プロトタイプとは、
- 開発段階の試作品、原型。対義語は量産機、量産型、量産品など。
- 見本、手本、模範。「イギリスの鉄道をプロトタイプとして明治初期の鉄道が整備された」などという文章になる。
- 模型を製作するときに参考とする実物モデル。
- レース専用に作られた四輪自動車。
- レース専用に作られたオートバイ。
- プロトタイプガンダム - 『MSV(モビルスーツバリエーション)』に分類されるガンダムシリーズの兵器。
- 株式会社プロトタイプ - 日本のゲーム企業。
- プロトタイプ - ゲーム『ファイナルファンタジー5』に登場するモンスター。
- プロトタイプ - ゲーム『ソニックアドベンチャー2』に登場するボス。
ここでは1.と3.と4.と5.について解説する。その他、英語の「Prototype」については該当記事を参照のこと。
1.の概要
新製品を実際に発売する前の開発段階において、設計上の不具合の洗い出しやその修正を目的として製造される試作品をプロトタイプという。
実際に発売される製品の背後には、多数のプロトタイプが存在する。ある部分に手を加えると別の場所に悪影響が及ぶ、などの事態がしばしば発生するためである。また同様の理由から、プロトタイプ(試作品)と量産品の間には外観・内部など、多くの面で差異が見られる。
自動車等の場合、試作型車両の性能試験をする際、機密保持等の理由から外装に偽装を施す事がある。撮影された際に細部の形状などを判別しにくくする効果がある。代表的な例が「黒地に渦巻き状の模様を多数配する塗装」であり、カモフラージュ柄と呼ばれることがある(画像1、画像2
)。
プロトタイプ(試作品)は、設計上の不具合がそのまま残った欠陥品なので、販売すると消費者に迷惑がかかる可能性がある。そのため、市販されることは極めて少ない。
機動戦士ガンダムなどのロボットアニメで、プロトタイプ(試作機)と量産機(量産型)が、対立した概念としてしばしば登場する。プロトタイプの方が量産機よりも高性能であることが多い。
3.の概要
鉄道模型やプラモデルの世界で、模型を作るときに参考とする実物モデルをプロトタイプという。「この鉄道模型のプロトタイプは、○×博物館に展示されているAという車両である」といった表現になる。
機械、機械を作動させるための設備、機械や設備の後ろに控えている景観、そういった非生物・非生命体がプロトタイプと呼ばれる。
人形やフィギュアを作るときに参考とする生物・生命体をプロトタイプと呼ぶことは、極めて少ない。
4.の概要
四輪の自動車の中には、スポーツカーと呼ばれるものがある。自動車を単なる移動手段の道具として見ず、運転する行為そのものをスポーツとして楽しむ人向けの車で、なおかつ、車輪がカウル(外装)に覆われていて、2つ以上の座席がある車をそのように呼ぶ(画像)。
そのスポーツカーの中で、レース専用に設計されたものをプロトタイプという。プロトタイプのスポーツカーで争われるレースの代表格は、世界耐久選手権(WEC)であり、そのなかで最も有名なのが、ル・マン24時間耐久レースである。
一方、スポーツカーの中で公道を走ることを想定して設計されたものをツーリングカーという。プロトタイプ(レース専用車)の対義語が、ツーリングカーになる。ツーリングカーのスポーツカーで争われるレースの代表格は、世界ツーリングカー選手権(WTCC)、ドイツツーリングカー選手権(DTM)、NASCAR、SUPER GT、スーパー耐久などである。
プロトタイプのスポーツカーとツーリングカーの違い
プロトタイプのスポーツカーはレース専用設計なので、収納性が低く、コックピットも狭苦しい。普通の乗用車と比べて、何もかも窮屈になっている。
ツーリングカーは公道を長時間走ることも想定してあるので、収納性が高く、コックピットも広々としており、普通の乗用車とよく似た感じになっている。
フォーミュラカー
スポーツカーと対照的な存在として、フォーミュラカーというものがある。自動車を単なる移動手段の道具として見ず、運転する行為そのものをスポーツとして楽しむ人向けの車で、なおかつ、車輪がカウル(外装)に覆われておらずむき出しで、座席が1つだけの車をそのように呼ぶ(画像)。
フォーミュラカーを使って争われるレースの代表格は、F1世界選手権、GP2、フォーミュラ3、フォーミュラE、インディカー、スーパーフォーミュラなどである。
大昔ならともかく、2020年現在は、フォーミュラカーで公道を走ろうという酔狂な人はいない。車輪が外装に覆われていないので、色々と不便である。水たまりを踏んだら、水しぶきが座席の方まで飛んできてしまう。フォーミュラカーはすべてがプロトタイプ(レース専用車)であるのが実情となっている。
まとめ
以上のことをまとめると、次のようになる。
スポーツカー(車輪がカウルに覆われている![]() |
プロトタイプ |
ツーリングカー | |
フォーミュラカー(車輪が露出![]() |
すべてがプロトタイプ |
5.の概要
オートバイの中で、レース専用に設計されたものをプロトタイプという。レーサー(racer)とかレーシングバイク(racing bike)とも呼ばれる。プロトタイプのオートバイで争われるレースの代表格は、MotoGPである。レッドブルルーキーズカップやアジアタレントカップ
といった若手向け選手権も、プロトタイプのオートバイで争われている。CEV
という選手権の多くは、プロトタイプのオートバイで争われている。
オートバイの中で、公道を走ることを想定して設計されたものを公道車とかストリートバイク(street bike)とかロードバイク(road bike)という。公道車のオートバイを改造して争われるレースの代表格は、スーパーバイク世界選手権であり、スーパースポーツ世界選手権
であり、鈴鹿8耐
である。
プロトタイプと公道車の違い
プロトタイプと公道車の違いは、走らせる速度域である。プロトタイプは非常に高い速度域で走ることを想定して設計されているが、プロダクションは低速域から高速域まで幅広い速度域に対応できるよう設計されている(記事)。
プロトタイプと公道車は、形が似ているが、乗り心地が全く異なる。ヴァレンティーノ・ロッシは、1994年にプロトタイプのマシンの選手権と公道車のマシンの選手権の両方に同時参戦したのだが、その彼は「プロトタイプと公道車はかなり特性が異なる。片方に慣れると、もう片方の感覚が狂ってしまう」といった意味の発言をしている(ヴァレンティーノ・ロッシ自叙伝101~102ページ)。また、フランコ・モルビデリも、「公道車からプロトタイプに乗り換えるとき、慣れるのが本当に大変だった。マシンやタイヤの剛性が全く異なる。公道車に乗っているとマシンがピクピクと痙攣する感じが伝わってくるが、プロトタイプに乗っていてもマシンから痙攣する感じが伝わってこない」と語っている(記事
)。
リースのプロトタイプと、市販のプロトタイプ
プロトタイプ(レース専用オートバイ)は、メーカーからリース(貸与)されるものと、メーカーから市販されるものの2種類がある。
最先端の技術を用いて作られるマシンは、メーカーにとって企業秘密の塊であるから、市販せずにリースすることになる。2020年現在のMotoGPの最大排気量クラスで、サテライトチームが走らせているプロトタイプマシンは、全てリースされているものであり、レースが終わったらメーカーに返却しなければならない。
かつてのMotoGP最大排気量クラスでは、プロトタイプをメーカーが販売したことがあった。そういうオートバイを市販レーサーということがある。代表的なものは、2014年にホンダが販売したRCV1000Rや、2015年にホンダが販売したRC213V-RSである。販売するのだからメーカーがバイクに関する所有権を失うわけであり、ライバルメーカーが入手した場合は企業機密の流出になる。このため、RCV1000RやRC213V-RSはだいぶ性能を落として設計された。その当時はすでにシームレスミッションがレースに勝利する上で必須だったのに、シームレスミッションが搭載されておらず、性能が低いバイクだった。
メーカーにとって、市販レーサーは技術の流出につながりやすい。やはり、プロトタイプ(レース専用オートバイ)は、市販車よりもリースのほうが圧倒的に多い。
公道車は市販車ばかり
公道車は、メーカーから市販されるものがほとんどである。メーカーからリース(貸与)されて、最終的にメーカーに返却する公道車というのは、ほとんど見られない。
このため、公道車のことを市販車と呼ぶ例が多い。バイクレースの観戦者・関係者の多くは、「市販車」「量産車」「プロダクションバイク(production bike)」と言われたら、即座に公道車のことを連想する。
まとめ
以上のことをまとめると、次のようになる。
プロトタイプ(レーサー、レーシングマシン) | 市販車がすこし存在する |
リース(貸与)がほとんどを占める | |
公道車(ストリートバイク、ロードバイク) | すべてが市販車 |
関連項目
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