フレデリカ・グリーンヒル(Frederica Greenhill)とは、ヤン・ウェンリーの嫁である。
概要
田中芳樹の小説「銀河英雄伝説」およびそれを原作としたアニメ、漫画の登場人物。
CVは榊原良子(石黒監督版・本伝)、桑島法子(石黒監督版・外伝「螺旋迷宮」)、遠藤綾(Die Neue These)。
ドワイト・グリーンヒル大将の娘であり、記憶力と情報・事務処理において非凡な能力がある。
はじめはファンとして、次いで部下として、さらに妻として、ヤンを見守り続けてきた女性である。ヤンの死後はイゼルローン共和政府主席となった。
略歴
エル・ファシルの脱出行
ヤン・ウェンリーのスピード出世のきっかけとなった「エル・ファシルの戦い」の関係者。といっても当時のフレデリカは14歳で軍に属していたわけではなく、巻き込まれた民間人の一人であった。
退却作戦の指揮を押し付けられたヤン(当時中尉)はいかにも頼りなさげで、民間人からは能力とやる気を疑われていた。そんな中でただ一人「あれでも一生懸命やっている」「なにもできない人がとやかく言うべきではない」と、ヤンを擁護していた。
また食事を喉につまらせたヤンにコーヒーを差し出しており、これが二人の初対面と思われる。一命を取り留めたヤンは「コーヒーは嫌いだから紅茶にしてくれたほうがかった」と発言したらしいが、本人は覚えていない。ただ、自分の味方をしてくれた女の子がいたことは知っていたようである。
ヤンはこの後、職務放棄したリンチを囮とし、さらに敵の心理的隙をついて民間人300万人をエル・ファシルより脱出させることに成功、英雄と讃えられる。フレデリカのヤンへの恋慕はこのころから始まったと思われる。また、彼女の軍役への志望もヤンの影響であったが、父ドワイトは、自分の影響だと思い喜んでいたらしい。
宇宙暦794年度士官学校を次席で卒業し、統合作戦本部情報分析課に配属される。
第十三艦隊
アスターテ会戦敗退後、ヤンは少将へ昇格し第十三艦隊司令官に就任する。このときに副官として「優秀な若手士官」をアレックス・キャゼルヌに要請したところ、拝命を受けたのがフレデリカ(当時中尉)であった。キャゼルヌがエル・ファシルのことを知っていたかどうかは定かではなく、人材としての適正と、「上官の娘を副官に当ててヤンの反応を楽しんでやろう」くらいのつもりだったかもしれないが、フレデリカにとってはまこと幸運な人事であった。
結成時の第十三艦隊は艦艇6400隻、兵員70万人であり、これはこの世界でいえば一個艦隊の半分程度の半端な兵力であった。その寡兵に対して最初の任務が「イゼルローン要塞攻略」。帝国軍をして「イゼルローン回廊は叛乱軍兵士の死屍をもって舗装されたり」と豪語せしめる難攻不落の要塞を、半個艦隊で落とせというあまりの無茶ぶりであった。ヤンは要塞攻略の構想を持ってはいたが、自身でも成功を信じてはおらず、「まともな作戦ではない」「失敗しても自分と本部長が恥をかくだけ」と考えていたが、フレデリカは作戦を懸念するどころか成功を断言した。確信の理由は「ヤンはエル・ファシルでも成功したから」。この時点でユリアン顔負けのデレデレっぷりであった。
結果はヤンの作戦が見事にハマり、同盟は味方の一滴の血も流すことなくイゼルローン要塞を奪取した。これによりヤンは中将に昇進し、第十三艦隊は通常の一個艦隊まで兵力補填される。以降、事務能力に乏しいヤンを補佐しつづけ、有能な副官として評価される。
アムリッツァ会戦で同盟が歴史的大敗を喫した後、ヤンは大将に昇進し、イゼルローン要塞司令兼駐留艦隊司令官に任ぜられる。それにともない副官のフレデリカは大尉に昇進し、上官とともにイゼルローンに赴任することとなる。なおこれ以降、第十三艦隊はヤン艦隊と呼称されるようになる。
宇宙暦797年、救国軍事会議によるクーデターが勃発。その首謀者は、フレデリカの父、ドワイト・グリーンヒル大将であった。その事実を知ったフレデリカは、父の暴挙にショックを受けるとともに、副官の任を解かれることを覚悟した。しかしヤンは「君がいてくれないと困る」と言い、なんら処分はくださなかった。クーデターはヤン艦隊によって鎮圧され、ドワイトは死亡した。フレデリカは父の死に再び落ち込み、また首謀者の娘ということで軍内での彼女への風当たりはきつくなるが、この言葉と、ヤンに必要とされているということが彼女を支えていた。
ヤン艦隊はクーデター鎮圧という功績をたてたが、もともと軍が起こした問題であることと人事バランスから、シェーンコップを除いて昇進はなかった。
宇宙暦798年、上官のヤン・ウェンリーに査問会への出頭命令がくだる。同盟憲章、同盟軍法をそらんじるといわれるフレデリカは、即座に法規的根拠のない恣意的なものと結論した。しかし命令拒否をするわけにもいかず、ヤンは首都ハイネセンに赴く。フレデリカも副官として上官に同行したが、首都到着直後にヤンとは引き離され、面会すら認められなかった。軍部のあまりの高圧的な態度に久々に切れちまったフレデリカは、マスゴミにこの件バラすと脅してみたり、アレクサンドル・ビュコック大将に助力を請うたりと、ヤン解放に奔走する。
けっきょくヤンが解放される決め手は、帝国軍侵攻の報だったわけだが、ビュコック爺さんが「大尉が頑張ったんじゃよお」と言ってくれたのでヤンからも感謝されてちょっと報われた感じ。腹ごしらえをした後でヤンとともにイゼルローンへ帰還した。
ヤンはイゼルローン回廊に到着した際に、要塞駐留艦隊との無言の連携で帝国軍を窮地に追い込んだ。そして無事に要塞への帰還を果たすと、雷神の鎚でもって敵軍の9割以上をガイエスブルク要塞もろとも吹き飛ばし、敵司令官のカール・グスタフ・ケンプ大将を戦死せしめる圧巻の勝利をおさめる。
宇宙暦799年、ラインハルトが“神々の黄昏”作戦を実行する。当初ヤン艦隊は、イゼルローンにてロイエンタール率いる帝国艦隊と相対したが、帝国軍本隊がフェザーン側から侵攻したためにイゼルローン要塞を放棄し、同盟領の防衛に向かった。ランテマリオ星域にて同盟軍が崩壊するすんでのところで駆けつけ、帝国軍を一時撤退させる。改めて迎撃に向かうにあたり、ヤンは同盟軍全兵力を託されるとともに元帥に昇進。というかヤン艦隊の連中はみんな昇進。フレデリカは少佐となった。
ラインハルトとの直接対決となるバーミリオン会戦に先立って、ヤン艦隊では全軍に24時間の自由時間が与えられた。このときフレデリカはヤンの自室に呼び出され、彼から求婚をうけた。ヤンのプロポーズはしどろもどろで歯切れの悪いものであったが、フレデリカのほうもたいがいで、返事をする前に将来設計とかを語り出す始末。勘の悪いヤンを変に焦らしてしまった。イエスってことだよ、言わせんな恥ずかしい。
バーミリオン星域会戦終結後、フレデリカはヤンとともに退役し、仲間内でささやかな結婚式をあげた。以降は、フレデリカ・グリーンヒル・ヤンと名乗る。
新婚生活
退役後は夫婦の年金で生計を立てていた。同盟は帝国の統治下に置かれ財政は困窮していたが、元帥と少佐の年金なので普通の生活には困らない額はもらっていたようである。
ユリアンが地球に行ってしまったために、ヤン家の家事全般はフレデリカが担うことになった。記憶力バツグンで事務的なことは全方位優秀なフレデリカだが、なぜか料理の腕はからっきしであったため、しばらくのあいだ食卓事情は寒いものであった。とはいえ努力によって日々進歩はしていたようであるし、料理を習うという名目でキャゼルヌ家とコンタクトをとれたりと微妙に役に立ったりしている。
新婚生活もつかの間、ヤンが同盟政府によって逮捕されてしまう。帝国への反逆を画策しているという言いがかりによる不当な逮捕であった(まあ事実無根ではないのだが)。これはヤン抹殺が目的であり、ジョアン・レベロとしては帝国からの圧力を回避するためにやむを得ぬ、ということらしいが、ヤン当人からしたら迷惑なだけである。これをうけて、フレデリカはシェーンコップ、アッテンボローらにコンタクトをとり、留置所を襲撃してヤンを救出する。まさにヤンが「英雄にふさわしい死」を強要される直前での救出であり、助けた側のフレデリカが安堵の涙を流した。
ヤンを救出後、一味はさらにジョアン・レベロと、帝国の高等弁務官レンネンカンプをたてつづけに襲撃・拘束し、ハイネセンからの逃亡を果たす。その過程でミスター・レンネンが自殺してしまうが、安全圏に出るまでは人質として「生きていて」もらわねばならず、演出のために遺体に化粧をほどこした。このとき「化粧に慣れているから」といってフレデリカがその役目に名乗りでる。さすがのヤンもこれには、嫌な役をさせて申し訳ないと思ったが、フレデリカは謝罪など必要ないとした上で「もっと美男子なら化粧のしがいがあるのに」とブラックジョークを言ってみたりと度胸満点である。
この後、ヤンはメルカッツらの隠し艦隊と合流。さらにエル・ファシル独立政府に迎えられて、名目上は革命予備軍司令官となる。ただしヤン本人は自分たちを不正規軍(イレギュラーズ)と呼びつづけた。
エル・ファシル革命予備軍
ヤン艦隊は体裁としてはエル・ファシル政府下の軍隊となり、官位や役職は同盟軍のころのものを引き継いでいた。よってヤンは元帥にして司令官、フレデリカは少佐でヤンの副官である。
革命予備軍の最初の作戦はイゼルローン奪還であった。かつてイゼルローンを放棄した際の「置き土産」を用いてコルネリアス・ルッツ上級大将を罠にかけ、要塞の再奪取に成功。以降、ヤンはイゼルローンを軍事拠点とした。
勝利の喜びもつかの間、ビュコック提督の訃報がもたらされ、ヤン艦隊を悲しみが覆った。ビュコックはバーミリオンの後に退役したのだが、レンネンカンプの死をきっかけとしてラインハルトが同盟へ再侵攻をかけ、その迎撃のために復役し、マル・アデッタにて戦死したのだった。ヤンは老提督の死を悲しみ、かつ彼の復役を予期できなかった不明から自分を責めた。そんなヤンに対しフレデリカは、そのような自責はビュコックの望むものではなく、むしろ彼の覚悟をないがしろにするものだと諭し、ヤンはそれを認め、立ち直った。
正規軍のころのように副官として職務を補佐するだけではなく、妻としてもヤンを支えていた。
宇宙暦800年、「回廊の戦い」において、皇帝ラインハルトよりヤン艦隊に対して講和の提案がなされる。ヤンは会談のためにロムスキーらとともに帝国陣へ向かうが、道中で地球教徒およびアンドリュー・フォークに襲撃され、その凶弾に倒れる。このときフレデリカは体調不良のため同伴してはいなかった。ユリアンも同行しておらず、これは二人にとっては深い後悔となった。一方でヤンは襲撃を受けた際、二人ををまきこまなくてよかった、と心から思っていた。
ヤンの今際の言葉を聞くことはできなかったが、その点についてはフレデリカは悔やんではいない。それが「ごめん」であることを、フレデリカはわかっていたから。
ヤンの死後、ヤン艦隊からは多くの兵士が離脱し、エル・ファシル政府は瓦解した。残った人員でイゼルローン共和政府をうちたて、フレデリカがその政治指導者となり、軍事指導者にはユリアン・ミンツが就いた。
イゼルローン共和政府
イゼルローン共和政府の主席となったが、具体的にどういう政治をしていたとかいう記述は少ない。まあかつてはロムスキーがいた地位なのでなくても困らないのだろうし、外向きには実務よりも共和制の象徴的な意味合いが強いようだ。
のちに”オーベルシュタインの草刈り”に伴い帝国からハイネセンへの出頭をもとめられた際には代表者として出立している(帝国側の事情により中止)が、シヴァ星域会戦後にラインハルトしたのはユリアンであり、フレデリカは同行していない。もちろん内政は行なっていて「慣れないことばかりで大変」とのこと。
余談
本作の二人の主役であるラインハルト・フォン・ローエングラムとヤン・ウェンリー。外見的にも極めて恵まれ才知と気迫にあふれたラインハルトに女性人気が集中してしまうだろうと予想した著者により、せめて作中だけでもとヤンにべた惚れの理想的な伴侶を登場させた……という経緯がある。実際はヤンにも多大な女性ファンの支持が集まり、「予想外」と著者に言わしめるに至った。
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