フェノミナ(PHENOMENA)とは、1985年に製作・公開されたイタリアのホラー映画である。
概要
『サスペリア』『サスペリアpart2』『インフェルノ』で高い評価を得たイタリアンホラーの巨匠、ダリオ・アルジェントがメガホンを取った作品。
監督特有の幻想的な映像と、お馴染みGoblin(クラウディオ・シモネッティ)による音楽、主役に抜擢されたジェニファー・コネリーの美しさが合わさって完成した、華麗なる珠玉作である。本作をしてアルジェントの最高傑作と呼ぶファンも少なくない。
日本での初上映は第1回東京国際ファンタスティック映画祭。オープニング作品として上映され、絶賛された。この時アルジェントも来日し、ファンとの交流を行っている。
別バージョンとして『フェノミナ インテグラルハード』が存在する。公開時にカットされた4分が追加された、いわば完全版である。
あらすじ
著名な俳優、ポール・コルビノを父に持つ美少女、ジェニファー・コルビノ。スイス・チューリッヒの寄宿生女学校に、彼女は入学する。
迎えに来た教師のブルックナーと共に車に乗り学校に向かうが、開けていた窓から一匹の蜂が入り込む。虫が大嫌いなブルックナーはヒステリックに喚き散らして蜂を殺そうとするが、ジェニファーはそんな彼女を必死に止め、手に止まった蜂を優しく指で撫でた。奇妙な事に蜂は飛び立つ事も手を刺す事もなく、おとなしく撫でられている。ジェニファーは昆虫と交信できる、不思議な力を持っていた。
女学校は美しい自然に囲まれた恵まれた環境にあり、富裕層の子女を多く抱えていた。しかしその一方で、最近チューリッヒでは女性を標的とした陰惨な連続殺人事件が発生していた。
発見された死体にたかっていた虫が、殺人現場の手がかりとなると警察は推測。高名な昆虫学者のジョン・マクレガーに協力を依頼する。
そんな中、ジェニファーはふとしたことからマクレガーと出会い、彼の世話をする「親友」のチンパンジー、インガともども仲良くなる。ふたりは虫を介して事件の真実を追うが、殺人鬼の魔手はすぐそこまで迫っていた……
トリビア
当初アルジェントは長女のフィオーレ・アルジェントを主役にしようとしたが「公私混同しないように」と制作陣から釘を刺されて断念。こういう所ちゃっかりしてるよね。
しかしオーディションでジェニファー・コネリーの清楚な美貌と演技に惚れ込み、主役に採用。役名を当初予定していた「マルサ・コルビノ」から「ジェニファー・コルビノ」に変更したほど入れ込んだ。そのジェニファーにとって本作は2本目の映画出演で、初主演にして一気に知名度を上げている。
なおフィオーレは冒頭で殺人鬼に殺される旅行客の少女として登場した。こういう所ほんとry
本作には2件の報道が関与している。フランスで起きた殺人事件で「死体にたかっていた昆虫が手掛かりとなって犯人逮捕に結びついた」という話に着想を得たアルジェントが、「昆虫との意思疎通が出来る精神病患者」に関する新聞記事と合わせた結果、本作の製作に結びついたという。
「サスペリア」に代表される原色使いで知られるアルジェントだが、本作においては色彩の乱用をやめ、スイスの山岳地帯に相応しく、冷たく硬い印象の映像に仕上げている。彼の他の作品と見比べると面白いかも知れない。
なおアルジェントの言によると、本作の映像はレニ・リーフェンシュタール(ナチスドイツの喧伝映画『民族の祭典』で知られる)の影響を受けているとのこと。
終盤、ジェニファーが蛆虫の沸いた汚水で溺れるというえげつないシーンがあるが、これはスタントではなく本人が演じている。同監督の『トラウマ~鮮血の叫び~』や『サスペリア』でもこういった「美少女虐待」なシーンが撮影されており、「ダリオおめぇってやつぁよぅ……」と生ぬるい眼差しになってしまうのは仕方ない。
なおプールの蛆虫はオガクズを使ったフェイクである。ごあんしんください。
フォーザーキーンこと「Emerald Sword」で知られるイタリアのクサメタルシンフォニックメタルバンド、Rhapsody OF FIREは4thアルバム「Rain of a Thousand Flames」で『フェノミナ』のメインテーマをカバーしている。荘厳かつ重厚な楽曲は一聴の価値あり。
1995年に発売されたホラーゲーム『クロックタワー』は、当時企画を手掛けた河野一二三自身も公言している通り、この映画へのオマージュ作品としてゲーマーに周知されている。主人公の名前、黒幕の正体、殺人鬼・シザーマンの造型などでニヤリとさせられるはず。
その他さまざまな裏話にも事欠かない本作。こうしたこぼれ話は各種映画サイトで語られているので、興味のある方は作品を鑑賞した後に巡ると良いだろう。
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関連項目
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