ヘッドマウントディスプレイ(Head-Mounted Display, HMD, 頭部装着ディスプレイ)とは頭部装着型の映像表示装置、つまり頭に画面をくっつけるデバイスの事である。
概要
HMDは他のディスプレイと違い、眼球の至近距離に映像を写し出す事で姿勢や動作、空間の制限を受けることなく常時映像データを受け取る事が出来る特殊なディスプレイである。
通常のディスプレイと違い非常に小型の為、携帯性・省電力性に優れている。また、小型ではあるが眼球との距離が非常に近い為、仮想的な大型ディスプレイとしても利用でき、頭部に装着する為、常に視界内に存在するという高い追従性を持っている。
しかし小型の為未だ解像度が低い事、眼球との距離が近い為に健康への影響が懸念される事、頭部に装着する故の重量の問題など、比較的新しいデバイスゆえの問題点と、これからの可能性が残っている。
HMDは現在、透過型と非透過型の大きく分けて2つに分類できる。
- 透過型
単眼のみに映像を映す物、ハーフミラー等に虚像を投影する物、HMDに装着したビデオカメラの映像が映し出せる物など、映像だけでなく外部の情報も受け取る事が出来る物を透過型と言う。マンガやアニメで言うところのドラゴンボールの「スカウター」、電脳コイルの「電脳メガネ」など、現実世界に情報を付加させる拡張現実感(AR)方面への発展が見込まれる。
- 非透過型
外部の視覚情報を遮断し、HMD特有の映像への没入感をさらに追求した物を非透過型と言う。攻殻機動隊やその他SF作品にある電脳空間やバーチャルリアリティ(VR)にダイブする方面への発展が見込まれる。後者の用途に特化したゴーグル形状のものを「VRゴーグル」と称する。
ヘッドマウントディスプレイの用途
一般向けに映像を楽しむAV用途やゲーム用途などで時折大手メーカーから発売されたり、細々と売られたりしているが、それほど一般的なデバイスとしては定着していない。
業務用や軍用としてそれなりに高価なものが実用品として製造販売されており、その用途はマニュアル等の資料の表示用、乗り物などのシミュレータ用、部屋や工場などの空間のデザインや設計の検討用、テーマパークでのアミューズメント用途など。軍用では照準器、敵味方の位置のような情報表示、暗視装置等の映像表示などの用途で、戦闘機・戦闘ヘリ・歩兵システムなどにおいて実用化や研究が進んでいる。
主なメーカー
- オリンパス (過去に「Eye-Trek」を一般販売し、「AR Walker」など小型HMDの開発を続けている。)
- カールツァイス (ご存知ドイツの光学機器メーカー。「Cinemizer」をコンシューマ向けに販売。)
- 島津製作所 (業務用に「DATA GLASS」を売っている。自衛隊向け製品も作っている。)
- ソニー (「グラストロン」を一般販売し、業務用途にも売っていた。近年ではHMZシリーズをヒットさせたほか、HMZシリーズをベースとした手術向け医療用HMDの販売、PS4用VRHMD「Project Morpheus」を開発、後に「PlayStation VR」に名称変更された。)
- ニコン (「UP」を直販サイトで販売していた。)
- Vuzix (アメリカのHMD屋。業務用、軍用ほか一般向けにも製品を販売し続けている。)
- ブラザー (網膜投影型の「AiRScouter」を業務用に販売している。)
- エプソン (プロジェクター技術によりMOVERIO(モベリオ)を販売している。)
- Oculus VR (VRに特化した「Rift」の開発キットを販売。Facebookによる高額買収で注目を集めた。)
- HTC (Oculus Riftと同じくVRに特化した「HTC Vive」をValve社と共同開発。2016年に製品版が発売された。)
関連動画
関連商品
関連項目
- スカウター
- 電脳コイル - 「電脳メガネ」という透過型HMDが広く普及した世界を舞台としている
- バーチャルリアリティ
- 拡張現実 (AR)
- メカ千早
- ヘッドアップディスプレイ
- バーチャルボーイ - 脚部で固定されたゴーグル部分を覗き込む形式であり頭に取り付けるわけではないので、正確にはHMDとは言い難いがよく似た技術である
- HMZ-T1
- Oculus Rift
- PlayStation VR
- VRゴーグル
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