パールシークレット(Pearl Secret)とは、2009年生まれのイギリスの競走馬。栗毛の牡馬。
三大始祖の一角・バイアリーターク系(ヘロド系)存続のほとんど最後の希望となっている馬。
概要
父Compton Place、母Our Little Secret、母父Rossiniという血統。
父コンプトンプレイスは、日本ではアグネスワールドが勝ったことで知られるニューマーケット競馬場直線6ハロンのG1・ジュライステークスの1997年の勝ち馬。種牡馬としてはG1ナンソープステークスを連覇したBorderlescottなどを輩出したが、Borderlescottを含めてG1馬2頭を含む活躍馬の多くが騸馬で、後継種牡馬はパールシークレットを含めて数頭に留まる。
母アワーリトルシークレットはアイルランド産で、イギリスで走り33戦6勝。リステッド勝ちがひとつある。
母父ロッシーニはアメリカ産のMiswaki産駒で、欧州で走り7戦3勝、アイルランドとフランスの2歳短距離重賞を2勝。日本ではサトノクラウンの母父として知られる。
さてこの馬の血統、ちょっと海外競馬と血統に詳しい人なら2代父Indian Ridgeで、そこでピンと来なくても3代父Ahonooraで「おおっ」と思うことだろう。まだピンとこなければ8代父まで遡ると出てくる名前がTourbillon。皇帝シンボリルドルフや名優メジロマックイーンの父祖である。
そう、すなわちこのパールシークレットは、今や世界的に滅亡寸前のサラブレッド三大始祖の一角・Byerley Turkの直系なのだ。
馬主はRoaring Lionなどを所有する、カタールのファハド殿下率いるカタール・レーシング。イギリスのデヴィッド・バロン厩舎に所属した。
秘密の真珠
競走生活
2011年10月7日、ヨーク競馬場の芝5ハロン89ヤードの未勝利戦でデビュー。ジェイミー・スペンサー騎手を鞍上にデビュー勝ちを飾る。
明けて3歳となり4月に復帰すると、ハンデ戦、一般戦、スカリーS(L)と芝5ハロン帯のレースにて無傷の4連勝を飾る。
勢いに乗って8月、ヨーク競馬場直線5ハロンのナンソープS(G1)でG1初挑戦したが、あえなく9着に敗れ、このあと1年近い休養に入ることになる。
明けて4歳、6月のロイヤルアスコット芝5ハロンのキングズスタンドS(G1)で復帰し3着に好走したが、この一戦だけでまた長期休養。再び1年近く休むことになった。
5歳となり、4月の一般戦で復帰し約2年ぶりの勝利を挙げると、以降は順調にレースを使えるようになり、イギリスの短距離重賞戦線を戦っていくことになる。パレスハウスS(G3)は8着に敗れたが、テンプルS(G2)で2着に好走、前年好走したキングズスタンドS(G1)に再挑戦したが10着撃沈。スプリントS(L)を勝利して6勝目を挙げ、フランスに渡ってアベイユ・ド・ロンシャン賞(G1)に挑んだが14着に沈んだ。
6歳となった2015年はフランスのサンジョルジュ賞(G3)から始動したが10着。イギリスに戻り、中1週で向かったテンプルS(G2)でJack Dexterとの接戦をクビ差制して嬉しい重賞初制覇を飾った。
以降は7歳まで欧州の短距離G1戦線に果敢に挑み続けたものの、2015年のキングズスタンドS(G1)とアベイユ・ド・ロンシャン賞(G1)の4着が最高で、勝利には届かなかった。2016年のナンソープS(G1)11着を最後に現役引退。通算26戦7勝。
引退後
引退後はイギリス・グロスターシャーのバックランドファームで種牡馬入り。種付け料は4000ポンド(2017年のレートだと約57万円)。その後ウスターシャーのチャペルスタッド、ノース・ヨークシャーのノートングローブスタッドと移動して種牡馬を続けた。
三大始祖と言われるダーレーアラビアン・ゴドルフィンアラビアン・バイアリータークのうち、現代のサラブレッドの95%以上はダーレーアラビアン系で、バイアリーターク系(ヘロド系)はほぼ全世界的に滅亡寸前。そんなパールシークレットの血は希少ではあるが、結局のところは優勝劣敗、勝てない馬の血は淘汰されていくのが競馬の定め。
パールシークレットは種牡馬入り当初は58頭とそこそこ牝馬を集め、「ヘロド系最後の希望」と言われたが、2020年にデビューした初年度産駒は目立った活躍ができず、種付け数も2022年には4頭、2023年もちょっと増えて11頭というレベルまで落ち込んでいた。
そんなパールシークレットに目を点けた極東の生産者がいた。アランバローズやオヌシナニモノを生産した大狩部牧場の下村優樹代表である。2024年12月5日、大狩部牧場のYouTubeライブにてパールシークレットを大狩部牧場が購入し、日本に種牡馬として導入することを下村代表が発表した。2025年よりアロースタッドで供用される予定。種付け料は受胎条件50万円で、これは最低価格でこれ以上下げることはないとのこと。また1頭でもつけた生産者には将来仮に種付け料が上がったとしても永久に50万円での種付け権利を付与するとのことである。
日本ではバイアリーターク系種牡馬としてトウカイテイオー産駒のクワイトファインがいるが、これはもう偉大なシンボリルドルフ-トウカイテイオーのラインをなんとか残したいという道楽の部類。バイアリーターク系の輸入種牡馬が日本に来るとなると、おそらく1995年から供用された*アルカング(主な産駒に2002年オグリキャップ記念勝ち馬アルアランなど)以来30年ぶりではないだろうか。
導入を決めた下村代表は獣医師として、サラブレッドの血統がダーレーアラビアン系一本に絞られてしまうことによるインブリードの悪影響を懸念しており、オルフェーヴルやゴールドシップが頑丈で元気なのは母父メジロマックイーンがバイアリーターク系というのも大きいのでは?という考えから、血統多様性の保護の観点からもパールシークレットの導入を決めたという。
日本では16歳という高齢での導入となるが、果たしてバイアリーターク系をこの日本の地で繋いでいくことができるだろうか。
血統表
Compton Place 1994 栗毛 |
Indian Ridge 1985 栗毛 |
Ahonoora | Lorenzaccio |
Helen Nichols | |||
Hillbrow | Swing Easy | ||
Golden City | |||
Nosey 1981 鹿毛 |
Nebbiolo | *イエローゴツド | |
Novara | |||
Little Cynthia | Wolver Hollow | ||
Fazilka | |||
Our Little Secret 2002 栗毛 FNo.5-h |
Rossini 1997 鹿毛 |
Miswaki | Mr. Prospector |
Hopespringseternal | |||
Touch of Greatness | Hero's Honor | ||
Ivory Wand | |||
Sports Post Lady 1998 栗毛 |
M. Double M. | Nodouble | |
Mazda's Miracle | |||
Pasadena Lady | Captain James | ||
Gliding Gay |
関連リンク
- Pearl Secret(GB) | JBISサーチ
- Pearl Secret(パールシークレット)の血統表と関連情報 - 世界の競馬
- 伝説の終章:パールシークレット/Pearl Secret - 永遠のヘロド
関連項目
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