ファウンド(found)とは、「基礎を固める」「設立する」という意味の動詞、または「見つけ出す」「発見する」「出会う」などの意味の英語の動詞findの過去形・過去分詞形である。
ファウンド(Found)は、2012年生まれのアイルランドの競走馬・繁殖牝馬。
現役時代は詰めの甘さに何度となく泣かされたが、ブリーダーズカップ・ターフを3歳時に、凱旋門賞を4歳時に制して名牝に名を連ねた。
概要
父は競走馬としても種牡馬としても超一流の英愛ダービー馬Galileo(ガリレオ)、母はメイトロンS・ロッキンジSとマイルGIを2勝したRed Evie(レッドエヴィ)、母父は無冠の名マイラーIntikhab(インティカブ)という血統。母はマイラーだったが、産駒はファウンドや12ハロンのGIIIを勝った全妹*ベストインザワールドが示すように父に近い中距離寄りに出ている傾向がある。名門クールモアが提携している牧場の生産馬で、クールモアグループの所有馬となり、同グループ御用達のエイダン・オブライエン調教師の管理馬となった。
期待の2歳時代
8月のマイル戦で、クールモアのセカンドジョッキーであるシーミー・ヘファーナン騎手を鞍上にデビュー。ここでは単勝15倍で15頭中6番人気だったが、少し出負けしつつも後にフィリーズマイル(英GI)を制するトゥギャザーフォーエヴァーを3/4馬身差で退けてデビュー勝ちした。
続けてジョセフ・オブライエン騎手騎乗でモイグレアスタッドS(GI・7ハロン)に出走。ここではオールバニーS(英GIII)の勝ち馬カーソリーグランスに続く2番人気に支持されたがまたも出負けしてしまい、カーソリーグランスとクビ差2着のルシーダの2頭を捉えきれず、ルシーダから半馬身離れた3着に終わる。
この後はフランスに遠征し、ライアン・ムーア騎手騎乗で凱旋門賞同日のマルセル・ブサック賞(GI・1600m)に出走。カブール賞(仏GIII)の勝ち馬エルヴェディヤなど複数の重賞馬を抑えて1番人気に支持されると、好発から中団で脚を溜め、最後は先行抜け出しを図ったエルヴェディヤを差し切って2馬身半差で完勝。これにより一気にクラシック有力候補と騒がれるようになり、翌春の英1000ギニー・オークスの前売りオッズでは早速1番人気に浮上した。
歯痒い3歳時代
英1000ギニー最有力候補と騒がれたファウンドだったが好事魔多し、思うように調教を積むことが出来ず、レース3日前に無念の回避が決定した。
これで歯車が狂ったのか、始動戦となった1000ギニー翌日のアサシS(GIII)では、単勝2.25倍の1番人気に支持されたものの、最後の1ハロンで最低人気の4歳馬アイヴィーガーデンズに差し切られて2馬身差の2着。続く愛1000ギニーでもプリースコックの2着に敗れ、英オークスを蹴って向かったコロネーションS(英GI・1マイル)ではプール・デッセ・デ・プーリッシュ(仏1000ギニー)を勝ってきたエルヴェディヤに捉えられてクビ差2着に終わる。
ヘファーナン騎手に乗り替わって出走したロイヤルウィップS(GIII)では4馬身差で楽勝したものの、愛チャンピオンS(GI・10ハロン≒2012m)ではこの年の英ダービー馬ゴールデンホーンに敗れ2着。ムーア騎手騎乗で初の2400m戦に挑戦した凱旋門賞では後方から競馬をしたものの馬群から抜け出せず9着と初の大敗を喫し、英チャンピオンS(GI・9f212y≒2004m)では先に抜け出したファシネイティングロックに1馬身1/4差を付けられて2着と連敗が続いた。
その後アメリカに遠征し、ブリーダーズカップ・ターフ(GI・12ハロン≒2414m)に出走。ここでは史上初となる凱旋門賞からの連勝を狙うゴールデンホーンなどもいた。レースではシャイニングコッパーという人気薄の馬が超大逃げを打ち、先行したゴールデンホーンが4角で捉えに行って先頭に立ったのだが、ファウンドはこれを徹底的にマークし、最後に半馬身差競り落として優勝。1年ぶりのGI制覇をブリーダーズカップという大舞台で挙げ、ようやく溜飲を下げたのだった。なおブリーダーズカップ・ターフでの牝馬の優勝は1999年のフィリー&メアターフ創設で出走数自体が少なくなったこともあり1991年のミスアレッジド以来24年ぶり3頭目、3歳で勝利した牝馬は史上初だった。
連敗にピリオドを打ったファウンドは、3歳シーズンを8戦2勝2着5回という成績で終えた。2着がやけに多かったが、この詰めの甘さは翌年も足を引っ張ってしまうことになる。
歯痒さの中の栄光
4歳時は、仕上がりきっていなかったのか初戦のアレッジドS(L)でいきなり単勝1.9倍を裏切る3着に敗れるという不穏な滑り出しとなった。しかし次戦のムーアズブリッジS(GIII)ではファシネイティングロックらを破って勝利した。
ところが、続けて出走したタタソールズゴールドカップ(GI・10f110y≒2112m)では、単勝1.53倍という圧倒的人気を集めたにも関わらずファシネイティングロックに3馬身3/4突き放されて2着に敗れ、これでケチが付いたのかコロネーションカップ(英GI・12f6y≒2420m)では1番人気ポストポンドに4馬身半差を付けられ2着。日本馬エイシンヒカリに次ぐ2番人気で出走したプリンスオブウェールズS(英GI・9f212y≒2004m)では完全に抜け出したところを最低人気馬マイドリームボートにクビ差差されて2着となり、ヘファーナン騎手騎乗で出走したヨークシャーオークス(英GI・11f188y≒2385m)では同厩の3歳馬セヴンスヘヴンに後れを取って2馬身3/4差2着、ランフランコ・デットーリ騎手騎乗で出走した愛チャンピオンSではフランスのアルマンゾールに大外からぶっこ抜かれて3/4馬身差2着と、タタソールズゴールドカップを皮切りにGI5戦連続2着という歯痒いにも程がある成績を記録してしまった。
しかし、ロンシャン競馬場の改修工事によってシャンティイ競馬場で行われた凱旋門賞にポストポンドや日本ダービー馬マカヒキなどに続く5番人気(PMUによる現地オッズ。JRAの海外馬券発売では3番人気)で出走したファウンドはこの大舞台で爆発。ムーア騎手の手綱に導かれてハイペースをインから突き抜け、同厩の牡馬ハイランドリール・オーダーオブセントジョージの追撃を振り切り、2着続きの鬱憤を晴らすかのように2分23秒61のコースレコードを叩き出して完勝した。ついでにムーア騎手とオーダーオブセントジョージ鞍上のデットーリ騎手のゴール直後の濃厚なキスが一部で話題になったりした。
この後、ブリーダーズカップ・ターフに出走して引退……というプランだったのだが、体調が良かったのか予定を変更して英チャンピオンSに出走。しかし先に抜け出したアルマンゾールとの差が縮まらないまま2着に敗れた。その後、予定通り引退レースとしてブリーダーズカップ・ターフに出走したものの、今度はスローペースの逃げに持ち込んだハイランドリールに逃げ切られて3着に終わり、これを最後に引退・繁殖入りとなった。
通算成績は21戦6勝2着11回3着3回、GI3勝。着外は3歳時の凱旋門賞のみだが、3~4歳時の2年間だけでGI2着10回というのは*シーキングザダイヤとかフリオーソもビックリである。しかもヴァーミリアンなどの強豪勢に何度も倒されていた[1]2頭と違い、ファウンドのGI2着時の勝ち馬はアルマンゾールを除いて全て違う(しかもそのうち1回は最低人気馬)のである。そんなところもシルバーコレクターという印象に拍車をかけるのだろう。
まあ何はともあれ、ブリーダーズカップ・ターフを3歳牝馬として初めて勝利し、凱旋門賞をレコード勝ちした実力は間違いなく本物である。実際4歳時はカルティエ賞最優秀古馬にも選出されている。
繁殖牝馬として
繁殖入りしたファウンドはアメリカで種牡馬として成功を収めているウォーフロントと交配され、無事に出産。2020年に初仔バトルグラウンドがデビューし、GIIヴィンテージSを勝ちGIブリーダーズカップ・ジュヴェナイルターフで2着となっている。
ちなみにバトルグラウンドを産んだ後の2018年7月、*メイビー(ディープインパクト産駒の2000ギニー馬サクソンウォリアーの母)が来日するというニュースの中でファウンドが次年度にディープインパクトを交配するため既に来日していたという事実が判明。全く前触れがなかったため話題となったが、2019年3月にディープインパクトが首の痛みで種付けを中止してしまった(そのまま7月に死亡)ため、残念ながら実現することは無かった。
血統表
Galileo 1998 鹿毛 |
Sadler's Wells 1981 鹿毛 |
Northern Dancer | Nearctic |
Natalma | |||
Fairy Bridge | Bold Reason | ||
Special | |||
Urban Sea 1989 栗毛 |
Miswaki | Mr. Prospector | |
Hopespringseternal | |||
Allegretta | Lombard | ||
Anatevka | |||
Red Evie 2003 鹿毛 FNo.1-m |
Intikhab 1994 鹿毛 |
Red Ransom | Roberto |
*アラビアII | |||
Crafty Example | Crafty Prospector | ||
Zienelle | |||
Malafemmena 1992 鹿毛 |
Nordico | Northern Dancer | |
Kennelot | |||
Martinova | Martinmas | ||
Pavlova | |||
競走馬の4代血統表 |
クロス:Northern Dancer 3×4(18.75%)、Hail to Reason 5×5(6.25%)、Mr. Prospector 4×5(6.25%)
- 全妹*ベストインザワールドはギヴサンクスS(愛GIII)の勝ち馬。引退後に日本に輸入されてディープインパクトを二度配合されたのち再輸出され、初仔のスノーフォールは2021年の英オークスを制するなどの活躍を挙げている。
関連動画
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関連項目
脚注
- *シーキングザダイヤのGI2着9回中6回はアジュディミツオー・タイムパラドックス・カネヒキリに負けたのが2回ずつ、フリオーソに至ってはGI2着11回中4回がヴァーミリアンに負け、他にもスマートファルコン・エスポワールシチーに2回ずつ負けている。
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