フロリアン・ヴィルツ(Florian Richard Wirtz、2003年5月3日 - )とは、ドイツのサッカー選手である。
ドイツ・ブンデスリーガのバイヤー・レヴァークーゼン所属。サッカードイツ代表。
概要
ドイツ・ノルトライン=ヴェストファーレン州プルハイム出身。同い年のジャマル・ムシアラと同様にドイツの未来を背負う神童と称されている天才MFであり、10代の頃から世界的にも次世代のメガクラック候補として期待されてきた。2023-24シーズンにブンデスリーガ無敗優勝という偉業を成し遂げたバイヤー・レヴァークーゼンで20歳ながらも10番を背負い、絶対的なエースとして11ゴール8アシストを記録し、シーズンの主役となった。
エレガントなプレーで魅了しつつ、ゴール前での冷静なプレーでゴールとアシストを量産。一方で魅せるプレーに固執することなく、必要な賢いプレーを選択することができる有能さを併せ持つ。レヴァークーゼンを無敗優勝に導いたシャビ・アロンソ監督も彼の手放しで称賛し、信頼を寄せている。
1.FCケルンの下部組織で育ち、2020年1月にレヴァークーゼンへ移籍。この年の6月6日には17歳82日でのブンデスリーガ最年少ゴールを記録。ドイツ代表には2021年9月に18歳でデビューしている。
2つ上の姉であるジュリアン・ヴィルツも女子サッカー選手であり、レヴァークーゼンの女子チームに所属するDF。アンダー世代の女子のドイツ代表としてプレーした経歴を持つ。
経歴
生い立ち
2003年5月3日、ケルン近郊のノルトライン=ヴェストファーレン州プルハイムのブラウヴァイラー地区で生まれる。父親はスポーツトレーナーで10人兄弟の末っ子というサッカー好きの大家族で育ち、幼い頃から二つ上の姉であるジュリアンと一緒にいつも庭やリビングでボールを蹴っていた。5歳となった2008年に地元のSVグリュン=ヴァイス・ブラウヴァイラーというクラブに入団。そこで高いポテンシャルを秘めた子供であることが明らかになっていく。
7歳となった2010年に1.FCケルンのユースチームに入団。ケルンのアカデミーはルーカス・ポドルスキらを輩出した育成の名門であり、才能の原石として磨かれることになる。少年時代から中盤でプレーしており、当時からパスセンス、戦術理解、決定力、デュエルの強さで同年代の子供よりも圧倒的なポテンシャルを発揮していた。
順調にカテゴリーを昇格していき、2018年に15歳ながらもU-17チームに昇格。2018-19シーズンのU-17ブンデスリーガでは14試合4得点を記録し、ケルンのリーグ制覇の原動力となる。この活躍におってドイツ西部において最高の若きタレントと評価され、2019-20シーズンの前半で10試合8ゴールという前年を上回る成績を残し、このダイヤの原石である少年にビッククラブから触手が伸びるのも時間の問題となっていた。
レヴァークーゼン
2020年1月31日、同じノルトライン=ヴェストファーレン州に本拠地を置くバイヤー・レヴァークーゼンに移籍することが決定する。その直後、新型コロナウィルスの世界的な感染拡大によるリーグの中断期間が明けた5月18日のブンデスリーガ第26節ヴェルダー・ブレーメン戦の招集メンバーに入っただけでなく、なんとスタメンに抜擢。後半16分までプレーし、17歳15日でのブンデスリーガデビューはカイ・ハフェルツの持つ記録を更新するクラブ最年少記録であり、リーグ全体でも3番目の若さであった。さらに6月6日の第30節バイエルン・ミュンヘン戦では後半44分にプロ初ゴールを決める。このゴールは2005年にヌリ・シャヒンが記録した最年少記録を塗り替える、17歳34日でのブンデスリーガ最年少ゴールとなった。ただし、この半年後にユスタファ・ムココによって最年少ゴールは塗り替えられている。
2020-21シーズンは開幕前にハフェルツがチェルシーFCに移籍したことから、後継者として期待が集まるようになる。年齢に関わらず自分の哲学に合致する選手は積極的に起用するピーター・ボス監督によって17歳ながらもチームの主力に抜擢されるようになり、サポーターからハフェルツのことを忘れさせるほどの輝きを放つ。2020年10月22日のUEFAヨーロッパリーグ OGCニース戦では欧州の大会での初ゴールを決める。2021年1月19日、ホームでのボルシア・ドルトムント戦では後半35分に決勝ゴールを決め、この試合の主役となる。後半戦、チームは不振に陥りシーズン途中でボス監督が解任となるが、中盤で豊富なアイディアを発揮し、攻撃を組み立てていた。高精度なキックと視野の広さを駆使して違いを作り出し、決定的なチャンスを演出するなど奮闘。公式戦38試合に出場し、7ゴール5アシストの成績を残す。18歳の誕生日である5月3日にはクラブと2026年までの長期契約を新たに結んでいる。
2021-22シーズンは得点力に磨きがかかり、2021年11月28日のRBライプツィヒ戦で早くもシーズン5ゴール目を決めると、19歳未満の選手で初めてブンデスリーガ通算10得点に到達した選手となる。12月15日のホッフェンハイム戦では18歳223日でブンデスリーガ通算50試合出場を達成する。シーズン後半に差し掛かった2022年3月の段階で公式戦10ゴール14アシストに到達していたが、順調なキャリアに大きな試練が降りかかることになる。3月13日のブンデスリーガ第26節、古巣であるケルン戦で相手選手と接触した際に左膝十字靭帯断裂の大怪我を負ってしまう。これによって長期の離脱を強いられ、残りのシーズンは欠場となる。
2022-23シーズンの前半戦も欠場となり、2023年1月22日ブンデスリーガ第16節ボルシア・メンヒェングラートバッハ戦でおよそ10か月ぶりに公式戦に復帰。欠場中に就任したシャビ・アロンソ監督によってチームは上昇気流に乗っており、その良い流れの中で長期欠場明けとは思えないパフォーマンスでチームのピースとなる。2月23日のELプレーオフのASモナコ戦では復帰後初ゴールをマーク。4月10日のシャルケ04戦ではブンデスリーガでおよそ1年2か月ぶりのゴールを決める。さらに4月13日のEL準々決勝ユニオン・サン=ジロワーズ戦との第1戦で同点ゴールを決め、チームのベスト4進出に貢献。ELの大会最優秀若手選手に選出されている。
2023-24シーズンより背番号が10番に変更となると、2023年8月19日のブンデスリーガ開幕戦となったRBライプツィヒ戦で早速シーズン初ゴールを決め、勝利に貢献。さらに第2節ボルシアMG戦、第3節ダルムシュタット戦と2試合連続アシストを記録。シャビ・アロンソ体制2年目となったレヴァークーゼンはさらに完成度を増し、洗練された攻守に隙の無いフットボールを展開。そのチームの中で2シャドーの一角が定位置となったヴィルツは攻撃を牽引するエースとして輝きを放ち、大怪我から完全復活どころか進化を遂げ、圧倒的な快進撃を続けるチームの象徴として躍動する。10月29日の第9節SCフライブルク戦では圧巻のドリブル突破による個人技からゴールをこじ開けるスーパーゴールを決め、シャビ・アロンソ監督も「あんな特別なゴールは見たことがない。ブンデスリーガであんなことができるのは彼だけだ」と大絶賛するほどだった。バイエルンとの直接対決を制したチームは無敗のまま首位を独走すると、2024年4月14日の第29節ヴェルダー・ブレーメン戦では後半から出場し、ハットトリックを達成。チームを歴史的な5-0のタイトル獲得に導き、レヴァークーゼンに初のリーグ優勝をもたらす。無敗での国内二冠という偉業を成し遂げたレヴァークーゼンのエースとして公式戦47試合で18ゴール20アシストと圧倒的な数字を残す。公式戦50試合以上無敗という伝説的なチームの絶対的エースとしての活躍が評価され、ブンデスリーガ年間最優秀選手賞に選出される。
ドイツ代表
2018年にU-16ドイツ代表に選出され、2020年には17歳ながら飛び級でU-21ドイツ代表に選出される。2021年6月にハンガリーで開催されたUEFA U-21欧州選手権2021のファイナルラウンドのメンバーに選出され、準決勝のオランダ戦で開始8分間で2ゴールを決め、決勝進出に貢献。決勝のポルトガル戦もスタメンで出場し、チームは3度目の優勝を飾る。
2021年3月にフル代表のメンバーに初めて招集される。このときは代表に定着できなかったが、ハンジ・フリックが監督に代わった2021年9月2日の2022 FIFAワールドカップ欧州予選のリヒテンシュタイン戦に後半37分から出場し、18歳でのドイツ代表デビューを飾る。しかし、2022年3月に負った左膝十字靭帯断裂の大怪我のため長期欠場となってしまい、2022 FIFAワールドカップカタール大会のメンバーからも落選。ちなみにフリック監督は怪我が無ければヴィルツを代表メンバーとして招集するつもりだったことを明らかにしている。
2023年3月27日のペルーとの親善試合でおよそ1年3か月ぶりに代表に復帰。その後はレヴァークーゼンでの好調さもあって代表に定着するようになる。2024年3月23日、フランスとの親善試合において試合開始わずか8秒で代表初ゴールを決め、勝利に貢献する。
2024年6月に自国開催となったEURO2024のメンバーに選出される。開幕戦となったスコットランド戦では前半10分に大会のオープニングゴールを決め、5-1の大勝に貢献。第3戦以降はレロイ・サネにスタメンの座を譲ることになるが、準々決勝のスペイン戦では途中出場から敗色濃厚のチームを一度は救う同点ゴールを決める。だが、その後チームは延長戦で力尽き、ベスト8敗退となる。
個人成績
シーズン | 国 | クラブ | リーグ | 試合 | 得点 |
---|---|---|---|---|---|
2019-20 | ![]() |
レヴァークーゼン | ブンデスリーガ | 7 | 1 |
2020-21 | ![]() |
レヴァークーゼン | ブンデスリーガ | 29 | 5 |
2021-22 | ![]() |
レヴァークーゼン | ブンデスリーガ | 24 | 7 |
2022-23 | ![]() |
レヴァークーゼン | ブンデスリーガ | 17 | 1 |
2023-24 | ![]() |
レヴァークーゼン | ブンデスリーガ | 32 | 11 |
2024-25 | ![]() |
レヴァークーゼン | ブンデスリーガ |
個人タイトル
- ブンデスリーガ年間最優秀選手賞(2023-24)
- UEFAヨーロッパリーグ最優秀若手選手賞(2022-23)
プレースタイル
彼の高いテクニックと創造性が特徴的の攻撃的MF。トップ下や左のシャドーがメインポジションだが、左ウイングでもプレーできる。同年代のジャマル・ムシアラと比べるとより万能型のMFであり、中盤から前線の全域をカバーしながら決定的な仕事をするタイプ。個人でドリブル突破を仕掛けることもできるが、中間ポジションでボールを受け、決定的なパスを出すのが一番の魅力。低い位置に下がってゲームメイクにも加わるなど、ゴールに直結するプレー以外でも貢献する。
足元の技術は勿論の事、身体の使い方が上手く高い精度のパスやドリブルを仕掛けることができ、密集地帯でもボールを失わないドリブルテクニックは派手さは少ないものの際立っており、大きな武器となっている。またしっかりボールに力を加えられるため、、ミドルシュートだけではなく距離があるサイドチェンジを繰り出すことが得意。そのため、低い位置まで下りてきてビルドアップをサポートすることが多い。
何よりも際立っているのは判断力で、的確な位置で的確なタイミングでボールを受けることによって、常に主導権を持った状態でプレーすることができる。ピッチ上どこでも違いを生み出すことができるため、守備側とすればマンツーマンで対応することが難しく、これだけでも非常に希少価値の高いアタッカーである。
守備面では周囲と連動した守備を得意としており、持ち前のサッカーIQの高さを活かしたコースをカットする守備には定評があり、シャビ・アロンソ監督が掲げる守備戦術ともマッチしている。一方、身体の線そのものは細いこともあって守備の強度そのものは低く、デュエルの局面だと劣勢を強いられる。また、連続したスプリントも得意ではないため、サイドで起用されると戻り切れずに突破を許すことも多い。
関連項目
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兄弟記事
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