ヘラクレス(英:Heracles)とは、ギリシア神話の大英雄である。
英語では「ハーキュリーズ」、フランス語では「エルキュール」。
逞しい男、強いものの代名詞としても用いられる。
概要
ギリシア神話には神の血を引く英雄の物語が多数伝わっており、その中でも最もよく知られる人物。
生まれた日から英雄としての素質を示し、様々な冒険や試練に立ち向かい、その物語は現在でも広く知られている。
他方、その出自によって苦難の道を歩む、貴種流離譚としての趣も強い。
幼名はアルケイデス。またはアルカイオス。
「ヘラの栄光」を意味する「ヘラクレス」を名乗るようになったのはだいぶ後の事だが、ここでは一貫してヘラクレスと表記する。
生い立ち
父はゼウス、母はアルクメーネー。母はミュケナイの王女で、英雄・ペルセウスの孫娘でもあった。
彼女は叔父であるアムピトリュオンの妻となったが、かつて戦死した兄弟の仇を討ったなら受け入れるという誓いを立てた。これに従いアムピトリュオンが出陣した後、スケベに定評のあるゼウスは彼に化け、夜を3倍の長さにしてアルクメーネーとウフンアハンした。
その翌日、戦に勝利して戻ってきたアムピトリュオンは何も知らずにアルクメーネーと結ばれる。こうして彼女は神の子と人間の子を双子として身ごもった。
子供贔屓に定評のあるゼウスは「次に生まれてくるペルセウスの後裔をミュケナイ王とする」と宣言したが、夫の浮気相手に対して容赦しない事に定評のあるヘラはこれに反発。自分の娘で出産の女神・エイレイテュイアを説得し、アルクメーネーよりも先にステネロス(アルクメーネーの伯父)の子が生まれるよう取り計らった。
かくして生まれた赤子・エウリュステウスはゼウスの宣言通りにミュケナイ王となり、これに遅れてヘラクレスと、弟のイピクレス(人間)が生まれる事になった。
しかし懲りないゼウスは、我が子に不死の力を与えようと思い立つ。すなわち、眠っているヘラの乳を吸わせたのだ。ところがヘラクレスが乳を吸う力があまりにも強く、目が覚めたヘラは思わず赤子を突き飛ばした。この時飛び散った母乳がミルキーウェイ、つまり天の川になったという。
結局計画は失敗し、ヘラクレスは不死を得られなかった。
そんな経緯もあってか、ヘラは生まれたばかりのヘラクレスに憎しみを抱き、ベッドに二匹の毒蛇を送り込む。ところが慌てる両親をよそに、彼は素手で蛇を絞め殺してしまった。
これが彼の「英雄」としての最初の一歩だった。
幸福、そしてどん底へ
その後ヘラクレスはすくすくと育ち、立派な若者に成長する。名だたる英雄達から武芸を教わり、更にはケンタウロスの賢者・ケイローンに師事。向かう所敵なしの無双の士となった。
その後義父・アムピトリュオンが所属するテーバイに味方して戦争に参加、勝利をもたらした。
テーバイ王・クレオーンはこれを喜び、娘のメガラを妻として彼に与える。三人の子供にも恵まれ、幸福な生活が続いた……
訳がなかった。
ヘラは「狂気」をヘラクレスに吹き込み、狂乱した彼は愛する妻と子供、更には弟の子供を皆殺しにしてしまったのだ。正気に返って自分のした事に絶望したヘラクレスは、罪を償う術を求め、預言の地・デルポイへと赴く。
デルポイは古来アポロンによる神託が得られる聖地であり、そこで彼に与えられた神託は「ミュケナイ王エウリュステウスに仕え、彼から与えられる10の試練を果たせ」というものだった。
これに従い、ヘラクレスは本来自分がなっている筈のミュケナイ王に仕える事となったのである。内心ヘラクレスを恐れる王は極めて困難な10の試練を果たすよう命じ、失敗して命を落とす事を望んでいた。
後にある事情で2つ追加されたこれらの試練を「ヘラクレスの十二の功業」と呼ぶ。
十二の功業
ネメアの谷のライオン
蛇の魔神・エキドナと怪物・テュポーンの間に生まれたライオン。その皮は分厚く、武器で傷つける事が不可能だった。
恐るべき魔獣を相手にヘラクレスは戦い続けたが、持ってきた武器が皆役に立たない。そこでライオンに組み付き、三日三晩をかけて首を締め上げ、ようやく息の根を止めた。
彼はライオンの鋭い爪で皮を割いて剥ぎ取り、身にまとって強力な守りとした。後にこのライオンが空に上げられ、しし座になったという。
レルネー沼のヒュドラ
レルネー沼に住み着く巨大な毒蛇。九つの頭と、触れただけでも命を落とす猛毒を持つ。
ヘラクレスはヒュドラの毒にやられないよう口と鼻を布で覆い、鉄の鎌でヒュドラの首を切り落とした。ところがこの首には再生能力があり、切った端から新しい首が次々と生えてくる。
そこで従者・イオラオスが松明を持ち、首を切り落とした端から焼いて再生を防ぐという手助けに入り、ヘラクレスはようやく全ての首を切り落とす事に成功する。しかし最後の首は不死だった為、上から岩を落として地面に埋めて退治完了となった。
この時化け蟹・カルキノス(ヒュドラの兄弟)が加勢に入り、ヘラクレスの足を鋏で断ち切ろうとした。しかし当のヘラクレスは全く気付かず、そのまま蟹を踏み潰してしまった。一説にはヘラによってつかわされたともされるこの蟹はかに座となり、ヒュドラもうみへび座となった。
これ以降、ヘラクレスは自分の矢をヒュドラの毒に浸し、必殺の武器として使うようになった。
ケリュネイアの鹿
狩猟の女神・アルテミスの聖獣。黄金の角と青銅の蹄を持ち、何者にも捕らえられない程足が速い。
他に4頭の兄弟がおり、アルテミスに生け捕られて彼女の戦車を牽いていたが、この鹿だけは女神の腕前をもってしても捕らえられなかった。
しかしヘラクレスは1年もの歳月をかけて鹿を追いかけ、疲れた所を見事生け捕りにする。
王に鹿を見せるべくミュケナイへの帰路についたヘラクレスだったが、その前にアルテミスとアポロンが立ちはだかる。聖獣を殺したと思い込んで怒る二神を前に、鹿は無傷で捕らえた事をヘラクレスが証明すると、ようやくその怒りは鎮まった。
その後鹿はアルテミスに捧げられ、戦車を牽く役目を与えられた。
エリュマントスの猪
エリュマントス山に住み、人間を食らう怪物猪。近隣の田畑や村を襲い、恐れられていた。
エリュマントス山に向かう途中、ヘラクレスはポロスという名のケンタウロス族の饗応を受けたが、祝宴の最中に諍いが起き、ヘラクレス対ケンタウロス族の戦いに発展してしまう。
ケンタウロス族を追いかけたヘラクレスはヒュドラの矢を放ったが、不幸な事にその矢は賢者・ケイローンの膝に命中した。不死である為に死ぬ事も出来ず、猛毒に苦しむケイローンは自身の不死をプロメテウスに譲って命を落とし、己が師を殺めた事をヘラクレスは嘆いたと伝わる。
戦いの後、矢の威力に驚いたポロスは毒矢を手に取ってまじまじと眺めていた。だがうっかり自分の脚に落としてしまい、不死身ではないポロスはたちまち落命してしまう。天に昇ったポロスはケンタウルス座に、ケイローンはいて座になったとされている。
その後エリュマントス山に辿り着いたヘラクレスは雪の中に罠を仕掛け、猪を追い回して首尾よく捕獲した。
アウゲイアスの家畜小屋掃除
エーリス王アウゲイアスが3,000頭の牛を飼う巨大な家畜小屋で、30年間掃除された事がなかった。
ヘラクレスはアウゲイアスに「1日で掃除が終わったら牛の1/10をもらう」と約束し、大掃除に挑む。ヘラクレスは近くを流れる二本の川の流れを強引に捻じ曲げ、30年間溜まりに溜まった汚れをあっという間に洗い流してしまった。
ところがアウゲイアスは約束を守らなかった為、後にこれを恨んだヘラクレスによって殺害された。また二本の川の流れも乱れてしまい、たびたび洪水を起こすようになったという。
ステュムパリデスの鳥
ステュムパリデス湖畔の森に棲息する猛禽。かつては戦いの神・アレスのペットで、青銅の翼を持ち、大群で人々を襲い、毒をまき散らした。
まずヘラクレスは鍛冶の神・ヘパイストスを訪ね、青銅のガラガラを授かる。ガラガラを鳴らすと大音響に驚いた鳥の大群が飛び立ち、ヘラクレスはヒュドラの矢でことごとくこれらを殺した。
僅かに生き残った鳥もいたが、皆ギリシアを離れ、二度と戻らなかったという。
クレタの牡牛
クレタ王・ミノスは海の神・ポセイドンに捧げる生贄として、美しく巨大な牡牛をポセイドンから送られた。ところがミノスはこれを惜しみ、別の牛を生贄として捧げた。
怒ったポセイドンは牡牛を凶暴にして暴れさせ、更にはミノスの妻・パシパエに呪いをかけ、牡牛に熱烈な恋をさせた。思い余ったパシパエは名工ダイダロスに雌牛の模型を作らせ、その中に入って牡牛を受け入れた。この禁断の交わりによって牛頭の怪物・ミノタウロスが誕生するが、それは別の話。
ヘラクレスはクレタを訪れ、牡牛を捕らえるべくミノスに協力を要請。しかし王はこれを拒否した為、やむなく一人で牡牛に挑み、生け捕りにする事に成功した。
ミュケナイへ連れ帰って王に牡牛を披露した後、ヘラクレスは荒れ狂う獣を野に放った。その後も様々な場所で牡牛は暴れまわるが、奇しくもミノタウロスを退治した英雄・テセウスの手によって退治されている。
ディオメーデースの人喰い馬
トラキア王ディオメーデースが飼育していた巨大な馬。気性が荒く人間を食う為、ディオメーデースは旅人を捕らえてはこの馬に与えていた。
トラキアに乗り込んだヘラクレスは速攻でディオメーデースを殺害。その死体を馬に食わせると、途端に馬は大人しくなったという。
また異説があり、ヘラクレスは首尾よく馬を盗み出したが、ディオメーデースが軍を率いて追いかけて来た。側仕えの少年に馬を任せ、王ともどもトラキア軍を皆殺しにしたヘラクレスが戻ってくると、少年は馬に食い殺されていたという。
アマゾーンの女王の腰帯
アマゾーンとの戦いになると考え、有志を募って乗り込んだヘラクレスだったが、意外にもヒッポリュテは彼らを歓迎。強い男の子種を授かる代わりに自らの腰帯を与える事を快諾した。
ところがヘラクレスいじめに定評のあるヘラがアマゾーンに化け、「奴は女王を攫おうとしている」と扇動。図らずも戦いとなり、ヘラクレスは女王が自分を騙したと勘違いしてしまった。
誤解を解こうとしたヒッポリュテだったが、ヘラクレスは怒りのままに彼女を殺害して腰帯を奪った。しかし彼女が嘘を言っていなかった事に遅まきながら気づき、ひどく後悔したという。
これによりアマゾーンとギリシアの間に確執が生まれ、後のトロイア戦争にまで影響を及ぼす事となる。
ゲリュオンの牛
西の大洋の最果て、エリュテイア島に住まう巨人・ゲリュオンが飼っている牛。双頭の魔獣・オルトロスが見張りをし、誰にも盗まれる事がなかった。
西を目指してアフリカにまで到達したヘラクレスだったが、あまりの暑さにブチギレ。空を行く太陽に矢を射かけたが、太陽神・ヘリオスはかえってその剛毅を讃え、黄金の杯を彼に与える。
この杯に乗ると、あっという間にエリュテイア島に到着。オルトロスを鎧袖一触とばかりに打ち殺し、牛を取り戻そうとしたゲリュオンも返り討ちにした。
またこの旅の途中、近道をしようと考えたヘラクレスは、目の前に横たわる巨大な山脈を引き裂いて真っ二つにした。これがジブラルタル海峡となり、分かたれた二つの山脈は「ヘラクレスの柱」と呼ばれるようになった。
こうして10の功業は果たされたが、ミュケナイ王は「ヒュドラ退治に余人の手を借りた」「牛小屋掃除に報酬を求めた」として無効を宣言。新たに2つの命令が付け加えられる。
ヘスペリデスの黄金の林檎
巨人・アトラスの娘たち、ヘスペリデスが育てている黄金の林檎。林檎の木は世界の最果てにある「ヘスペリデスの園」にあるが、その場所は誰も知らない。
まずヘラクレスはヘスペリデスの居場所を知る為、ゼウスに罰せられているプロメテウスの元を訪ねる。山頂に縛り付けられ、肝臓を大鷲に啄まれる拷問を受けていたプロメテウスだったが、ヘラクレスは大胆にも大鷲を追い払い、彼を解放した。
感謝の印として、プロメテウスは「ヘスペリデスの父アトラスであれば、黄金の林檎を見つける事が出来る」と彼に教える。そこでヘラクレスは神罰として天を支え続けるアトラスの許を訪れ、かくかくしかじかと頼み込んだ。
アトラスは了承したが「黄金の林檎を取りに行く間、自分の代わりに天を支えてくれ」と交換条件を出す。やむなく巨人に代わって天を支える事になったが、天の重さを支えるのは流石の英雄でもひとかたならぬ苦痛をもたらした。
黄金の林檎を手にして戻ってきたアトラスだったが、再び天を支えるのを嫌がり、この林檎は自分がミュケナイに届けると言い出す。そこでヘラクレスは「天を支えるのは構わないが肩が痛い。クッションを挟みたいから少しの間変わってくれないか」と言い、巨人が天を引き受けた所で林檎を持ってまんまと立ち去った。
地獄の番犬ケルベロス
先に瞬殺されたオルトロスの兄に当たる魔獣。三つの首を持ち、眠らずの番犬として死者の脱走を決して許さない。
冥府に赴いたヘラクレスは、冥府の主・ハデスと謁見。ケルベロスを傷つけたり殺したりしない事を条件に、生け捕りにして地上に連れ出す事を許可された。
ケルベロスと戦い見事勝利、無力化に成功したヘラクレスだったが、この時ハデスの妻・ペルセポネーを拉致しようとして捕まっていたテセウス達もちゃっかり救出した。
また地上に引きずり出され、太陽の光を浴びて暴れるケルベロスのよだれから、毒草のトリカブトが生じたという。
こうして次々と連れてこられた魔獣や神秘の数々を前に、ミュケナイ王はすっかり怯えてしまった。青銅の大甕に身を隠しながら、恐る恐る姿を伺うばかりであったという。
その他の冒険
上記の偉業以外にも、ヘラクレスは様々な冒険をしている。
アルゴナウタイ
コルキスの金羊裘を求めるイアソンが広く募集をかけた、ギリシアの英雄のドリームチーム。
名だたる英雄達と共に巨大帆船・アルゴー船に乗り込み、コルキスを目指す旅にヘラクレスも参加。女だけの島・レムノス島での美女の誘惑にも負けず、鼻の下を長くしていた男達を叱りつけて再び旅に出るきっかけを作っている。
しかし途中立ち寄ったミューシアで、彼が可愛がっていた美少年・ヒュラスが水のニンフによって連れ去られてしまう。ヒュラスを探し続けるヘラクレスを置き去りに、アルゴー船は出発してしまった。
後々までヘラクレスはこのことを恨んでいたとされている。
ギガントマキア
ギリシア神話における神々の大戦。大地母神・ガイアの息子たる巨人族・ギガースと、オリュンポスの神々の戦い。
ギガースは神の力では傷つける事が出来ず、人間の力を借りなければ勝利できないと予言されていた。そこでゼウスはアルクメーネーとの間にヘラクレスをもうけ、彼を味方に加えて戦いに挑んだのである。つまりヘラクレスがこの世に生を受けたのは、全てはスケベに定評のある偉大なるゼウスによる神慮だったのだ。
……という後付けっぽい話はさておき、ギガースの力は強大で、山や岩を投げ飛ばして攻撃するという、かつてない代物だった。しかしオリュンポスの神々も負けじと応戦、総力戦に持ち込まれる。
かつてクロノス以下ティターン神族を相手にした「ティタノマキア」以来の大戦は、しかしヘラクレスの活躍もあり、オリュンポスの勝利で幕を閉じたのである。
最期
十二の功業によって罪を償い、晴れて自由の身となったヘラクレス。
カリュドーンの王女・デーイアネイラを二番目の妻として迎え、息子ヒュロスが生まれるなど、幸福な生活が続いた……
訳がなかった。
家族と共に諸国を旅するヘラクレス。ある時、彼は橋のかかっていない川を渡る事になった。だが川の流れは激しく、さしものヘラクレスも難渋していた。
そこへやってきたケンタウロスのネッソスが、自分が奥方を担いで差し上げようと申し出る。しかし好色に定評のあるケンタウロス、一足早く向こう岸に辿り着いた所で彼女を連れ去り、乱暴しようとした。
だがヘラクレスが放ったヒュドラの矢が、容赦なくネッソスを貫く。猛毒で瀕死となったケンタウロスは、デーイアネイラに「自分の血は媚薬となる。いずれ夫が心変わりをした時に血を塗った服を着せれば効果がある」と嘘を告げて死んだ。
彼女はその嘘を信じてしまい、密かにネッソスの血を保存する事にした。
後に彼が戦に勝利して捕虜としたオイカリアの王女・イオレーを妾にする事になると、デーイアネイラは先の言葉を思い出した。そしてヒュドラの毒で汚染された血を塗った服を、夫に届けさせたのである。
妻から送られた服に疑いを抱く事もなく、ヘラクレスはそれを身に着ける。するとたちまち服は体に貼りつき、ヒュドラの毒が全身に回っていった。苦痛のあまりヘラクレスは皮膚ごと服を毟り取ったが、最早助かる術はなかった。
我が子ヒュロスに自分を火葬し、イオレーを妻にするよう告げたヘラクレスは、オイテー山の頂上に薪を積み上げ、生きたまま炎によって焼き尽くされた。自分が図らずも夫を殺したことを知ったデーイアネイラは絶望し、命を絶った。
死後
しかし英雄にしてゼウスの息子であるヘラクレスは、そのまま死者として冥府に赴く事はなかった。
彼の魂はオリュンポスに迎えられ、そこでようやくヘラと和解。そしてヘラの娘、青春の女神・ヘーベーを妻に迎え、神々の英雄として幸福に暮らしたという。めでたしめでたし。
彼の姿を象った星座は春から夏にかけて天頂に昇る。日本語での正式名称はラテン語読みに由来するヘルクレス座であってヘラクレス座ではないので注意。
また、ヘラクレスの末裔を名乗る王家は非常に多かった。ヘラクレイダイと呼ばれる彼らの系譜は複雑で、その流れはスパルタ、アルゴス、マケドニアなど多岐にわたる。
「テルモピュライの戦い」で勇名を残したスパルタのレオニダス1世、後に大帝国を築いたマケドニアのアレクサンドロス3世(アレクサンダー大王)は、ヘラクレスの子孫という事になる。
後世への影響
彼の強さにあやかろうとしてか、軍事関係で英語名「ハーキュリーズ」を見る事は多い。
イギリス海軍の戦艦、およびインド海軍の空母「HMS ハーキュリーズ」はまさにそれで、他にもアメリカの軍用輸送機C-130や装甲車にその名がつけられている。
アガサ・クリスティが生み出した名探偵、エルキュール・ポアロの名の由来でもある。
ずんぐりとした小男の、知の巨人としての活躍を描いた短編集『ヘラクレスの冒険』が上梓されている。
その冒険譚はたびたび映画化されており、当然ながら肉体派の俳優が多く演じている。
シュワちゃんことアーノルド・シュワルツネッガーのデビュー作は『SF超人ヘラクレス』(1970年)だったりする。内容はコメディ路線で、当時の芸名はアーノルド・ストロングという、割とわかりやすいアレだった。なおDVDでは流石にアレすぎたと思ったのか『アドヴェンチャー・オブ・ヒーロー』である。
アメコミではMARVELの『マイティ・ソー』に「ハーキュリース」として登場。
故あって神話の世界から地球に人間として転生、同じく地球に転生した北欧神話の戦神ソーと出会い、紆余曲折あって信頼を結び、互いに兄弟となった。時にライバルとして戦い、時に友として共闘する。神様らしからぬ気さくな性格で、あのデッドプールともマブダチ。楽しい人生を謳歌している。
2011年のクロスオーバー『カオス・ウォー』では主役となり、カオスキングことアマツミカボシを相手に戦った。
1997年には彼を主人公としたディズニー映画『ヘラクレス』が公開。元の神話から大幅な脚色が加えられているが、アラン・メンケンによる名曲も相まって多くのファンに支持されている。
その後ディズニーとスクウェア・エニックスの提携で話題となったゲーム『キングダムハーツ』シリーズにも登場している。
データイーストから発売されたゲーム『ヘラクレスの栄光』シリーズにおいても、主役を務め……ているのは第一作と外伝だけで、あとは主人公のサポート役として登場している。
世界観はギリシア神話を踏襲しているが、ストーリー自体はオリジナルと言っても差し支えない。第三作『ヘラクレスの栄光III 神々の沈黙』は、シナリオの完成度から現在でも特に評価が高く、システムやゲームバランスなどに問題を抱えるものの、シリーズ最高傑作と推すファンが多い。
なおシナリオを手掛けたのは野島一成。『探偵 神宮寺三郎』シリーズのシナリオを務め、後に『ファイナルファンタジーVII』でストーリーを担当したほか、みんなのトラウマと名高い『バハムートラグーン』のディレクターでもある。
ギリシア神話を題材にしたアクションRPG『ゴッド・オブ・ウォー』では3作目に登場。
既にオリュンポスの神々の仲間入りを果たしており、主人公・クレイトスにとっては異母兄弟となる。自分を差し置いて戦いの神となったクレイトスに嫉妬していた。
ヘラの忠実な「息子」としてクレイトスの前に立ちはだかるが、激闘の末、前が見えねえ状態になるまでボコボコにされて死亡。「ネメアのカエストス」(獅子を象ったガントレット)を奪われた。
「神の子として生まれ、神に運命を狂わされて家族を殺した」クレイトスのキャラクター像はヘラクレスを踏襲しているが、解り合う事はなかった。
TYPE-MOONの『Fate/stay night』に登場する『狂戦士』のサーヴァント・バーサーカーの知名度は非常に高い。
狂化により意思疎通は困難を極めるが、その能力は第五次聖杯戦争でも最強格。マスターであるイリヤスフィールとは絆で結ばれており、白兵戦においては文字通り最強を誇った。その卓越した能力から、実はキャスター以外のあらゆるクラスに適性があると評されている。
その後も派生作品、およびソーシャルゲーム『Fate/Grand Order』に同クラスにて登場。
成田良悟によるスピンオフ小説『Fate/strange Fake』では、異名により召喚。本来の『英雄』とは異なる、意外な姿とクラスで登場する。
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