ババヲナラスクルマとは、その名の通り、一生懸命馬場を均す車両のことである。
概要
2011年1月7日、岐阜県の笠松競馬場で行われた第3レース・若竹特別(ダート1800メートル)の競走中の出来事。ラストのホームストレート上を突如2台の車両が出走し、アナウンサー・観客・騎手・その他関係者を大いに驚かせた。
颯爽と後続を引き離したフサイチフウジンがそのままのリードを保ったままレースは進み、第4コーナーを回ったところに青っぽいボディの車両が2台出現(以下はレース終了直後の実際の実況の一部)。
直線コース・・・・・・
(約8秒間の沈黙)
ぉばら、ババヲナラスクルマが、直線コース2台出ております。
フサイチフウジンは大外に持ち出してゴールへ。2番手のマイネルブラジリエは華麗に2両のババヲナラスクルマの間をすり抜けた。他の3頭も何とかゴールまでたどり着いたものの、ババヲナラスクルマがレースに与えた影響は大きく、当然レースは不成立となってしまう。無論、馬券に投票された総額786万2000円は全額返金である。
ネット上では「笠松大障害」などと揶揄され、面白がられたが、これは人馬共に全員無事だったから笑い話ですんだものの、もしも車体か車幅1つ分左に張り出した器具(後述)に衝突していたら馬や騎手が均される大惨事になっていた可能性もあった。
岐阜県地方競馬組合は、「深くお詫びし以後、このようなことのないよう、真摯に開催業務を遂行します」とした。
ババヲナラスクルマの生態
本来は田園を均して平坦にするための農具(名前をハロー(harrow/砕土機)という)を牽引する、コース整備用トラクター(笠松競馬場では「ニューホランド T6062」が使用されている模様)であり、ハロー車と呼ばれる。なお、中央競馬ではトラクターではなく、メルセデス・ベンツ製の多目的トラックであるウニモグを使用する例が多い。
ハローにはその構造によってディスクハロー、パワーハローなど数種類あるが、競馬場で使われるものは方形枠に大型の釘を固定し、トラクターや軽トラで牽引されることで地均しを行う最も古典的な構造のもの。
農業用のものではトラクターのPTO(Power Take-Off = 動力取出し装置。備え付けの作業用装置などを動かすために車両駆動用エンジンから動力の一部を取り出す機構)から動力を受けて稼動するものもあるが、競馬場のダートコースは固い土を耕したりする必要はなく、蹄の跡を均すぐらいであるためこれでも十分な性能となる。サイズはまちまち。参考までに東京競馬場で使用されているものは幅6mである。
開催日の競馬場に行ったことがあるなら、レースの間にダートコースを均している様子をいつでも見ることができる。のんきに走っているように思えるが、実態は馬の足跡でハンドルが取られることも多く、高度なけん引技術が必要となる仕事である。因みにダートの均しが終わった後は、運転手さんは芝コースの均し作業を手伝っているとか。
レースを台無しにしたものの、一生懸命に馬場をならすその愛くるしい姿を見て、ファンが増えたとか増えなかったとか。実際問題としてハローは農機具としては「馬鍬(まぐわ)」とも呼ばれ、トラクター等の登場以前は主に農耕馬に牽引させていたのだから、実質的にババヲナラスクルマは馬と同等であると言っても過言ではないのだ(過言)。
決してガンダムの丸いやつ(Haro)ではない。
ハローにもし遭遇したら丁寧に「ハロー(Hello.)」と挨拶をするのが礼儀である。
なぜ乱入したのか
原因は運転手の勘違い。テヘッ☆
乱入してしまったレースは1800メートル戦であり、競馬場を1周半するのであるがババヲナラスクルマの運転手はレースを半周で終わる800メートル戦と勘違いしてしまい、レースに乱入してしまった。
笠松競馬では1800メートル戦が組まれるのは基本的に遅い時間なのだが、このレースは諸事情で5頭立てになってしまった 影響で通常よりも早い時間に編成され、その時間帯が普段は800メートル戦が組まれることの多い時間帯だったためこのような勘違いが発生してしまったようだ。800メートル戦と1800メートル戦はほぼ同じ位置からスタートするのも勘違いに気付けなかった一因だろう。
決してババヲナラスクルマが悪いわけではない。
神実況
途中、マイネルブラジリエの言いづらさに苦戦していたもののレース展開を見事に実況していた。藤原氏がババヲナラスクルマの存在に気づいたのは先頭馬が第4コーナーを回ったときである。3コーナーを回る際に場内がザワついていることに気がつき疑問に思っていたらしい。
しかし存在に気づいてからも藤原氏はババヲナラスクルマを華麗にスルーし、レースを追い続けている。レースの不成立が決定していたわけでもなく、競馬の実況という自分の仕事に徹したと本人は語っている。
そのあまりにも見事なスルースキルは素晴らしいの一言であり、神実況と称されている。
一方、おそらくはコース整備の用語まで精通していなかったか、あまりのハプニングにど忘れしたかのどちらかが理由で、レース終了直後は当該車両の「ハロー車」という名称が出てこず「ババヲナラスクルマ」と困惑気味に実況。これを競馬民が面白がったことで、いかにも競走馬っぽく、そしてこのときの片言を表現するかのようなカタカナ表記が誕生してしまった。
ババヲナラスクルマの近縁種
ゲートヲヒククルマ
公式での名称は「スターティングゲート牽引車」「スタートゲート牽引トラクター」など。
中央競馬で使われているものは、見た目こそ農業用トラクターだが、芝を傷めないような特殊なタイヤを履き、運転席の計器に防水加工をするなど、これ専用の特殊設計である。
ニコニコ動画のでは、こちらにも「ババヲナラスクルマ」とコメントする人がいるが、実際にババヲナラス業務に加わることはない。
中央競馬では英国マッセイ・ファーガソン社(現在の本社は米国、AGCO傘下)のトラクターが使用されている。かつてはフォード製のものが使用された。
スターティングゲートは、特に2周する場合はスタート後速やかに移動させなければならない。車が動かなくなると大変なことになるため、必ず2台で出動する。万が一車が動かなくなった場合、予備の車がその動かなくなった車ごと牽引するようになっている。
地方競馬では、園田競馬など、トラクターでなくトレーラーで牽引するところもある。
関連動画
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