ビデオテープとは映像を記録するための磁気を帯びたナイロンテープの事である。
概要
画像を記録する場合、写真のような静止画を連続して記録する必要がある。これを実現したのが映像フィルムである。
時代が変わり、この映像を磁気として記録できるようになって普及し始めたのがビデオテープである。
当時は映像のみを記録していたため、音声は別の磁気テープ(ミュージックテープ、ボイステープ)やアテレコだったが、技術の変化によって音声も記録できるようになった。その一方で他の磁気テープ同様コンピュータのデータバックアップ用ストレージとして用いられることもある(無論シーケンシャルアクセスのみなのでアーカイブ専用である)。
なお、磁気テープについて初期はリールと呼ばれるドラムに機械で巻きつけていたが、小型化が進みカセット型が一般となった。
ビデオテープは
- テレビ局等で利用される、オープンリール形式
- カセット型の先駆けとなったアンペックス形式
- ソニーや松下電器産業、日本ビクターなどによるUマチック形式
- ソニーが主体になったベータ形式(ベータマックス形式)
- 松下電器産業(現パナソニック)や日本ビクター(現JVCケンウッド)等が主体となった、VHS形式
- ビデオカメラ等で利用する超小型8ミリビデオテープ
- デジタル仕様のDV/MiniDVテープ
等がある。
この中でソニーが開発したベータマックスという規格でのビデオテープが最初に広く一般家庭に普及したが、1970年代から80年代にかけてはビデオテープの規格を巡ってソニーのベータマックスと日本ビクターのVHSの間で激しい規格競争があった。この競争のことを指して『ビデオ戦争』ともいう。
ビデオ戦争はVHSに軍配が上がり、以降、VHSは2000年代にDVDが普及するまで映像記録媒体の盟主であり続けた。
詳細は『VHS』の記事参照。
一方家庭用のビデオカメラにはデジタル技術が普及する前には8mmビデオテープがよく用いられた。
2020年現在ではハードディスクやフラッシュメモリーなど、業務用も家庭用もすでに新しい記録媒体に置き換わり、ビデオテープはほぼ役割を終えている。だが、貴重な記録映像などは今でも家庭のビデオテープの中に眠っている可能性もあり、これらの発掘と保存が願われている。
ビデオテープの悲喜こもごも
- ビデオテープは一度映像を記録したテープに別の映像を記録する重ね撮りが可能だった。そのため、大切な家族の記録映像の上にうっかりテレビ番組を重ね撮りしてしまい、記録映像が失われてしまうという事態もあり得た。
- 間違いをなくすために、ビデオテープにはラベルが貼られた。手書きのラベルシールはビデオテープに必ず付随した。
- 現在のデジタル技術ではなく、磁気テープというアナログ技術を利用していたため、ビデオテープを繰り返し視聴するとやがて映像は劣化した。また、磁気テープはカビなどにも弱く、数年ぶりに見ようとした記録映像がカビで見れなくなっていたということもよくある。
- また、テレビ草創期は放送局のレコーダー自体はもちろんテープも輸入品だったことから当時の価格で1本100万円以上したことや、サイズが大きく保管スペースを食うこと、著作権の問題や再放送など二次利用を考えていなかったこともあり、テープは使い回しされていたため、当時の貴重な映像はほとんど失われてしまっている。これが技術革新によって小型化・低価格化・一般への普及が進むと放送局でも一般家庭でも録画が普及することになる。
- 映像記録を一般人にも身近なものとしたため、様々な用途に用いられた。例えば、メッセージ映像を送るビデオメッセージは、当初ビデオテープを郵送して行われていた。
- 「巻き戻し」という言葉はビデオテープやカセットテープがなくなった今では死語になりつつある。HDDレコーダーでも今は「早戻し」などという言葉に置き換えられている。
- 創作の中でもっとも有名なビデオテープといえば小説・映画『リング』の「呪いのビデオ」だろう。ビデオテープを再生してしまったものは呪われて1週間後に死が訪れる。
- 2020年代の現在において、2000年生まれ以降の人にとってはすでに過去の遺物だろう。生まれてから一度も見たことがないという人の割合も年々高くなっていると予想される。
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関連項目
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