フリーゲージトレインとは、車輪の幅を変える事で異なる軌間に対応させる車両である。略称はFGT。
概要
別名「軌間可変電車」、英語では「Free Gauge Train」の他「Gauge Change Train」とも呼ばれる。
日本では新幹線で使用されている標準軌(1435mm)と在来線の狭軌(1067mm)を一つの車両で直通させる事を目的として研究・開発が進められている。この技術が実用化されれば新規に新幹線を建設したりミニ新幹線化するよりもコストを抑える事が出来る他、既存の在来線から新幹線に直通させる事が可能である為、開発に期待が寄せられている。また、フリーゲージトレインの技術の量産化を確立した場合、日本国内に限らず世界的なインフラ輸出に発展する可能性もある技術である。
2014年現在、世界的にはスペインで1968年から運用されている他、ポーランドなどでも既に運用されいる。また、スイスや欧米などでも導入を検討し、開発が進められている。ただしこれらはいずれも動力集中方式であり、また標準軌⇔広軌へ変換するフリーゲージトレインであることに留意する必要がある。
技術的な問題
- 在来線と新幹線では電圧が違う事からそれぞれに対応したパンタグラフが必要となる(北陸新幹線では直流にも対応する必要がある)。
- 最高速度が現在の新幹線における主力車両の300km/hと比べると遅い(2次試作車で最高速度は270km)。
- 車体重量の問題。重過ぎて線路を傷める(1両46tほど。ただし三次車は一両43tまで軽量化)。
- 急カーブ(概ね半径400m未満)を走行できない。乗り入れ先がカーブの多い線路である場合、路線改良が必要であり、そのための費用が無視できない。また、新型車両は非振り子式でもカーブの通過速度を従来より+10~15km/hほど向上しているが、それより劣る可能性がある。
- 軌間変換装置を10km/hほどで通過する為、変換中時間が掛かる。
- そもそも世界的に見ても標準軌⇔狭軌(1067mm)のフリーゲージトレインは存在しない未知数な技術。
とりあえずJR総研としてはこれらの問題はすべて解決したとしており、2014年ついに実用車両のプロトタイプである3次試作車がロールアウトした。これより九州新幹線において3年かけて耐久試験を行うとのこと。
ただ、技術的な問題は解決しても受け入れ側が現在絶賛炎上中だったりする。
受け入れ側の問題~九州編~
九州新幹線長崎ルートでは武雄温泉~新鳥栖間が狭軌のスーパー特急規格で線路を引く方針であり、フリーゲージトレインを投入することが見込まれている。しかし博多駅の線路容量(もういっぱいいっぱい)や運行システム(山陽新幹線の車両は最低でも285km/hに対し、フリーゲージトレインは270km/hな為、フリゲージトレイン後方列車が追い付く)上の問題もあって、JR西日本はフリーゲージトレインの山陽新幹線乗り入れには消極的である。
また、長崎新幹線は2022年の営業開業を目指しているが、長崎新幹線は狭軌フリーゲージトレインが実用化されていることを前提としている。2014年時点では、フリーゲージトレインの実用化は最終試験段階ではあったが、2014年10月の試験開始1ヶ月後に不具合が発生。2016年12月より試験を再開したものの、翌2017年7月にまたしても不具合が発生した。
結果、JR九州はフリーゲージトレインの導入をコスト面の理由から断念。当面の間は武雄温泉駅でのリレー方式となる事が確定的となった。
受け入れ側の問題~新幹線その他編~
四国は後述するとして、他には伯備線(岡山~米子・松江間)及び北陸新幹線(大阪・名古屋~富山直通列車)などへの投入が計画されていた。しかし伯備線は前述のJR西日本が速度的な問題を理由に難色を示し、北陸新幹線は雪対策どうすんだという話がある。伯備線に至ってはフリーゲージトレイン導入問題と振り子式車両・381系後継車両問題がリンクしてしまっている。鳥取県は伯備線の他にも因美線・智頭線への導入も含め岡山県・島根県と連携して調査するとしていた(因美線・智頭線ルートの場合は米子延長も視野に入れられている)。調査の結果、伯備線に導入しても現状より所要時間が増えるという結果になり、フリーゲージトレインの導入は白紙化。これにより273系による381系置き換えが実施され、中国横断新幹線の誘致計画が発動されることとなった。
なお、北陸新幹線への投入はJR西日本及び関係する6府県は暫定措置として導入を容認している[1]。
なお、JR西日本はいつまでたっても実用化のめどが立たないJR総研に見切りをつけたのかフリーゲージで実績のあるスペインと技術提携[2]をし、フリーゲージ車の開発を行う事となった。
JR西日本は2014年10月から北陸本線敦賀駅構内に新設する実験線を使用して軌間変換試験を実施する他、2016年度に試験車両(6両編成)による走行試験を北陸新幹線・北陸本線・湖西線で開始する予定。
※仮に順調に開発が進んでも実用化は2025年頃になる予定で、北陸新幹線敦賀開業が3年前倒しされた為、繋ぎ措置として新在乗り換えとなる。但し、九州での開発が遅延する場合は導入費用と運用期間の関係から北陸への導入は見送られる。
九州での開発が事実上断念されたことを受け、2018年5月には北陸新幹線も導入を断念した。
受け入れ側の問題~四国編~
四国の中央志向が尋常ではないのは東海道線に生き残った数少ない寝台列車のひとつがサンライズ瀬戸という時点でお察しください。
2008年に新幹線基本計画である四国新幹線の調査が打ち切られ四国に新幹線が通る可能性が存在しない今、フリーゲージトレインだけが希望という状況である。JR四国のページを見ればわかるがJR四国は各県庁所在地~岡山間の特急が生命線であり、フリーゲージトレインで新大阪直通が実現すればその恩恵は計り知れない。
現在JR四国は線路をスーパー特急規格にした上で伊予西条~松山間に直線的な短絡線を引くことを長期計画としてあげている。これにより松山~新大阪間は20分、松山~高松間は50分もの時間短縮になるとのこと。しかし。
という疑問が提示されており、本当にやれるのか疑問が出されている。大体今治と松山は福山行バスが出ておりそこから新幹線に乗った方が早いという話もあってな。
だったら在来線で使えばいいじゃない! JRは使い物にならん!!
2018年、突如近鉄が京都線・橿原線と吉野線(京都~吉野)への導入の検討を発表した。
確かに京都線・橿原線は標準軌なのに対し吉野線は狭軌のため、一度橿原神宮前駅で乗り換える必要があり不便であったこと、また新幹線ほど高速走行が求められていないことから導入が可能と判断したと思われる。その後は長い間続報がなく、2021年5月に公表された「近鉄グループ中期経営計画2024」にもフリーゲージトレインについての記述がなかったことから一時は開発中止も疑われていたが、2022年5月25日に開催された「鉄道技術展・大阪」で、フリーゲージトレインの展示がされており、開発が継続していることが判明した。近鉄としては2025年の大阪万博に間に合わせたいところだろうが、果たして……。
おまけとしてフリーゲージトレイン導入検討先に蒲蒲線を上げておく。京急と東急をつなぐ800mほどの路線で導入されればメリットは計り知れないがリンク先を読んでいただければわかるがこちらも問題ありまくりだったりする。
関連動画
関連項目
脚注
- *但しJR東海は態度が未定の為、仮に「サンダーバード」に導入されても「しらさぎ」への導入は不明
- *まぁJR総研のFGTもスペインの技術を使っているのだが。
- *そもそも予讃線特急の速度が上がらないのは今治~波止浜~波方間にある急カーブのせいである。先がとんがっている高縄半島の特性のせいで改良が不可能な上波止浜&波方駅自体が結構乗客が多い(地元大企業である今治造船と関連企業の最寄り駅)のも問題。あと波方の隣、大西駅も地元大手企業・来島ドックとその関連企業の最寄り駅。
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