パプアとは
1.パプア(地理)-ニューギニア島のこと。パプワ。インドネシア領はパプア州。
2.パプア(機動戦士ガンダム)-「機動戦士ガンダム」シリーズに登場する艦戦。
本稿では2について述べる。
概要
劇中では第三話に初登場。所属はジオン公国軍。のちに、デラーズフリートやジオン共和国にも配備がなされていたことが確認されている。
艦種・名称
艦種は補給艦(輸送艦)とされ、初登場時の任務も明確に補給であった。ガンダムシリーズではホワイトベースのように艦種と実態に食い違いがあったり現代では使われていない艦種があったりが目立つが、ほぼ間違いなく分類通りの活躍をしている珍しい例である。
なお、ムックである「ガンダムセンチュリー」では元はミサイル宇宙戦艦であったとする記述があり、半ば公式化しているため本稿でもそれに準じて記載を進める。
名称は地名からと思われるが、ジオン軍とパプア島とのつながりは不明である(一応、ニューギニア島はジオンと関連があるとされる旧ドイツ領であった時期がある)。
建艦までの経緯
0058年、サイド3は独立宣言と共に国防隊の発足を宣言。国防の基本または来るべき戦争は宇宙戦であることが当然に予想される時代であり、早い段階で宇宙艦艇の増備に取り掛かった可能性が高い。しかし、サイド3(ジオン共和国またはムンゾ共和国)はジオン・ズム・ダイクンとデギン・ソド・ザビとの内紛に揺れ、連邦の経済制裁もあり国防隊・宇宙軍の整備は思いのほか進まなかった。
一方の連邦も宇宙軍の設立はサイド3国防隊健軍の翌年である0059年であり、ノウハウそのもののスタートラインは同じであった。しかし、国力の違いは明らかであり、0064年には早くも大規模観艦式を挙行。臍を噛む思いの国防隊を前に悠遊とその実力を内外に示した。
0068年、ジオン・ズム・ダイクンは死去。デギンはダイクン派を排除し、0069年にジオン公国の建国を宣言し自ら公王となり軍備増強路線を取る。この年にようやく完成をみた初の国産宇宙艦艇が「パプア」であった。
性能・ミサイル戦艦時代
ミサイル戦艦時代の装備は不明であり、形状も劇中で登場する補給艦時代と同様であったかは分からない。ただ、名称から当然にミサイルが主武装であったことが分かる。ミノフスキー粒子発見前は旧世紀のボタン戦争と同様、電波兵器や誘導弾全盛であり、まずこちらの配備を進めるのは建艦行政としては当然の判断であったのだろう。連邦も同時期かは不明だが、ミサイルを主装備としたレパント級ミサイルフリゲートを建艦しており、対外的にも標準的な軍備でもあった。
推進力はプラズマ/化学燃料ロケット併用型。同期に建艦された戦艦チベも同様のものを装備しており、当時の標準的な宇宙船のエンジンであったとされる。
チベとは役割分担があったとする説があり、これによれば砲撃力と対空能力はチベに譲っていたと思われる。
そのためか、個艦性能では相対的に平凡な艦であった。しかし、ジオン軍初の宇宙艦艇登場は建艦史に大きな足跡を残したようだ。連邦も本格的な宇宙艦艇の誕生に脅威を覚え、ミサイル戦を想定した宇宙艇(のちのパブリク)の配備を進めたことからも、MS誕生時よりも大きな扱いを受けたことが分かる。
なお、0069年に国防隊はジオン公国軍となっており、国防隊には所属した経歴はない。
ミノフスキー粒子の発見
しかし、竣工した翌年の0070年にはトレノフ・Y・ミノフスキー博士により、電磁波かく乱効果を有するミノフスキー粒子が発見。チャフとしての効果が実証されてしまったため、電子戦・誘導弾装備を前提としたパプアは早くも存在そのものが陳腐化してしまう。
また、ミノフスキー粒子は新型のビーム砲であるメガ粒子砲の開発にも寄与。推進機関もミノフスキー・イヨネスコ型核反応炉として、従来の推進機関を淘汰して行った。
戦艦チベは船体構造に余裕があり装備がミサイルではなく実体弾砲であったため、こちらに容易に換装出来たが、パプアはその様な設計ではなく戦闘艦としての近代化は不可能であった。
艦種変更へ
歴史のあだ花となることが確定してしまったパプアではあったが、すでに建艦された数十艘は廃艦されずに配備が進められた。これは戦力不足もさることながら、ジオン軍もミサイル戦を想定していると言う誤った情報を連邦軍に与え、ミノフスキー粒子散布下戦闘の有用性を連邦に悟らせない狙いがあったと言う指摘がある。0073年、MSが完成するとこの意味はより大きくなって行ったようだ。
しかし、さすがに実戦投入の予定がない艦艇をそのまま運用することは非効率であった。そこで、戦時には補給の任に就くことで有効活用することが考えられたのである。MS配備が決定し、開戦への機運が高まった0070年代後半より順次パプアの近代化が進められて行ったと考えられる。
性能・補給艦時代
全長253m、全幅119.2m、全高75m、積載重量8000t。軽巡洋艦のムサイよりはやや大型であり、戦艦であった名残が見える。また、ミサイル艦時代のライバルであった連邦のレパントと比べても大型であった。レパントがルウム戦役後は目立った改装も施されず淘汰されて行ったことを考えると、それでも余裕がある船体が買われたことが分かる。
主な能力は補給艦であるため、当然ながらその搭載力である。ミサイル搭載スペースをそのまま物資の搭載スペースとしている。概ね、一艘で二艘のムサイまたはチベの物資を補給することが可能であったとされる。
舷側には物資搬入用のコンベアパイプが装備され、効率的な受け渡しを可能とした。また、MSは艦首から放出して受け取る方式がとられている。MSの受け渡し用かは不明だが、小型のカタパルトもあり、ムサイには装備されていないことを考えるとある意味では近代的である(ただし、初期型ムサイ配備後に改装を受けているのなら不自然ではない)。
もっとも、艦内にMS用冷却装置を装備していないため、発進自体は可能であるが回収と整備は不可能である。MS-05ザクⅠが装備されていたが、荷役用であり戦闘行動は不可能であった(ザクⅠの排熱量がもともと少なかったためと言う説もある)。
エンジンはミサイル戦艦時代のプラズマ/化学燃料ロケットを改めて熱核ロケット二基に換装。艦隊に随伴する速力と航続力を必要とされており、こちらは兵装のように無改造とは行かなかったようだ。
武装も対空砲が数門程度とされており、実質的な戦闘力はほとんど有していなかった。
外観はムサイを逆さにした観があるが、艦体自体は双胴艦となっており、宇宙世紀の艦艇の中でも特異であると言える。
実戦と評価
当初は補給・輸送の主力はあくまでサイド3の民間徴用船舶が担うことが予測されていた。しかし、実戦が始まると思いのほか強行輸送の機会も多く、特に地球侵攻後は大気圏外からの物資放出任務の激増もあり、元来が軍艦であった本級はこう言った過酷な戦場で重用された。有名な任務にガデム隊による、ホワイトベース追撃戦に従事していたシャア・アズナブルへの補給任務がある。TV版では艦は喪失してしまうが、MS補給には成功しておりまさにいぶし銀の活躍であった。
また、MS IGLOOではムサイ並みに出番が与えられた。第一話では第603技術試験隊に、試作艦隊決戦砲ヨルムンガンドを引き渡す。しかし直後に突撃してきた連邦軍のパトロール艦隊から砲撃を受け、運悪く艦体に直撃。開戦から数日も経たないうちに戦没してしまった。
第二話では、地球に降下した友軍部隊に補給物資を投下するため地球軌道に集結。友軍が渇望する物資群を投下していった。
続く第三話では、地上軍が打ち上げたオデッサの資源を満載した三隻のパプアが登場。サイド3へと向かっていたが、ルナ2に近い航路を取ったため連邦軍の部隊に発見される。救援要請を出しつつ慌てて散開するパプアだが、護衛が付いていないため、誰が見ても撃沈は免れないはずだった。ところが幸運な事に、救援要請を聞きつけた第603技術試験隊のヅダが現れ、敵のオハイオ小隊を翻弄。追い払ってくれたため難を逃れた。
最終話では、第603技術試験隊に試作兵器ビグ・ラングを届けている。このように出番には恵まれていた。
重力戦線では、地球に降下する部隊を乗せて、降下作戦に参加している姿が描かれた。
しかし、さすがに旧式艦であることは否めず、ジオン公国は次級の輸送艦として専用艦であるパゾクを竣工させる。だが、ただでさえ乏しい艦艇建造能力を補助艦艇に過ぎない補給・輸送艦に裂く余裕はなく、終戦まで本級は使用され続けたとされる。
戦闘艦として活躍が出来ず、艦種変更後は同様の経緯を持つチベと同じく露骨な使いつぶし対象になってしまった感はある。それでも、消えてしまった連邦のカウンターパートであるレパントよりは余裕のある船体を採用していたのは、旧型を全て廃艦すると言う選択肢のないジオンの限られた国力を考えれば不幸中の幸いであったとも言える。
その後・後継艦
一年戦争後もジオン共和国では配備が続いた。デラーズ・フリートを中心としたジオン軍残党も装備し、老骨に鞭を打ちつつ任務を全うした艦が多かった。
後継艦としては前述のパゾクがあるが、大量生産は出来ずに本級の更新はなされなかった。連邦軍にはコロンブス級と言う専用艦があり、こちらの方が搭載力には優れていたため大きな影響は与えなかったようだ。また、ゲリラ単位での戦闘が増加し、専用艦による堂々とした補給よりも偽装民間船を使った補給が反連邦勢力では主流になったこともあり、この手の補給・輸送艦は目立たなくなって行ったのかもしれない。
その他よもやま
- 劇中では旧式艦であることは明言されているが、元戦艦であると言う設定は前述の通りガンダムセンチュリーのモノである。
- TV版、劇場版、THE ORIGIN版ではガデムたちの活躍が異なっている。
- Bシップコレクションからプラモデル化がなされている。
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関連項目
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