ブルベとは
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曖昧さ回避 |
概要
ブルベ(brevets)とはフランス語で「認定」を意味する語。英語圏ではオダックス(Audax、ラテン語で「勇敢な」「果敢な」「大胆な」を意味する)とも呼ばれる。指定されたコースをスケジュール通りに通過し、規定時間内にゴールに到着すればそのコースをクリアした認定を受けられるスポーツである。
ブルベでのチェックポイントは「PC」と呼ばれるが、これはフランス語でチェックポイントを意味する「ポワン・ド・コントロル」(Point de Controle)から来ている。
認定を受けるとその距離をクリアした証である記念メダルを購入する権利を得られる。メダルのデザインは4年ごとに変わる。
ブルベにおいてゴールの着順は付かない。ブルベで大事なのは完走タイムではなく、「認定を取れたか取れなかったか」である。時間に余裕がある場合は道中で寄り道し観光などを楽しむ参加者も珍しくない。
日本国内での開催の大元である「オダックス・ジャパン」では「ブルベはレース、競技ではありません。」としているが、どの区間でどんなペースで走るか・休憩するか・補給を行うかといった戦略性、トラブル解決力などの柔軟性、走り続けることに対する精神力・気力等を問われるので、己にいかに向き合いそして克つという競技と言っても差し支えないだろう。
ブルベの始まりは1897年にまで遡る。イタリア人の集団がローマ~ナポリ間(約230km)を自転車で走破したことをきっかけに、自転車で200km以上走るスポーツイベントとしてヨーロッパで多数開催されるようになった。
1904年、フランス人の自転車競技者・ジャーナリストであった「アンリ・デグランジュ」(1865年~1940年)がオダックスレギュレーションを制定し、ブルベのルールの明文化が始まった。ちなみに制定者のアンリ・デグランジュはツール・ド・フランスの生みの親とも言われている。
ブルベの基本的ルール
参加資格・年齢等
- 20歳以上の健康で自転車の操縦が可能な者。性別や出身、人種等は不問。
- オダックス・ジャパンに会員登録していなくても参加は可能。
- ブルベ開催日に有効な自転車保険で、賠償責任保険額1億円以上のものに加入していること。複数業者の保険を合計して1億円以上になる場合も可(例:A社7000万円+B社3000万円でも可)。
- JCA(日本サイクリング協会)が提供する自転車保険はブルベ中の事故は対象外なので注意。
主な注意・禁止事項
これらの禁止事項に抵触した場合、ブルベ界から永久追放処分が下されることがあるので注意。
- ロードレースと異なり、サポートカーやニュートラルサービスカーの召喚・随伴は禁止。
- マシントラブルの際は自身で解決する必要あり。
- DNS(出走前に棄権すること、Did not startの略)、DNF(出走後に途中リタイアすること、Did not finishの略)の際は運営に連絡必須。
- サポートは基本的にチェックポイントでのみ許されている。ただし参加者間での装備の融通や、コース途中でのチェックポイント以外での食料品の購入、自転車店に立ち寄ることなどは可能な模様(常設された施設に行く=事前にサポートを仕込む・召喚しているわけではないので)。
コースの長さ・制限時間について
ブルベでは基本的に「平均時速15km/h以上で走ればクリア可能」なようになっている。ただしこの速度は食事・休憩・睡眠時間を含めた平均速度であるため、実際に走っている間はこれより速いペースを維持する必要がある。600㎞を超えるブルベでは15km/hよりも緩和したペースで制限時間が設定される。
距離 | 制限時間 |
200km | 13時間30分 |
300km | 20時間 |
400km | 27時間 |
600km | 40時間 |
1000km | 75時間 |
フレッシュ(360km以上) | 24時間 |
SR600 | 50時間 |
このうち、通常開催の200・300・400・600kmを同一年内に各1回以上クリアすれば、「シューペル・ランドヌール」(Super Randonneur、通称SR)という称号を貰え、専用メダルを購入する権利を得られる。このSR認定は4年に1回フランスで行われる「パリ・ブレスト・パリ」の参加要項にもなっている。
- フレッシュ(Fleche)
フランス語で「矢」を意味し、新鮮とか新人のほうのフレッシュではないので注意。最低3人最大5人のチームを編成し走行するルールのブルベである。認定条件は24時間で360km以上を走行、ラスト2時間は25km以上走行、3人以上ゴールすることの3点である。 - シューペル・ランドネ600
通称「SR600」。600kmを50時間以内に走行するのが条件(ただし時間内にゴール出来なくても「ツーリスト」部門完走の認定は得られる)であるが、通常のブルベとはいくつか異なる点がある。まず、通年開催であり、好きなタイミングで出走可能な点。2つ目が獲得標高(登った標高の累計)1万メートル以上の高難易度コースのみである。
難易度
ブルベの難易度はルートや当日の天候によって異なるが、その中でも獲得標高は大きな指標となる。日本のブルベは100kmあたり1000m前後の獲得標高となるルートが多いが、同じ距離(=同じ制限時間)のブルベでも倍以上登りがあることは珍しくない。どれだけ登りがあろうと認定の種類はブルベの距離によって決まるので、シューペル・ランドヌールの認定を目標とする者などは獲得標高が低めのブルベを選ぶと良いだろう。VCR横浜あおば、AR中部、AJ岡山が開催するブルベは獲得標高が多いことで悪名高い。
車両・装備について
必須事項
- ブルベが開催される国家に於いて合法的に走れる車両で、全て人力で動くものに限られる。すなわち、電動アシスト自転車は参加禁止。極論ではあるが、ママチャリで参加する猛者もいる。ロードバイクで参加する者が多い。
- ブルベ参加時には開催団体から「ブルベカード」という紙を渡される。これに開催事項とか認定証明を記録するので濡らしてしまわないようにビニールケースの携行は欠かせない。
- ブルベのマップである「キューシート」が各団体からホームページ上で公開される。
- 開催団体によっては「権利放棄書」を書かされる。これは、事故等のリスクを承知のうえで参加している、ブルベ中止になっても返金を求めない等の誓約書である。
- ヘルメット・蛍光色の反射ベストの着用必須。かつては反射たすきでの代用も可能な開催団体もあったが現在では許可しないところが殆ど。
- 前照灯・尾灯の装着必須。夕方~夜明けまで点灯する必要あり。200kmでもゴールが夕方あるいは夜間になり、300km以上では夜通し走るためである。
- 灯火の点滅は禁止。ただしヘルメット用の尾灯に限り可。
- 400km以上のブルベでは前照灯は2個以上、ヘルメットに尾灯1個以上装着必須。
- 警音器(ベル)の装着必須。
- DHバー・TTハンドル・スピナッチ等といったエアロハンドルバーは主催団体によっては装着禁止となる。
- カメラ付き携帯電話が必携な団体が多い。緊急時の連絡用は当然であるが、チェックポイント通過証明(例:石碑と愛車を一緒に写し込んで写真を撮れ)にも必須である。また、キューシート・ルートマップ情報をここに入れておけばGPS情報により現在コースのどの辺りまで進んだかが一目瞭然。
その他持っていくべきもの
- 工具・修理キット等 - 先述のとおり道中マシントラブルがあった際自ら対処が必要。工具のほか、予備チューブ、パンク修理パッチ、空気ポンプ、Co2ボンベ等を携行するべきである。
- サイクルコンピューター - 現在市販されているGPSサイクルコンピューターにはマップメモリー機能が搭載されていることが多く、スマートフォンよりも低消費電力で取り扱える。
- 輪行袋 - 先述のとおりDNS・DNF時には運営に拾ってもらうことは一切無いので自力で公共交通機関を使い帰る必要がある。自走できないシチュエーションの時には必須である。
- 電池 - ライト・サイクルコンピューターの充電に必要。ライトの電池切れは失格のみならず道路交通法違反なので注意すること。
- 食料 - コース上いつでも補給出来るわけではないので、それなりの量の食料は持っていくべきである。
- 雨具 - ブルベでは雨が降ろうが開催されるし、日本国内のブルベでは天候変化の起こりやすい山岳地帯も走行するのが一般的。雨に濡れると体力の消耗の増加、走行速度の低下等を起こすので対策すること。
- 防寒具 - 300㎞以上のブルベでは深夜帯の走行が不可避となる。冷え込んだ夜のダウンヒルや休憩時でも身体を冷やさない服装を心掛けるべきである。
関連動画
関連項目
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