切れ味すぐれたサーベルや
頑丈至極の大鉈や
おのおの武器を携えて
戦場へやってくる者たちよしかしどれほどの名刀であれ
ただ振り回すだけでは
誰も斬ることなどできぬぞ
フェノーメノとは、2009年生まれの日本の競走馬である。青鹿毛の牡馬。
馬主はサンデーレーシング、調教師は戸田博文、生産は社台グループの追分ファーム。
名前の語源は、ポルトガル語で「超常現象、怪物」という意味。
主な勝ち鞍
2012年: 青葉賞(GII)、セントライト記念(GII)
2013年: 天皇賞(春)(GI)、日経賞(GII)
2014年: 天皇賞(春)(GI)
概要
父はステマ配合など廃れそうな異系血統から活躍馬を出すことで有名。全姉もいるが兄弟に目立った活躍馬はおらず、母の兄でジャパンカップ2着したインディジェナスがいる程度(ちなみに同じレースでステイゴールドは6着)。ただ母系はデインヒル、リボーを含んでおり、ナカヤマフェスタに似た血統構成である。
見た目は祖父サンデーサイレンスを思わせる漆黒の馬体。父譲りの小柄な馬が多いステイゴールド産駒の中では珍しく、500kg前後と雄大な馬格を誇る。ステゴ産駒だけに気性難と思われることもあるが、オリエンタルアートさんとこの兄弟よりかはずっと大人しく、レースも騎手の手綱によく従う。これもステイゴールド産駒らしくない。
しかしGI戦であと一歩届かずステイしてしまう所が父に似ている。なぜそこだけ似たんだ?解消されました。
ちなみに愛称は「マメちん」。ゴツい見た目に似合わず、ずいぶんかわいらしいあだ名である。呼び始めたのは戸田調教師で、「フェノーメノが小さい頃の漆黒の馬体から黒豆を連想したから」というのが由来らしい。フェノーメノ自身もこの呼び名を気に入ったのか、戸田調教師が「マ~メちん」と呼ぶと返事をするように鳴いた、という映像もある。
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2歳(2011年)~3歳春(2012年)、涙を飲んだダービー
・2歳~3歳初戦新馬戦は4番人気ながら岩田康誠を背に先行逃げ切りで勝利。しかし格上挑戦した2戦目のホープフルSではいい所なく7着と惨敗する。年が明けて自己条件戦は新馬戦と同じように先行から押し切って2勝目、クラシック戦線に名乗りを上げるべく弥生賞へ向かう。
・弥生賞(GⅡ)
2番人気を背負うが、レースは密集した馬群後方の位置取りで動くに動けず。直線でやっと馬群がバラけ、大外からメンバー中2番目の上がりで追い上げたが、スローな展開もあって前に届かず6着惨敗。皐月賞の切符を逃してしまう。レース後、岩田は戸田調教師にすごく怒られたらしい。陣営は相当ショックだったようで、次戦の日本ダービーへの出走権がかかった青葉賞では蛯名正義に乗り替わりとなってしまう。
・青葉賞(GⅡ)
クラシック戦線に乗るためには最低でも連対しなければらない青葉賞、陣営も弥生賞から期間をあけてフェノーメノを仕上げ直し万全の態勢でレースに臨む。
レースは中団後方と今までの負けパターンだったが上手く外目に持ち出し、直線で外から豪快に追い込んで2着のエタンダールを置き去りにする強い競馬で勝利、日本ダービーの出走権を獲得した。・2012年5月27日、日本ダービー
その日本ダービーには一つのジンクスがあった、“青葉賞の勝馬はダービーでは勝てない”というフェノーメノには不吉極まるものである。その影響か青葉賞を完勝したものの、皐月賞組には劣ると見られて5番人気になる。さらにこの時の東京競馬場は超高速馬場で先行馬の前残りで決着するレースが多く、先行できなければ勝つのは容易でなかった。
レースでは先行集団を眺める中団前に位置する。4コーナーを回り後続馬もグッと差を詰めて直線に向かうが、予想されていたとおり直線に入っても先行馬の勢いが衰ない。残り200mで先頭に立ったディープブリランテが栄光のゴールを目指し必死で逃げ、粘り込みを図る。
そのディープブリランテをフェノーメノは中団を割って強襲、勢いの差は歴然でその差は一完歩ごとにみるみる縮まっていき、ついに交わしたか!?と思った所がゴールだった。しかし写真判定の結果ディープブリランテの意地が僅かに上回りハナ差届かずの2着・・・。あまりにも惜しい敗戦に、蛯名は悔し涙に暮れた。また前年のウインバリアシオンに続き青葉賞組のジンクスを破れずに終わった。
しかし先述の通り極端に前が残る馬場だった東京競馬場で2着まで迫ったことで、その実力を知らしめる事が出来た。 この後休養に入り、秋を迎える。
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秋競馬、天皇賞(秋)
・セントライト記念(GII)秋はセントライト記念から始動、レースは好位から直線で反応良く抜け出すレース巧者ぶりを見せ楽勝、次走は菊花賞と天皇賞(秋)の両睨みだったが、距離適性を考慮して天皇賞(秋)へ向かう。
・天皇賞(秋)
この年の天皇賞(秋)は天皇・皇后両陛下が来場され、7年ぶりの天覧競馬となる栄誉あるレースとなっていたが、有力古馬が順調さに欠いていたことから同世代でNHKマイルカップを圧勝したカレンブラックヒルと人気を分け合っての一番人気に支持される。
レースはシルポートがハイペースの大逃げを打ち、それをカレンブラックヒル、フェノーメノが追う展開となる。淡々とした流れだったが4コーナーからレースが動き出す。先行勢を捉えようと後続が差を詰めコーナー出口に殺到、壁ができる事を嫌った多くの馬が外目へ流れたことで内がガラ空きになり、そこを名手ミルコ・デムーロに導かれたエイシンフラッシュが絶妙のタイミングで突き抜ける。フェノーメノもカレンブラックヒルを外から競り落としシルポートを射程圏に捉えていたが、エイシンフラッシュに並ぶ間もなく交わされてしまい2着。ルーラーシップ以下後続は抑えたものの隙を突かれた格好になり、またもや悔しさ一杯の2着だった。
・ジャパンカップ
前年の三冠馬オルフェーヴルと三冠牝馬ジェンティルドンナも参戦、出走メンバーの質が大幅に強化された国内最高レベルの一戦となった。前走の激走の疲れか体調が万全ではなかったようで、直線に入っても力強い走りを見せられずオルフェーヴルとジェンティルドンナに置いていかれ、挙句には天皇賞(秋)で先着していたルーラーシップやダークシャドウにも追い抜かれて、優勝したジェンティルドンナから5馬身以上離された5着となってしまう。
また、年末にはダービーで完璧に下したゴールドシップが底を見せない強い競馬で有馬記念を制覇。同世代でもジェンティルドンナ、ゴールドシップからは一ランク下のポジションで3歳を終えることとなった。
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4歳(2013年)、悲願の戴冠
・日経賞(GⅡ)年が明けて2013年3月、日経賞から始動。
前年の実績でオルフェーヴル、ジェンティルドンナ、ゴールドシップの三強に次ぐ強豪馬と評価され1番人気に支持される。レースはネコパンチが定番通りの大逃げ、直線で早めに抜け出したカポーティスターを外から豪脚一閃、力でねじ伏せ完勝。やはり実力が違う所を見せつけた。香港のGIクイーンエリザベスカップに招待されていたため次戦をどうするか決まっていなかったが、陣営は国内の天皇賞(春)に行くことを決意。距離不安で菊花賞を回避している上、長距離路線にはいまだ底を見せていないゴールドシップがおり、これに挑戦する形となって盛り上がりを見せた。
・天皇賞(春)
前評判はゴールドシップがどれだけの強さを見せるかが焦点となり、単勝1.3倍の圧倒的1番人気。フェノーメノは単勝6.2倍と離された2番人気だった。
レースは縦長の展開になり、フェノーメノはほぼ中団あたりに陣取る。ゴールドシップはいつも通り出足が付かず最後方。ほぼ全頭の意識がゴールドシップに向いており、どこで動くかが注目されていた。かたやフェノーメノは自分の競馬に徹し、レース後半から少しずつ上がっていき直線に入った時には先頭を窺う2番手に付ける。
最後の直線でフェノーメノは力強く抜け出して先頭に立つとそのままの勢いで後続との差を広げる。ライバルのゴールドシップは伸びず、代わりに京都巧者トーセンラーが追ってきたが差を縮めさせない強さを見せつけ完勝、悲願の初GⅠ制覇となった。
断然人気のゴールドシップを撃破したことで世間の評価も三強からフェノーメノを含めた四強へと変わり、そしてフェノーメノ陣営から今年は国内専念、目下は宝塚記念が目標と発表され、四強全てが宝塚記念を目指す事になった。・宝塚記念
宝塚記念は、王者オルフェーヴルが肺出血で回避となったものの、4歳三強による世代最強決定戦の様相を呈していた。1番人気は前年の三冠牝馬ジェンティルドンナ、2番人気が復活を期すゴールドシップ。フェノーメノは差のない3番人気だった。阪神競馬場は若干馬場が緩んでおり、この点がレースの鍵と見られていた。
レースは最初から大きく動く。これまで追い込みで結果を残してきたゴールドシップが最初のホームストレッチで気合をつけ、一気に先行集団に進出したのである。フェノーメノは中団、人気2頭を見るような位置でレースを進めた。
レースはまたもシルポートが暴走じみた逃げを打ち、重馬場得意のダノンバラードが2番手。その後ろに三強とトーセンラーという展開。レースはハイペースのようだが、シルポートが1頭爆走しているだけで2番手以降は平均ペースで流れる。
4コーナー、ジェンティルとゴルシがほぼ同時に仕掛けたのを見てフェノーメノもゴーサインを出す。フェノーメノの手応えはよく、一度は捉えるかに思われた。
が、並んだまま直線に入るや、真ん中のゴールドシップが猛烈に加速。ジェンティルとフェノーメノを置き去りにし、力尽きたシルポートと内で粘るダノンバラードを一瞬でかわし先頭に出る。ジェンティルとフェノーメノは脚を伸ばせない。結局、ゴールドシップがダノンバラードに3馬身半の差をつけ完全復活を証明する圧勝。フェノーメノはダノンバラード、ジェンティルドンナにも追いつけず4着。蛯名は「グリップが利かなかった」と緩かった馬場を嘆いた。
夏は休養し、秋は古馬王道路線を進む予定だったが、帰厩後の調教で左前脚に繋靱帯炎を発症。予定をキャンセルし放牧に出る。
翌年春、日経賞で復帰。2番人気となるが、先行するも粘れず5着に敗れる。この敗戦が響いたか天皇賞(春)では4番人気と評価を落としてしまう。人気は前年のダービー馬キズナ、前年の雪辱を期すゴールドシップ、悲願の戴冠を狙うウインバリアシオンが集めた。
レースは平均ペースで流れ、比較的ばらけた展開。人気どころがわりと後方に位置取ったのに対し、フェノーメノは中団のインで脚を溜める競馬。それほどレースが動くこともないまま淀の坂を超える。
ここへきて人気各馬が一斉に仕掛け、フェノーメノも一列外に持ち出す。後方にいた人気馬は大外を回さざるを得なかったのに対し、内から仕掛けたフェノーメノは楽に抜け出し、間を割るような形で先頭に躍り出る。最後は突っ込んできたウインバリアシオンと伏兵ホッコーブレーヴとの接戦を凌ぎ切り優勝。メジロマックイーン、テイエムオペラオーに次いで史上3頭目の春天連覇を成し遂げた。
しかしこの後、フェノーメノはその輝きを失ってしまう。
春天の疲労から宝塚記念を回避し秋競馬に臨むが、2年前に2着だった天皇賞(秋)で自己最悪の14着に惨敗。ジャパンカップでは蛯名が皐月賞馬イスラボニータの元へ去ってしまい、岩田康誠と久々のコンビを組むが8着。有馬記念では10着と、いいところなく秋を終えてしまう。
2015年、春天3連覇を目標に日経賞から始動。前年のリーディング騎手戸崎圭太を迎えるも8着に惨敗。それでも春天三連覇を目指し調整していたが、直前に炎症が起こり回避。検査の結果、右前脚の繋靱帯炎と左前脚の屈腱炎が判明。協議の結果引退、種牡馬入りとなった。
ステイゴールド産駒はすでにオルフェーヴル、ドリームジャーニー、ナカヤマフェスタがスタッドインしておりライバルは多いが、馬体面ではフェノーメノが圧倒的に勝っている。父としても怪物を送り出せるか、注目である。
2021年をもって種牡馬を引退。種牡馬引退後は去勢を経て、生まれ故郷の追分ファームでリードホースとして余生を送る。
血統表
ステイゴールド 1994 黒鹿毛 |
*サンデーサイレンス 1986 青鹿毛 |
Halo | Hail to Reason |
Cosmah | |||
Wishing Well | Understanding | ||
Mountain Flower | |||
ゴールデンサッシュ 1988 栗毛 |
*ディクタス | Sanctus | |
Dronic | |||
ダイナサッシュ | *ノーザンテースト | ||
*ロイヤルサッシュ | |||
*ディラローシェ 1999 鹿毛 FNo.11-d |
*デインヒル 1986 鹿毛 |
Danzig | Northern Dancer |
Pas de Nom | |||
Razyana | His Majesty | ||
Spring Adieu | |||
Sea Port 1980 黒鹿毛 |
Averof | Sing Sing | |
Argentina | |||
Anchor | Major Portion | ||
Ripeck |
クロス:Northern Dancer 4×5、Natalma 5×5、Ribot 5×5
主な産駒
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