フランシス・フクヤマ(1952~)とは、アメリカの政治学者である。
『歴史の終わり』が極めて有名なので、そこでの主張が独り歩きしてしまっているが、その後いろいろと論調に変化があった人物である。
概要
簡単に言うと冷戦終了直後に、東西のイデオロギー対立が終わり、リベラルな民主主義に世界が一体化されることで、人類史が最終的なゴールに到達する、と主張した人物である。
とはいうものの彼の代表作である『歴史の終わり』の時点で、以下の二つの内在的批判があった。まず、異なる秩序にある「歴史世界」、「脱歴史世界」が存在し、その双方が石油、移民、テクノロジーの問題で対立する状況が続いていくというものである。次にニーチェ的な循環思想によって、リベラルな民主主義世界は承認欲求を必要としない、つまり欠いた状態になるため、「歴史の終わり」が「歴史の始まり」に転化するというものである。
そして彼の危惧はアメリカ同時多発テロ以降、ものの見事に現実のものとして現れた。こうして「歴史の終わり」とはきわめて困難な「脱歴史世界」による「歴史世界」の管理、あるいは「脱歴史世界」に生きる人間の動物化を招く、という不安を浮かび上がらせるものであったと認めざるを得なかった。
その結果、フクヤマはコミュニタリアン的転回を行い、社会が急速にホッブズ的な自然状態に向かっているという危機認識のもと、新たな議論を展開するようになった。現代のテクノロジーの進歩は産業化と同レベルの「第二の大転換」を生じさせており、バイオテクノロジーの発達で『人間の終わり』にさえ向かっているとしたのである。
こうしてグローバリゼーションの進行によって、フクヤマの主張はネオ・ホッブズ主義とまで言えるものに変化したのだ。
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