フランケンシュタインとは、イギリスのメアリ・シェリーによる小説、及び同作品の主人公である。
しばしば頭にボルトを刺したつぎはぎの大男を指してこの呼名が用いられるが誤りである。この名はその人造人間を生み出した科学者のものであり、人造人間に名前は存在しない。
概要
正式な題名は『フランケンシュタイン あるいは現代のプロメテウス』(Frankenstein; or, The Modern Prometheus) 。多くの場合単に『フランケンシュタイン』と呼称される。
1816年、メアリは後の夫パーシー・シェリー、異母妹クレア・クレアモント、詩人G・G・バイロン、医師ジョン・ポリドリと共にレマン湖畔の屋敷 『ディオダディ荘』 に滞在。長引く雨の中で退屈していた彼らは、お互いに怖い話を創って披露しあうという催しを行った。そこでメアリが着手し、1年をかけて書き上げたものこそ本作である。
1818年、匿名で出版。1831年の改訂第三版以降メアリの名が記されており、現在書店に並んでいるのはこの版である。
古くから映像化されており、最古の作品は1910年である。吸血鬼ドラキュラや狼男など、他作品とのクロスオーバーやパロディもかなり多い。その中でも名優ボリス・カーロフ演じる「怪物」はとみに有名。
あらすじ
イギリスの北極探検隊隊長ロバート・ウォルトンが姉に当てた手紙という形式をとっている。ウォルトンはロシアから北極点に向かう途中、北極海で瀕死の男性を発見して救助。ヴィクター・フランケンシュタインと名乗った彼は、息も絶え絶えに自らの恐ろしい体験を語り始めた。
スイスの名家フランケンシュタイン家に生まれたヴィクターは、科学者を志してドイツ・バイエルンの名門大学で自然科学を学んでいた。そこで彼は「生命の謎」という最大の禁忌に挑み、狂気じみた研究の末に「理想の人間」を作り上げる計画を打ち立てる。それが神に背く行為だと悟りつつも知的探求心には勝てず、ヴィクターは墓を暴いて死体を集め、つなぎ合わせ、ついに「怪物」の創造に成功した。
「怪物」は優れた体力と知性を兼ね備えていたが、再生技術が追い付かずに見るも悍ましい容貌となった。ヴィクターは自らが作り上げたものに嫌悪を覚え、廃棄して生まれ故郷のジュネーヴに逃げる。しかし「怪物」は頑健さゆえに生き延び、卓越した知性によって言語を習得。自らを作り出した「父」を追いかける。しかしその醜さゆえに出会う人々から迫害され、偶然森で出会ったヴィクターの弟ウィリアムに痛罵された事で彼を殺害してしまう。
ヴィクターの目の前に現れた「怪物」は、自分の伴侶となる女性を作るようヴィクターに要求。願いが叶えば二度と人前に姿は見せないと告げる。しかし「怪物」が増える事を恐れたヴィクターは、完成間近に作業を放棄。激怒した「怪物」により協力者は殺害され、ヴィクターは犯人と間違われて投獄されてしまった。
紆余曲折の果てにジュネーヴに帰還したヴィクターは、幼い頃から共に育った女性エリザベスと結婚。しかし婚礼の夜に「怪物」は再び現れ、復讐の為にエリザベスを手にかけてしまう。ヴィクターは「怪物」を始末する為に北極まで追い詰めたが、そこで力尽きてウォルトンに助けられる事となったのだ。
こうして自分の物語を語り終えたヴィクターは、「怪物」を殺すように頼むと息を引き取る。北極点到達をあきらめて帰還しようとしたウォルトン一行の前に「怪物」が現れ、創造主たる「父」から必要とされず、誰にも愛されなかった悲しみと恨みを吐露。北極点で自殺する決意を告げ、吹雪の中を立ち去っていく。
位置付け
野望に燃える青年が科学の知識を基に新しい生命を創出すという空想科学小説的な要素と、人外の存在に命を狙われるという恐怖小説的な要素が含まれており、本作はSFとホラー両ジャンルの古典的名作として知られている。
特にブライアン・オールディズが本作をSFの "種の起原" と位置付けた事は有名であり、しばしばロボット・人工知能SF等 "創造主 (人間)" と "被創造物 (機械)" の関係を描く作品の元祖とも言われる。
怪物について
多く読まれているとは言い難い本作であるが、上記の様な内容であるという事は広く知られている。
この一文は非常にシンプルに作品内容を書き現したものであるが、よく用いられる「無表情で頭にボルトが刺さっているつぎはぎ顔の大男」というステレオタイプな外見図と相俟って、フランケンシュタインの怪物は冷酷非道でとても人間とは相容れない存在であるというイメージが先行してしまっている。
もし「怪物」に対し上の様な先入観を持っている方がいれば、是非下の市場で買って読んで欲しい。彼は実際かなり可哀相な奴なのである。
なお、この人造人間について「人間の死体をつぎはぎして作った」と表現されることが多いが、作中で主人公の科学者はこの人造人間の材料を納骨堂、解剖室、屠殺場(slaughter-house)から得ている。slaughter-houseは食肉解体場なので、ウシやブタ等の動物の死体も含まれているのかもしれない。
補遺
本作が生まれるきっかけとなった『ディオダディ荘の怪奇談義』では、バイロンが詩を作り、ポリドリが小説として膨らませた作品を『吸血鬼』(The Vampyre)として発表。ちなみにシェリーは途中で投げ出してしまっている。
この顛末を映画化したのが、ケン・ラッセル監督の映画『ゴシック』(1986年)である。
関連動画
関連静画
関連項目
- 人造人間
- フランケンシュタイン・コンプレックス
- 小説作品一覧
- SF
- ロボット
- ホラー
- 失楽園
- 北極
- プロメーテウス
- 西行 - 反魂の秘術によって人骨から人を作り出した、という伝説がある。その伝説によればフランケンシュタインと同様に自らが作った「人」を忌み嫌い、放置したという。
- 火の鳥 復活編
- フランケンシュタインを元ネタ、あるいはモチーフにした作品・キャラクター
外部リンク
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