バーチャロイド(VirtuaRoid、以下VR)とは、SEGAのゲーム「電脳戦機バーチャロン」シリーズに登場する架空の機動兵器(ロボット)の総称である。各登場作品によって、第1世代から第3世代までに分類される。ゲーム中に登場する第2世代までのVRデザインは全てカトキハジメ氏により行われている。第3世代のVRの総数50種近いほぼ全てのデザインも氏によるもの。
概要
ゲーム内でプレイヤーが操作するロボットのことであり、「電脳戦機バーチャロン」(Operation Moon Gate = OMG)に登場するVRを第1世代VR、「電脳戦機バーチャロン オラトリオ・タングラム」(VOOT)に登場するVRを第2世代VR、「電脳戦機 バーチャロンフォース」「電脳戦機バーチャロンマーズ」に登場するVRを第3世代VRと分類する(一部例外あり)。
基本的には有人機だが、初代「電脳戦機バーチャロン」のゲーム中では、とある事情によりプレイヤーが操作する全機が遠隔操縦の無人機となっている。OMG稼働当初は15m級という具体的なサイズの設定があり、また「機動戦士Vガンダム」のMS群に近い数字の全高・重量・出力等のスペックが発表されていたのだが、バーチャロン独自のイメージが確立したオラトリオ・タングラム以降の作品では、このような橋渡し的な設定は見られなくなった。
圧倒的な超高速で縦横無尽に3Dフィールドを駆け回るバーチャロイドの勇姿は、それまでにないゲーム性と相まっていわゆるロボット物アニメファン以外のユーザーをも多く虜にし、人気作となった。
尚、バーチャロイドの略称はVirtuaRoid=VRだが、バーチャロンの略称はVirtualOn=VOとなり、それぞれ異なるので注意。
作中世界のバーチャロイド
開発経緯
電脳歴も半世紀を過ぎ(厳密には16進数表記なので140年近く経過)、人類はその技術的限界を目の当たりにし、限られた資源と世界の中で日々を過ごすことを半ば受け入れた時代に突如、月面に遺跡「ムーンゲート」が発見された。その内部に施されたオーバーテクノロジーと、その中核をなす「Vクリスタル」の存在は遺跡を発見したDN社によって隠匿されながら、研究が開始された。
「バーチャロン現象」や「リバースコンバート」といった数多くの現象が発見されつつも、実利に繋がる技術が発見されず、予算縮小の憂き目に遭ったため、何がしの利潤を得る方策として、「リバース・コンバート」を利用し、“戦争”がプロレスやサーカスと同じ興業事業として扱われる世情も含め、『前代未聞の人型ロボットを活用した戦争』というビジネスモデルへと転換、その中で製作されたのがバーチャロイドである。
V-コンバータ
機体の中枢は「V-コンバータ」と呼ばれる。機体背面に位置する機構であり、コックピットはこれに直結される。莫大な戦闘用稼働エネルギーの供給のみならず、戦闘時の機動制御の中枢部分、果ては機体そのものの構築さえもがV-コンバータによって成立しているにも関わらず、V-コンバータには原理的に未解明の部分が多い。人類外文明の遺物であるV-クリスタルの機能をごく限定的に再現したものにすぎないからである。 ガンダムでいうミノフスキー粒子、ガンダム00のGNドライヴ等に相当する、とても便利な設定。
設計図にしてコックピットであり動力炉であるV-コンバータであるが、未知の技術に由来するためか、高いエネルギーを発生する際に、V-コンバーター側が強制的に蓋を開放し、ディスクを露出して冷却するという現象が起こる。そのため、ダッシュ・ジャンプといった各種戦闘機動の際は熱が青白いプラズマとして放出され、ディスクが外部へ飛び出す。
V-コンバータを稼働させるには内蔵されたV-ディスクのフォーマットが必須なのだが、その方法が
「人間の精神をリンクさせる」ことであるためフォーマット中に精神障害が発生しやすい。またV-ディスクの組成との
相性が合わないとフォーマットすら出来ない。
特徴的なデザインとして、第1世代VRのV-コンバータは灰色の背がサターンセガサターンが、第2世代VRのV-コンバータはVer.5.2では白サターン、Ver5.4以降はドリームキャストがモチーフになっている。これらはそれぞれのゲームが稼働を開始した当時のセガの最先端ハードであり、第3世代VRでは(セガが家庭用ハード事業から撤退したため)装飾のないディスクキャリア形態となっている。
M.S.B.S.
バーチャロイドは、V-クリスタルの性質である人の精神と交感する性質(バーチャロン現象)を利用することによって活動する。これにより、人型兵器という膨大なパーツ数を同期させる必要のあるメカでありながら大幅な操作系の簡略化(ボタン2つついたレバー二本、いわいるツインスティック)に成功している。
しかし、V-クリスタルはいわば“意思”のようなものを持っており、単純に稼働させるだけでは搭乗者の精神がV-クリスタルと交錯し、最悪廃人になる事件が発生するため、パイロットとV-コンバータ(のクリスタル質)を仲介するオペレーティングシステムが要求された。それがこのM.S.B.S.である。だがM.S.B.S.をそのままV-クリスタルと仲介させるとパイロットの脳にかかる負担が大きく制御信号もV-コンバータにより増幅されてコクピットに送り返されるので、信号送信のタイミングを0.5秒ずらす(信号カット)ことで操縦・制御を可能にした。
内容としてはバーチャロイドの操作系・火器管制、使用するV-クリスタルやV-コンバーターの最適化といった兵器としての機能のほか、リバース・コンバート現象の制御、バージョンを経るに従って電脳虚数空間(C.I.S)という物理法則の通用しない異次元においてパイロットと機体を保護する“C.I.S突入艇”といった機能が付与されていった。
このO.Sの多くは人型兵器開発プランに方針転換して以後のものであり、人型兵器用に特化されたO.Sのプログラムを他の機械に転用するような改善ができず、V-コンバータをバーチャロイド専用のものとする最大の要因となってしまった。
ともかく、我々がツインスティックやコントローラーでバーチャロイドを操作できるのはこのM.S.B.Sの助力あってこそであり、もしこれがなければさながら「鉄騎」のような状態となったであろう。
バージョンの変遷……
- ver.2.~ : 実用化されたバーチャロイドが搭載していた最初期のM.S.B.S.のバージョン
- ver.3.~ : 「電脳戦機バーチャロン」劇中のバージョン。遠隔操作を可能にする機能を持つ。
- ver.5.~ : 「オラトリオタングラム」劇中のバージョン。『地球・月』それぞれのクリスタル質のコンバーターに対応するほか、C.I.S突入が可能。
- ver.7.~ : 「VO4」劇中のバージョン。『火星・木星』といったさらに複数のクリスタル質に対応したものと思われる。
- ver.8.~ : 「MARZ」劇中のバージョン。C.I.S突入機能が大幅に強化され、長時間の滞在と戦闘が可能になったと思われる。
- ver.20.5 :小説版「とある魔術の電脳戦機」劇中のバージョン。
- ver.55.55: ゲーム版「とある」劇中のバージョン。
※余談であるが、このバージョンは実際のゲーム開発現場で与えられたバージョンと同じである。下動画のDr.ワタリ氏の発言による。
リバース・コンバート
V-コンバータに物体の構造・組成等のデータを入力した状態で一定以上の負荷を掛けると、そのデータが実体として実空間に生成される。これがリバース・コンバートと呼ばれる現象である。バーチャロイドの機体はこれによって成り立っており、ゆえに技術的・工業的な問題で従来製作が困難とされた設計や素材も完璧に実現することができる。3DCGの製作過程を想像していただければ分かりやすいだろう。ただしVコンバータの出力の限界やM.S.B.S.が人型兵器の制御に特化していることから、現在の所バーチャロイド以外の物体は生成できない。また生成できるものは全て物理法則が
適用される・説明できる内容のみで想像の産物など非論理的なものは一切生成できない。
これによって人型兵器というオーバーテクノロジーは電脳歴の世界に完成することとなり、戦争興業を大きく盛り立てる中核となりえた。
ドリームキャスト版オラトリオ・タングラムのOPムービーでは、テムジンのリバース・コンバートの様子が描かれている。
兵器としての評価
人型兵器製作などという突飛のない話のために開発は難航を極め、ある程度既存の技術を反映(各種セガの娯楽機器のデザインを踏襲している理由)し、リバース・コンバートのバックアップを受けても『コンペ用にとにかく動けるようにはした』試作型のテムジン(MBV-04)の稼働率は配備されたうちのわずか20%であった。
しかし、技術的制約を受けないバーチャロイドの性能はその20%の頭数ですら既存の兵器を軽く凌駕。実戦投入した際の評価は上々で、それを契機に第一世代型バーチャロイドを生みだすこととなった。
※ちなみに、ここまでは初代電脳戦機バーチャロン開発秘話と意図的に重ね合わされている。
しかし、「オペレーションムーンゲート」事件以後、バーチャロイドはその隠匿され続けた開発経緯から開発を凍結された。特に当時はバーチャロイドの開発費用は破格で普及率は悪く、最も多く支給されたのが粗雑な作りの「ベルグドル」ばかりとあって、“不完全で非効率”という現場単位の声も大きな原因であった。
また従来の兵器とは別次元の高性能故にそれらに一方的に勝利してしまい、興行的にマッチング出来る同等の戦力、勢力が存在しないという、商品としての根本的な欠陥もVRの存在を不遇なものとしていた。
しかし、それまでバーチャロイドを専業的に運用していたDNAとは別のバーチャロイド運用組織Rnaによる運用と、それらが持つ第2世代バーチャロイドの完成度の高さに評価は逆転。さらに図らずもVR同士によるダイナミックな戦闘が限定戦争において実現し、DNA対Rnaという一見して世間的に分かりやすく見える構図も構築され、VRは戦争興業に大いに受け入れられていった。
そして狂乱ともいうべき第2世代型開発競争の後におとずれた「オラトリオタングラム」戦争において『世界最強の機動兵器』という評価を確固たるものとした。
VRの性能と世代
第1世代VRの時点で、V-コンバータとM.S.B.S.により常識外の能力を有している。
機動力としては数百km/h、ときに音速を突破する速度で戦場を縦横無尽に駆け抜け、急制動やジャンプにより極短時間での方向転換が可能。操作に対するレスポンスも極めて高く、超音速で飛来するミサイルを数百mの距離で目視の後に回避できる。
射撃兵装の打撃力は基本的に在来型兵器に準ずるが、高い追尾能力を有し命中率は相当に高められている。
また彼我の機体の相対距離が0mに近い近接戦闘では格闘や専用兵装による斬撃等で大ダメージを与えうる。
斯様に他の機動兵器に対して無敵とも言える能力を有した第1世代VRだったが、後発の第2世代VRには性能面で大きく水をあけられ、DNAの戦術の稚拙さもあって数で乗り切る戦いしか出来なかった。
特に機動力はそもそもの走行速度が向上している上に瞬間的な方向転換が可能となり、空中での移動能力の大幅な強化と相まって第1世代VRとは別次元のものとなっている。
防御面でもVアーマーと呼ばれる新機軸の装備を標準搭載しており、これにより遠距離での射撃兵装による損傷をほぼ無効化する。第1世代VRの火力では目視出来る距離でも全く歯が立たない。
射撃兵装では、第1世代VRでも一部の機体に備わっていた複数の弾種の迅速な撃ち分けが全ての機体で可能となっており、近接戦闘のバリーションの大幅な拡充もあって、格段に柔軟な運用が可能となっている。
全地球圏で運用され隆盛を誇った第2世代VRの転機は、火星圏で発見されたマーズ・クリスタルの干渉によるV-コンバータの機能阻害、及びこれに類する障害が後に地球圏全体に拡大するという意外な形で訪れる。
これに対応すべく登場したのが第3世代VRである。
Vアーマーを持たないなど全体的な性能は第2世代VRに劣るが、マーズ・クリスタルの影響下でも性能低下を起こさないため、やがて火星圏のみならず地球圏でも機種の置換が進んでいった。
火星戦線の過酷な環境に適応するため戦闘ユニットとしての最小単位を2機としており、相互のV-コンバータを同調させるという独特な機能を有している。
追記、多分大事なこと
以上の記事を読む限り、一見してVRはガチガチのいわゆるリアルロボットに思えるかもしれないが、決してそうではない。むしろバーチャロンの世界観は何でもありと公言されており、VRも既存の枠にはまらない大胆な発想がふんだんに盛り込まれている。というか設定もよく読むと相当に奇想天外。
ベルグドルのようなリアルっぽいVRもあるが、それは「兵器然としているという個性を持ったVR」であり、バーチャロンのひとつの側面に過ぎない。別の側面を見ればそこにはハートビームを放つフェイ・イェンがいたりするのである。
特にオラトリオ・タングラムに登場する第2世代VRは、サーフィンするわ界王拳を使うわ冗談のように巨大なICBMを専用カメラ付きで撃つわ相手の武器を封印するわ氷の竜を呼び出すわブラックホールで射撃を吸い込むわ正四面体に拘束するわ踊るわ泳ぐわ脱ぐわ、昇竜烈波にライダーキックにライダーパンチにヒップアタックにビンタにカラダ手裏剣に果ては巨大化と、もうやりたい放題である。
まあ上記はやや極端な例であるが、こうした自由で個性的なデザインとアクションが各VR、ひいてはバーチャロンというゲームのキャラクターを強固にしていると言えよう。
関連動画
バーチャロイドに関するニコニコ動画の動画を紹介してください。
関連商品
関連コミュニティ
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関連項目
第1世代VR
- テムジン(MBV-04)
- バイパーⅡ
- ドルカス
- ベルグドル
- バル・バス・バウ
- アファームド
- フェイ・イェン
- ライデン(HBV-05)
- ヤガランデ (厳密にはVRに分類されない)
第2世代VR
- アファームド・ザ・バトラー
- アファームド・ザ・ストライカー
- アファームド・ザ・コマンダー
- ライデン(502系列)
- フェイ・イェンkn
- ドルドレイ
- グリスボック
- シュタインボック
- サイファー(バーチャロン)
- バル・シリーズ(xbv-819系)
- エンジェラン
- スペシネフ
- テムジン(707系列)
- 10/80sp (第1世代VRだが第2世代VRと同時期に尚運用されている)
- アジム (厳密にはVRに分類されない)
第3世代VR
- テムジン(747系列)
- VOX(バーチャロン)
- ライデン(512系列)
- アファームドJ(ザ・ジャガー)
- アファームドT(ザ・タイガー)
- マイザー(バーチャロン)
- スペシネフ13
- 景清(カゲキヨ)
- フェイ・イェン(TF-14系列)
- エンジェラン(TA-17系列)
- ガラヤカ
オリジナルVR、特殊なVR
- ファイユーブ(オリジナルフェイ・イェン)
- アイスドール
- フェイ・イェンHD
- エンジェラン巡愛
- アファームド・ザ・ハッター→ハッター軍曹の項に解説あり
- テムジン747J→チーフ(スパロボ)の項に解説あり
- テムジン タイプ a8→クリアリア・バイアステンの項に解説あり
- テムジン[ファイアフライ]
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