ファミ通クロスレビュー(Famitsū Cross Review)とは、エンターブレイン発行の週刊誌『ファミ通』で連載されているゲームソフト評価コーナーである。海外ではFamitsū scoresまたはFamitsū scoring systemとして知られる。
概要
列欄に作品タイトルを、行欄に評者を並べてマトリクス状にレイアウトすることからクロスレビューの名が付いている。
各週とも編集スタッフの内4名がレビュアーとして発売時期が迫ったゲームソフトをプレイ、一人頭10点満点で評価し担当者の寸評を添えて点数と共に掲載する。合計40点満点でタイトルを評価し、30点~31点は「シルバー」、32点~34点は「ゴールド」、35点以上が付いたタイトルは「プラチナ」として殿堂入りを果たす。
対象となるのはパッケージ販売されるコンシューマ及び携帯機向け新作タイトル(移植・リメイク・完全版等含む)だが、マイナー作品では評価から漏れているものがある。DLCや廉価版、PC/ブラウザゲーム・モバイルアプリ等は対象外。
インターネットが普及して誰でも広くゲームソフトの感想をウェブサイトにアップできる、そしてそれを誰でも閲覧できるという現代の状況が整うまでは、ファミ通などのゲーム雑誌からの情報を参考にして新作ソフトを購入する者も少なくなかった。ゲームソフト販売店などではゲームソフトに「ファミ通でゴールド殿堂」などの表示を付けて販促効果を狙う店もある。ただしインターネットが普及して以後は、情報元を雑誌に限る理由はないためこのファミ通クロスレビューの注目度は下がったとみられる。
レビューの傾向とそれに対する批判
発売後にプレイヤーからの不評を買ったようなソフトにも高得点が付けられたものが少なくないことや、大手メーカーのソフトでの点数が甘めだという指摘から、点数の信頼性に疑問を付けられることもある。ファミ通にはゲームメーカーからの広告が載っており、またゲームメーカーの協力の元で情報・画像・ソフトなどを提供してもらって誌面を作成していることなどから、「広告費を多く出したメーカーや、誌面作りに協力してもらわなければならない大手メーカーを優遇している」という論調で非難されることも少なくない。
ただ発売時期が迫ったソフト多数をレビューするという関係上、それぞれのソフトを完全にプレイできるわけではないため、「広告費や会社間のパワーバランスの問題というより、純粋に時間不足で厳密なレビューができない」という意見もある。その上で、「ならば『何時間プレイしての点数か』を明記するべきではないか?」といった声もある。
ゲームクリエイター「飯野賢治」からこのクロスレビューについての不満が公然と表明されたこともある。その際にはファミ通誌上において、飯野賢治と当時のファミ通編集長「浜村通信」との間でのクロスレビューに関する対談が掲載された。
参考までに、歴代の40点満点評価を受けた作品は下記の通り。98年に任天堂の『ゼルダの伝説 時のオカリナ』が満点評価を受けるまでは10年以上満点評価を与えられた作品が無いままだったがそれからは満点タイトルが相次ぎ、特に08年以降は年に複数作満点評価を受ける年も珍しくなくなっている。
- ゼルダの伝説 時のオカリナ(N64、1998年11月21日、任天堂)
- ソウルキャリバー(DC、1999年8月5日、ナムコ)
- ベイグラントストーリー(PS、2000年2月10日、スクウェア)
- ゼルダの伝説 風のタクト(GC、2002年12月13日、任天堂)
- nintendogs (DS、2005年4月21日、任天堂)
- ファイナルファンタジーXII(PS2、2006年3月16日、スクウェア・エニックス)
- 大乱闘スマッシュブラザーズX(Wii、2008年1月31日、任天堂)
- メタルギアソリッド4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット(PS3、2008年6月12日、KONAMI)
- 428 ~封鎖された渋谷で~(Wii、2008年12月4日、セガ)
- ドラゴンクエストIX 星空の守り人(DS、2009年7月11日、スクウェア・エニックス)
- モンスターハンター3(Wii、2009年8月1日、カプコン)
- BAYONETTA(Xbox360、2009年10月29日、セガ)
- NewスーパーマリオブラザーズWii(Wii、2009年12月03日、任天堂)
- メタルギア ソリッド ピースウォーカー(PSP、2010年04月29日、KONAMI)
- ポケットモンスター ブラック・ホワイト(DS、2010年09月18日、ポケモン)
- ゼルダの伝説 スカイウォードソード(Wii、2011年11月23日、任天堂)
- The Elder Scrolls V、Skyrim(PS3・Xbox360、2011年12月08日、ベセスダ・ソフトワークス)
- ファイナルファンタジーXIII-2(PS3・Xbox360、2011年12月15日、スクウェア・エニックス)
- 新・光神話 パルテナの鏡(3DS、2012年03月22日、任天堂)
- 龍が如く5 夢、叶えし者(PS3、2012年12月06日、セガ)
- ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル(PS3、2013年08月29日、バンダイナムコゲームス)
- グランド・セフト・オートV(PS3・Xbox360、2013年10月10日、ロックスター・ゲームス)
- メタルギアソリッドV ファントムペイン(PS4・PS3・XboxOne・Xbox360、2015年09月02日、KONAMI)
一方でかなりの低評価を付けられたタイトルも僅かではあるが存在し、こちらはユーザーからも同様の評価を受けているという点で発売後の受容状況とよく合致しているものが大半である。それでも最低ラインとなる点数があり、合計で10点以下、一人頭で1点以下の点数が付けられたタイトルは連載開始以来未だない。
クロスレビュー形式の記事を掲載する他誌
クロスレビューはファミ通の姉妹誌でも度々掲載されて来ているが、連載終了若しくは雑誌そのものの休刊により途絶する事が多く、長年に亘ってクロスレビューを掲載し続けているのはファミ通本誌のみとなっている。また90年代にアスキーから刊行されていた『PCエンジン通信』でも同様のクロスレビュー方式によるゲーム評価記事が掲載されていた。
ファミ通姉妹紙以外の国内ゲーム専門誌で採点付きのレビューを行っているのは現在このファミ通クロスレビューの他にKADOKAWAから刊行されている『電撃Playstation』などがある(こちらもクロスレビュー形式を採用)が、Metacriticに掲載されているような海外誌のレビューと違い、ゲーム内容についての詳細な講評や分析的評価を行ってはいないためそれらと同列の存在ではない。
関連動画
関連静画
リンク
- みんなのクロスレビュー
…公式サイト。タイトル別に過去のクロスレビューを一部掲載、併せてユーザー投稿も受付けている。
- 各年のファミ通クロスレビュープラチナ殿堂入りソフト
…Wikipedia。87年以降のプラチナ評価タイトルを年別で列挙。
- 週刊ファミ通クロスレビュー40点満点ソフト一覧
…満点評価のタイトルと各担当者の寸評を閲覧できる。
関連項目
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