ブチコ とは、2012年生まれの日本の競走馬である。牝・白毛。
断トツの奇抜な見た目で有名。どれくらい奇抜かというと、本場イギリスの競馬情報紙に「独特の模様」とわざわざ記事にされるくらい。条件馬なのに。
概要
父キングカメハメハ、母シラユキヒメ、母父サンデーサイレンス。まあ父と母父は今更説明する必要もなかろう。そして少し競馬に詳しい方なら母名でもピンと来るはずである。
そう、母シラユキヒメは突然変異で生まれた白毛馬であり、母としても12頭の産駒の内10頭が白毛という「白毛の母」として有名な馬。白毛馬というのは突然変異なら数万頭に1頭というレアな馬なのだが、優性遺伝である白毛遺伝子を持つシラユキヒメからは確率上50%で白毛馬が生まれる。実際には残した12頭の産駒のうち10頭が白毛であり、これが発生する確率は1.6%である。ダイワスカーレットが10頭連続で牝馬を産んだ発生確率が0.098%だからそれよりは16倍大きいが、にしても低確率だったのは間違いない。白毛云々の話は置いておいても繁殖牝馬としてなかなか優秀で、白毛馬初の重賞勝利となった関東オークスを含め交流重賞3勝を挙げた姉のユキチャン(2005年生。父クロフネ)を始めデビューした産駒10頭のうち7頭が2勝以上を記録した。
ブチコに話を戻すと、まず見た目の奇抜さで注目される。この馬も例によって白毛なのだが、たてがみは黒とも灰色とも茶色ともつかない色で、首からトモ(後肢の膝から上くらい)にかけて斑点模様があり耳も茶色。白毛以上に珍しい「斑毛」の馬だったのだ。JRAの毛色登録に斑なんてないので白毛登録である。1歳上の全姉マーブルケーキ、2歳下の全弟シロニイも斑毛で、キングカメハメハの遺伝子と何か反応するんだろうか?とも思われたが、その1歳下の全弟(未出走)は普通の鹿毛、さらに1歳下の全妹ブッチーニは普通の白毛…かと思いきややっぱり斑毛になった。よくわからん。
名前はともかく、デビュー前から「柔らかさはきょうだいで一番」と素質を期待されていたブチコ。厩務員が毎回どこかにブチ模様の衣装を身につけるという話題性もありデビュー戦からファンの人気を集めた。父キンカメだし姉のユキチャンも芝で勝ったからいけるんじゃね?と期待して芝で走らせてみたが5→2→4着。2歳シーズンは未勝利で終わってしまう。とにかく初勝利を、ということで4戦目でダートに下ろすとなんと後続に8馬身差をつける大楽勝。2戦目の条件戦も3馬身半差で快勝。こりゃ強い。よし、賞金も積んだし桜花賞トライアルだ!・・・だからさ、芝はダメだって言ったじゃん。先行して轟沈し14着。まあ、そうなるわな。なんか坂もダメらしいけど。
でもダート戦なら…!と思ったのだが、この世代はよりにもよってノンコノユメ、クロスクリーガー、ゴールデンバローズ、タップザット…等々とにかくダート戦線がすごいことになっていた。OP伏竜Sではノンコノユメ(フェブラリーS)、クロスクリーガー(レパードS)、リアファル(菊花賞3着)、ホワイトフーガ(JBCレディスクラシック)など超豪華メンバーが揃ってしまい、ゲートでつまずいたのも響き6着。賞金加算を狙った兵庫CSは同厩のリアファルとの兼ね合いもあり回避。姉ユキチャンとの姉妹制覇を目指したGII関東オークスは、いつもはさっぱりメンバーが揃わないのにこの年に限って芝重賞馬が2頭も登録しやがり、しょうがないので回避。GIIIユニコーンSはメンバーが揃いすぎ5着。なんとも運のない…。関東オークスの登録を巡って担当の調教助手がTwitterで炎上する騒ぎを起こしたこともあり、なんだか微妙な雰囲気になっていた。
その後休養し、10月に自己条件で復帰。1番人気を背負うが、古馬との初対戦、さらに苦手の阪神では分が悪かったか8着惨敗。しかし舞台が京都に変わった11月の北國新聞杯では2着に健闘。着々と力をつけると、明けて4歳、年明けの京都開催を待って挑んだ1000万下では早め先頭から大差ぶっちぎりで圧勝というえげつない競馬。1600万下条件に上がっての初戦となった北山Sは重馬場で伸びきれず3着に終わるものの2戦目の上総Sでは4コーナーで5番手から華麗に差し切り勝利。めでたくオープン入りすることとなった。
古馬オープン入りの初戦は船橋競馬場での牝馬限定交流重賞のマリーンカップ。相手関係やブチコ自身の人気もあり単勝1.9倍の大本命に支持されたわけだが……なんと発走前にゲートをこじ開けて飛び出してしまったのだ。地方競馬のゲートは磁石式が多く、馬が暴れるとゲートを突破してしまうこともしばしばある。肝心のブチコはというと目元から出血しており馬体検査の末あえなく発走除外、白い顔に血がにじむ痛々しい姿であった。
痛いのはブチコだけではなく主催の船橋競馬も。実はこのマリーンカップの馬券総売り上げは5億1600万円だったのだが、ブチコ除外による返還金がなんと売り上げの約70%に及ぶ3億6400万円に及んだのである。大体運営側の馬券売り上げの取り分が25%ぐらいなので本来は1億3000万円ぐらいが船橋競馬に入るはずだったのだが、これにより4000万円程度にまで下がってしまったのだ。ついでに言えば賞金総額が3500万円なので、このブチコの競争除外でこのレース船橋競馬の儲けはほぼなくなってしまった。せっかくの交流重賞という稼ぎ時なのに。
改めてゲート試験を受けなおして無事一発合格したものの、次の出走は6月となってしまい再び1600万下に降級しての麦秋ステークスだったのだが……今度はゲートを潜り抜けてラチを飛び越え激突してしまったのである。こんどはラチに激突した左肩から出血しまたもや白毛が血でにじむことに。もちろん馬体検査の末競争除外。レースの馬券売り上げ20億円余りのうち半分近くの9億3000万円が返還という大量返還を再び引き起こしてしまった。ついでに言うと鞍上のクリストフ・ルメール(ちなみにマリーンCの時も騎乗していた)も放馬の際に左足を骨折し翌日のGI安田記念は乗り替わりになるなどなんとも後味の悪い結果になった。
これにより長期放牧に出され、帰厩して10月に再びゲート試験を受けて一発合格。調教師も「レースに出してみないと分からない」と言っていたが復帰戦の観月橋Sでは見事ゲートをきちんと出たが久々なのかかかってしまい8着惨敗。そのあとの堺Sも上がり最速ではあったが4着となんとも残念な4歳シーズンを終えた。
翌2017年初戦の雅Sではまたもゲートを潜ろうとして、今度はゲートの前扉を破壊。外枠発走となり4着。再び出走停止と調教再審査の処分が下った。陣営はついに再起を断念、引退と繁殖入りが決定。結局16戦4勝、最後までその真価を見せないまま競馬場を去ることとなってしまった。
勝ったレースは8馬身差、3馬身半差、大差、3馬身差。牡馬すら楽勝でぶっちぎってたし、ゲート難さえなければダート牝馬戦線の主役になっていたことは想像に難くない。実力じゃないところばかりで注目されてしまった、なんとも惜しい馬だった。
繁殖牝馬としては、繁殖入りしている4頭の姉が全馬クロフネ産駒(1個上の全姉マーブルケーキは現役)ということもあり住み分けはできそうだが、現状父キングカメハメハはむしろ大きな制約になってきそうである。ともあれ白毛ファミリーをさらに広げる役目を担い、第二の人生に入る。
2020年に初仔のソダシ(牝 父クロフネ)がデビューすると札幌2歳ステークスを勝利し、JRA初の白毛の芝の重賞制覇となった。12月の阪神ジュベナイルフィリーズではハナ差競り勝ち世界初の白毛GI勝利馬となった。2021年には桜花賞でこちらもハナ差勝ちで世界初の白毛クラシック勝利馬、2022年にはヴィクトリアマイルで世界初の白毛古馬GI勝利馬となった。
さらに2023年にはソダシの1歳下の全妹ママコチャがスプリンターズステークスを勝利。初仔誕生からわずか5年でGI馬2頭の母になった。ちなみにママコチャは母父に似たのか鹿毛である。
アイドルホースオーディション
京都競馬場主催「アイドルホースオーディション」のSTEP1では9位にランクイン。
上位5頭がぬいぐるみ化されるという企画だったのだが、ブチコの毛色は再現が困難であることが判明し、選考から除外されることになった。代わりに11位の馬(投票結果発表後、その馬はメジロマックイーンであることが公表された)が繰り上がることになった。
血統表
キングカメハメハ 2001 鹿毛 |
Kingmambo 1990 鹿毛 |
Mr. Prospector | Raise a Native |
Gold Digger | |||
Miesque | Nureyev | ||
Pasadoble | |||
*マンファス 1991 黒鹿毛 |
*ラストタイクーン | *トライマイベスト | |
Mill Princess | |||
Pilot Bird | Blakeney | ||
The Dancer | |||
シラユキヒメ 1996 白毛 FNo.2-w |
*サンデーサイレンス 1986 青鹿毛 |
Halo | Hail to Reason |
Cosmah | |||
Wishing Well | Understanding | ||
Mountain Flower | |||
*ウェイブウインド 1991 栗毛 |
Topsider | Northern Dancer | |
Drumtop | |||
Storm and Sunshine | Star de Naskra | ||
Sea Drone | |||
競走馬の4代血統表 |
クロス:Northern Dancer 5×5×4(12.50%)
主な重賞級産駒
関連動画
ブチコのレース
関連コミュニティ
関連項目
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