『ブレアウィッチプロジェクト』(The Blair Witch Project)とは、1999年に公開されたアメリカの映画である。
概要
6万ドルという超低予算、かつ少人数で制作。
しかしながら全米興行収入は1億4000万ドル、世界では2億4050万ドルという、インディペンデンス映画では異例の大ヒットとなった。
『モキュメンタリー』と呼ばれる、ドキュメンタリーに見せかけた手法で制作されている。
本作以後モキュメンタリーブームが起こり、『クローバーフィールド』『パラノーマル・アクティビティ』などが世に送り出される事となった。
学生の失踪事件を題材とし、本当に事件が起きたように演出する為、インターネットやテレビ番組において、捜索願や関係者のインタビューが公開された。
また本作における肝となる「ブレアウィッチの伝説」について書かれた書籍が大ヒットし、メディアミックスによって構築された世界観に基づいた本作は、様々な考察の対象として取り上げられた。
撮影にはハンディカムを多用しており、画面がよく揺れる。慣れている人でも画面酔いしやすい為、視聴の際には注意が必要。
敢えて台本を用意せず、キャスト3名には撮影の詳細を伏せたまま「こういう行動をしろ」という指示が個別に出された。
これは食料品や小道具を届けるバスケットにメモとして同封されており、先の見えない不安と焦燥から、彼らの演技はかなり迫真的なものになっている。そして撮影された映像からコンセプトや物語を作るという手法が取られた。
ヒットを受けて、2000年に続編『ブレアウィッチ2』が公開。ただしこちらはモキュメンタリーではなく、前作を踏襲したホラー映画となっている。評価はお察しください。
その後2016年、正当な続編として『ブレア・ウィッチ』が公開。
背景
ブレアウィッチの伝説
1734年、メリーランド州バーキッツビルにブレアの町が設立。
1769年、アイルランドから渡米してきたエリー・ケドワードが入植。
1785年2月、数名の子供が「あいつは魔女で、自分達の血を抜き取る為に家に連れ込もうとした」と訴え出る。裁判でケドワードは有罪となり、厳冬のブラック・ヒルズの森深くで、目隠しされた上に木に縛りつけられて放置される。その後遺体は発見されず、死体は獣に食われたものとみなされた。
ところが1年後、ケドワードを告発した住民、更に町の子供の半分が失踪する。残された住民は魔女の呪いを恐れて逃げ出し、ブレアの町は廃墟となった。
1年後の1825年8月、当時10歳のアイリーン・トリクールが川に落ちて行方不明となった。居合わせた11人の目撃者は「青白い女の手に捕まれて引きずり込まれた」と証言している。死体は発見されなかった。
1886年3月、当時8歳のロビン・ウィーパーが行方不明となり、捜索隊が出されるが、メンバーのうち5名が戻らなかった。数週間後、彼らは手足を縛られて繋がれ、内臓を抜き取られた死体となって、コフィン・ロックで発見される。だが死体を発見した救助隊が人手を集めて戻ってきた時、遺体は跡形もなく消え失せていた。別の捜索隊によって発見・生還したロビンは「体が宙に浮いた女の人に会った」と証言した。
ラスティン・パー事件
1940年11月から1941年5月にかけ、8人の子供が行方不明となる。
5月25日、38歳のラスティン・パーという男が食料品店を訪れ、人々に「ついにやり遂げた」と語った。
森で隠遁生活をしていたパーの家に警察が踏み込むと、地下の貯蔵庫で7人の遺体を発見。全員が儀式めいたやり方で殺され、内臓を抜き取られていた。
逮捕されたパーは「森に住む年老いた女のためにやった」と供述、有罪判決を受けて絞首刑に処される。事件現場となった家は住民によって放火され、焼失した。
誘拐されたものの生還した少年、カイル・ブロディはこう証言している。
あいつは僕に「壁を向いて立て」と言った。
悲鳴がして、そっちを見るとあいつがエミリーの額にナイフで模様を刻んでいた。
「聞こえるか?あの老女の声が聞こえるか?」
あいつはそう言って、何日か後にエミリーを殺して、内臓を全部取り出した。
それからエミリーの死体を運び出して戻って来ると、
「悲しむ事はない。すぐ別の子を連れて来るから」
そう言ったんだ。
あらすじ
「ブレアウィッチプロジェクト」
1994年10月。
モンゴメリー大学映画科の学生、ヘザー 、ジョシュ、マイクの三人は、メリーランド州バーキッツビルを訪問する。現地の「ブラック・ヒルズの森」に伝わる伝説の魔女「ブレア・ウィッチ」のドキュメンタリー映画を撮影するのが目的だった。
地元住民にインタビューする様子をカメラで撮影した後、彼らはブラック・ヒルズの森を訪れる。早速テントを張り、森の中で撮影をする三人だったが、徐々に不可解な出来事が起き始め……そして三人は消息を絶った。
失踪から1年後、森の中で彼らが撮影したと思われるビデオカメラが発見される。カメラが入ったバッグは築100年の小屋の土台の下に埋まっており、更にフィルムには不可解な映像が記録されていた。
3年にわたる警察の調査が終了後、彼らの家族は返却されたフィルムを再構成して映画化、事件を周知して謎が解かれる事を望む。しかしそこには、恐ろしいものが映っていた。
「ブレアウィッチ2」
映画「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」の大ヒットにより、のどかな田舎町だったパーキッツビルは観光客によって繁盛していた。
心を病み、危険な過去を持つ町の住民ジェフは観光客相手に「ブレア・ウィッチ・ハント」というツアーを企画。一癖も二癖もある男女4人を連れて、ブラック・ヒルズの森に向かうが……
「ブレア・ウィッチ」
事件から20年後。失踪したヘザーの弟・ジェームズは、Youtubeで姉と思われる人物の映像を見る。
「もしかしてヘザーは生きているのではないか?」
そう考えたジェームズは、投稿者と面会。投稿したのは地元民の2人で、森の中で木の根元に埋もれていたテープを見つけたと語った。
ジェームズは仲間を集め、バーキッツビルへと向かう。
投稿者の案内によって森に入り、GPSやドローンを使って調査を進めるが、次々と怪奇現象が起きる。互いに不審を抱く彼らは、やがて例外なく「魔女」の恐怖に捕らわれていくのであった。
その他
バーキッツビル7
『ブレアウィッチ2』の序章として放映されたビデオ作品。ラスティン・パー事件の秘密に迫る。
ラスティン・パー事件に興味を持った男は唯一の生還者であるカイル・ブロディに不審を抱いた。
精神病院に収監されていたカイルが残した言葉を手掛かりとし、パーの最後の懺悔を聞いた神父ら関係者に取材した結果、事件の真犯人はカイルではないかと推測する。しかし……
Blair Witch
ポーランドのBloober Teamによるサイコロジカルホラーゲーム。2019年9月4日にSteam/XboxOneで配信。
プレイヤーは行方不明になった少年を探す捜索隊メンバー・エリスとして、一人称視点でブレアの森を探索。同行する救助犬バレットの反応や、所々で見つかるカセットテープを再生することで、少しずつ謎が明らかになる。
字幕は日本語対応だが、ローンチ時点でフォントが文字化けしているなどの不具合が報じられた。その後アップデートにより日本語訳が修正され、この問題は解消している。
「Layers of Fear」の製作陣が手掛けているだけあって、演出やストーリーのクオリティは高く、おおむね評価は良い。
余談
- 作中で登場する「文」の形をした木の人型は「スティックメン」という名前がついている。何らかの魔法に関わっているようだが詳細は不明。本作の象徴としてたびたび登場し、グッズ化もされた。
- 1998年に制作された映画『The Last Broadcast』は本作と設定が酷似しており、「パクリではないのか」「早いモン勝ちでは」「どちらが先に完成したのか」などの議論を巻き起こした。なお本作の邦題は『ジャージー・デビル・プロジェクト』である。身も蓋もないとはこのこと。
- 本作以後、パクリ映画……もといモックバスターが大量に世に放たれ、玉石混交の玉抜き状態となった。『~プロジェクト』というタイトルは、大体そっち系である。が、一部に物好きな変態熱狂的なマニアがいるとか何とか。
- 本作の源流の一つとされるのが、1985年のモンド映画『食人族』である。アマゾン奥地で消息を絶った探検隊の遺留品からカメラが発見され、そこに記録されていた事件が明らかになるという内容。
こうした「遺留品から発見された映像が公開された」という体のモキュメンタリーを「ファウンド・フッテージ」と称する。更にその源流をたどると、H.P.ラヴクラフトの小説作品などにおける、いわゆる「窓に!窓に!」と言えるかも知れない。
関連動画
関連項目
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