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ヘルペスとは、以下のものを指す言葉である。
概要
ヘルペスウイルスは約100種類存在し、現在、ヒトを宿主とするヘルペスウイルス=HHV(Human herpes viruses)は8種類知られている。感染力が高く、感染後も体内に潜み続け、抵抗力の低下などで症状が再燃するのが特徴。
性病としてのイメージが強いが、必ずしもヘルペスウイルス=性器ヘルペスを起こすというわけではない。
HHV-1(単純ヘルペス1型)
唇の周りに水ぶくれを起こす「口唇ヘルペス」が主な症状として現れる。
HHV-2(単純ヘルペス2型)
性器周辺に水ぶくれや潰瘍が起こり、痛みやかゆみを感じる「性器ヘルペス」が主な症状として現れる。
1型は体液(キス、間接キス)で、2型は性交で感染することが多いためこのような違いが出るが、フェラチオ、クンニといったオーラルセックスによる感染も起こりうるため明確に感染部位が分かれている訳では無い。
1型、2型ともビダラビン、アシクロビルなど抗ウイルス剤の軟膏で対処する。
HHV-3(水痘・帯状疱疹ウイルス)
水痘、帯状疱疹は別のウイルスによるものと思われていたが、1954年にそれが同一のものであると同定された。水痘はいわゆる「水疱瘡」のことで、小児がHHV-3に初めて感染した時に起こりやすい。そのウイルスが体内に潜み続け、免疫力低下などで再燃した際に起こるのが帯状疱疹である。免疫力の低下する高齢者に起こりやすい。
帯状疱疹は徴候が見られ始めた時点でビダラビン、アシクロビル、バラシクロビルなどの抗ウイルス剤を投与しないと、痛みが残ることがある。不眠によるうつ病の発症などの原因となるため注意が必要である。
また小児の水疱瘡に対しては、生ワクチンが予防として用いられる。
HHV-4(EBウイルス)
キスで感染するため、アメリカでは「キス病」とも言われる「伝染性単核球症」を起こす。症状は風邪に近いが、肝機能障害が出るのが特徴。アメリカでは青年期に好発するが、日本では小児期に感染し、いつの間にか抗体を持っていることが多い。
ペニシリン系抗菌薬の投与は発疹を誘発するため禁忌とされている。
HHV-5(サイトメガロウイルス)
乳幼児期に多くの人が感染し、抗体を獲得しているため、殆どの人には無害で症状は出にくいウイルス。だが、妊娠時に母親が初回感染を起こすと胎内感染により先天性感染症を引き起こす。これは流産に繋がったり、産まれた子の難聴、てんかん、自閉症などの原因になる。
小さな子供の唾液や尿が感染源となりやすいため、免疫がないと判明した妊婦は、頻繁な手洗いを心がけ、間接キスなどに注意することが必要である。
また骨髄移植時は免疫抑制剤の使用により再燃し、肺炎、腸炎など致命的な疾患の原因となるため、感染のチェック、ガンシクロビルなどの抗生剤を投与するといった対策が必要になる。
HHV-6
赤ちゃんが母親から受け継いだ免疫機能が切れる生後6~12ヶ月ごろに感染し、突発性発疹(知恵熱)を起こす。また薬剤の投与によって再活性化が起こり、薬剤性過敏症症候群の原因となる。
HHV-7
HHV-6と同様に突発性発疹の原因となる。HHV-6と比べると感染しても発症しない(不顕性感染と呼ばれる)ことが多い。なお、HHV-6よりも感染時期が遅くなる傾向があり、2回目の突発性発疹の場合は基本的にこちらが原因と思っていい。
HHV-8(カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス)
血管から発生する悪性腫瘍であるカポジ肉腫の原因となる。東欧や地中海沿岸では高齢者に発生することもあるが、日本においてはAIDSなどにより免疫力が低下した人に見られる。
その他
牛伝染性鼻気管炎などを引き起こす牛ヘルペスウイルス、鳥類にマレック病を引き起こすマレック病ウイルスなど、ヒト以外にもさまざまな動物に感染するヘルペスウイルスが存在する。
関連動画
関連項目
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