ブレーキ(英:brake)とは、乗り物の速度を落とし、停止させるための安全装置である。
日本語では「制動装置」と訳される。
概要
もう少し専門的に言うと、走行している車両が持つ運動エネルギーを減少させることで速度を落とし減速、停止させる装置である。
比喩として、企画や勢いのあるものが急速に減衰・停滞してしまう様子に用いられる場合もある。
摩擦を利用したもの
多くの乗り物では摩擦を利用したブレーキを装備しており、車輪もしくはこれと同軸に設けられた円型の部材にブレーキシュー(制輪子)を押し付けることで、運動エネルギーを熱エネルギーに変換し放出、減少させる。
- ディスクブレーキ
車軸にブレーキ用のディスクを設け、これをキャリパーと呼ばれる装置で挟むことで制動力を得る。
ブレーキパッドを押し付けるのに大きな力が必要で、自転車や自動二輪車等の軽量な乗り物の場合は特段問題になる事は無いが、自動車等の重量の大きい乗り物の場合は倍力装置などを設ける必要があり高価で複雑なシステムになりがちだが、放熱性に優れる、音鳴りがしにくい、コントロール性に優れるといった利点がある。自転車の場合はリムブレーキよりも制動力が高く、天候に左右されにくい、リムが傷みにくい、ポリウレタンチューブが使えるといったメリットがある一方、高額、重い、メンテナンスが難しい、輪行時にリムブレーキ車よりも手間がかかるといった欠点があるが、国際自転車競技連合が2018年頃にロードレース・BMXでディスクブレーキの使用を解禁したことにより重量面でのリスクを負ってでもディスクブレーキ車を採用するメーカー・チームが増加しつつある。
自動車、二輪車、自転車、鉄道車両などで大小様々なディスクブレーキが利用されている。 - ドラムブレーキ
車軸にドラムと呼ばれる円筒形の部材を設け、これにブレーキシューを内外から押し付けることで制動力を得る。
ディスクブレーキに比べて安価で、自己倍力作用を持つため低い作動力で大きな制動力を得ることができる反面、内部に水が入ると抜けづらい、放熱性が低く制動力を失いやすい(フェード現象)、ママチャリで用いられるドラムブレーキ系のひとつである「バンドブレーキ」では内部の摩擦材が完全摩耗した場合ブレーキ自体を丸ごと交換しなければならない等の欠点がある。
大型自動車、小型自動二輪車や原動機付自転車、自転車ではママチャリなどに使用例が多い。 - リムブレーキ
主に自転車で使われ、リム(ホイールの最外周部)をブレーキシューで挟むことで制動力を得る。
ブレーキ装置の種類によりキャリパーブレーキ、Vブレーキ、カンチブレーキといった種類がある。
メンテナンスが容易、軽量、ディスクブレーキよりも輪行しやすい、制動用に車輪とは別の部材を設ける必要がないのがメリットだが、リムを摩擦で制動するためリムそのものを段々と痛めてしまう、雨天時には路面から巻き上げた水によって濡れてしまい大幅に制動力が落ちてしまう、ポリウレタンチューブが使えないのが欠点。プロロードレース業界ではディスクブレーキ派が増えつつあるがヒルクライムレースの場合は1グラムでも重量を減らすため敢えてリムブレーキ車を用いるケースがある。 - 踏面ブレーキ
鉄道車両は車輪が金属製のため、踏面(とうめん:車輪がレールと接する面)にブレーキシューを押し当てて制動力を得ることができる。
自転車のリムブレーキと同様にレールおよび踏面の状況に影響を受けやすいため、回生ブレーキ、ディスクブレーキと併用されることが多い。 - 空気ブレーキ(エアブレーキ) → 空気ブレーキ
圧縮空気を使用し、非常に高い制動力を持つ。トラックやバスなどに多く採用されている。[1]
ただし乗用車と同じ感覚で踏めば効きすぎて急ブレーキとなる、むやみに使いすぎるとエア切れとなりブレーキが利かなくなるといった欠点もある。鉄道車両では超電導リニアやE954形、E956形等の試験車両で採用例がある。
※後述の空力ブレーキも「エアブレーキ」だが、そちらは空気抵抗を使用している。
摩擦によらないもの
航空機
船舶
- スクリューの逆回転で減速停止を行う。
- 水面は路面のように摩擦がなく惰性で前進してしまうため、ブレーキの利きが悪い。[3]
- 大型船の全力前進時においては船全長の10倍以上の距離を止まれないことも。(200mの船なら止まるまでに2km以上前進してしまう)[4]
その他
- フットブレーキ
足(foot)[5]で踏み利かせるブレーキ。方式は問わない。
駐車時
機能代用
両足が不自由な方のための車(福祉車両)においては
アクセル/ブレーキ共に、側面レバーと一体化したものもある。
忘れがちなもの
自動車の教習所で習うもの。(→運転免許)
既に免許を取得している人も、少々忘れかけているかもしれない。覚えてるよね?
停止するまでの距離
長い下り坂
前述のエンジンブレーキを使用しない場合に起こりうるリスク。
速度が出すぎたからと、気前よくブレーキを濫用(バタ踏みなど)していると起きるかもしれない。
山道などは上記の現象に見舞われた際に備え、緊急退避所が設けられている場合もある。
ただし草ボーボーだったり、減速の為に凹凸や砂山が設けてあるなど、愛車が無事では済まない場合も多い。
現在はブレーキ性能向上のため、使われる機会はほぼないようだが、万一に備えて覚えておいても良いかもしれない。(ちなみに待避所直前には看板があったり、待避所が複数個所設けられている場合もある)
- 道路脇の「緊急退避所」使用経験者はいる?実際飛び込むとどうなる?ブレーキ過熱問題の今 (biz-journal.jp)
- 日勝峠緊急避難所 緊急避難所写真とイラスト |帯広開発建設部 (mlit.go.jp)
- 「実際の使用場面は初めて見た」高速の長い下り坂でブレーキが壊れてしまったトラックが「緊急待避所」のおかげで助かる動画が | ニコニコニュース (nicovideo.jp)
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関連項目
脚注
- *信号待ちなどで「プシューッ」と大きな音を立てているのは大抵これ。
- *前進速度を揚力に使用していないヘリコプターを除く。
- *船舶自体は低速なものが多い反面、ブレーキが利きづらいといった特性である。
- *船は全速前進状態から全速で後進をかけ、船体長さの15倍以内で停まるように設計されている。(船舶法)
- *厳密に「foot」は、くるぶしから下の部分全体のことである。(かかとや足の甲・足裏・足先など)
- *安全運転義務違反、騒音運転等違反、器物損壊(タイヤ痕によって白線を損傷)など。
- *見間違えそうだが、「ペーパー」(Paper:紙)ではない。「ベーパー」(Vapor:蒸気)である。
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