フォーエバーヤング (Forever Young) とは、2021年生まれの日本の競走馬。鹿毛の牡馬。
競馬ファンからの愛称はエバヤン。
主な勝ち鞍
2023年: 全日本2歳優駿 (JpnⅠ)、JBC2歳優駿 (JpnⅢ)
2024年: 東京大賞典 (GⅠ)、ジャパンダートクラシック (JpnⅠ)、UAEダービー (
G2)、サウジダービー (
G3)
2025年: サウジカップ (
G1)、ブリーダーズカップ・クラシック(
GⅠ)日本テレビ盃(JpnII)
概要
かつて「凱旋門賞以上の無理ゲー」とも言われた米国競馬最高峰ブリーダーズカップ・クラシックを日本調教馬として初めて制覇した、日本競馬史上最高獲得賞金のレコードホルダー。
父リアルスティール、母*フォエヴァーダーリング、母父Congratsという血統。
父は2015年クラシック世代で、クラシック三冠では2着、4着、2着と善戦マンに終わったが、4歳でドバイターフを制して血統を証明した良血馬。全妹にラヴズオンリーユーがいる。2019年に社台SSで種牡馬入りし、初年度産駒からレーベンスティールを輩出するなどしているが、2024年からは日高のブリーダーズ・スタリオン・ステーションに移動することになった。フォーエバーヤングは2年目の産駒。
母はアメリカの馬で、GⅡサンタイネスSの勝ち馬。ノーザンファームに輸入され、フォーエバーヤングは第4仔。3代母*ローミンレイチェルはゼンノロブロイの母である。
母父コングラッツはアメリカのA.P. Indy産駒。自身は2005年のGⅡサンパスカルHを勝利し、同年のドバイワールドカップ5着の実績がある程度だが、種牡馬としてGⅠを3勝したTurbulent Descentなどを送り出している。
2021年2月24日、ノーザンファームで誕生。2022年のセレクトセール1歳の部で、4000万円からスタートし、サイバーエージェント代表・藤田晋に税別9800万円で落札された。(下記動画の126:00あたりから)
ちなみに誕生日はサイバーエージェントの子会社・Cygamesのゲームアプリ『ウマ娘 プリティーダービー』のリリース日である。
馬名意味は「曲名より」。同名の楽曲は数多くあるが、藤田オーナー曰く由来となっているのは自身が原案を務めたドラマ「会社は学校じゃねぇんだよ」の主題歌である、AK-69の「Forever Young feat. UVERworld
」とのこと[1]。
なお、この馬名は2代目であり、初代は父*ハンセル、母ヤングオトヒメ、母父*ラッキーソブリンの2002年生まれの鹿毛の牡馬であり、水沢競馬場で1戦0勝、総獲得賞金2万8000円であった。
戦歴: "大地が彼のキャンバスとなる"
2歳 (2023年) 伝説へとアテンド
父と同じ栗東・矢作芳人厩舎に入厩。デビューは2023年10月14日、京都・ダート1800mの新馬戦となった。鞍上には矢作師の愛弟子である坂井瑠星を迎え、4.2倍の2番人気に支持される。
レースはスローペースの流れを4番手の好位で進めると、直線では前の間を割ってあっという間に抜け出して4馬身差で圧勝デビュー。坂井騎手は「キックバック、馬混み、抜け出すところまで新馬戦としてはいろいろ勉強しながら。その中で勝てたのはよかったです」とのコメント。
続いて門別へ向かい、JBC2歳優駿 (JpnⅢ) へ。単勝2.2倍の1番人気に支持されたが、内の2枠3番からスタートで出負けして後方からのレースになってしまう。坂井騎手も「ちょっと焦った」というが、落ち着いて末脚を信じて3コーナーから進出を開始。直線では大外から一気に前を呑み込み、先行抜け出で粘り込みを図った2番人気サンライズジパングを並ぶ間もなくかわして、1馬身半差で勝利。2連勝で重賞制覇を飾った。リアルスティール産駒はこれがダート重賞初勝利。
というわけでダート2歳王者決定戦、川崎の全日本2歳優駿 (JpnⅠ) へ。兵庫ジュニアグランプリを勝ってきたイーグルノワールと人気を分け合ったが、2.1倍の1番人気に支持される。
今回は大外枠から積極的に押していき先行策。2番手につけてレースを進めると、3コーナー前でもう逃げ馬をかわして先頭へ。2番人気イーグルノワールと轡を並べての進出となったが、直線であっさり振り落とすとあとは完全な独走態勢。終わって見れば7馬身差の圧勝で3連勝、ダート2歳王者に輝いた。
7馬身差は交流重賞となってからでは最大着差記録。坂井騎手は「ここまで離すとは思っていなかったですし、最高の気分です」、矢作師も「自信はありましたけど、小回りと1600メートルは向いていないと思っていたので、こんなに強いのかと驚いています」と陣営もびっくりの圧勝ぶりだった。藤田晋オーナーは嬉しいGⅠ級初制覇。父リアルスティールも産駒GⅠ級初勝利となった。
後に発表されたレーティングでは113と、それまで同レース最高レートだった2017年勝ち馬ルヴァンスレーヴの111を更新した。
3歳 (2024年) 捨てろ負け惜しみ過去の栄光
海外遠征に定評のある矢作厩舎ということもあり、2024年から始まる3歳ダート三冠と海外路線のどちらを選ぶかが注目されたが、年明けに陣営は「招待が来れば」と、国内三冠ではなくサウジダービー→UAEダービー→ケンタッキーダービーの海外ダービー転戦ローテを進むことを表明。無事に招待を受け、サウジダービー (G3) に向かうことになった。
レース本番は海外ブックメーカーでも1番人気に支持されて迎えたが、レースはスタートで出遅れ、まず序盤の位置取りで坂井騎手の手がグイグイ動く。超前傾ラップの超ハイペース展開の中、キックバックを避けるために3コーナーから4コーナーにかけても大外を回されて手応えも悪く、前潰れで3番手まで上がってきたものの直線に入って前を行くBook’Em DannoとBentornatoに突き放される。どう見ても良くてこのまま3着……という展開だったのだが、なんとそこからさらにぐんぐん脚を伸ばし、残り200mでBentornatoをかわすと、粘り込みを図るBook’Em Dannoを猛追。最後にアタマ差捕らえきったところがゴール板だった。
勝ちタイムは従来のレコードを1.8秒近くも更新する1:36.17。およそ弱点を全部露呈したようなグダグダなレースぶりだったが、それでも勝ちきるという「着差以上に強い内容」とかなんかもうそういうレベルではない意味不明な勝ち方で、藤田オーナーに海外重賞初勝利を贈った。ちなみにこの年のサウジダービーの日はフォーエバーヤング自身の誕生日でもあり、この勝利はバースデーVでもあった[2]。
続いてケンタッキーダービーへの出走ポイントを取りにUAEダービー(G2)へ。大外11番枠となったが、日本のみならず各種海外ブックメーカーでも単勝1倍台という圧倒的支持を受けた。
レースはスタートで若干出負け気味も、外枠を活かして押して前に出て行き5番手を確保。キックバックを避けてそのまま枠なりに外の好位につけた。4コーナーから進出を開始し前を早めに捕まえにかかると、直線ではアルゼンチンのAuto Bahnとの一騎打ちとなったが、残り300m過ぎでかわすと、そのまま悠々と振り切り、3着以下を大きく突き放してゴール板を駆け抜けた。
前評判通りの完勝できっちり出走ポイント100を獲得し、ケンタッキーダービー出走権を無事に確定。
このままアメリカに渡り、いよいよ本番ケンタッキーダービー(GⅠ)に挑戦することになった。米国勢はフロリダダービーを13馬身差で圧勝したフィアースネスが最大のライバルとして立ちはだかる他、日本からは伏龍Sを制したテーオーパスワードが合流。無敗で中東2か国のダービーを制した事を評価され、JRAオッズではフィアースネスに次ぐ2番人気、現地でも3番人気に推される。
そして本番。スタートで少しもたついて出遅れてしまい15番手付近(20頭立てである点に注意)になってしまう。外を回して直線を向き、Sierra Leoneと併せ馬で上がっていく。最後はMystik Danと3頭並んでゴール板を駆け抜け、結果はMystik Dan1着、Sierra Leoneがハナ差2着、フォーエバーヤングはそこからさらにハナ差の3着に終わった。そして彼とテーオーパスワード(5着)は日本馬として初めてケンタッキーダービーで掲示板内に入賞した馬となった[3]。
当初はそのまま二冠目のプリークネスステークスに継戦する予定だったらしいが、結局この1戦で帰国。夏休みを挟み、3歳秋はブリーダーズカップ・クラシックを目標に定め、そのステップとして3歳ダート三冠最終戦のジャパンダートクラシック(JpnⅠ)から始動することになった。
東京ダービーを圧勝したラムジェット、レパードSを快勝してきたミッキーファイト、芝ダート二刀流サンライズジパングら中央勢に、地方勢からもサントノーレやフジユージーンが参戦する豪華メンバーとなる中、本番はBCということでメイチの仕上げではないこと、1枠1番で出遅れが怖いことなどが若干不安視されたものの、1.7倍の1番人気に支持される。
レースはスタートで若干躓いたものの出遅れることなく、逃げるカシマエスパーダを2番手で追走する好位を確保。外からサンライズジパングにがっつりマークされ、ラムジェットが後ろから捲り気味に進出してきたが、気にすることなくレースを進めたフォーエバーヤングは、直線でカシマエスパーダを捕まえて抜け出すと、追い込んできたミッキーファイトの猛追を全く寄せ付けず、1と1/4馬身差という着差以上の完勝。横綱相撲でその実力を示し、新設ダート三冠の一角に名を刻むとともに、本番のBCクラシックへと弾みを付けた。
なお勝ちタイムはJDD時代含め良馬場では最速の2分4秒1。白砂に変わって時計の掛かる馬場になった大井競馬場でも破格のタイムを叩き出している。そして翌日には同じリアルスティール産駒のチカッパが東京盃を制し、今後の世代交代にも弾みをつける結果となった。
BCクラシック(GⅠ)では前売り2番人気。1番人気はオブライエン厩舎悲願のBC制覇がかかる英ダービー馬・City Of Troy。他にもその「City Of Troyに5馬身差で勝つ」宣言を出したトラヴァースステークス馬Fierceness、因縁のSierra Leoneら、KYダービー組との再戦に。
が、枠順抽選ではよりによって1枠1番を引いてしまう。序盤から飛ばして好位を確保するのが定石のアメリカ競馬における最内枠は、上手くスタートダッシュを決めないと馬群に揉まれたまま終わる難しい枠。瞬発力より持続力、後方一気より王道先行が得意のエバヤンとしては「最悪」(矢作師・談)の枠である。
レース本番ではスタートから果敢に走るが、1コーナー時点でFiercenessを交わせず厳しい展開に。最終直線で外に持ち出すロスもあり、Sierra Leoneから2と3/4馬身差の3着に終わった。とはいえ、このレースでも史上最速クラスの超ハイペースの中で先行しても垂れることなく最後まで伸び続けた辺りは、確かな成長を示していたと言えよう。
帰国後は暮れの大井ダート大一番・東京大賞典(GⅠ)へ。この年のJRA勢は彼を含めたBC出走馬3頭が揃ったため、出走に必要な賞金ボーダーラインが2億円を超えるという状況に。そんな中で海外経験豊富なクラウンプライドやJBCクラシックを勝ちGⅠ級馬となったウィルソンテソーロ、今年は牡馬相手に戦いを挑んできた牝馬のグランブリッジ、JDC以来の再戦となるラムジェットら精鋭との対決となったが、国内前走JDCでの時計やBCクラシックでの走りを評価され、単勝1.3倍の断然人気に支持される。
迎えた本番。矢作師がアメリカで鍛えたというスタートを決めるとクラウンプライドに先頭を譲り二番手追走。途中4コーナーカーブ付近で手応えが怪しくなるが、坂井の手綱で乗り切ると直線で抜き去り先頭へ。その後上がり36秒6の末脚でラムジェットを置いていき、ウィルソンテソーロの追撃も難なく振り切り、国際GI初勝利を飾った。
3歳馬の東京大賞典勝利はオメガパフュームの2018年以来6年ぶりであり、3着に同期のラムジェットが入った事により同レースでは初めて3歳馬が複数頭馬券内に入った。そして馬主の藤田氏はこれが初の国際GI勝利に。
レース後坂井騎手曰く「前回がすごく良かったので、まだ本調子とはいかず8割くらいかなというイメージでした」との事で、遠征帰国後の検疫により緩んだ部分がありながらも古馬を一蹴しての勝利となった。
なお、この日は馬名の由来となった楽曲の作者であるAK-69も大井競馬場に来場しており、藤田オーナーと並んで口取り式に臨んでいたところが確認されている
。
この年度のJRA賞では海外レースの好成績を評価され、特別賞を受賞。最優秀3歳牡馬に関しては年間通してJRAレース未出走という事もありダノンデサイルに明け渡したが、全体256票のうち4割強の109票を獲得した[4]。
4歳 (2025年) さぁ、至ってやろうぜ!
上半期: 灼熱!アラビアのラブコール(?)と死闘
4歳は再び中東へ向かい、サウジカップ(G1)から始動。彼を含む東京大賞典上位馬のウィルソンテソーロ、ラムジェット、ウシュバテソーロらと共に遠征へ。米国勢やLaurel Riverら有力馬が回避する中、前走G1ジェベルハッタをレコードで完勝した香港最強馬・Romantic Warriorと人気を分け合い1番人気に推される。
アメリカ競馬で好走したサウジダービー馬が帰ってくるという期待からか、なんと発走数十分前にはRacing TVで特別アニメPVが流れるという好待遇であった。まるで死んだような扱いの「伝説の名馬リアルスティール」だの「右回りのチャーチルダウンズ競馬場」だの「富士山が見え桜が散る大井競馬場」だの、ツッコミどころ満載だが妙に感動できる内容。これで負けたらどうなってたんだろう……。
前走同様にスタートを決めたフォーエバーヤングは先行策、道中は三番手の好位で直線を進む。4コーナーでRomantic Warriorに抜け出しを許すもただ1頭食らい付き、最終直線は完全にマッチレースの様相。直線での叩き合いが続く中、外に持ち出したフォーエバーヤングはラスト1F12秒9の豪脚が炸裂。残り25m辺りでRomantic Warriorを差し切り、クビ差先頭でゴールを駆け抜けた。タイムは1分49秒09のコースレコード。なお3着は追い込んだウシュバテソーロであったが、2着のRomantic Warriorとの間には10馬身半もの差が付いていた、まさに上位2頭の壮絶な一騎打ちであった。
この勝利でフォーエバーヤングと坂井騎手、藤田オーナー共に海外G1競走初制覇。1着賞金約15億7000万円のサウジドリームを掴み取り、獲得賞金は一気に21.9億円に爆上げ。日本馬の歴代獲得賞金ランキングでイクイノックスに次ぐ3位に浮上した。更に今年から設定された「ブリーダーズカップ・クラシック優先出走権」もゲット。秋のリベンジに向けて最高の一歩を踏み出した。
そしてこの歴史的なマッチレースは世界からも高評価を受け、後日発表されたタイムフォームのレーティングは131+。芝とダートの違いはあれど、一昨年のドバイシーマクラシックを制した時点のイクイノックスと同じ数値を叩き出している。(この131+は正式な数値ではなく、例えるならこれくらいの数値は付けてもいいよね?と、外部の機関が述べたのもであったりする)
後日3月13日にIFHA's Longines が発表した2025年のレーティング第1版では、フォーエバーヤングは128と案内している。この128はサウジカップが終了した時点のもので、今後の活躍次第でこれから先さらに上昇していく可能性が大いにある形となった。IFHA's Longines (Xアカウント)
なおこの数値、2001年にジャパンカップダートの伝説的な走りを見せたクロフネの125を3ポンド上回っているどころか、祖父ディープインパクトが所持している127よりも高い。あくまで暫定値だが、この時点で歴代日本最強ダートホースの座にも大きく近づいたと言えるだろう。
この後は予定通りドバイへ転戦し、ドバイワールドカップ(G1)を目指す。当初ドバイ一本に絞って連覇を狙っていたLaurel Riverは状態が整わず回避という事で、ブックメーカーの前売りオッズは断然の一番人気。しかしながら前哨戦のアルマクトゥームチャレンジを圧勝した地元馬Imprial Emperorや、サウジでの雪辱を期す日本勢、米国勢が勝ち逃げさせまいと逆襲を狙っている。秋のBCクラシックに向けて、本土で待ち受ける米国の強豪達に挑戦状を叩きつける事が出来るか。だが、流石に疲れが残っていたか、あまり伸びることが出来ず3着に沈んだ(それでも日本馬最先着だし、勝ち馬Hit Showから2.03馬身差なので、そこまで負けてはいない。4着のWalk of Starsには2.45馬身差を付けているので、そこまでボロ負けでもない)。
さすがにこの負けとRomantic Warriorのドバイターフの2着敗退[5]の凡走もあり、レーティングは1下方修正され127に変更になった。
下半期: 「またいつか」ではなく
夏は全休し秋初戦はBCクラシックを見据えて日本テレビ盃(JpnII)に出走。同レースにはキングズソード、ライトウォーリアも出走したが当然のように単勝1.1倍、複勝元返しの圧倒的1番人気に推される。レースではスタート後にキックバックをまともに受ける場面もあったがライトウォーリア、僚馬レヴォントゥレットより後ろの3番手集団に位置取り、3コーナーから進出開始。直線で先頭に立つと鞭を入れられながら力強く伸び2着に2馬身半差つけて快勝。レヴォントゥレットも後続の追撃を振り切り2着を確保し、矢作厩舎のワンツーとなった。フォーエバーヤングはこの勝利によりGⅠ・GⅡ・GⅢの国際重賞競走、及びJpnⅠ・JpnⅡ・JpnⅢの国内グレード重賞競走の全格付けを勝利。意外にも日本競馬史上初の記録である。
同厩のアメリカンステージ・スウィッチインラヴと共に米国へ渡り、フォーエバーヤングはついに前年と同じ決戦の地、デルマー競馬場に帰ってきた。昨年と同じく現地のカメラに愛嬌を振りまきつつ、迎えた現地時間11月1日、ブリーダーズカップ・クラシック当日。1番人気になると目されていた3歳2冠馬Sovereigntyが熱発で回避したこともあり、オッズでは前年の上位3頭であるSierra Leone、Fiercenessと共に4歳三強の一角として上位人気、ブックメーカーによっては1番人気に推される。なおこのライバル2頭はこのレースをラストランとすることが決まっており、フォーエバーヤングにとってはこれが最後のリベンジの機会でもあった。
レースが始まると五分のスタートから前へ出てラビットを外から見る二番手に付ける。最内枠から出たFiercenessを内に閉じ込めながら追走すると外からMindframeが並びかけ、二頭は向正面で早くも馬なりでラビットを置いていき始める。4コーナーで鞍上坂井瑠星の仕掛けに応えて力強く加速しだすと並走していたMindframeをあっという間に置き去りにしフォーエバーヤングは四角先頭で直線に入った。後ろからは外に切り替えたFierceness、後方待機して大外から突っ込んできたSierra Leoneが迫り前年と同じ三強による争いになったがフォーエバーヤングは衰えることのない末脚で走り続け、「CELEBRATE, JAPAN!!」の現地実況と共に先頭のままゴール板を通過。ダートの世界最高峰ブリーダーズカップ・クラシックを勝利し、世界一のダートホースとなった。勝ちタイムの2分0秒19は砂質が全く違うとはいえ、スマートファルコンが2010年に東京大賞典で出した日本調教馬によるダート2000mの日本レコードタイム(2分0秒4)を上回っている。
曽祖父サンデーサイレンスが1989年にこのレースを勝利してから36年。祖国で種牡馬として評価されず日本に渡り、そこから産まれた無敗の三冠馬が種牡馬として大活躍し、その血が世界のレースを席巻する一端を担った父から産まれたフォーエバーヤングは、ついにその父系の力をアメリカに見せつけたのである。
ダートの本場アメリカで一番のレースを勝ったことは日本競馬にとって前にも後にもないほどの偉業であり、フォーエバーヤングは文字通り永遠にその名を刻まれる存在になった。
レース後のインタビューで矢作師は「馬の調子はパーフェクト。これで負けたら『俺どうしたらいいんだろう』という程の状態。」、「瑠星への指示は『馬を信じて乗ってこい』とそれだけ。自分はちょっと早いと思ったが彼のほうが馬を信じていた。」、「直線の短いアメリカで勝つためにコーナーで少し置かれる点の修正に力を入れ、4コーナーでトップスピードに乗れるような調教をした。」、
鞍上・坂井瑠星騎手は「ラビットが思ったよりも飛ばさなかったので当初のイメージであったFiercenessを見る位置より横につけて閉じ込める方がいいと感じた。」、「追い切りでもコーナーで仕掛けることを想定して動かしてきた。」と語った。
つまり調教師の的確な訓練と騎手の臨機応変な状況判断が噛み合った上でフォーエバーヤング自身がそれらに完璧に応えたレースであったということであり、日本で繋がれた血統から日本の牧場で生まれ育ち日本の厩舎で鍛えられ日本人騎手を背に日本のレースでの勝負付けもした上で世界に出て戦ったこの結果はフォーエバーヤングと彼を支え導くチームが日本競馬や日本の馬産の代表・先駆者として挑み、世界最高峰の舞台で勝利したと言い切れる大きな意味を持っている。
また、フォーエバーヤングはこの勝利により総獲得賞金が29億9350万4970円になり、円立ての国内賞金ランキングトップに躍り出た。また、米ドル立ての世界賞金ランキングでもRomantic Warrior(2860万ドル)、Golden Sixty(2146万ドル)、ジェンティルドンナ(1969万ドル)に次ぐ4位(1945万ドル)まで上昇し、テイエムオペラオー(1702万ドル)がついにトップ10から陥落することとなった(とはいえ彼が引退したのは2001年なわけで、四半世紀も前に活躍した馬がまだいたのが異常事態なわけだが)。
帰国後は年内を休養に回し、5歳春は前回同様サウジカップ(G1)から始動。その後は前年同様にUAEへ転戦し、雪辱を果たすべくドバイワールドカップ(G1)を目指す。矢作師によれば芝を一度使いたいという事で、2026年の締めくくりとして有馬記念を狙う方向のようだ。2025年は米国の頂点を極め、来年は再び挑戦者として新たな世代を相手にドバイの頂点を目指す。
余談
- 調教担当の渋田康弘調教助手からの愛称は「ヤン子
」。普段はマイペースな性格をしているようで、調教後の手入れ時に渋田助手の手の中でそのまま寝てしまったこともあるという。
- 渋田助手曰く「行く先々での待遇が良かったからか」、遠征で負担を感じるどころか上機嫌になる旅好きとしても知られている。[7]
- 前述の通り2025年11月2日現在の総獲得賞金は29億9350万4970円だが、中央競馬では新馬戦以外走っていないため、中央獲得賞金が僅か720万円しかないことをネタにされることがある。
- ちなみに地方獲得賞金は2億8700万円。残る26億円弱を海外で稼いだ計算になる。
- すなわち国内獲得賞金は2億9420万円だが、これはシンエンペラー(3億5600万円)を下回る。netkeibaなどの競馬情報サイトでは海外の獲得賞金はカウントされないため、馬主で検索をかけると(デフォルトでは賞金順に表示されるため)上から2番目に表示される。同姓同名の馬主を分けて検索できなかった頃は、ハッピープログレス(1984年安田記念勝ち馬。総賞金2億9597万1000円だが、1984年より前の賞金が詳細ページでは加算されないため、netkeibaでは1億8630万円と表示されている)よりも下に表示されていた(2024年東京大賞典で追い抜いた)。
- 彼の名前の由来となった楽曲「Forever Young feat. UVERworld」であるが、彼のBCクラシック制覇の勇姿を届けたグリーンチャンネルのBC中継ではなんとED曲として起用されていた。
- 日本で人気なのはもちろんだが、当地のダービーを勝利したことで翌年に先述のアニメが作られたほどのサウジ・ドバイ、ケンタッキーダービーで現地のトップホースと激闘を演じたことでBCクラシックで2年連続1人気を争ったアメリカ、最強馬Romantic Warriorとの死闘を制したことで一目置かれた香港、と世界を旅して強敵たちと戦ってきたことで国外競馬ファンからの人気も高い。
- ブリーダーズカップ・クラシックは国際保護馬名対象レースのため、この名前が再利用されないことが保証されている。世界各地でこの名前は何度か利用されているが、今後はそのようなことは起きない
血統表
| リアルスティール 2012 鹿毛 |
ディープインパクト 2002 鹿毛 |
*サンデーサイレンス | Halo |
| Wishing Well | |||
| *ウインドインハーヘア | Alzao | ||
| Burghclere | |||
| *ラヴズオンリーミー 2006 鹿毛 |
Storm Cat | Storm Bird | |
| Terlingua | |||
| Monevassia | Mr. Prospector | ||
| Miesque | |||
| *フォエヴァーダーリング 2012 栃栗毛 FNo.2-b |
Congrats 2000 鹿毛 |
A.P. Indy | Seattle Slew |
| Weekend Surprise | |||
| Praise | Mr. Prospector | ||
| Wild Applause | |||
| Darling My Darling 1997 鹿毛 |
Deputy Minister | Vice Regent | |
| Mint Copy | |||
| *ローミンレイチェル | *マイニング | ||
| One Smart Lady |
クロス:Mr. Prospector 4×5×5(15.63%)、Northern Dancer 5×5×5(9.38%)、Secretariat 5×5(6.25%)
- 半妹に2024年アルテミスS勝ち馬のブラウンラチェットがいる。
- 2024年BCクラシックなどGⅠを3勝し、ケンタッキーダービーや2024年・2025年BCクラシックでフォーエバーヤングと熱戦を繰り広げたSierra Leoneは従兄弟に当たる。またその母(フォーエバーヤングの叔母)Heavenly Loveは米GⅠアルシバイアディーズSの勝ち馬。
- 上述の通り祖母Darling My Darlingの半弟に2004年の秋古馬三冠馬ゼンノロブロイがいる。
- 祖母Darling My Darlingの半妹ストレイキャットの産駒にタガノエリザベート・キャットコイン・ワンブレスアウェイ・ロックディスタウンの重賞馬4姉妹がいる。
関連動画
関連静画
関連リンク
関連項目
脚注
- *藤田晋オーナーの2024年2月23日のXポスト
より。 - *余談だが、後にBook'Em Dannoは2025年フォアゴーSなどGⅠを2勝、Bentornatoは2025年のBCスプリントを制覇するなど、2着・3着の2頭も活躍を収めている。
- *過去の日本馬の成績は2019年のマスターフェンサーと2023年のデルマソトガケの6着が最高だった。
- *JRAニュース『2024年度JRA賞競走馬部門 記者投票集計結果
』より。 - *勝ち馬のソウルラッシュと0.6ミリ秒差ときわめて接戦ではあるが、前走日経新春杯で11着に沈んだ5着のメイショウタバルに2.75馬身ほどしか差がない。どちらもサウジカップの激闘でおつりがなかったとは思うが……。
- *日刊ゲンダイ競馬部X(Twitter)の2024年10月3日の投稿
より。 - *スポーツ報知UMATOKU 2024年10月19日の記事『【BCクラシック】フォーエバーヤングとデルマソトガケが豪華併せ馬 国内最終追い切り
』より。
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- フィアースネス
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- ヘデントール
- ボンドガール
- ミスティックダン
- ミッキーファイト
- メイショウタバル
- ラムジェット
- レガレイラ
- レライタム
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