バトルテックとは、Catalyst Game Labs社が制作・販売している米国製ボードゲーム、およびそれと連携するTRPGや、コンピュータゲーム・ミニチュアゲームなどの派生商品群に冠された名称である。
なお、版権の都合で「メックウォリアー」という呼称が使用されている場合もあるが、本質的には同一の商品群(世界観)に属する作品を指すと思って問題ない。
概要
グループSNEによる日本語訳は、かつて富士見書房から発売されていた(現在は絶版)。
元々は、1984年に米国FASA社が開発・販売したボードゲームである。その後、数々のエキスパンションルールやデータ集、世界観を流用したTRPGなどが発売され、コンピュータゲーム化も行われた。その後FASA社は倒産したが、WizKidsが版権を継承してミニチュアゲームを発売。さらにWizkidsからライセンス供与を受けたFanPro、のちにCatalyst Game Labsが、ボードゲーム版の製品展開を継続している。
なお、ボードゲーム版の発売当初は、FASA社がサンライズ製アニメーションの米国版権を管理していた会社からライセンスを取得し、「超時空要塞マクロス」や「太陽の牙ダグラム」などのメカデザインを流用していたことでも知られる(現在は独自のデザインを使用)。日本語版の出版にあたっては、これらのデザイナーの一人である河森正治が再デザインを行ったものが、挿絵として使用された。
遊び方
ボードゲームとしてのバトルテックのルールは、いわゆる「コマの動かし方」と「攻撃の解決法」が書かれているだけで、実際のプレイは戦闘の背景や互いの編成、勝利条件、特殊ルールなどを定めた「シナリオ」に沿って行われることが多い。ただし、純粋に競技として遊ぶための最大公約数的なシナリオも、以下のように存在する。
- 技術レベル1のオフィシャル機体から4機を選び、小隊を編成する。同型機が複数含まれても良いが、合計重量は210トンに揃えること。
- 基本セットに付属のマップ2枚を縦に連結したフィールドが戦場となる。それぞれの小隊はマップの両端から進入する。
- 勝利条件は、隊長機(他の3機より腕がいい)の撃墜か、一方の投了。隊長機は事前に公開してもいいし、秘匿してもいい。ただし秘匿する場合は、公平のため事前に隊長機を記したメモを入札しておくか、ジャッジ担当者を置くことが望ましい。
また、原語圏で盛んに行われているトーナメント戦では、勝ち進むと次の試合までの間にゲーム内時間で360分の整備時間(メックの各パーツには、整備や交換に必要な時間が設定されている)が与えられ、その枠内で損傷の修理や弾薬の補給などを行う形式となるのが通例……なのだが、よほどのパーフェクト勝ちでも収めない限り、この時間は全ての補修整備を賄うには到底足りない。そのため、大会後半では腕や足の装甲が無かったり、マシンガンやミサイルの弾が切れているなどというケースはザラにあり、中にはエンジンに致命的命中が入ったままとか、メインの武器が壊れたまま、果ては編制が1~2機欠けている、などという笑うに笑えない光景も珍しくなくなるとか。
主な用語
- バトルメック
- 全高約10~12メートルの二足歩行型(一部例外あり)陸戦兵器。バトルテック世界の戦場の花形にして主役である。強靭な装甲と、レーザー・ミサイル・実体弾など多彩な火器を搭載し、高い地形踏破性能を備え、戦車や航空機といった従来型の兵器とは一線を画した防御力を誇る。
重量は20トンから重いものでは100トンに達する。軽いメックは機動力に、重いメックは火力と防御力に優れる傾向があるが、基本的に「重さは強さ」である。 - メック同士の戦闘は基本的に、表面の装甲を削り尽くした後に中枢部分を削り尽くすという非常に手間がかかる消耗戦になり、グループSNEのリプレイで「メックは簡単に壊れるけど、(完全に)壊すのは大変」と評されている。
- 一方で弾薬や頭部への直撃弾一発で沈んでしまう事も多い為、日本のコアなファンの間では「すごいのか、すごくないのかよく判らない」とも評されている。
- 星間連盟
- かつて人類が科学技術の栄華を極めていた時代に、地球を中心として成立していた巨大星間国家。その崩壊は、数百年に及ぶ戦乱と、それに伴う科学技術の急速な衰退を招いた。
- 継承国家(五王家)
- 28世紀後半に星間連盟が崩壊した後、その正統な首長の座を巡って互いに争い始めた大国。
- 中心領域
- 地球(太陽系)を中心に広がる、広大な宇宙空間。かつての星間連盟の版図であり、継承国家が割拠している。地球から遠い周辺部は辺境と呼ばれ、小国や海賊団などが跋扈している。
- 継承権戦争
- 継承国家による中心領域の覇権を懸けた大戦。開戦劈頭に行われた戦略目標への攻撃の応酬によって、先端技術センターなど科学技術の基幹となる施設や、水質浄化プラントのようなインフラ施設を景気よく破壊したため、科学技術の水準が加速度的に地盤沈下。戦争終盤の31世紀初頭の頃には、ほとんど1980年代並みにまで文明が退化し、戦争の決着がつけられなくなってしまった。
- コムスター
- 星間連盟の通信公社を前身とする組織。超光速通信技術を独占し、その利権と強力な諜報ネットワークを背景に、全ての継承国家に対して強大な発言権を持っている。
- しかしてその実態は、通信設備の保守マニュアルを経典として祝詞を唱え、科学技術を崇め奉る宗教団体である。
- 氏族の侵攻を切っ掛けに、アナスタシウス・フォヒトが主導して改革が行われるが、それがワード・オブ・ブレイクの誕生に繋がってしまう。
- アレス条約
- 星間連盟時代に締結された戦時条約。詳細は省くが、捕虜の人権保護やNBC兵器の使用禁止など、現実のジュネーブ条約に近い内容となっている。
- 継承権戦争の開戦と共に条約が破棄された為に、戦争の初期には見境いの無い破壊や虐殺などが行われた。
- その後、これ以上の破壊を抑止する為に不文律の形で復活する。
武器
技術レベル1のメックに搭載されている、各種の武装について解説。
実弾兵器
実弾兵器の長所は、取得・維持のコストが安く、発熱が少ないこと。過熱はメックの行動を大きく制約し、時にはそれ自体が致命傷となるため、プレイヤーとしてはゲーム内でも非常に神経を使う部分である。たとえば「あと一押しのダメージソースが欲しいけど熱管理が厳しい」という場合に、オートキャノンが一本あると実にありがたい。また、一回の射撃で複数のクラスター(ダメージ単位)をばら撒いたり、歩兵や航空機といった特効対象があるなど、様々な特殊効果を持つ武装が多いのも特徴。反面で、重くて嵩張るし、弾切れや被弾誘爆のリスクといった短所も持っている。光学兵器とバランスよく組み合わせるのが賢い使い方と言えるだろう。
- マシンガン
- 全てのメック用武装の中で唯一熱を発生しないという長所を持つ近距離火器。それを除けば、威力は低いわ射程は短いわで、およそ対メック戦闘では刺身のツマにしかならない。ところが相手が歩兵部隊となると、2D6点(=人)のダメージを与えるという鬼畜兵器と化す。ちなみにトン当たりの弾薬が200射分もあるため、誘爆時の被害が一番でかいという説も。
- クラス2オートキャノン
- 全武装中でも最大の射程を持つ……が、単体ではただそれだけ。活用するには、大口径レーザーや粒子ビーム砲などとのコンビネーションが不可欠だ。マシンガンと同じダメージしか出せないのでは、対メック戦闘での主力とはなり得ない。しかし、対空レーダーと組み合わせると最強の対空火器となる側面を持つ。特に(気圏戦闘機でない)通常型航空機にとっては一撃必殺レベル。
- クラス5オートキャノン
- 全てのオートキャノンの中で、最も採用しているメックが多い口径。クラス2ほどではないが対空射撃用としても優秀。日本語版では「重い」の一事を以って蛇蝎のごとき嫌われ方をしている武装だが、実際のところゲームプレイ中に武装の重量が気になることなどないため、不当な評価と言わざるを得ない。長射程でそこそこダメージが出て全く熱に響かない、大変頼もしい武装である。
……プラス100円のセットメニュー感覚でお手軽にダメージ追加できるバリュー装備、とも言うw - なお一説ではこのクラス5オートキャノンが120mmクラスの砲なんだとか。
- クラス10オートキャノン
- さすがにこのクラスともなると重量対威力の面で文句を言う声は少ない。特に、この口径は比較的射程も長く、最低射程の制約もないために遠近両用で運用でき、中~重量級メックの主砲として広く用いられている。オリジナル機体を設計する場合でも、70トンを超えた辺りから装備重量より先に装備欄が足りなくなることが増えるため、空き重量を効率よく消化できるオートキャノンや長距離ミサイルは人気が高い。
- クラス20オートキャノン
- 一箇所に20点のダメージを叩き込む必殺武器。とんでもなく重いし嵩張るし射程も短いしトン当たりの弾薬も少ないが、それを補って余りある問答無用の破壊力。こいつを装備したメックは「ジャガーノート」と呼ばれ、戦場を掃除する役割を期待される(同時に、9ヘクス圏内は無人境と化すことが多い)。使う機会が非常に限られる武装ではあるが、だからこそ一撃必殺のロマンに溢れた「漢の武器」である。
- 短距離ミサイル(2/4/6連)
- 9ヘクス以内の近~中距離をカバーするミサイル。1クラスターあたり1発で2点ダメージだが、常に全弾当たるわけではない。昔のルールでは命中した全弾が一箇所に集中するハンマーパンチだったが、今は1発ずつバラバラに命中部位を判定するようになった。だからと言って「なーんだ、パワーダウンじゃん」と言うなかれ。装甲が削れて中枢が見えていたりすると、命中回数の多いこの手の武器は致命的命中の確率が急上昇するため、恐ろしい存在となる。なお、発熱と重量はそこそこでトン当たりの弾数も比較的多いので、リソースを圧迫しない使い勝手のいい装備。
- 長距離ミサイル(5/10/15/20連)
- クラス2オートキャノンを除けば最長の射程を誇る長槍。しかし近距離レンジ7ヘクスに対して最低射程が6ヘクスもあり、接近されるとマトモに当たらない非常にピーキーな面を持つため、運用には一工夫が必要。1クラスターあたり5発でダメージは分散しがちだが、言われるほど威力に欠ける武装ではなく、「コンパクトで長距離用のサブ火器に最適な5連」「トータルでは粒子ビーム砲に匹敵する隠れ主砲の15連」「長距離砲戦の華となる20連」と、それぞれ長所を持っており、使えないと言われる10連でも中量級の主砲や重量級の副次火器として有力な程度の火力は備えている。こいつと中口径レーザーを組み合わせると、お互いの短所を補い合った強力な武装コンビネーションとなる。
光学兵器
光学兵器の長所は、重量が軽く、一発あたりの威力が大きいこと。また、弾薬による射撃回数の制約や誘爆のリスクがないため、補給なしで長期間作戦任務に就く偵察機の武装としても重宝されている。その一方で、価格や維持のコストが高い、整備に手間が掛かる、発熱が大きい、歩兵などの小さくて数の多い目標が苦手(火炎放射器を除く)、といった短所も持っているため、任務が多彩となるTRPGや試合回数の多い大規模トーナメントでは、必ずしも効果的とは言えない部分もある。もちろん、純粋に対メック戦闘での強さだけを追い求めるなら、必要なリソースに対してダメージ効率の優秀な光学兵器は非常に効果的な選択肢となるが、だからといって光学兵器だけ満載したメックばかり使っていると、マンチキンの謗りは免れないので注意が必要。
- 火炎放射器
- 厳密には光学兵器カテゴリーには当てはまらない武器だが、ゲーム上の特性として光学兵器に近い扱いなので、こちらに分類。選択ルールなしで遊ぶ場合には、単なるダメージが低くて熱のでかい「使えない武器」だが、選択ルールを採用した途端、地形は焼き払うわ、車両は爆発させるわ、メックは過熱させるわ、歩兵は一撃で部隊の半数焼き殺すわ、と凶悪な追加効果を持つ武器に変貌する。特に、TRPGで遊ぶ場合には、偵察兵が部隊の予備メックとなっている軽量級に火炎放射器を持たせて破壊工作を行うというシチュエーションは比較的よく見られたりする。プレイヤーによって評価の大きく異なる、通好みのする武装。
- 小口径レーザー
- グループSNEが日本語版を展開していた頃には絶賛イチオシされていた近距離武装。RPGドラゴン誌上の読参企画では、こいつを山のように搭載したメックが幅を利かせていた。しかしながら、ここまで射程が短いと、ぶっちゃけ撃つ機会そのものがあんまりない。歩兵相手の武装として有効と言われていたが、ルール改定で「光学兵器で歩兵を撃っても一発で一人しか倒せない」ことになったため、本当に使い道のない装備になってしまった。枯れ木も山の賑わいとは言うが、これを積むくらいなら他に積むべき装備は山のようにあるはず。
- 中口径レーザー
- 射程とダメージと熱のバランスがよく、なおかつ非常に軽量という「使える」装備。全ての武装の中で、最も搭載しているメックが多いという点からも、使い勝手の良さが伺える。安易にBV(戦闘力評価点)を稼げる武装であるため自作メックの設計でも多用されがちだが、ポリシーとして嫌うプレイヤーも多い。
- 大口径レーザー
- 長射程かつ最低射程がないという万能火器。ダメージも大きい。なのに取り回しが悪い印象を免れないのは、さすがにこのクラスともなると発熱や重量の面でリソースを食う分量がバカにならない(つまり数を積めない)からだろう。よっぽど近接火力に困っている機体でもなければ、どうせ積むなら粒子ビーム砲に走るし。というわけで、軽~中量級メックの主砲として用いられている場合がほとんどだったりする。
- 粒子ビーム砲
- 一撃あたり10点という大ダメージを叩き込むことができる、バトルテックにおける花形武装。射程も長く、あらゆるクラスのメックで主砲として幅広く採用されている。もっとも強力なぶん短所も多く、オートキャノンほどではないが重くて嵩張るし、発熱も全ての武装の中で最大(放熱器を追加していないメックが排熱できるギリギリの点数)である。ただし、こういった「一撃に懸ける」武器である点がロマンを感じさせるためか、レーザー満載の安易なメックを嫌うプレイヤーでも、粒子ビーム砲だけは許すという者が少なくない。
格闘武器
メックはパンチやキックなどの格闘の他に、格闘用の武器が装備可能である。攻撃するには接近しなければならないが、発熱や弾薬の消費を気にする事なく強力な一撃を見舞えるのは非常に魅力的である。
- ハチェット
- メック用の斧で、恒星連邦で開発された。この斧を装備した最初のメック「ハチェットマン」の存在は、後のメック開発に強い影響を与える事になる。
- ソード
- 「ハチェットマン」の能力は恒星連邦の敵対国であるドラコ連合に衝撃を与え、戦場では「ハチェットマン」の鹵獲に躍起になるドラコ兵の姿が見られるようになる。ところが、肝心のハチェットはドラコのサムライ達に「ダサい」の一言で次々と捨てられる羽目になる。何とか格闘武器を手にしたいドラコ連合の技術陣は試行錯誤の末にメック用の刀の開発に成功する。
メック
このゲームの主役とも言えるバトルメック達。その種類は、バリエーションまで含めるとオフィシャル機体だけで100機以上にも及ぶ。(このほか、プレイヤーが独自にメックを設計するためのルールもある)
これらのメックは、重量(強さ)と性格(適性)という2つの観点から、それぞれいくつかのカテゴリーに分類されている。
重量による分類
- 軽量級(20~35トン)
- このクラスのメックは武装や装甲に回す重量が余り多くないため、正面切って戦うための機体は多くない。その代わり、低出力のエンジンでも高い移動力を得られたり、ジャンプ移動力あたり必要なジャンプジェット重量が軽く済むなど、機動力に大きな恩恵を受けられるようになっている。このため、偵察機が数多くラインナップされているほか、価格の安い機体が多いため、警備・連絡・拠点防衛など、頭数の勝負となる任務に向いた機体も存在する。
- 中量級(40~55トン)
- このクラスでは、長距離ミサイルやオートキャノン、粒子ビーム砲など大型火器を主砲として搭載する余裕が出てくる。また、軽量級ほどではないものの機動力もそこそこ稼ぎやすいため、一芸特化の特定任務専用機から、火力・装甲・機動力のバランスが取れた主戦機まで、ありとあらゆる性格の機体が存在するカテゴリーである。
- 重量級(60~75トン)
- さすがにこのクラスともなると、偵察任務に堪えるほどの機動力を持つ機体は少ない。しかし、その代わりに火器と装甲を大量に搭載する余裕が生じるため、戦列のバックボーンとして主力部隊の中核を為す役割を期待されるカテゴリーである。その役目柄、指揮官機として能力の高いメック戦士が乗っていることも多いため、部隊の中心に位置する重量級メックには厳重な警戒が必要と言われる。
- 強襲級(80トン以上)
- その名の通り、真正面から敵陣に突入し、蹂躙し、突破するために建造されたカテゴリー。ちょっとした地形障害ですぐ足が止まる程度の機動力しか持っていない場合が多いものの、その圧倒的な火器群と装甲防御は、他のメックを鎧袖一触に吹き飛ばすほどの威力を持っている。当然ながら、このクラスのメックは非常に高価で希少な機体ばかりであるため、戦闘の重要な場面において、ここ一番の切り札として投入されるのが普通。
性格による分類
日本では単純に「偵察機」、「万能機」、「主戦機」、「支援機」の4種に分けられていた。
- スカウト
- スカウトとは偵察機のこと。高い移動力やジャンプ能力を生かして敵の攻撃をかわしつつ、情報を収集する任務を負っている。その性格上、軽量級メックがほとんどであり、また、貴重な高性能センサーや通信装置を搭載した機体も多いこともあって、正面切っての戦闘に投入されることは少ない。ただし、機動力を生かして敵の背後に回りこみ、装甲の薄い背面を狙い撃ちするような任務を与えられることもある。
- ストライカー
- ストライカーは高い機動力と近接火力を併せ持ち、敵部隊の急所に殺到して短時間に圧倒的な火力投射を見舞う任務を負う。必然的に重量は軽く、機動力と火力に最大限のリソースを振った設計のメックとなるため、大金星を挙げるか犬死にするかの二者択一となることが非常に多く、運用にあたっては、一瞬のチャンスを逃さない高度な戦術眼を要求される。それゆえか、ストライカー系のメックを好むプレイヤーは少なからぬ部分が上級者で占められている。
- スカーミッシャー
- スカーミッシャーは、ストライカーと比べて移動力よりも装甲を重視しており、主力部隊の前衛として重要な地形をいち早く確保したり、敵主力部隊を短時間足止めするような任務を期待されるカテゴリー。また、スカウトよりも生存性に優れることから、敵勢力圏奥深くへの重偵察任務を負うこともある。このように火力・機動力・防御力と全てに渡る総合性能を要求されることから、公式機体においても優秀なスカーミッシャーは非常に少ない。しかしそうであるがゆえに、バッチリ設計の決まったスカーミッシャーは、いずれも名機と呼ぶに恥じない優秀な機体ばかりであり、多くのプレイヤーに愛されている。
- ブロウラー
- ブロウラーは、単機または2機以上で戦列を形成して「戦場の位置を決める」という大切な任務を負う。その任務の性質上、敵の射撃に堪えながら戦線を押し上げるという自己犠牲的な行動を要求されるカテゴリーであり、火力や機動力を差し置いてでも防御力を重視した機体が多い。彼らが形成した戦線に、後方からミサイルボートやスナイパーが長距離射撃を叩き込み、側面からストライカーやスカーミッシャーが敵の急所を突くのが、バトルテックの小隊戦闘における王道の戦術と言われている。
- ミサイルボート
- ミサイルボートは、長距離ミサイルを主兵装とするメックが分類されるカテゴリー。その武装の性質上、射線の通りやすい高台を占拠して戦場にミサイルの雨を降らせるのが主任務だが、多くの場合中口径レーザーを複数装備していることから近接戦闘力もそれなりに持っているため、近寄られてもそれなりに戦えるメックが多い。また、アーチャーやカタパルトなど装甲に自信のある機体の場合は、最前線に突出して敵の後衛を狙い撃つという奇策も存在する。
- スナイパー
- スナイパーは、オートキャノンや粒子ビーム砲など長射程の直射火器を装備したカテゴリー。基本戦術はミサイルボート同様に遠距離からの狙撃だが、これらの火器は長距離ミサイルと違って中~近距離の戦闘でもそれなりに有効であるため、戦闘の後半には前衛とポジションを交代して、積極的に前線へ切り込んでいく役割も求められる。そのためか、ミサイルボートと違って移動に不便な高台よりも、戦場に近い森や林を射点に選ぶプレイヤーが多い。
- ジャガーノート
- ジャガーノートは射程と機動力に欠ける極端な設計のカテゴリーだが、その代償としてクラス20オートキャノンを始めとする極めて強大な近接火力を持っている。敵の猛射に耐え、戦場から干されてもめげず、低い命中率を克服してチャンスをものにすることが求められるため、その見掛けの華やかさに反して乗り手のストレスは大きいが、そのようなピーキーな能力だからこそ、ツボに嵌ったときのカタルシスは何物にも代えがたい。また、拠点防御戦闘など、相手が嫌でも近寄らざるを得ないシチュエーションにおいては、その強大な近接火力は無類の威力を発揮するだろう。
公式メック紹介
継承国家
31世紀の中心領域に割拠する、愉快な五大王家(後に六大王家となる)を紹介。
恒星連邦(ダヴィオン)
工業力と軍事力はピカ1。数の暴力でどんな敵も打ち倒す。オートキャノン大好き。でも、メックの性能や適正を考えずに配備するので、戦場ではコロッとやられてしまったりするお茶目さん。首都惑星は「ニューアヴァロン」。ハンス・ダヴィオンとメリッサ・シュタイナーの結婚でライラ共和国と連合した連邦=共和国が誕生するが、2人の死後、残された兄妹が骨肉の争いを始めた事で元の2国に戻ってしまう。
ジャベリン(30t)、ジャガーメック(65t)、マローダー(75t)が特産品。
ライラ共和国(シュタイナー)
重量こそ正義。ということで保有メックの半分以上を重量級が占める金満国家。力押しでマッシヴな強襲戦術を得意とする伝統墨守な国だが、小技の利く相手はてんで苦手。首都惑星は「ターカッド」。国名はドネガル保護領、スカイア連邦、タマラー協定領の3国が連合した事に由来する。3国の立場は一応対等になっているが、現在は「ターカッド」があるドネガル保護領に権限が集中しており、他の2国の反発を招いている。特にタマラー協定領ではドラコ連合に奪われた領土を回復する為の運動がさかんに行われており、この運動の末にラサルハグ自由共和国が建国される事となる。グループSNEのリプレイで主要な舞台となったので、日本では一番馴染みが深い国である。
クルセイダー(65t)、アーチャー(70t)、バトルマスター(85t)、アトラス(100t)が特産品。
ドラコ連合(クリタ)
ド根性と熱血を旨とするサムライ魂の日系国家。荒ぶる戦意は炎の暴風と化し、ときに戦場の外にまで向けられる。鋼の団結と忠誠心はわれらが誇り。でも、ちょっと萌え入ってます。首都惑星は「ルシエン」。当初は悪役だったが、セオドア・クリタが当主になってからは一転して主役級の大活躍を見せる。なお、男尊女卑の傾向は遥か昔に無くなっており、能力があれば女性でもサムライになれる。ちなみに、ガチレズややおいが普通に見られるとかなんとか。実際、ガチ百合の女性がドラコの当主だった事もある。
ジェンナー(35t)、ハンチバック(50t)、シャドウホーク(55t)、ドラゴン(60t)が特産品。
自由世界同盟(マーリック)
実は総合的な国力ではダントツ首位の潜在力を秘めた国。しかしながら内乱が季節の風物詩で、その力が一元的に発揮された試しがない。統一は歴代当主の見果てぬ夢か。首都惑星は「アトレウス」。ワード・オブ・ブレイクを受け入れた為に他の継承国家や氏族から目の敵にされてしまう。
トレビュシェット(50t)、オリオン(75t)、オウサム(80t)が特産品。
カペラ大連邦(リャオ)
清く貧しく慎ましく。質実剛健とはこういうことです。山岳地帯は俺の庭。あと、安くて強いメック求む。首都惑星は「シーアン」。第四次継承権戦争で只でさえ小さい国土が更に小さくなったが、名君スン=ツー=リャオの尽力で国土を取り戻す。
シカダ(40t)、カタパルト(65t)、チャージャー(80t)が特産品。
ラサルハグ自由共和国(マグヌッソン)
3032年にライラ共和国とドラコ連合の間に建国された6番目の継承国家。首都惑星は「レイキャビク」。タマラー協定領の領土回復運動が実を結んだのと、緩衝地域を欲しがっていた(ついでに、厄介払いがしたい)ライラとドラコの思惑によって成立した。当初はカペラよりも領土があったが、3050年の氏族の侵攻であっという間に壊滅状態に。氏族と継承国家の決戦が行われた惑星「ツカイード」は、この国の領土である。
ルール改訂
バトルテック原語版のルールは、初版(日本語版)から最新版までの間に数々の改訂を経ている。このうち、特にボード戦闘に大きく関わる三つのポイントについて解説。
反応フェイズの廃止
初版ルールでは移動フェイズ終了後、上半身を60度回転させる(射界の向きを変える)反応フェイズが設けられていたが、最新版ではこれは廃止され、射撃フェイズに行う射撃宣言と同時に上半身の回転を行うようになった。手順上の面倒が一つなくなってプレイがスピーディに進む改良だが、これによって「移動フェイズに背面に回り込まれたので、反応フェイズに上半身を回して側面を晒す」という小細工が通用しなくなった(上半身を回しても背面を逸らしたことにはならない)ので注意が必要。
短距離ミサイルの命中判定方式変更
初版ルールの短距離ミサイルは、ミサイル命中本数ロールで決定した命中弾が全部一箇所に集中する仕様であり、このため6連が全弾命中して命中箇所が頭だったりすると一撃必殺(どんなメックでも頭部の耐久値は12点が限界)となることもあった。しかし最新版では、短距離ミサイルは命中弾一発ごとに命中箇所を判定する仕様に変更された。これによって「一箇所に大ダメージを叩き込む」という従来のイメージは失われたが、命中箇所判定の回数が増えるということは致命的命中の確率が増えることと同義であるため、これはこれで脅威度の高い武器となっている。
部分遮蔽の処理変更
部分遮蔽とは、遮蔽物に下半身を隠して敵機からの射撃の命中確率を下げること。初版ルールの部分遮蔽は回避修正+3という高い効果を得られたが、その代わり命中箇所判定が上半身限定となるため、被弾した場合の頭への命中確率が高くなり、敵の腕がいい場合は「部分遮蔽を取るほうが危険」とまで言われていた。そこで現行ルールでは、回避修正を+1に落とす代わりに、命中判定に全身対象のものを使用するように変更されている(足への命中弾は、代わりに遮蔽物に当たった扱いとなる)。これによって回避効果は多少落ちたものの、頭への被弾確率は相当低くなり、腕利き相手でも安心して部分遮蔽を確保できるようになった。
原語版と日本語版の世界観について
バトルテックのユーザコミュニティでは、日本語版ユーザと原語版ユーザの間で、世界観の認識に大きな乖離が存在することが多い。これは、日本語版の展開が英語版初版の翻訳である富士見版で止まってしまっているのに対して、原語版は数次に渡るルールの改定や設定の更新などを経て、公式ストーリーが大きく進展しているためである。以下に、その典型例を示す。
メックの生産と供給
技術力の低下した継承権戦争後期には、核融合エンジンをはじめとする先端テクノロジーは悉く失われ、メックや宇宙船の生産はほとんど不可能、各国は星間連盟時代の遺跡を掘り返して現有戦力を維持している。
しかしながら現在では、生産不可能なのは「製品」ではなく「生産ライン(自動工場)」であり、これらが壊れたら取り返しがつかないことから、なるべく負荷をかけないように安全運転しているため、製品の供給が不足している、と設定変更されている(日本語版でも、「バトルテック」と「メックウォリアーTRPG」の記述の相違などに片鱗が見える)。設定変更の理由には諸説あるが、一番大きいのは後述の「失機者」の設定をなかったことにするためではないかと言われている。
失機者
それぞれのメックは再生産不可能な希少品であると同時に、プレイヤーキャラクターたる「メック戦士」にとっての地位と名誉そのもの。領地や爵位などとセットになっている場合も少なくない一子相伝の家宝で、失うことは命の危険や名誉の喪失にとどまらず、一族滅亡の危機に直結する。
……というのは日本語版のお話。
実際に原語版でこの設定を忠実に適用したところ、戦闘開始と同時に双方のメックが全機マップ外に撤退してしまい、「あとの決着は戦車と歩兵でつけてね」というプレイヤーが続出するアホな事態が発生した。このため、前項の通り設定の修正が行われ、現在では31世紀初頭を舞台にプレイする場合でも、失機者の設定は、ほぼ「なかったこと」にされている。
レベル2装備
星間連盟時代に製造されていた軽量型エンジンや長射程ビーム、高性能放熱器、軽量骨格、速射オートキャノンといった装備は、日本語版(特にグループSNEが独自に出版したリプレイなど)では、いわゆる「ゲームマスターやシナリオ作者がカスタムメイドでデータを作った主人公用装備」級の扱いを受けていた。
……が。
実際のところ原語版では、これらの装備は「レベル2」カテゴリーという位置づけできちんと規格化された量産品としてルール化されている(確かに、技術力低下によって一時的に生産できなくなっているが……)。つまり、「存在自体が知識から失われた誰も知らない古代遺産」などではなく、「弊社では製造の再開に向けて全力を尽くしております。お客様におかれましてはご迷惑をお掛けして大変申し訳ありませんが、今しばらくお待ちくださいませ」程度のシロモノなのである。
後の3039年にグレイデス軍団によって発見された遺失技術を満載したメモリーコアの発見(通称グレイデス・メモリーコア)とその情報の拡散によって、一部の装備は生産が再開された他、後述の氏族侵攻後はさらに多くの装備が復活し、
より新しい装備も生まれている。
その一部を紹介しよう。
- ウルトラ・オートキャノン(2/5/10/20)
- 基本的には通常のオートキャノンだが、倍速モードというバースト射撃システムが搭載された。
これは消費弾薬と発熱量が二倍になる代わり、2発の砲弾を発射することができるもので、命中時の判定にはミサイル命中表を振って命中数を決定する。高い火力を得られる反面、命中判定で1ゾロを出すと弾詰まりを起こして故障し、以後修理するまで使用不能になる。
さらに上位のレベル3装備では4倍速と6倍速も可能なロータリーオートキャノンという凶暴な代物まである。(故障率も3倍、4倍になるが) - LB-Xオートキャノン(2/5/10/20)
- こちらも基本は通常のオートキャノンだが、クラスター弾頭を発射可能なタイプ。クラスター弾頭を発射した場合、命中時は口径と同じミサイル命中表を振り、1点ごとに命中箇所を判定する。
いわゆる散弾であり全身に満遍なくダメージを与えるいやらしい武器。 - 誘導式短距離ミサイル(2/4/6連)
- 別名ストリークSRM。発射までは通常の短距離ミサイルと同様だが、命中するとミサイルの命中本数判定表を使わず、全弾命中したという判定で命中箇所を決定する上、命中判定で失敗した場合は発射されない(=弾薬を消耗しない)素敵ミサイル。ミサイルの命中判定が1発ずつバラバラになったのはこいつが原因(SSRM6が頭に当たると問答無用で12点のダメージが降り注ぐため)。欠点として弾薬費が通常の2倍かかる上、弾薬入手が困難でGMの裁量次第では弾の補給もおぼつかないこともある。
- 中距離ミサイル(10/20/30/40連)
- AC10と似たような射程を持つミサイル。1クラスターあたり5点ダメージだが発射数が尋常ではなく、軽メックが不運にも全弾命中などしようものなら一瞬で粉々にされてしまう。発射数が多いため弾代もかさむのが欠点。
- NARCビーコン
- 当たった相手に対するミサイルの命中判定に+2される地味なアイテム。しかしビーコンは戦闘中除去も破壊も出来ず、戦闘終了まで効果が持続するためミサイルの集中砲火が恐くなる。
- 問題は対応したセンサーを積んだミサイルでないと効果が得られず、そのセンサーが付いたミサイルは通常の2倍のお値段がするということである。しかも上記の中距離ミサイルにはセンサー付き弾頭がない。
- 単発式ミサイル(短/中/長各種)
- 一度発射したら使えなくなるミサイルランチャー。ランチャーの装備重量が0.5トン増加する代わり、胴体に予備の弾薬が搭載されなくなる。
- 被弾時の誘爆の心配をしなくていいが、1回しか使えなくなるため、主力武器が別にあり、かつミサイルの弾薬が弱点になっている壁役向けの装備。
- 射程延長型レーザー(小/中/大)
- 通称ER(Extended Range)レーザー。通常のレーザーより射程が3~4へクス延長され、発熱量が1.5倍に増加している。単体で見るとイマイチだが、他の武器と組み合わせての射撃に幅が出る。
- 特に最大射程3だった小口径レーザーは射程が6まで延長されるため、使い勝手がぐっとあがる。
- 射程延長型粒子ビーム砲
- 通称ER(Extended Range)PPC。最大射程23と長射程ミサイル以上を誇り、最小射程なしと極めて使い勝手がいい反面、発熱量が1.5倍のため、ヘタな機体が撃つと大変なことになる。
- パルスレーザー(小/中/大)
- 同じ口径のレーザーと比較すると重い装備だが命中率がよく、さらにモードを切り替えると2つの目標に1/2のダメージで別々に攻撃可能というレーザーマシンガン。1つの目標の2箇所に攻撃、という器用なことは出来ないので注意。
- ガウスライフル/軽ガウスライフル
- いわゆるレールガン。長射程で高威力で発熱も少なく弾薬に誘爆しない夢の兵器。軽ガウスライフルは威力が半分の代わり、射程が延長され弾薬が倍になる。重たいが非常に強力な兵器であり、AC20、PPCとならぶ必殺のロマン武器。
- 欠点はガウスライフル自体が破壊されるとメックに20点ものダメージが問答無用で降り注ぐ点である。
- 高速振動剣
- 人間用の格闘武器をメック用にスケールアップしたもの。元々はグループSNEのリプレイで設定されたオリジナル武器だったが、最新版のルールブックで追加された逆輸入武器。発熱するのが欠点だが破壊力はソードやハチェットより上の必殺級武器である。
- トリプル・ストレングス・マイアマー
- 通称T・S・M。ドラコ連合で開発された新型のマイアマー。発熱による機動力の低下をある程度無視する事が可能になるが、最大の特徴は格闘攻撃の威力が倍増されるというもの。ただし、上記の高速振動剣との組み合わせはさすがに凶悪すぎたので、高速振動剣使用時には効果を発揮しないと設定された。
他に大型だが軽量なXLエンジンやエンドースチール製フレーム、フェロファイバー装甲などもレベル2装備として追加される。
悪玉勢力
クリタ家率いるドラコ連合は、初期の設定ではいわゆる「悪玉国家」として、「はびこるヤクザ」「狂信的な国民」「エコノミックアニマル」「恐怖政治」などといった1980年代のアメリカにとっての悪役(つまり日本とソ連)のフレーバーを凝縮したイメージで語られており、実際に公式ストーリーに登場するキャラクターも冷酷残忍なタイプが多かった。
90年代以降のJAPANブームに釣られるかのように、この国は公式ストーリー上でもどんどん様変わりして行き、ついには「イノベーション溢れるHENTAI技術と精神的美徳を併せ持った主人公格」にのし上がってしまった。この設定の変遷について、一部では「仁義なき戦いを見ていたつもりが、いつの間にか瀬戸の花嫁になっていた」と形容されることがある。
なお、余談ながら、原語版の最新設定において敵役を演じているのは、自由世界同盟を根城とするワード・オブ・ブレイク(コムスター原理主義派テロリスト軍団)である。ハリウッド映画しかり、エンターテイメントは時代を映す鏡ということなのかもしれない。
コンピュータゲーム版
主にPCゲーム、そしてxbox版としていくつかゲームが発売された。
しかし前述の版権問題の都合上、メックの一部は使うことが出来なかったため、コンピュータゲームオリジナルのメックが数多く登場し、それらを主力として扱うことになる。そのためコンピュータゲームからバトルテック世界を知ったユーザーと、ボードゲーム・TRPG版バトルテックユーザーとの間ではメックの知名度に大きな差がある。
これについては日本国内で展開されていたバトルテックが3025年ごろ、コンピュータゲームのほとんどが3050年以降を題材にしているためでもある。
さらにゲームシステムの都合上、ほとんどのゲームで格闘攻撃がオミットされてしまっているため、キックや体当たりやデスフロムアバブといった話も通じない場合がある。
とはいえゲーム版から新たに氏族とよばれる勢力が追加され、公式にも反映されるなど世界観としてはきちんとつながっているので、楽しんでプレイして欲しい。
2009年には新作の製作も発表された。
氏族(クラン)
氏族誕生のきっかけは28世紀の星間連盟の崩壊まで遡る。
このとき星間連盟のアレクサンドル・ケレンスキー将軍は不毛で無益な戦いを嫌い、賛同者を募って中心領域を離れ辺境に脱出、居住可能な惑星で細々と暮らそうと考えた。
しかしケレンスキーの考えに賛同し、ともに脱出した星間連盟の軍人は全体の半分以上(一説には3/4とも言われる)にものぼった。この大脱出が星間連盟の崩壊と混乱に拍車をかける。
一方ケレンスキー将軍とともに脱出した軍人たちはおのおの居住可能な惑星を発見し、そこに住み着いた。
しかし鉄かジュラルミンで出来てる頭しか持たない軍人がほとんどといういびつな社会構造は、やがて彼らを「強ければ強いほどえらい」というトンデモ理論へと走らせる。
そうして生まれたのが氏族という勢力だった。
氏族たちは戦いを神聖で崇高なものと考え、負けるくらいなら死を選び、卑怯なことをするぐらいなら死を選び、氏族の掟を破るぐらいなら死を選ぶ、サムラーイサムラーイブシドーな脳みそに変わってしまっていた。
また彼らは強くなってすごい人類に進歩するという目的の元、子孫は強い遺伝子を持った戦士同士の人工授精で生まれる。さらに神経回路の改造などもごく当たり前に行われる。体に刺青をしてる氏族はヤクザではなく神経回路が改造されている証拠である。
たまに恋愛の末に普通に生まれると、生まれた子供は「人腹生まれ」という劣等人種として差別を受ける。
つまり中心領域の人間はみんな劣等人種なのだが、前述の「強ければ強いほどえらい」理論に従い、強いことを証明できれば人腹生まれでも戦士として認められる。(この辺割とゆるい氏族もいれば、絶対認めない氏族もいる)
氏族同士の戦いは神判と呼ばれる。神判の目的は究極の生存競争である戦争によってより強い人間が生き残り、さらに進歩するためという脳まで筋肉に侵食されているような理屈である。
ただし何でもかんでも戦争ではなく、腕相撲や酒の飲み比べやゲーム対戦、はてはサッカーで神判をした例もある。
氏族ごとにあるていど対立はあるものの、究極の目的である人類の進化と、母なる地球への帰還と星間連盟の復活を求め、ついに3050年には中心領域へ侵攻した。強力なメックとすぐれた操縦技術を持つ氏族の戦士たちによって中心領域は瞬く間に敗北し、敗走を続ける。中心領域の六大王家はコムスターの主導で一時的な協力体制を作ってこれを迎撃し、「ツカイードの戦い」で激戦の末氏族を破った。さらに中心領域軍は氏族の本星である「ストラナメクティ」に逆侵攻を仕掛け、30年間の不可侵条約の締結を持って氏族侵攻は終結する。
その後、中心領域は氏族というにぎやかな面子を加えて余計に混乱し、カオスマーチやワードオブブレイク騒乱(聖戦)を経て、大暗黒時代へ突入するのだった・・・。
氏族は人類の技術が大きく後退することになった継承権戦争の影響を受ける前に脱出し、その後独自に発展したため、中心領域よりもすぐれた技術を持っている。
問題は脳筋種族だったためそれらはほとんど軍事的なものに回されてしまったことだが、おかげで氏族のメックは同じクラスの中心領域製のものと比較しても性能が高い。
クランメックに対抗するためには3倍の規模であたらなければならないとも言われた。
さらに武装も中心領域の同じものと比較して軽く、熱量も少なく、威力も高いなどいい事尽くめだったりする。
中心領域製メックの武装を全部クラン製に付け替えるだけでお手軽スペックアップできるほどである。
ただし光学兵器に関しては熱量が増えてるものも多い。
また氏族では格闘戦を「野蛮で低俗な劣等人種の見苦しい攻撃方法」と考えているため、ほとんどの氏族は格闘戦に対して消極的である他、一撃必殺を重視して実弾武器を好む傾向があった。この為、「ツカイードの戦い」では補給線を絶たれて武器の運用が不可能になった所を、格闘武器と光学兵器を満載した中心領域製メックにフルボッコにされてしまう。
コンピュータゲーム版で追加されたメック紹介
- バトルメック(インナースフィア)
- バトルメック(クランメック)
アーケードゲーム版
Virtual Worldが運営していた(アメリカでは運営中)のアーケードゲーム版バトルテック。バトルテックセンターという専用の施設の元、日本では1992年~1998年の間随時バージョンアップを行いながら運営されていた。当時、日本でプレイできるポリゴンベースのロボットゲーは未だ無く(バーチャロンでさえ95年である)、くさ分け的存在で系譜的には戦場の絆のおじいちゃん。最大8人同時対戦。
最大の特徴はコクピットを模した密閉型の筐体で、ユーザーは基本的にはフットペダル(方向舵)とジョイスティック(上半身の旋回)、レバー(前進後退)を使って操作する。ジョイスティックには3つのボタンがついており、それぞれにどの武器を割り当てるかを画面左右のスイッチで操作する事ができる。武器アサインは後続のバトルテック関係のゲームのそれとほぼ同じ物。実弾系武器は熱量がたまり過ぎると誘爆するため、パージも同スイッチを3つ同時押しする事で行う。
日本展開時、使えるメックはMadcat、Vulture、Thor、Loki、Thunder、Avatorの6種類で、それぞれPrime、V1~V6のバリエーションが有り、好みのメックを使う事ができた。
日本では短命に終わったが、世界大会も行われており、日本チームも優勝していたりする。
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関連項目
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