バスト、又はバースト(Bast)とは、古代エジプトの猫の女神であり、クトゥルー神話の神性でもある。
今日ではエジプトの女神としてはバステト(Bastet)が使われており、ここではクトゥルー神話の神性について語る。
なお、以降は記事名に従い名称の記述をバーストに統一する。
概要
バーストはギリシャ語名であるが、バステトはおそらくエジプト語名である。近年、バステト神殿が発掘された関係からかこの女神の表記はバステトに変更されているが、クトゥルー神話では戦前の表記のまま変わらずバーストの名が採用されている。他の英字綴りとしてB'sst、Baast、Ubaste、Baset等が存在する。
バーストの姿は猫の姿、もしくは猫の頭を持った女性の姿として我々の前に現われることだろう。
エジプト好きのロバート・ブロックの『ブバスティスの子ら』に登場する。
ブロックは「ブバスティスを都市の名であると同時に女神の別名である」としているがこれは間違いで、ブバスティスはバーストを祀る都市の名であって女神そのものの名前ではない。なお、ブバスティスは『バーストの家』という意味である。
イシスの娘ともされている。
クトゥルー神話の魔導書の一つ『妖蛆の秘密』に、血なまぐさい生贄の儀式を繰り返していたバーストの神官たちがブリテン島のコーンウォールの地下に移住した経緯が記されており、そこには彼等の秘密が残されていたという。
ブロックの筆の運びは、そこに出現した半人半獣の怪物は女神そのものではなく、神官たちが実験で作り出した女神の化身であるように思わせているが、真相は不明である。
なお、クトゥルフ神話TRPGでは、ブロックの作品は無視して代わりにラヴクラフトのエッセイからバストを旧神として導入するという無茶ぶりを見せている。これはおそらく、ラヴクラフトがブロック相手の書簡にふざけて狂えるバストの神官ラブ=ケラフと署名した事に起因していると思われる。TRPGの設定では、『ブバスティスの子ら』の怪物は「暗黒のファラオ」ことネフレン=カによって堕落したあげくに追放されたバースト信仰団の産物だという事になっている。
『未知なるカダスを夢に求めて』に登場する「土星からの猫」は地球の猫と敵対している。ここから考えるにドリームランドの異星に棲む猫(にあたる種族)はバーストを信仰していないのだろう。
リン・カーターによれば、古代大陸ハイパーボリアのヴァラードの民はイクセエラ(Ixeera)という猫の女神を信仰していた[1]。この作家の設定では、エイボンの書は弟子であったヴァラードのサイロンにより纏められている。
なおクラーク・アシュトン・スミスは書簡内でハイパーボリアの猫女神ファウズ(Phauz)を創作していた [2]のだが、リン・カーターはこれを知らなかったようだ。
二次創作やゲームシナリオ作成をする際には、イクセエラやファウズがバーストと同じ女神だと見なしてもいいし、別々の神性だと考えてもいいだろう。
猫を愛し、猫に愛される。猫になにかあれば救いの手を差し伸べる。そんな神かもしれない。
ラヴクラフトは猫好きであると知られているため、この猫の女神はクトゥルフ神話のなかでも重要な位置にあると考えられる。
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関連項目
脚注
- *『ヴァラードのサイロンによるエイボンの生涯/The Life of Eibon According to the Cyron of Varaad』(1988)、『クトゥルフ神話カルトブック エイボンの書』収録
- *「古代ヒューペルボリアの猫神信仰 - 新・凡々ブログ」に詳しい
『The Selected Letters of Clark Ashton Smith』をGoogleブックスで書籍内文字検索をすると原文がチラ見できる
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- ページ番号: 4904866
- リビジョン番号: 2772625
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