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バルサルタン(Valsartan)とは、高血圧症の治療に用いられるアンジオテンシンII受容体拮抗である。先発医薬品の販売名ディオバン®

概要

有機化合物
バルサルタン
バルサルタン
基本情報
英名 Valsartan
化学 C24H29N5O3
分子量 435.52
化合物テンプレート

バルサルタンは、アンジオテンシンII受容体拮抗ARB)であり、高血圧症の治療(降圧)である。1989年スイス企業チバガイギー(現在のノバルティス)が創製した。経口投与可で長時間安定した作用を示す降圧として、1996~1997年ごろに欧で販売承認を取得。日本では、2000年からディオバン®錠20mg/40mg/80mgが、2004年からディオバン®160mgが販売開始されている。また、小児における高血圧症の適応は2012年に取得した。なしで用できる口腔内崩壊錠(OD錠)は2013年から販売されている。

バルサルタンは、アミノ酸L-バリンの構造をもち、名に“Val-”を冠する。“-sartan”はARB共通のステム幹)である。先発医薬品の“Diovan®”の名は、“Dual effects”と“Valsartan”に由来するとのこと。また、“Orally disintegrating tablet”よりOD錠としている。

バルサルタン誘導体として、サクビトリルバルサルタン(エンレス®)がある。これはサクビトリルとバルサルタンのプロドラッグであり、バルサルタンによる降圧作用のほかサクビトリルに起因する利尿作用や抗線維化作用を示す。高血圧症や慢性心不全の治療に用いられる。

効能・効果

日本での適応症は高血圧症のみだが、アメリカ合衆国では心不全心筋梗塞後の治療、イギリスドイツフランスでは心不全や亜急性心筋梗塞の治療も適応となっている。

用法・用量

成人の場合、バルサルタン40~80mgを1日1回経口投与する。年齢や症状に応じて適宜増減。1日の最大投与量は160mg

6歳以上の小児の場合、体重35kg未満なら20mg、体重35kg以上なら40mgを1日1回経口投与する。年齢や症状により適宜増減。体重35kg未満の小児における1日の最大投与量は40mg。35kg以上の小児でも1日80mgえての使用経験はない。

作用機序

バルサルタンなどのアンジオテンシンII受容体拮抗ARB)は、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAA系)を抑制する物である。RAA系とは、血圧や循環血液量の調節、電解質の調節に関わる機構である。血圧が低下すると腎臓の傍糸球体細胞からレニンが分泌され、アンジオテンシンIIアルドステロンなどの生理活性物質を介して血圧が上昇、恒常性が維持される仕組み。

ARBは、アンジオテンシンII受容体のうちAT1受容体を選択的に遮断する。アンジオテンシンIIによる血管収縮が抑制され、末血管抵抗が減少する。また、アルドステロン分泌が抑制されるため、腎臓におけるナトリウム再吸収が促進されず循環血液量が減少する。末血管抵抗減少や循環血液量減少により、血圧が低下する。

また、ARBには臓器保護作用もあるとされ、糖尿病性腎症や心不全の治療に用いられるARBもある。

禁忌・副作用

奇形性などの報告があるため、妊婦妊娠している可性のある女性に対する投与は禁忌。汁中に移行するため、授乳婦にも投与しないことが望ましい。また、レニン阻であるアリスレン(ラジレス®)投与中の糖尿病患者への投与も禁忌。ARB併用でRAA系抑制作用が増強され、副作用を発現するリスクが高まるため。ただし、ほかの降圧治療を実施してなお血圧コントロール不良となる患者を除く。

副作用として、高カリウム血症や血管浮腫などがある。高カリウム血症では、の入りにくさ、手足や唇のしびれなど、血管浮腫では、息苦しさ、顔や唇の腫れなどがあらわれることがある。このような症状に気づいたら、医師薬剤師に相談すること。

同種同効薬

アンジオテンシンII受容体拮抗ARB)として、ロサルタン(ニューロタン®)、カンサルタンシレキチル(ブロプレス®)、テルミサルタン(ミカルディス®)、オルメサルタンメドキソミル(オルメテック®)、イルベサルタン(イルベタン®アバプロ®)、アジルサルタン(アジルバ®)がある。

いずれも高血圧症の治療に用いられる。オルメサルタンメドキソミルアジルサルタンは降圧作用が強い。また、ロサルタンは糖尿病性腎症、カンサルタンシレキチルは慢性心不全にも適応がある。

配合剤

バルサルタンは、カルシウム拮抗やチアジド系利尿薬との配合剤が上されている。いずれも高血圧症の治療に用いられる。配合剤には投与量の微調整がしづらい欠点があるが、複数の治療が1錠にまとめてあるため一度に用する錠数が減り、費用も安く抑えられる利点がある。

ディオ®バルヒディオ®MDEXは、それぞれ“Moderate”および“Extra”に由来する。

ディオバン事件

ディオバン事件とは、2007年4月に発表された慈恵ハート研究をはじめとする、ディオバン®に関する5つの臨床研究において不正がなされ、それを受けて一連の論文が撤回された事件である。バルサルタン事件とも呼ばれる。ディオバン®を製造販売している日本法人のノバルティスファーマ社の元社員が、その身分を秘匿したうえで研究データの収集・解析に関与し、データざんしていた。5つの臨床研究はノバルティスファーマ社からの総額11億円以上の支援を受けて、それぞれ別の大学で行われたものだった。

これらのざんされた論文をもとに、医療従事者を対とした講演会などでディオバン®の販売促進活動は行われた。ディオバン®2001年の年間売上高が160億円程度であったのに対し、2009年の年間売上高は1,400億円以上。当該論文のがどの程度あったのかは定かではないが、少なくないを与えた可性は否定できない。

不正に関与したノバルティスファーマ社の元社員は、2014年事法違反(虚偽・誇大広告)の容疑で逮捕された。裁判では、元社員がデータを意図的にざんしていたことは認められた。しかし、学術論文は事法第66条第1項に定める誇大広告には該当しないとして、2021年無罪が確定している。当時の事法ではこの事件に適切に対応できなかったといえる。このような事件が繰り返されないよう、2018年に臨床研究法が施行された。

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