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バイオテロとは、生物兵器を用いたテロ行為のことである。ただし、スラングとしての用法はこの限りではない(後述)。
概要
バイオテロは、細菌やウイルス、毒素などの生物剤を意図的又は脅迫的に投射・散布することによって、政治的・経済的・宗教的なパニックを引き起こすことである。テロの矛先は、 要人や特定の人物の場合から不特定多数の人間に向けられる場合など多様であるばかりか、時には人でなく農作物・畜産物などがターゲットになる場合もある。
ヒトに害を及ぼす病原体(ウイルス、細菌、真菌等)及びその産生する毒素等(以下病原体等)を用い、無差別に大量のヒトを殺傷しようとする行為をバイオテロという。病原体等を一般的に“生物剤”ともいう。これが国あるいは軍のレベルで開発され用いられる場合“生物兵器”という。
バイオテロとは、化学兵器の中でも特に生物兵器を用いて無差別な大量殺傷を行うことを言う。生物を扱うが、生物によって対象を感染症に罹患させたり、なんらかの疾患を負わせたりすることを企図している点で、生体兵器(動物兵器)とは異なる。
生物兵器が戦闘で用いられた歴史は古く、古代ギリシアではアテナイ軍が侵攻先の集落の水源地に毒を投入した歴史が残っていたり、明確なものでも1348年にモンゴル軍がペスト患者の死骸を用いて戦っていた記録が残っていたりと枚挙にいとまがない。有名なものだとコルテスによる中南米征服が挙げられる。1520年、スペイン人のコルテスはアステカ人を殲滅するために、天然痘に罹患していた奴隷の衣服を「和睦のしるし」としてアステカ人に送りつけて大流行を引き起こさせた。天然痘はアステカ帝国で大流行し、皇帝をも病死させ、帝国は滅亡し、征服後の強制労働なども相まってアステカ人は2500万人から100万人にまで激減してしまった。
生物兵器は現在、生物兵器禁止条約によって国際的に規制されている。この条約には国連加盟国のうち185ヶ国が署名している。なお、イスラエルはこの条約に署名していない。日本国内では1982年に生物兵器禁止法が制定されており、例外を除いて生物兵器の製造・所持は禁止されている。
バイオテロは現代でも身近な脅威として認識する必要がある。核兵器などの大量破壊兵器と比べてコストが非常に安く、材料も比較的入手しやすく、一定の科学的知識があれば作成することが比較的容易であるからだ。その(相対的な)手軽さに反して効果は非常に高く、たやすく社会を混乱状態に陥れることができてしまう。
近年ではオウム真理教が炭疽菌を用いた生物兵器の開発を行い、1993年には実際に使用する事件が起きている(亀戸異臭事件)。海外ではソビエト連邦が天然痘を用いた生物兵器を開発していたとの指摘があり、ソ連崩壊後にその一部の所在が不明になっている可能性があったため、アメリカ政府は天然痘を用いたバイオテロに備えて、2010年までに3億人分の天然痘ワクチンを整備している。
想定
バイオテロの発見
バイオテロはその他の化学兵器によるテロ(ex.地下鉄サリン事件)と違い、兵器が用いられてから症状が出るまでに若干のタイムラグがある。また諸症状も病気、多くは感染症の体で発現する。ただしほとんどの場合で症例が一般の診療現場から外れたものになるほか、短期間で一部の地域に共通の症例の出た患者が集まるという点で、バイオテロの可能性に気づくことができる。
厚生労働省によると、以下の場合にバイオテロが疑われる。
- 季節の合わない夏場にインフルエンザ様症状急増(多くのバイオテロ病原体はインフルエンザ様症状で発症する。炭疽、天然痘など)
- 郵便局員、政府の要人など、限定された職種で患者が急増
- 結核流行地でもない、曝露歴もない、治療歴もない、HIV感染もない、そうした人が、いきなり多剤耐性結核
- ウイルス性出血熱(あるいは疑い)は全例バイオテロがないかどうか、検討すべき
- その他、旅行歴がない輸入感染症をみた場合は1例でもバイオテロの可能性を検討(例、類鼻疽)
- 出血性髄膜炎でグラム陽性桿菌が髄液や血液培養から検出(炭疽)
- インフルエンザ様症状がありレントゲンで縦隔拡大(吸入炭疽)
- 水疱(らしき人)が成人で多発(天然痘?)
- レントゲン正常、平熱な呼吸困難患者の多発(ボツリヌス毒素による呼吸筋麻痺)
- たまにしかみない患者が一地域から一時期に大量発生(サルモネラ、O157、細菌性赤痢などの腸管感染症など)
- 大量の鳥、動物の死亡に患者が遭遇
また、アメリカ疾病予防管理センターでは、以下の場合にはバイオテロを疑う必要があるとしている。
- 健康な人々の間に急速(時間や日の単位)に特定の疾患ないし共通の症状を持った患者が拡がる
- 患者数が短期間の内に増加し減少する。
- 発熱,呼吸器症状,消化器症状で受診する人が急速に増加する。
- 感染症は始まる時期やパターンには特徴的なものがない。
- 通常の流行期でない時期の感染症が多発している。
- 室内,特に濾過された空気や閉鎖系換気を行っている部屋に居る人に頻度が低く、戸外にいる人に頻度が高い。
- 患者が一カ所から多く発生。
- 急速に重篤化し、命の危険がある患者に多い。
- 余り見られない病気の発生。(例,肺炭疽,野兎病,ペスト)
バイオテロの手段
バイオテロは生物剤を使用するため、多くの場合で散布の手段が取られる。オウム真理教事件のケースだと、教団本部の屋上に散布機械を設置し、炭疽菌を放出しようとしていた。(この時は失敗して異臭のみが拡散されたそうだが、もし成功していたら麻原彰晃諸共立ち会った幹部の命はなかったはずである)
バイオテロの特徴
どのような手段を取られるかは犯行側のプランにもよるだろうが、いずれにしても被害がより大きく、対応が困難で、実行までの管理が容易なものが好まれることが想定される。
生物剤はなんといっても兵器としてはべらぼうに安い。より大量の殺傷をしようとするなら、爆薬やガスを用いるより特に効率がいい。搬送する際にも融通が効くし、人から人へ勝手に被害が広がっていくので手間がかからない。
バイオテロに用いられる病原菌やウイルスは、一般の診察で医師の目にかかることはほとんどない。そのため初動の段階で医師が生物兵器だと気付ける可能性は極めて低い。気付けたとしても診療技術を持つ医師はほとんどいないし、対応する薬剤も常備されているものはそう多くはない。中には兵器として使われる想定ができていても対応する治療法や薬剤がない病気まである。
病原体は目に見えないため検知は難しい。人々がバイオテロに気付けるのは、ある程度被害が広まってからである。その時にはもう拡散してしまっているため、被害を沈静化させるためにはそこから更に時間を要する。その間にも感染が拡大するかもしれないし、、市井の人々に少なくない心理効果を与えることができる。バイオテロは社会の混乱を目的にしたテロであるため、実行されれば多くの場合で犯行側の目的は達成されてしまうことになる。
対応
医療機関
バイオテロを防ぐためには、とにかく平常時の診察の質を高く保つことが重要であるとされる。普段から患者の症例に意識して気を配れていれば、異常が発生した際に初期のうちから気づくことができるからだ。外来患者数や救急車要請コール数も重要な数値である。
発生した場合は患者の隔離と医療器具の取り扱いがキモになる。特にバイオテロに用いられる菌やウイルスは感染力の強いものが多く、平時の流行病と比べて特に厳重な扱いが求められる。
なんでもそうだが、緊急時にはコミュニケーションが特に大事になるので、普段から関係機関と連絡を密にしたり、緊急時に連携が取れる状態を整えておく必要がある。
一般市民に出来ること
要は感染症にかからないように対策をするしかないわけなので、出来ることといえば冗談抜きで以下な感じである。
・・・拡散しないためにもその場に留まる必要があるのだけど、もし自分が危険な地域にいたら逃げ出したくなっちゃうよなあ、とは思う。
スラングの概要
インターネット上では一般に、バイオテロとは「感染症に罹った状態で集会等に参加する」ことを言う。この場合、他人に移すことを企図している場合とそうでない場合がある。「テロ」とは言っているものの、決して「政治的な目的を達成するための暴力および暴力による脅迫」をしているわけではないので、いずれにしても厳密にはテロではない。(病気を移すことを暴力と定義していいなら立派なテロ)
元々揶揄的に用いられるスラングであり、インフルエンザのまま職場に出勤したり、ノロウイルスのまま学校に行ったりすることを、もっぱら批判して言うときに使う。休めない仕事があるから行くのか、休めない仕事を押し付ける会社に恨みがあってするのかは人によって分かれるところだろう。元々後者を指してバイオテロと言っていたはずだが、今では前者に対しても使われる。そして筆者の体感では前者が圧倒的に多い。どうにかならないものか。
一時期流行った「バイトテロ」と語感が近いこともあって、近年ではインターネットを中心として盛んに用いられている表現である。むしろ本来の「バイオテロ」は「バイオハザード」と表現したほうが伝わりやすい場合さえある。もっともこの表現は適切ではないのだが。
会社や学校という密室で一日中罹患者と一緒に生活していると、当然ながら病気が伝染する可能性が高まる。会社によってはバイオテロによって主力のほとんどが病気に罹ってしまい、事業が成り立たなくなるほどの被害が出る。特にインフルエンザの流行期には、全国で風物詩的に発生し、阿鼻叫喚となった現場の様子がTwitterなどで語られたりする。
通勤通学に限らず、インフルエンザ等に罹った状態で通勤時間帯の電車に乗り込むこと自体をバイオテロと呼ぶ場合がある。病院に行くためなど理由は様々だが、中には流行を起こすことを企図してわざとする人もいる。満員電車自体が減ればリスクも減るだろうが、なんにしても移されたくないのなら手洗いうがいを徹底して、食事を摂って早く寝ることが肝要である。そしてこれができる環境を整えることが、事業者や学校、ひいては行政が感染症被害を抑えるためにできる努力なのである。ここ重要
余談
ニコニコ動画や2ch(現・5ch)では、なぜかオナラがバイオテロ扱いされることがある。
関連動画
関連静画
関連リンク
関連項目
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