パリオリンピック(Paris Olympic)とは、2024年開催の第33回夏季オリンピック(Games of the XXXIII Olympia)である。
概要
夏季オリンピック | |
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パリオリンピック | |
正式名称 | |
第33回オリンピック競技大会 | |
Games of the XXXIII Olympiad | |
基本情報 | |
開催国 | フランス |
開催都市 | パリ |
開会式 | 2024年7月26日 |
閉会式 | 2024年8月11日 |
競技種目数 | 32競技329種目 |
参加国・地域 | 207 |
新採用/追加競技 | |
オリンピックテンプレートボックス |
フランスのパリで100年ぶり3回目の開催となる夏季オリンピックである。100年以上の間隔での開催はアテネ以来2例目、100年ちょうどでの開催は初となる。また3度目の開催はロンドンに次ぐ2例目である。フランスでのオリンピックの開催は冬季オリンピックも含めて1992年のアルベールビルオリンピック以来である。
2024年夏季オリンピック開催地の決定は異例のプロセスが採用された。
国名 | 都市名 | 開催年 |
フランス | パリ | 2024年開催 |
アメリカ合衆国 | ロサンゼルス | 2028年開催 |
立候補を検討した都市は多数に上るものの立候補自体の取り消しや立候補後の撤退が相次ぐ事態となった。直前の2022年冬季オリンピック招致の反省点も踏まえ国際オリンピック委員会は2024年夏季オリンピックと2028年夏季オリンピックの同時決定を発表。第131次国際オリンピック委員会総会でパリおよびロサンゼルスでの夏季オリンピック開催と、2024年大会がパリ、2028年大会がロサンゼルスであることが決定された。
パリは1924年以来の100年目の節目を要望しており、この開催順にはその要望が反映された形となっている。今大会から国際オリンピック委員会の新方針である「オリンピックアジェンダ2020」が本格的に適用される。
開かれた大会
大会スローガンは『Games wide open(開かれた大会)』。「セレブレーション(祭典)」、「レガシー(遺産)」、「エンゲージメント(全員参加)」の三つの柱を意識した取り組みが行われた。一つ目の柱では、下記のような史跡や歴史遺産が多数存在するセーヌ川周辺地域を丸ごと使用した開会式、フランス領タヒチでのサーフィン、サッカーの予選をフランス本土の6つの地域を用いる事でより広域に渡って大会の存在を周知させている。なおパラリンピックでは、コンコルド広場からシャンゼリゼ通り周辺を使用した開会式が行われる。
二つ目の柱においては、オリンピック・パラリンピック選手団を一つのチームとしてカウント、選手はもちろんボランティアに至るまで男女比を同数にする事で社会的な課題に向き合う姿勢を取った。SDGsに対しても既存施設の活用、化石燃料を極力用いない聖火台などでカーボンフットプリントの削減を図っている。
三つ目の柱については、各国のフランス大使館やフランスの地方自治体、スポーツ連盟などを認可したホストタウン事業を推進。これら団体や自治体を通じてフランス人ならびに海外フランス語圏の人々にパリ2024のダイナミズムに参加してもらう狙い。また一般向けに開かれたコミュニティ・パリ2024クラブを設置。ここを通じて、一般参加型マラソンへの登録資格を得るチャレンジなどができる。
異色の開会式
事前に告知があった通り本大会ではスタジアムを飛び出し、セーヌ川を中心に周辺市街地を丸々用いての開会式が開催。スタジアム外で開会式が行われたのは夏季オリンピック史上初である。スポーツを都市の中心にもたらすことで競技スポーツの革新を図りたいようだ。
イントロダクションからすぐに選手入場が始まる開会式もオリンピック史上初。アスリートのためのアスリートによってデザインされたセレモニーをコンセプトにしており、選手入場はセーヌ川を縦断する形で各国の選手団が船舶に乗ってトロガデロ広場に至る6kmを進む形式。その間にアトラクションを挟む形で進行した。なお入場順は従来通りギリシャ、難民選手団から始まるが、今大会は締めが今後オリンピックが行われるオーストラリアとアメリカ、そして開催国フランスという順になった。
セレモニーに多くの観客を迎え入れる為、観覧に対して基本無料。ただしアウステルリッツ橋からイエナ橋までの下流側へのアクセスを希望する観客は、チケットを購入する必要がある。
アトラクション映像にはパリに本社を構える映画製作スタジオのイルミネーションからミニオン達も参加。式典楽曲はヴィクトル・ル・マスネが担当している。
実施競技
32競技、329種目が大会中実施された。この内追加種目はスケートボード、ブレイキン、スポーツクライミング、サーフィンの4種。ブレイキンは次回ロス五輪では除外が決定しており、現時点では今大会限りの競技となっている。
競技結果(日本)
2016年リオ大会を更新する45個のメダルを獲得。特にレスリングは金メダル8個の固め打ちであり、スケートボードでもストリートで強さを見せた。フェンシングも3色のメダル獲得で今後の有力競技に名乗り出ている。一方競泳は銀2個にとどまり、今後の強化方針と日本水連との連携が課題に。
メダル獲得数 金: 20個 銀: 12個 銅: 13個 計: 45個
金メダル
- 角田夏美 - 柔道女子48kg級
- 安倍一二三 - 柔道男子66kg級
- 永瀬貴規- 柔道男子81kg級
※一二三、永瀬は東京五輪からの連覇達成 - 吉沢恋 - スケートボード女子ストリート
- 堀米優斗 - スケートボード男子ストリート
※2大会連続で同種目男女金メダル、堀米は連覇達成 - フェンシング男子フルーレ団体
- 加納虹輝 - フェンシング男子個人エペ
- 体操男子団体
- 岡慎之助 - 体操個人総合、種目別鉄棒
※岡は団体含めて金メダル3個獲得 - 文田健一郎 - レスリング男子グレコローマンスタイル60kg級
- 日下尚 - レスリング男子グレコローマンスタイル77kg級
- 藤波朱里 - レスリング女子フリースタイル53kg級
※公式戦連勝記録を137に更新 - 樋口黎 - レスリング男子フリースタイル57kg級
- 櫻井つぐみ - レスリング女子フリースタイル57kg級
- 元木咲良 - レスリング女子フリースタイル62kg級
- 清岡幸大郎 - レスリング男子フリースタイル65kg級
- 鏡優翔 - レスリング女子フリースタイル76kg級
- AMI(湯浅亜美) - ブレイキンBガール
- 北口榛花 - 陸上女子やり投げ
※女子フィールド種目史上初の日本勢金メダル獲得
銀メダル
- 村尾三四郎 - 柔道男子90kg級
- 柔道混合団体
- 松下知之- 競泳男子400m個人メドレー
- 赤間凛音 - スケートボード女子ストリート
- 開心那 - スケートボード女子パーク
- フェンシング男子エペ団体
- 岡田奎樹、吉岡美帆 - セーリング男女混合ディンギー470級
- 安楽宙斗 - スポーツクライミング男子ボルダー&リード
- 卓球女子団体
- 玉井陸斗 - 競泳男子10m高飛込
- 佐藤大宗- 近代五種競技
※飛込、近代五種では日本勢初のメダル獲得 - 高谷大地 - レスリング男子フリースタイル74kg級
銅メダル
- 永山竜樹 - 柔道男子60kg級
- 舟久保遥香 - 柔道女子57kg級
- 橋本壮市 - 柔道男子73kg級
- 馬術総合馬術団体
※92年ぶりの同種目メダル獲得 - フェンシング女子フルーレ、サーブル団体
- 渡辺勇大、東野有紗 - バドミントン混合ダブルス
- 志田千陽、松山奈未 - バドミントン女子ダブルス
- 早田ひな - 卓球女子シングルス
- 松山英樹 - 男子ゴルフ
- 岡慎之助 - 体操男子種目別平行棒
- 尾﨑野乃香 - レスリング女子フリースタイル68kg級
- 須﨑優衣 - レスリング女子フリースタイル50kg級
外国人選手の競技結果
- ユスフ・ディケチ(トルコ)- 射撃混合エアピストルでシェワルウライダ・タルハンと共に銀メダル。5大会連続出場中であり、恐らく本大会で最も注目された選手。詳しくは無課金おじさんの記事を参照。
- フィリップ・キム(カナダ)- 今大会で追加種目に選ばれたブレイキンBボーイにて金メダルを獲得。トヨタのカナダ支社所属であり、トヨタイムズでも特集が組まれている。
- アリサ・トゥルー(オーストラリア)- スケートボード女子パーク金メダル。14歳での金メダル獲得はオーストラリア選手史上最年少であり、同競技ではストリート・パーク両方で14歳の女子選手が表彰台の頂点に登り詰めた。
- アルマンド・デュプランティス(スウェーデン) - 陸上男子棒高跳び金メダル獲得。自身9度目となる世界記録更新を達成し、新時代の鳥人としてその名を刻む。
- ジュリアン・アルフレッド(セントルシア)、テア・ラフォンド(ドミニカ共和国)、レツィレ・テボゴ(ボツワナ) - いずれも母国初の金メダルをもたらした陸上選手。それぞれ女子100m、女子三段跳び、男子200mで頂点を獲った。
- ノバク・ジョコビッチ(セルビア)- テニス界ビッグ4の一角であったジョコビッチはパリ大会で遂に金メダルを獲得。37歳、5度目の挑戦で生涯ゴールデンスラムを達成。
- ミハイン・ロペス(キューバ)- レスリング男子グレコローマンスタイルで史上初の5大会連続金メダルを獲得。本大会で有終の美を飾った。
- レオン・マルシャン(フランス)- 地元選手ではマルシャンが200m平泳ぎ、200mバタフライ、200m個人メドレー、400m個人メドレーで4つの金メダルを獲得。銅メダル1個を含めメダル5個を獲得し、100年前のパリオリンピックでロジェ・デュクレが獲得したメダル個数に並ぶ快挙。
大会期間中の出来事
史上最狂の開会式!?
上述通り従来のスタイルから脱却を図ったオープニングセレモニーだが、いざ蓋を開けてみるとフランスらしいというか、色々ブッ飛んだ部分も多い開会式となった。ざっくり箇条書きにするとこんな感じ。
- 「ジャメルさん、開会式スタジアムやない!セーヌ川や!」そして聖火はジダンの手に…
- 謎のアサシン登場、ジダンから託された聖火と共に子供達は地下水道へ。一方地上ではマクロン大統領とバッハ会長が紹介される
- トンネルを抜けるとそこは大観衆だった→トリコロールのカラースモークと「Parade」で開会式スタート。そして間髪入れずに選手入場
- キャバレー文化とレディ・ガガ。聖火を持ったアサシンがパリの屋根を駆ける
- ノートルダム大聖堂再建に向けて働く職人たち、ルイ・ヴィトンの工房を聖火が進む。そのトランクには3色のメダル
- 首無しマリー・アントワネット in コンシェルジュリー。Gojiraのヘヴィ・メタルに合わせて鮮血が飛び散る…
- フランソワ・トリュフォー作品をオマージュした、フランス国立美術館で「愛」について調べる人々。その容姿は性別を感じさせない
- アヤ・ナカムラ with "世界最高の軍楽隊"パリギャルド吹奏楽団
- ルーブル美術館では絵画の中の人達も聖火に興味津々。すっごい見てくるぞ!
- アサシン、映画の世界へ
- ミニオンに盗まれたモナ・リザ。そして潜水艦は沈み絵画はセーヌ川に消えた…
- フランスの歴史を支えた女性達とラ・マルセイエーズ(日本の入場タイミングはこの後!)
- アーバンアスリートが急に歌うよ、そしてRim'K!
- 多様性パリコレとフレンチポップの競演。その締めには青いフィリップ・カトリーヌのディオニソス
- 雨に濡れ、燃やされるピアノ(※スタインウェイの最高級モデルなら1台2600万円)
- 降臨、ジャンヌ・ダルク。そのマントは五輪旗
- オリンピック賛歌→五輪旗逆!逆!
- "シティ・オブ・ライト"の象徴・エッフェル塔の本気
- 五輪史上初、競技場外に構える気球型の空中聖火台に点灯(聖火台に燃料は一切使われてません)。アンカーはテディ・リネールとマリー=ジョゼ・ペルク
- 開会式を締めたセリーヌ・ディオンの「愛の賛歌」。そしてまた濡れるピアノ
中でもフィリップ・カトリーヌの裸同然の表現は仏カトリック教会やキリスト教団からの批判があり、ローマ教皇庁からも「最後の晩餐」を思わせる演出に対し、「宗教的信念をあざ笑うような表現はあってはならない」と不快感を示す異例の声明を発表する程だったそうだ。
しかしながら選手入場時の楽曲は往年のフレンチポップから地元フランスの色彩感溢れるクラシックの名曲まで至れり尽くせりのラインナップ。作業用BGMとしても使えるので、是非音楽にも注目してみて欲しい。
https://x.com/totsugirl/status/1816942405981208918
セーヌ川の水質どうなった?
大会中で問題となった一つに、トライアスロンやオープンウォーター競技の会場となっているセーヌ川の水質がある。なんせこの川、家庭排水の影響で水質が悪化し101年間遊泳禁止になったくらいの汚染具合であったからだ。
フランス政府はオリンピック競技のため2300億円以上をかけて水質改善を実施。パリでも新たな浄水施設を設置するなどして水質の改善に取り組んでいた。パリ市長が大会前に水質改善をアピールする為にセーヌ川へダイブした事もある。
そして本番を迎えたわけだが、7月30日に予定されていたトライアスロン男子の競技は水質悪化のため31日に延期に。更に8日に行われた女子10キロオープンウォータースイミングでは出場したドイツ人水泳選手3人が体調を崩すなど問題が相次いだ。やはり駄目だったらしい。
FOC公認・デカ顔ボード
大会中のフランス代表応援団では至る所である物が観客席を彩り話題を呼んだ。代表選手の顔がデカデカと描かれた巨大顔ボードである。
このボードはただのボードではない。フランスオリンピック委員会に関連したフランス代表のファン団体が製作した謹製品。実質的なFOCのお墨付きボードなのだ。大会期間中はテディ・リネールやレオン・マルシャンといった代表選手の顔が掲げられ、SNSで注目されている。
無論非売品であり持ち帰りも禁止、ボードを掲げられる人もFOCに申請したファン団体の"盛り上げリーダー"に限られている。対象のファンは一生に一度の経験として周囲に自慢出来た事だろう。
閉会式の方は…
閉会式は従来通りスタジアム、スタッド・ド・フランスで開催された。箇条書きにするとだいたいこんな感じ。開会式の批判を受け、総監督のトマ・ジョリーがショーの内容を見直したそうだ。しかしピアノの扱いは変わってないような…
開会式とは打って変わって快晴の下、コロナ明けの夏季オリンピックでは初めて大観衆の中で行われた。スタジアム中央には五大陸の形をしたステージが置かれている。
- 20分以上に渡る18日間の記録。北口の叫びを君は聞いたか?
- パリの空の下から降りてきた聖火、その炬火がレオン・マルシャンの手に…
- おおシャンゼリゼ、Creed on desire、We are the Championの大合唱
- 定番のマラソン表彰式、今回は大会初の女子マラソンの方
- ボランティア、市民ランナーの皆さんも選手と共に頑張りました!
- 未知の仮面ライダーゴールデンボイジャー、訪仏。彼は五輪とその歴史を知る…
- 数多の変態白仮面との遭遇。そして宙に浮かぶピアノと新たな五輪がこの世界に生まれた
- フェニックス、エアー、エズラ・クーニグの強力メンバーによるパフォーマンス。こら、ステージに上がるんじゃない!
- ギリシャからフランスへ渡った聖火の旅路、その経路は陸海空を進む
- エスタンゲ、バッハ会長のスピーチ。長いからって寝てる人いませんか?
- オリンピック賛歌からのフラッグハンドオーバーセレモニー。トム・クルーズが屋根からやって来た!
- 五輪旗は海を渡りLAへ、そしてハリウッドの看板がオリンピック仕様に。H.E.R.、レッチリ、スヌープ・ドッグ、ビリー・アイリッシュ。パリがフェスならLAもフェス
- スタッド・ド・フランスに炬火が到着。バッハ会長の閉会宣言の下、マルシャンと6人のメダリストと共に納火され聖火は役目を終えた
- 次はパラリンピック、そして大トリは『My Way』。原型はフランスの楽曲『Comme d‘habitude』
閉会式のラストを担当したのは、地元フランスの歌手であるイズー。テレビのオーティション番組で準優勝したのをキッカケにプロデビューしたものの鳴かず飛ばずで、ベルギーに活動の拠点を移したことから、少しずつ評価を上げていった苦労人。30歳にしてオリンピックの大トリを務めた、正に金メダル級の大抜擢である。
なお参加選手の間では進行そっちのけで即席のブレイキン大会が行われていた模様。
関連項目
前回大会 | 当大会 | 次回大会 |
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東京オリンピック(2020年) | パリオリンピック(2024年) | ロサンゼルスオリンピック(2028年) |
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