バットフィッシュ(Batfish)とは、アンコウ目アカグツ亜目アカグツ科に属する魚の英名・総称である。
曖昧さ回避
- バットフィッシュ(潜水艦) - アメリカ海軍の潜水艦。
- バットフィッシュ - ツバメウオなどスズキ目マンジュウダイ科ツバメウオ属に属する魚の英名。ダイバーの間ではバットフィッシュと言えばこちらを指すことが多い。
- California batfish - トビエイ目トビエイ科のエイ、Myliobatis californicusの英名の1つ。
- Freshwater batfish - 中国に生息しているコイ目サッカー科の魚、イェンツーユイ(胭脂魚、学名:Myxocyprinus asiaticus)の英名の1つ。
- Batfish - オープンソースのネットワークコンフィグ分析ツール。
概要
大まかにいえばアンコウの仲間で、多くが深海底に生息しており、体は平たく胸鰭で海底を歩くように移動する。アンコウ目の特徴である疑似餌(誘引突起、イリシウム)は退化して短くなっている。また、体は無数の突起で覆われている。
特に南北アメリカ大陸周辺に分布しているニシフウリュウウオ属(Ogcocephalus)の種を「バットフィッシュ」と呼ぶことが多い。日本ではフウリュウウオ属(Malthopsis)などを加えて「フウリュウウオの仲間」と呼ぶこともある。漢字で書くと「風流魚」。
「bat」は蝙蝠のことで体形から連想されたもの。バットフィッシュでありバッドフィッシュではない。
「Handfish[1]」、「Seabat」とも。
中でもガラパゴス諸島に生息しているガラパゴスバットフィッシュ(学名:Ogcocephalus darwini)が有名。ここでは主にガラパゴスバットフィッシュについて記述する。
上記の曖昧さ回避にあるようにスズキ目マンジュウダイ科ツバメウオ属の魚などを指す場合もあるが、ここでは扱わない。紛らわしい
ガラパゴスバットフィッシュの概要
ガラパゴスバットフィッシュ | |
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目 | アンコウ目 |
科 | アカグツ科 |
学名 | Ogcocephalus darwini |
英名 | Galápagos batfish Red-lipped batfish |
ガラパゴス諸島周辺の海の砂地に生息。最大で20cm程になるが平均15cm程。
バットフィッシュの仲間は殆どが深海性だが、ガラパゴスバットフィッシュはガラパゴス諸島で海水温の下がる夏になると浅い場所でも見られる。実際、記録上は水深3~76mで見つかっているが、深海に多数生息している模様[2]。ガラパゴスならどこでも見つかる魚ではなく、かなり珍しい魚である。
上下から押しつぶされたような菱形の身体、海底を歩くため変形し足と化した胸鰭と腹鰭、長く伸びた鼻(正確には吻)から出る鼻毛のような短い疑似餌、真っ赤なたらこ唇など、とことん変な魚。その唇からレッドリップドバットフィッシュ(Red-lipped batfish)とも呼ばれている。
なぜ唇が赤いのかも含め、生態についてよく分かっていないことが多い[3]。あまり動かず、素早く泳ぐことは苦手。ブサイクと言われることもあるが愛嬌もありとても魅力的な魚である。
アンコウの仲間なので疑似餌で獲物を誘き寄せているはずなのだが、退化していて短すぎる上に特に擬態もしていないので本当に意味があるのか疑わしい。それでも小さな甲殻類や魚などを食べているようである[4]。また、あまり知られていないが尻鰭も体を支えるために役立っていると思われる[5]。
水族館で展示されたことがなく、ガラパゴスの海にしかいない[6]。食用にはならない。
よく似た近縁種にココ島(中米コスタリカに属する島)に生息しているロージーリップドバットフィッシュ(Rosy-lipped batfish、学名:Ogcocephalus porrectus)がおり、(他のバットフィッシュの仲間も含めて)必ずと言っていいほど混同されている。見分け方は髭の有無。ロージーリップドバットフィッシュには唇の周りに白い髭が生えているが、ガラパゴスバットフィッシュには生えていない[7]。
研究者が殆どいないガラパゴスバットフィッシュだが、NPO法人日本ガラパゴスの会スタッフであるバットフィッシャーアキコ氏がガラパゴスバットフィッシュ愛好家としてバットフィッシュの魅力を伝えるため精力的に活動している。脚注にある通り当記事の解説も氏のブログ「ガラパゴスバットフィッシュ狂」から複数引用させて頂いた。
バットフィッシュの仲間たち
アカグツ科には世界に10属75種、日本に7属23種が記載されている[8]。マイナーな魚であり、姿形がよく似た種が多いので互いに混同されやすい。ここではごく一部を挙げる。
- Ogcocephalus darwini ガラパゴスバットフィッシュ
ニシフウリュウウオ属。上記参照。 - Ogcocephalus porrectus ロージーリップドバットフィッシュ
ニシフウリュウウオ属。体長13.9cm程に達する。上記参照。 - Malthopsis annulifera ワヌケフウリュウウオ
フウリュウウオ属。水深90~740mに生息。体長9cm程に達する。日本に分布している「バットフィッシュの仲間」では比較的メジャーな種。背中に「輪」のような模様があるのが名前の由来。間違ってもマヌケではない。 - Malthopsis kobayashii フウリュウウオ
フウリュウウオ属。和名がフウリュウウオの種。体長8cm程に達する。英: Mud batfish[9]。 - Halicmetus reticulatus アミメフウリュウウオ
アミメフウリュウウオ属。体長9cm程に達する。西太平洋などの水深291~500mに分布。名前通り網目模様が特徴。英: Marbled seabat。 - Halieutaea stellata アカグツ
アカグツ属。アカグツ科の名前の由来で、英名は「Minipizza batfish」、「Red bat fish[10]」だが日本では「バットフィッシュ」とは呼ばれない。名前通り赤く、円に近いシルエットでよりアンコウに似ている。水深50~400mに生息。全長30cm程に達する。一般的には食用にならないが美味。 - Coelophrys brevicaudata ユメソコグツ
ユメソコグツ属。水深700~1,200mに生息[11]。全長7.7cm程に達する。アカグツ科の中では例外的に箱型の体形をしており、海底付近を泳いで暮らす。「バットフィッシュ」とは呼ばれない。
関連動画
↓の動画に出てくるバットフィッシュは唇の周りに髭が生えているのでロージーリップドバットフィッシュだと思われる。
関連静画
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関連リンク
関連項目
脚注
- *こちらはタスマニア諸島周辺を中心に生息するアンコウ目カエルアンコウ亜目Brachionichthyidae科に属する魚の総称でもある。
- *ABOUT GALAPAGOS BATFISH | ガラパゴスバットフィッシュ狂
- *同上
- *同上
- *誰もが気付いていない!?バットフィッシュのある部分 | ガラパゴスバットフィッシュ狂
- *ABOUT GALAPAGOS BATFISH | ガラパゴスバットフィッシュ狂
- *同上
- *小学館の図鑑Z 日本魚類館(中坊徹次、松沢陽士) p170
- *フウリュウウオ | 魚類 | 市場魚貝類図鑑
- *アカグツ | 魚類 | 市場魚貝類図鑑
- *深海魚ってどんな魚(尼岡邦夫) p172
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