フーガ(伊:Fuga、英/仏:Fugue)とは、対位法的な音楽書法の一つである。
概要
対位法とは「ある複数の旋律を、それぞれそれと分かるように独立して、かつ主題との調和のバランスを取って重奏する演奏方法」のことである。そして、この対位法において「1つの旋律」を複数のパート、つまり別々の楽器や別々の音程で繰り返して奏でる形式の音楽をフーガという。
このパートの数によってフーガは「二声の~」「三声の~」「四声の~」等と表現され、数字が大きいほど複数のパートを使用し、結果的に重厚な音となる。
さらにフーガにはその演奏形態として「提示部(主唱/応唱)」「嬉遊部」「追迫部」に分かれており、それぞれは次のように奏でられる。
- 主となるパートから曲の主題(以降繰り返し現れる旋律)が提示される。この主題部の旋律を主唱といい、主唱が提示されるパートを主唱提示部という。
- 主唱パートが主題を奏で終わると、別のパートが主題を別音程(一般に主音と属音を転換する)で奏でる。主唱に呼応しているように見えることから、ここを応唱提示部という。以降、同じようにして全てのパートが最低1度は応唱する。
- その性質上全てのパートで応唱しようとすると"間"が発生する。この間を取り持つ、主唱/応唱との調和を取りつつ、主題には含まれていない(主題でない)旋律を嬉遊部という。
(さらに限定して、どのパートも主題を奏でていない部分を嬉遊部と呼ぶ人もいる。) - 数度の主応唱と嬉遊を繰り返したのち、曲の終わりに向けて主唱が終わらないうちに応唱を重ねる部分を挿入する。この部分を追迫といい、追迫で曲を終わらせるための旋律を追迫部という。
- つまり、3声のフーガの場合
主唱 :提示部―嬉遊部―――――提示部―嬉遊部―――――(追迫部)
応唱1:――――提示部―嬉遊部―――――提示部―嬉遊部―(追迫部)
応唱2:――――――――提示部―嬉遊部―――――提示部―(追迫部)
となる。ただしそう厳密に提示部と嬉遊部が定められているわけではなく、特に嬉遊部では対位法に捕らわれない、作曲家独自のアレンジが施されていることが多い。
その名はラテン語のfuga(逃げる)に由来し、日本語では遁走曲とも書く。カノンと比べて自由な対位法的な作品の名前はカンツォーナ、リチェルカーレ、ファンタジアなどいろいろとあったが、フーガに収斂していった。
ルネサンス期、バロック音楽期で確立され、J.S.バッハで頂点を迎えた。その後、フーガは下火になりその形式で作曲されることは稀になるが、モーツァルト、ベートーヴェン、メンデルスゾーン、ブラームス、レーガーなどの作曲家たちがフーガの書式を用いた曲をいくつか作曲している。20世紀以降も無調性のフーガなどいろいろな種類のフーガが作曲されている。
著名なフーガ
- J.S.バッハ 平均律クラヴィーア曲集の各曲
- J.S.バッハ 音楽の捧げものの各曲
- J.S.バッハ フーガの技法の各曲
- J.S.バッハ 小フーガ ト短調
- W.A.モーツァルト アダージョとフーガ ハ短調
- L.v.ベートーヴェン 弦楽四重奏のための大フーガ
- I.ストラヴィンスキー 詩篇交響曲 第2楽章
- ベーラ・バルトーク 弦楽器・打楽器・チェレスタのための音楽 第1楽章
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