バックミンスターフラーレン(Buckminsterfullerene)とは、サッカーボールのような構造をもつ炭素の同素体である。C60フラーレンとも呼ばれ、バッキーボール(Buckyball)という愛称もある。
概要
バックミンスターフラーレンは、60個の炭素原子から構成される炭素の単体・同素体である。炭素の同素体は、黒鉛(グラファイト)やダイヤモンドがよく知られているが、バックミンスターフラーレンもマッチやロウソクの燃焼で発生する意外に身近な存在で、煤の中にも少量含まれる。
バックミンスターフラーレンは60個の炭素原子が12個の五員環と20個の六員環をなし、サッカーボールのような切頂二十面体構造をとる。ただし、バックミンスターフラーレンの直径は約1nmで、サッカーボールの1/200,000,000(2億分の1)程度の大きさしかない。幾何学的なジオデシックドーム(フラードーム)を考案したアメリカ合衆国の建築家バックミンスター・フラーにちなみ、バックミンスターフラーレンと命名された。なお、単にフラーレンと呼ばれることもあるが、炭素数が60個でないフラーレン(C70フラーレンなど)も存在する。
バックミンスターフラーレンは、1985年にアメリカ・ライス大学の化学者ロバート・カールおよびリチャード・スモーリー、イギリス・サセックス大学の化学者ハロルド・クロトーらによって報告された。彼らは、グラファイトの表面にパルスレーザーを照射して蒸発させると、60個の炭素原子からなる安定なクラスター(C60)が多く観測されることに気づいた。また、このC60分子の構造について、サッカーボールのような球状で中空の構造だと実証した。この発見により、彼らは1996年にノーベル化学賞を受賞した。
バックミンスターフラーレンを構成する炭素原子はすべてsp2混成軌道を形成し、どの炭素原子も1つの5員環と2つの6員環を構成する。すなわち、60個の炭素原子はすべて等価である。実際に、バックミンスターフラーレンを核磁気共鳴分光法(13C-NMR)で測定すると、1本の特徴的な化学シフト(δ=143.27ppm)が観測される。
1991年、バックミンスターフラーレンにアルカリ金属をドープ(添加)すると、低温度下で超電導性(電気抵抗が0に転移する現象)を示すことが報告された。たとえば、カリウムをドープしたK3C60の臨界温度は約18K、ルビジウムをドープしたRb3C60の臨界温度は約28Kである。2008年には、セシウムをドープしたCs3C60の臨界温度が約38Kであることも報告された。
2005年、京都大学の村田靖次郎らが、バックミンスターフラーレンに水素分子を内包させたH2@C60の合成に成功した。2011年には、水分子を内包させたH2O@C60の合成にも成功している。フラーレンに内包させた粒子(原子や分子)は外界と隔離されるため、水素結合のような電気的な相互作用のない単一の粒子そのものがもつ未知の物性を観測できる可能性がある。また、内包させた粒子によっては、外側のフラーレンの性質を分子内部から変化させる可能性もある。
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