもらう。バスケットボールのドリブルに使われる「こねる」ような手の動きを行うと「持った」とみなされダブルドリブルになる。また、「ピポットターン」も1歩とみなされるのでオーバーステップの対象となる。
したがって、ハンドボールにおいてのドリブルは直進することが基本である。
着地
ハンドボールはボールを持ったまま3歩まで動くことができる。ただし、空中でパスを受けた場合、着地の1歩目はノーカウント。両足で着地した場合には次に踏み出した足が1歩目というカウントになる。したがって両足で着地したほうが次の行動を読まれにくく、フェイントもしやすい。
接触プレー
バスケットボールとの最も大きな違いが接触プレーである。バスケットボールは基本的に身体を接触させてはいけない競技であるが、ハンドボールは身体を接触させることが有効なディフェンスの方法であると考えられる。
身体を押す行為(プッシング)や身体を掴んで止める行為(ホールディング)という反則は悪質なものでない限り、通常行われる行為である。軽い違反であり、これによって警告や罰則が与えられることはない。ディフェンスラインの外、9メートルラインからのフリースローが与えられるのみで、オフェンス側にとっては流れを止めてしまうため、ディフェンス側が有利となりやすい。したがって上手なディフェンスというのは自分の身体全体を使って相手の身体全体を捕まえることとなる。ただし、シュート体制に入った選手は保護され、これに手をかけるとペナルティスローや警告の対象となる。
ハンドボール経験者には腰痛持ちが多いように思う。それは激しい接触プレーのせいであると言える。
主な反則に以下のものがある。よく、警告になるファールとそうでないファールの違いが分からないって声を聞くが、相手の死角に入らない(正面からの)ファールはだいたい大丈夫と考えたら良いだろう。
- ホールディング
相手を掴むこと。 - プッシング
相手を押すこと。 - ハッキング
相手の手や腕を叩くこと。 - チャージング
相手にぶつかること。 - トリッピング
相手を足で引っかけること。 - ダブルドリブル
ドリブルを終えた後、同じ手で再びドリブルをすること。 - オーバーステップ
ボールを持ったまま4歩以上歩くこと。 - オーバータイム
ボールを持ったまま3秒待機すること。 - ラインクロス
相手GKを除く選手が6メートルライン内に足を入れること。7メートルスローの対象となる。 - キックボール
ボールを蹴ること。故意の場合は警告以上となる。 - パッシブプレイ
攻撃側が消極的な攻撃(パスの繰り返しなど)を行った場合。攻撃権を失い、相手のフリースローで再開となる。 - 不正交代
味方選手が8人コートにいた、あるいは交代地域以外から選手が交代した。交代選手の退場となる。
などがある。オーバーステップやダブルドリブルなどバスケットボールとは意味合いが違うものも少なくないが、だいたいは似たようなルールがある。
罰則
危険な反則や非紳士的なプレー場合には警告(イエローカード)が与えられる。
同選手に対してイエローカードが2回(チーム累積4回目からは1発で退場となる)、もしくは退場に相当するプレーが行われた場合は2分間の退場が命ぜられる。2分後には同じ選手が復帰可能。3回退場させられた選手は失格(レッドカード)となり、以降は再出場できない。ただし、この場合も2分後には失格選手の代わりに別の選手を出場させることができる。
粘着剤
ハンドボールのボールは握力の強い人なら片手で握れるくらいの大きさとなっている。しかし、より持ちやすくすることでプレーに幅が出るのでほぼ全てのプレイヤーが粘着剤を使用する。大会によって制限されることもあるが、粘着剤の使用は許されている。
- 松やに…屋外でのプレー時に使用される。スポーツ用品店でハンドボール用の松やに(缶入り)・松やにクリーナーを販売している。部活動終了後は松やにを落とすために水道に行列が出来ることとなる。服につくと落ちないのが難点。スプレータイプもある。
- 両面テープ…主に室内で使う。手軽なので屋外で使う人もいるが、砂が付着する。スポーツ用品店で専用のテープを販売している。大事な試合前には剥がれないよう念入りにテープを巻くのも重要な準備。
ハンドボール用ゴール
アナタの学校にサッカーゴールより遥かに小さなゴールがありませんでしたか?ポストが赤と白の縞模様に色づけられていたアレです。
それこそがハンドボール用のゴールです!
シュート
ハンドボールの華。この競技を紹介する際、もっとも分かりやすい映像がシュートシーンであろう。
高くジャンプして狙うジャンプシュートや倒れこみながら狙う倒れこみシュートは、プレイヤーなら誰しもが練習し会得する技術である。
さらに複数プレイヤーとの連携のもと、空中でボールをもらいそのまま着地するまえに狙ういわゆるスカイプレーは、華やかでなおかつ敵に与えるダメージも大きい。
粘着剤の助けもあって、かなりアクロバティックなプレーが可能。あらゆる体制からシュートが打てる。それこそ優秀なゴールゲッターの条件である。
また、ハンドボールは分業制がはっきりしているサッカーなどとは違い、どのポジションでもシュートチャンスが多い。つまり、GKを除く6人全員がシュートを放つことができる、誰でもヒーローになれるのが魅力である。
パス
ノールックパスなんて当たり前。足の間から、頭の上から、スピンをかけて。
運動量
ハンドボールは全員攻撃・全員守備が基本である。しかも、そのコートはバスケットボールのコートよりもずっと大きく、試合時間も長い。サッカーのようにボールの来ない間に休むということもできない。したがってゴールキーパー以外の各選手の運動量はかなりのものとなる。それに加えてジャンプしたり身体をぶつけてディフェンスしたり・・・ハードである。
ポジション
ゴールキーパー
ハンドボールのゴールキーパー。
それは常に股間を狙うボールの恐怖と戦わなければならない過酷な任務である。ドMでないと務まらない。
チームメイトからの尊敬と期待を一身に受けるその存在は、まさにチームの核である。
至近距離からの強烈なシュートを防いだり、一本の正確なロングパスがゴールに繋がる、そんなゴールキーパーのスーパープレイはチームの雰囲気や試合全体の流れを一発で変えてしまう重要なファクターである。
反射神経・遠投力・身体の強さ。チームの中でもっとも運動神経の優れた選手こそゴールキーパーにふさわしいかもしれない。
尚、ハンドボールではゴールキーパーが一度でもボールに触れると、そのままゴールに入らない限り、そのままラインを割ったとしてもクリア扱いになり、キーパーのスローでプレーが再開される(これが、サッカーのGKとの一番の違い)。
ポストプレイヤー
攻撃時に相手のディフェンスラインの中に入り、身体でディフェンスをブロックしたり動き回ってかく乱するなど、仲間のためのスペースを作るまたはそのスペースで自らシュートを狙う。
ディフェンスと直接競り合うので身体が大きいほうがよく、さらに戦術眼も必要となる。中高生の大会を見ると、小さなポストプレイヤーが大きなディフェンス2人に挟みこまれて身体が浮いてしまっているような風景もよくある。しかし、それもディフェンスの動きを制限しているという意味では役立っているので笑わないで見てあげてほしい。
センター
テクニカルな選手が多く、ドリブルやパス、シュートなど攻撃面でチーム1秀でている選手が担うことの多いポジション。広い視野と戦術眼も必要。
45°
「よんご」。バックとも呼ばれる。
センターの左右に位置し、ジャンプ力があり大柄なシュータータイプが多い。組み立ての段階では主にサイドとセンターの繋ぎ役になり、仕上げの段階で45°のフェイントからのロングシュートがよくあるパターン。
サイド
両端に位置する。ウィングとも呼ばれる。
ボールを奪ってからの速攻が一番の働き場所なので、足の速いプレイヤーが多い。
コートの端の狭い範囲を担当しているため一見地味な存在だが、ディフェンスを崩すにはサイドから揺さぶっていくのが重要。シュートコースが狭いので打つだけ無駄と思われがちだが、キーパーとの距離が近いため意外と入る。
日本ハンドボールリーグ
日本ではハンドボールの社会人リーグがある。男子は10チーム、女子は6チーム。女子リーグはクラブチームが半分を占め、男子の10チーム中4チームはトヨタの関連企業で作るチームである。(その他にもトヨタが株主の企業あり。)
※カッコ内は本拠地
男子リーグ
- 大同特殊鋼(愛知県名古屋市)
- 湧永製薬(広島県安芸高田市)
- 大崎電気(埼玉県三芳町)
- トヨタ車体(愛知県刈谷市)
- トヨタ紡織九州(佐賀県神埼市)
- ホンダ(三重県鈴鹿市)
- 北陸電力(福井県福井市)
- トヨタ自動車(愛知県豊田市)
- 豊田合成(愛知県春日町)
- 琉球コラソン(沖縄県那覇市)
女子リーグ
- オムロン(熊本県山鹿市)
- ソニーセミコンダクタ九州(鹿児島県霧島市)
- 北國銀行(石川県金沢市)
- 広島メイプルレッズ(広島県広島市)
- 三重バイオレットアイリス(三重県鈴鹿市)
- HC名古屋(愛知県名古屋市)
所属している(いた)有名選手
プレー経験のある有名人
- 東国原英夫(宮崎県知事) - 高校時代。高校総体に2度出場。
- 加藤晴彦(タレント) - 高校時代。
- 蓮舫(参議院議員) - 高校時代。
- 塩川正十郎(元衆議院議員) - 塩爺。大学時代。
- 福井俊彦(元日本銀行総裁) - 大学時代。
- 西川貴教(T.M.Revolution) - 中学・高校時代。
ハンドボールを題材にした作品
ハンドボールがマイナーと呼ばれる所以の一つかも知れない事実。スポーツ漫画は数あれど、ハンドボール漫画はこれまでまるで当たった試しがなく、業界でも鬼門(他にラグビー、卓球なども)と呼ばれている。現に無謀にもハンドボールに挑んだジャンプの二作品は、短期間打ち切りを喰らっている。Webコミック「送球小僧」の事実上続編である、マンガワン連載の「送球ボーイズ」が現在、唯一の連載ハンドボール漫画であり、そこそこ人気も上がっている。
関連動画
関連項目
関連リンク
- 日本ハンドボールリーグ
- HANDBALL(日本ハンドボール協会公式HP)
- International Handball Federation(国際ハンドボール連盟公式HP)
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