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パーキンソン病とは、中脳黒質にあるドパミン神経細胞が脱落することによる中枢神経系疾患である。
人口の高齢化とともに漸増しつつあり、神経難病のなかでは患者数が最も多い疾患である。
概要
発症
パーキンソン病は、通常初老期以降に発症し、だいたい全人口の0.1%ほどが発症してるといわれる。
原因としてはαシヌクレイン遺伝子の変異によってタンパク質が固まりやすくなってしまったり、不要なタンパク質を捨てるパーキンタンパク質の異常など遺伝的な要因のほか、有力な説として「神経毒説」がある。MPTPという神経毒は脳に入り込んで酵素によりMPP+という形に代謝されると、ドパミン神経がエネルギー(ATP)を産生するためのNADPデヒドロゲナーゼという酵素を阻害してダメージを与えるとされており、パーキンソン病を研究するきっかけになった。
また患者の脳からは「レビー小体」と呼ばれる特異な物質が検出されるため、これが関係しているとも考えられている。
症状・経過
動作が緩慢になる寡動(悪化すると無動)、手足が歯車のような動きになる筋固縮、手足が震える振戦、バランスを崩しやすくなったり、よろけたり突進したりするようになる姿勢反射障害、などの運動障害が4大症状である。これらはまとめてパーキンソニズムと呼ばれる。
10年~15年の経過で寝たきりになる。進行とともに抑うつ症状や自発性の低下、思考過程の緩慢化、精神緩慢あるいは、精神的無動などの症状が出現することが少なくない。
難しく書くとあれだが、動かない動けないといった症状が一番多い。漫画などでお年寄りの手がプルプル震える描写があるが、あれもパーキンソン病の症状の一つ(振戦)である。(ただし他の神経疾患でも手が震えることはあるので断定は出来ない)
顔の筋肉も動かしにくくなるため、病気が進行するといつも伏し目がちで、何が起きても無表情といった状態になりやすい。このため呆けたのではないかと間違われてしまうことがある。長く呆け老人扱いすることで、認知症やうつ病を併発してしまうこともあり、悪循環である。
反応が鈍くなっても反応しないわけではない。「おじいちゃんトイレ行く?」と聞いても、返事が無いために行く気がないと誤解されてしまうことがあるが、数十秒待つことで「行く」と答えが返ってくることもある。
治療
神経化学的には、黒質線条体路の障害でドパミンが減少するため、L-ドパなどのドパミン原料の補充やドパミン作動薬などによる薬物療法が行われている。また、ドパミンとアセチルコリンのバランスも影響するため、逆にアセチルコリンを減少させる抗コリン薬も使用される。
面白いのがアマンタジンという薬で、もともとA型インフルエンザの薬として開発されたのだが、インフルエンザに罹患したパーキンソン病患者に使用したらパーキンソン病の症状も改善したということでパーキンソン病にも使用されるようになり、今では本来の目的だったA型インフルエンザには耐性の増加により使用されなくなっている。
要するに薬飲みなさいってことである。これらパーキンソン病関連の薬は、飲むことで症状が一時的に緩和されるが、薬が切れると元に戻ってしまう。長期的に飲み続ける必要が出てくるが、その結果薬の効きが悪くなったり、副作用が出たりすることもある。特徴的なものとしては、薬が効く時間が短くなり、飲んだ直後は薬が効きすぎ、その後適度な状態になるがそれが長持ちしなくなってしまうというウェアリングオフ現象というものがある。
薬物療法に副作用は付き物であるが、一般的な薬物副作用は肉体に現れるのに対して、パーキンソン病薬の副作用は運動・精神にも現れるのが特徴。具体的にはジスキネジアというからだが勝手に動いてしまう状態や抑うつ、つまりローになってしまうことがある(実際、抗うつ薬と併用できない薬もある)。また、神経に作用する薬であるため仕方がないことなのだが、薬による治療をしている人は抑制がきかなくなり、お金を無駄遣いしてしまったり、ギャンブルにはまったり、性欲が高まってセクハラしたりと様々な問題行動を起こしてしまうことがある。服用者自身は気づかないので、おかしいと感じたら周囲の人間が医師に相談しよう。
なお、L-ドパを急に中断すると高熱や意識障害、腎不全などが生じる悪性症候群が起こる可能性があるので、医師に相談せずに勝手に中断してはいけない。
また現在は、正常なドパミン神経の移植や、ドパミン産生を可能にする遺伝子の導入などの治療も模索されている。
歴史
病理としての報告自体は1817年のことだが、これが評価されることになるのは1888年で、パーキンソン病という名前もこの1888年に再評価したシャルコー教授が名付けたもの。20世紀に入るとレビー小体に関する話やL-ドパによる治療などといった現代でも使われている知見が確立していった。
1983年には上記の通りMPTPがパーキンソン病を引き起こすことが判明し研究が進むことになるのだが、MPTPは当時の脱法ドラッグの一種であるデスメチルプロジン・メペリジン等の精製で発生する不純物として問題になって発見されたもので、要するに脱法ドラッグでラリったらパーキンソン病になったという薬害が偶に発生していたという。
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